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#navi(SS集)
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* 作品 [#m6748bd1]
** 概要 [#o8a0258c]
|~作者 |十六夜 |
|~作品名 |長門有希の… 閑話3 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日 |2006-12-17 (日) 21:52:41 |
** 登場キャラ [#e7e2ea66]
//////////
|~キョン |不登場 |
|~キョンの妹|不登場 |
|~ハルヒ |不登場 |
|~みくる |不登場 |
|~古泉一樹 |不登場 |
|~鶴屋さん |不登場 |
|~朝倉涼子 |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜 |不登場 |
|~思念体 |不登場 |
|~天蓋領域 |不登場 |
|~阪中 |不登場|
|~谷口 |不登場|
|~ミヨキチ |不登場 |
|~佐々木 |不登場 |
|~橘京子 |不登場 |
** SS [#o47a7c0a]
//////////
#br
#setlinebreak(on)
すっかり秋も深まり、この我が身に受ける風も日に日に冷たく...
あのイヌもネコも動物園のライオンさえも日陰でだらしなくな...
しかし、晩秋の最中に真夏日が訪れるなんてコトがあれば、ま...
そもそもそれ以前に、俺がこのような目にあっているのはあの...
あのアホ…、月曜日になったら覚えてやがれ…。
さて、そろそろ何のコトかわからない人のために長くなるが説...
…俺は今、休日というのにベッドの上で横になっている。
朝はとうの昔に過ぎ去り、すでに昼を過ぎているにもかかわら...
#br
#br
これは昨日のコトである。
掃除当番であった俺は、谷口や国木田たち他多数で教室の掃除...
俺がバケツに水に汲んで教室に入ろうとしたとき、中から谷口...
「あ〜、だりぃ〜、こう寒くなってくると掃除もやる気が起き...
「だめだめ。そういってサボるつもりだろう? 後もう少しなん...
「後もう少しってことは人手もそんないらんということだ。つ...
あの野郎…、俺がわざわざ寒い中、水汲みというこの寒さに拍車...
「おい! 谷口」
ガラッ、と扉を開けるとちょうど谷口がそそくさと逃げ出そう...
もうわかるだろう?
そのバケツに入っていた水が俺に降りかかったのだ。
この冷え冷えとした寒い中、限りなく0度に近い水が俺に降りか...
#br
#br
これで俺が風邪をひいた理由をわかってもらえると思う。
あの後、アホバカマヌケ谷口に掃除を任せた俺は、SOS団の巣窟...
帰り道は濡れた制服から体育ジャージへとチェンジしたものの...
そして、
「もしもし、ハルヒか? イヤ、もうすでに体調が悪くなってき...
『何言っていんの!? 風邪なんて気合で治しなさい、明日まで...
「それは無理というものだ。俺としても実に参加できないのは...
この俺のウソ偽り無い言い訳を聞いたハルヒはしばらく沈黙を...
『…しょうがないわね、SOS団の一人が欠けるなら明日は中止に...
とハルヒに連絡をすまし、休日をベッドに過ごすというコトに...
#br
#br
#br
……こんなものかな、昨日の出来事は。
「キョンく〜ん、げんき〜?」
がちゃりと開けられた部屋の扉から三毛猫を抱き、顔を出した...
…元気じゃないから横なっているんだよ、お兄ちゃんは。そして...
「どうした? 何かあったのか?」
「うん、お腹すいてきたんだけどお昼は〜?」
あぁ、そうか、もう昼を過ぎていたのだったな。風邪のせいで...
ちなみに両親はというと、遠縁の親戚か何かのお通夜で俺と妹...
「わかった、ちょっと待ってくれ。すぐ用意するから…」
と立ち上がったものの熱を帯びた俺の体は酔いの回った千鳥足...
…これはずいぶんとタチの悪い風邪にやられたな。これもあの谷...
「むりしちゃだめだよ〜、キョン君」
そうは言っても、このまま状況だと相当まずくないか? 俺はこ...
かといって、妹には期待できない。一人で買い物に行かせよう...
これは誰かに助けを求めないと両親が帰ってくる前に全滅して...
#br
#br
机に放置されている携帯をフルマラソン後のような足取りと手...
まず、ハルヒ。
イヤ、これは論外だな。確かに様々な状況においてもハルヒが...
次に朝比奈さん。
部室にあるナース服にて看病してくれるなら罰があたってもか...
…古泉。
一応真面目だし一通りのコトはやってくれそうだがこの風邪の...
最後に長門。
というより最初から長門しかいないだろう。長門なら全てにお...
#br
#br
ッ…ゴホッゴホッ、…ふむ、どうやらノドまでやられてきたよう...
「…すまないが、お兄ちゃんはノドが痛いから代わりに長門に電...
ノドを押さえながら、携帯に登録している長門の電話番号を選...
妹がそんなネコを残念そうに目で追いながら電話を耳にあてる...
「あっ、有希ちゃん? え〜っと…」
妹がベッドに横になる俺のほうへ向き、何を言えばいいかを目...
ベッドから上半身だけを起こし、まず本を読む仕草の後、マン...
そして次に、左手で茶碗、右手でハシを持つような手つきをし...
繋げると『長門にこの家に来て欲しくて、その際に食べ物もお...
我ながらわかりにくくかったかもしれないが、俺と妹は血が繋...
妹はしばらくクエッションマークを三つほど頭の上に回し考え...
さすが、我が妹。さぁ、長門に俺の言いたかったコトを伝えて...
「有希ちゃん、キョン君が話せないから代わりに伝えるね。『...
それはないだろう…、我が妹よ。
#br
#br
俺はベッドから這いずり出て妹から携帯を奪いとる。今はノド...
「ゴホッ、長門、先ほどの妹の言葉は忘れてくれ。…用件という...
隣の妹がフグみたいにプーっと膨れ顔をしているが事実なんだ...
「それで迷惑かと思うのが、何か食べ物を持って俺の家に来て...
もちろん礼は後日させてもらう、と言いかける前に、
「了解した。すぐに行く」
こう返事が入り、俺は感謝の言葉として、ありがたい、待って...
妹にもう少しだけ昼飯は待っていろ、と伝えるとインターフォ...
まったくこんな時に誰だ?
パジャマ姿で外に出るわけにもいかないので、ここは妹に任せ...
一時間もあれば来るだろうし、痛み出した頭を休めるにはちょ...
……そう思っていたのだが、俺の予想は大きくはずれるコトにな...
#br
#br
あのインターフォンを鳴らしたのは先ほど電話の相手で長門で...
俺も妹もシャミセンが「ワン!」と鳴くぐらい驚いていたが、...
あまりにも早かったので俺が理由を尋ねると、
「すぐ行く、と言ったから」
の一言で終了。
相変わらず、不可能を可能にする長門だが、とにもかくにも早...
その長門はというと、持って来てくれた食材でお腹をすかせた...
しかしこれでひとまず、安心だな。俺も安心して養生できると...
#br
#br
こうして俺はベッドで横になっていた所、扉を叩くノックが聞...
「……」
三点リーダーと共にやってきたのは湯気が出ているお椀を手に...
「…どうかしたのか?」
「おかゆ」
そのままベッドの横に座った長門の手には確かにおかゆが注が...
「それは見たらわかるが…」
「食べて」
「イヤ…今は風邪で食欲がなくてだな…」
体を起こして長門に否定の言葉を言うと、長門の眼に冷たい炎...
「食べないと良くならない」
「わかりました。ありがたくいただきます」
新入社員がいきなり社長から頼まれ事をされたように素直に従...
「はい」
そして俺の前に差し出されたのはお椀に入ったおかゆではなく...
「…これをどうしろと?」
「病人に食べさせるときはこうするものだと、あなたの妹から...
というコトはだ、新婚ホヤホヤの夫婦がやるような、
妻「ハイ、あ〜ん」
夫「あ〜ん」
とかいうのをしろというコトか。…さすがに恥ずかしいが俺も一...
俺が長門にも想像できないぐらい葛藤していると、
「忘れていた」
…何を? と葛藤を中断した俺が長門を見ると自分の口に手に持...
「熱いものは自分の息で冷ましてから食べさせる、これもあな...
こうして再び差し出されたおかゆは俺の口にと飛び込んだ。
そして俺は、風邪が治ったら妹に何でも好きなおもちゃを買っ...
#br
#br
長門が作ってもらい、その息で冷ましてくれたおかゆはたいそ...
「おいしかったよ、長門。わざわざ作ってくれてありがとよ」
すっかり空になったお椀を見た長門は俺にだけわかる喜怒哀楽...
そこで長門が思い出したように一言しゃべった。
「あなたの妹から聞いた『わたしをベッドの上で食べたい』と...
せっかく胃におさまったおかゆが噴出しそうになるぐらいの猛...
「…機会があれば教えてやるから、また今度な」
「そう」
音もなく扉を閉めた長門。
その長門はどうやらこの場合の『食べる』という意味をまだ理...
できれば今の妹と同じく知るコトのない純粋な一生を送って欲...
#br
#br
思考と風邪のダブル使用によって熱がこもった頭。額に冷却シ...
「……」
三点リーダーを引き連れてやってきた長門。今度は手に洗面器...
「そのタオルは額にのっけるのか? すまないが、今しがた冷却...
そう言うと長門はちょこんとベッドに横付けし、手元にタオル...
「違う、あなたの体を拭くためのもの。病原菌が感染した原因...
……つまり、『汗をかいたままじゃダメだから体を拭け』という...
確かに一晩中熱もあったから、寝ているときにだいぶ汗をかい...
「そうだな、汗をふいて少しでもさっぱりするか。…長門、妹に...
「わかった」
面倒見てもらって助かるよ。じゃあ、よろしく頼む。
#br
#br
そう言ってから三分経過したが、状況はまったく変わっていな...
俺は汗を拭いてもいないし長門も元の位置に居座っているとい...
あのー長門さん? いつまでもそこにいらっしゃると服が脱げな...
「わたしが拭く。だから早く脱いで」
イヤイヤ、そこまでしてくれなくても…。そもそも上半身裸を見...
「違わない。またあなた一人では背中など拭きにくい部位が存...
……わかった。
#br
#br
こうして頑なに自分で拭くコトを妥協しなかった長門によって...
「もう十分だ、ずいぶんとさっぱりしたよ。妹に言って着替え...
バシャバシャと洗面器でタオルをゆすぐ長門に声をかけるとす...
「まだ」
「まだ…ってもう全部拭いてくれたと思ったんだがまだのトコが...
しぼったタオルを手に取り、アゴを少しひく長門流の肯定だが…...
「した」
…した?
「そう。上半身は全て拭いたが下半身はまだ」
……下半身というコトはズボンも脱げというコトですか?
「そう。脱いで」
待て! さすがにそれは色々マズイ!
いくらなんでも嫁入り…じゃなくて婿入り前の俺の体にそこまで...
しかしこの抵抗は長門にとってまったくの無意味だった。風邪...
その瞬間、俺の体は動かなくなる。あの教室で朝倉に襲われた...
長門が俺のズボンに手をかけ、脱がそうとすると、
「キョンく〜ん、お友達連れてきたよ〜」
妹が扉を破り、連れてきたのはあのミヨキチである。
「どうもおじゃまします。風邪をひかれたそうですが、大丈夫...
今の状況。俺が一人の女性(長門)に襲われています。
「あれ〜有希ちゃん、何してるの〜? キョン君と遊んでる…」
会話の途中でミヨキチに口を塞がれた我が妹はそのままズルズ...
「失礼しました。私はあなたの妹と一緒に二時間ほど外で遊ん...
妹と同じ、また小学生とは思えない気配りを見せるミヨキチで...
ここで長門はというと、二人が来てもまったくの無関心だった...
って長門。
さすがにパンツだけは、パンツだけは止め…、アッー!!
#br
#br
本当に体の隅々まで拭かれた俺は、返ってきたテストの全てが...
それにしてもまさかあの長門があそこまで強引であったとは…。...
その長門は妹と二人で買い物に出かけている。ミヨキチは相変...
とりあえず今はそれを置いておいて、十分ほど前に遊び疲れた...
「晩ご飯も有希ちゃんが作った料理が食べたい」
そんなわけで二人して夕飯の買い物に出かけたというわけだ。
出かける前まで常に長門が俺の隣にいて、助かるといえば助か...
しかし、先ほどにあんなコトがあったばかりで、非常に落ち着...
それが今は一人となり、気もずいぶんと楽になった俺は長門と...
#br
#br
……ん…今は何時だ…? 外は…もう暗い…な。
最近は日が暮れるのがめっぽう早くなり外からの様子からでは...
外の暗さや俺のアナログ腹時計で判断するよりも長門に聞いた...
「長門…、今何時だ…?」
「現在の時刻は午後六時五十八分三十二秒」
秒単位までありがとよ。…それにしても、もうすぐ七時か……とい...
一日寝ていたし、飯を食べに行く体力ぐらいは回復しているだ...
「…起きるか」
とその前に長門。……パジャマから手を離してくれ。
#br
ベッドから半身を起こし軽くノビをして、長門がベッドから出...
「当然の事をしただけ」
その当然の事が俺にとって、イスラム教信者が聖地エルサレム...
「じゃあ、下に行くか」
そう長門に声をかけると一つ頷きを見せ、俺の後ろから着いて...
ギギギというぴったりの擬音を発しながら俺の頭は後ろから着...
俺のほうが下の段差にいるため長門からの視線は上から届く珍...
「えっとだな、ちょっと頭を整理する。……長門、さっきお前は...
「あなたのベッド」
…やっぱりか。それ以前に気付くのが遅いよ、俺。
「なぜ布団の中にいた?」
「あなたを晩御飯に呼ぶため」
「それはわかった。…でもなんで布団の中なんだ?」
長門はからこの俺の質問を答えるのに一呼吸おいて、
「誤作動」
誤作動って…、もう少しわかりやすく教えてくれ。
「部屋に入った後、あなたの布団に入るまでの間、わたしの意...
わたしはこのことから誤作動と判断した」
わかりやすい説明をありがとう、長門。
「…まぁこの件に関してはもういいさ。それよりも妹も夕飯を待...
「わかった」
こうして階段を降り、リビングの戸を開けるとテレビを見てい...
「もぉーおそいよー、有希ちゃん! キョン君を呼びにいってか...
長門…、三十分もいたのか…。
#br
#br
そして以下、俺と長門と妹の夕飯のときにあった会話である。
「なぁ長門。今日一日世話をしてくれてとても助かったんだが...
「大丈夫。あなたの風邪が完治するまでいる」
「じゃあ今夜、この家に泊まるつもりなのか?」
「迷惑?」
「迷惑なわけがない。体調が万全でない俺としても、夜に頼れ...
「いい。わたしがしたいからしている」
「そうか…。なら長門のお言葉に甘えるとするよ」
「有希ちゃん、今日泊まるんだ〜。やった〜!」
#br
#br
というワケで長門が我が家に泊まるコトになったのだが、翌朝...
「おはよう」
「…あぁ、おはよう」
昨日、俺が貸した母親のパジャマ姿である長門と反射的に朝の...
「長門、また俺の布団に入り込んだのか?」
「違う。今回はあなたがわたしの布団に入ってきた」
…確かに見渡すと、今いる布団は長門が寝ていた物で俺のベッド...
昨日、長門はベッドの隣、部屋の真ん中に布団を敷いて寝たは...
「深夜、あなたが一度起きた後」
そういえば、ノドが乾いたので一度起きたという記憶がプール...
そう本棚の反対の壁に寄せられたベッドの場所に入って……なん...
「朝食の準備をしてくる」
長門は平然としているし俺の勘違いなのか? 元々、ベッドは部...
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#br
頭がクエッションマークで満たされながら朝食をすまし、部屋...
やっぱりお前の仕業か…長門。
「嘘はついてはいない」
確かにお前はウソをついていない。俺がお前の布団に入り込ん...
「……」
怒らないから顔をこっちに向けなさい、長門。
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#br
…まぁこんな様子でも看病もしてくれたのは間違いなく、夕方に...
両親が家に帰ってくるとなんとも言えない笑顔を俺に向け、夕...
この後、母親からやけに詳しく長門のコトを聞かれたがとりあ...
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#br
#br
休日を風邪でベッドの上で過ごして潰れたものの登校日という...
市内探索が中止になったツケが授業中、不機嫌ハルヒのシャー...
もちろん病み上がりだからといって帰るコトは許されるコトも...
そこには本を読む長門、お茶を煎れる朝比奈さん、詰将棋にい...
こうして決して有意義とは言えないが、いつもの変わらぬ部室...
#br
「二日前、あなたから聞いた『わたしをベッドの上で食べたい...
#br
この後の展開はご想像にお任せする。
俺はもう生きてはここから出られないと思うから…。
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…終わり。
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#navi(SS集)
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* 作品 [#m6748bd1]
** 概要 [#o8a0258c]
|~作者 |十六夜 |
|~作品名 |長門有希の… 閑話3 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日 |2006-12-17 (日) 21:52:41 |
** 登場キャラ [#e7e2ea66]
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|~キョン |不登場 |
|~キョンの妹|不登場 |
|~ハルヒ |不登場 |
|~みくる |不登場 |
|~古泉一樹 |不登場 |
|~鶴屋さん |不登場 |
|~朝倉涼子 |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜 |不登場 |
|~思念体 |不登場 |
|~天蓋領域 |不登場 |
|~阪中 |不登場|
|~谷口 |不登場|
|~ミヨキチ |不登場 |
|~佐々木 |不登場 |
|~橘京子 |不登場 |
** SS [#o47a7c0a]
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#setlinebreak(on)
すっかり秋も深まり、この我が身に受ける風も日に日に冷たく...
あのイヌもネコも動物園のライオンさえも日陰でだらしなくな...
しかし、晩秋の最中に真夏日が訪れるなんてコトがあれば、ま...
そもそもそれ以前に、俺がこのような目にあっているのはあの...
あのアホ…、月曜日になったら覚えてやがれ…。
さて、そろそろ何のコトかわからない人のために長くなるが説...
…俺は今、休日というのにベッドの上で横になっている。
朝はとうの昔に過ぎ去り、すでに昼を過ぎているにもかかわら...
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#br
これは昨日のコトである。
掃除当番であった俺は、谷口や国木田たち他多数で教室の掃除...
俺がバケツに水に汲んで教室に入ろうとしたとき、中から谷口...
「あ〜、だりぃ〜、こう寒くなってくると掃除もやる気が起き...
「だめだめ。そういってサボるつもりだろう? 後もう少しなん...
「後もう少しってことは人手もそんないらんということだ。つ...
あの野郎…、俺がわざわざ寒い中、水汲みというこの寒さに拍車...
「おい! 谷口」
ガラッ、と扉を開けるとちょうど谷口がそそくさと逃げ出そう...
もうわかるだろう?
そのバケツに入っていた水が俺に降りかかったのだ。
この冷え冷えとした寒い中、限りなく0度に近い水が俺に降りか...
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#br
これで俺が風邪をひいた理由をわかってもらえると思う。
あの後、アホバカマヌケ谷口に掃除を任せた俺は、SOS団の巣窟...
帰り道は濡れた制服から体育ジャージへとチェンジしたものの...
そして、
「もしもし、ハルヒか? イヤ、もうすでに体調が悪くなってき...
『何言っていんの!? 風邪なんて気合で治しなさい、明日まで...
「それは無理というものだ。俺としても実に参加できないのは...
この俺のウソ偽り無い言い訳を聞いたハルヒはしばらく沈黙を...
『…しょうがないわね、SOS団の一人が欠けるなら明日は中止に...
とハルヒに連絡をすまし、休日をベッドに過ごすというコトに...
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……こんなものかな、昨日の出来事は。
「キョンく〜ん、げんき〜?」
がちゃりと開けられた部屋の扉から三毛猫を抱き、顔を出した...
…元気じゃないから横なっているんだよ、お兄ちゃんは。そして...
「どうした? 何かあったのか?」
「うん、お腹すいてきたんだけどお昼は〜?」
あぁ、そうか、もう昼を過ぎていたのだったな。風邪のせいで...
ちなみに両親はというと、遠縁の親戚か何かのお通夜で俺と妹...
「わかった、ちょっと待ってくれ。すぐ用意するから…」
と立ち上がったものの熱を帯びた俺の体は酔いの回った千鳥足...
…これはずいぶんとタチの悪い風邪にやられたな。これもあの谷...
「むりしちゃだめだよ〜、キョン君」
そうは言っても、このまま状況だと相当まずくないか? 俺はこ...
かといって、妹には期待できない。一人で買い物に行かせよう...
これは誰かに助けを求めないと両親が帰ってくる前に全滅して...
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机に放置されている携帯をフルマラソン後のような足取りと手...
まず、ハルヒ。
イヤ、これは論外だな。確かに様々な状況においてもハルヒが...
次に朝比奈さん。
部室にあるナース服にて看病してくれるなら罰があたってもか...
…古泉。
一応真面目だし一通りのコトはやってくれそうだがこの風邪の...
最後に長門。
というより最初から長門しかいないだろう。長門なら全てにお...
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ッ…ゴホッゴホッ、…ふむ、どうやらノドまでやられてきたよう...
「…すまないが、お兄ちゃんはノドが痛いから代わりに長門に電...
ノドを押さえながら、携帯に登録している長門の電話番号を選...
妹がそんなネコを残念そうに目で追いながら電話を耳にあてる...
「あっ、有希ちゃん? え〜っと…」
妹がベッドに横になる俺のほうへ向き、何を言えばいいかを目...
ベッドから上半身だけを起こし、まず本を読む仕草の後、マン...
そして次に、左手で茶碗、右手でハシを持つような手つきをし...
繋げると『長門にこの家に来て欲しくて、その際に食べ物もお...
我ながらわかりにくくかったかもしれないが、俺と妹は血が繋...
妹はしばらくクエッションマークを三つほど頭の上に回し考え...
さすが、我が妹。さぁ、長門に俺の言いたかったコトを伝えて...
「有希ちゃん、キョン君が話せないから代わりに伝えるね。『...
それはないだろう…、我が妹よ。
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俺はベッドから這いずり出て妹から携帯を奪いとる。今はノド...
「ゴホッ、長門、先ほどの妹の言葉は忘れてくれ。…用件という...
隣の妹がフグみたいにプーっと膨れ顔をしているが事実なんだ...
「それで迷惑かと思うのが、何か食べ物を持って俺の家に来て...
もちろん礼は後日させてもらう、と言いかける前に、
「了解した。すぐに行く」
こう返事が入り、俺は感謝の言葉として、ありがたい、待って...
妹にもう少しだけ昼飯は待っていろ、と伝えるとインターフォ...
まったくこんな時に誰だ?
パジャマ姿で外に出るわけにもいかないので、ここは妹に任せ...
一時間もあれば来るだろうし、痛み出した頭を休めるにはちょ...
……そう思っていたのだが、俺の予想は大きくはずれるコトにな...
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あのインターフォンを鳴らしたのは先ほど電話の相手で長門で...
俺も妹もシャミセンが「ワン!」と鳴くぐらい驚いていたが、...
あまりにも早かったので俺が理由を尋ねると、
「すぐ行く、と言ったから」
の一言で終了。
相変わらず、不可能を可能にする長門だが、とにもかくにも早...
その長門はというと、持って来てくれた食材でお腹をすかせた...
しかしこれでひとまず、安心だな。俺も安心して養生できると...
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こうして俺はベッドで横になっていた所、扉を叩くノックが聞...
「……」
三点リーダーと共にやってきたのは湯気が出ているお椀を手に...
「…どうかしたのか?」
「おかゆ」
そのままベッドの横に座った長門の手には確かにおかゆが注が...
「それは見たらわかるが…」
「食べて」
「イヤ…今は風邪で食欲がなくてだな…」
体を起こして長門に否定の言葉を言うと、長門の眼に冷たい炎...
「食べないと良くならない」
「わかりました。ありがたくいただきます」
新入社員がいきなり社長から頼まれ事をされたように素直に従...
「はい」
そして俺の前に差し出されたのはお椀に入ったおかゆではなく...
「…これをどうしろと?」
「病人に食べさせるときはこうするものだと、あなたの妹から...
というコトはだ、新婚ホヤホヤの夫婦がやるような、
妻「ハイ、あ〜ん」
夫「あ〜ん」
とかいうのをしろというコトか。…さすがに恥ずかしいが俺も一...
俺が長門にも想像できないぐらい葛藤していると、
「忘れていた」
…何を? と葛藤を中断した俺が長門を見ると自分の口に手に持...
「熱いものは自分の息で冷ましてから食べさせる、これもあな...
こうして再び差し出されたおかゆは俺の口にと飛び込んだ。
そして俺は、風邪が治ったら妹に何でも好きなおもちゃを買っ...
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長門が作ってもらい、その息で冷ましてくれたおかゆはたいそ...
「おいしかったよ、長門。わざわざ作ってくれてありがとよ」
すっかり空になったお椀を見た長門は俺にだけわかる喜怒哀楽...
そこで長門が思い出したように一言しゃべった。
「あなたの妹から聞いた『わたしをベッドの上で食べたい』と...
せっかく胃におさまったおかゆが噴出しそうになるぐらいの猛...
「…機会があれば教えてやるから、また今度な」
「そう」
音もなく扉を閉めた長門。
その長門はどうやらこの場合の『食べる』という意味をまだ理...
できれば今の妹と同じく知るコトのない純粋な一生を送って欲...
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思考と風邪のダブル使用によって熱がこもった頭。額に冷却シ...
「……」
三点リーダーを引き連れてやってきた長門。今度は手に洗面器...
「そのタオルは額にのっけるのか? すまないが、今しがた冷却...
そう言うと長門はちょこんとベッドに横付けし、手元にタオル...
「違う、あなたの体を拭くためのもの。病原菌が感染した原因...
……つまり、『汗をかいたままじゃダメだから体を拭け』という...
確かに一晩中熱もあったから、寝ているときにだいぶ汗をかい...
「そうだな、汗をふいて少しでもさっぱりするか。…長門、妹に...
「わかった」
面倒見てもらって助かるよ。じゃあ、よろしく頼む。
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そう言ってから三分経過したが、状況はまったく変わっていな...
俺は汗を拭いてもいないし長門も元の位置に居座っているとい...
あのー長門さん? いつまでもそこにいらっしゃると服が脱げな...
「わたしが拭く。だから早く脱いで」
イヤイヤ、そこまでしてくれなくても…。そもそも上半身裸を見...
「違わない。またあなた一人では背中など拭きにくい部位が存...
……わかった。
#br
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こうして頑なに自分で拭くコトを妥協しなかった長門によって...
「もう十分だ、ずいぶんとさっぱりしたよ。妹に言って着替え...
バシャバシャと洗面器でタオルをゆすぐ長門に声をかけるとす...
「まだ」
「まだ…ってもう全部拭いてくれたと思ったんだがまだのトコが...
しぼったタオルを手に取り、アゴを少しひく長門流の肯定だが…...
「した」
…した?
「そう。上半身は全て拭いたが下半身はまだ」
……下半身というコトはズボンも脱げというコトですか?
「そう。脱いで」
待て! さすがにそれは色々マズイ!
いくらなんでも嫁入り…じゃなくて婿入り前の俺の体にそこまで...
しかしこの抵抗は長門にとってまったくの無意味だった。風邪...
その瞬間、俺の体は動かなくなる。あの教室で朝倉に襲われた...
長門が俺のズボンに手をかけ、脱がそうとすると、
「キョンく〜ん、お友達連れてきたよ〜」
妹が扉を破り、連れてきたのはあのミヨキチである。
「どうもおじゃまします。風邪をひかれたそうですが、大丈夫...
今の状況。俺が一人の女性(長門)に襲われています。
「あれ〜有希ちゃん、何してるの〜? キョン君と遊んでる…」
会話の途中でミヨキチに口を塞がれた我が妹はそのままズルズ...
「失礼しました。私はあなたの妹と一緒に二時間ほど外で遊ん...
妹と同じ、また小学生とは思えない気配りを見せるミヨキチで...
ここで長門はというと、二人が来てもまったくの無関心だった...
って長門。
さすがにパンツだけは、パンツだけは止め…、アッー!!
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本当に体の隅々まで拭かれた俺は、返ってきたテストの全てが...
それにしてもまさかあの長門があそこまで強引であったとは…。...
その長門は妹と二人で買い物に出かけている。ミヨキチは相変...
とりあえず今はそれを置いておいて、十分ほど前に遊び疲れた...
「晩ご飯も有希ちゃんが作った料理が食べたい」
そんなわけで二人して夕飯の買い物に出かけたというわけだ。
出かける前まで常に長門が俺の隣にいて、助かるといえば助か...
しかし、先ほどにあんなコトがあったばかりで、非常に落ち着...
それが今は一人となり、気もずいぶんと楽になった俺は長門と...
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#br
……ん…今は何時だ…? 外は…もう暗い…な。
最近は日が暮れるのがめっぽう早くなり外からの様子からでは...
外の暗さや俺のアナログ腹時計で判断するよりも長門に聞いた...
「長門…、今何時だ…?」
「現在の時刻は午後六時五十八分三十二秒」
秒単位までありがとよ。…それにしても、もうすぐ七時か……とい...
一日寝ていたし、飯を食べに行く体力ぐらいは回復しているだ...
「…起きるか」
とその前に長門。……パジャマから手を離してくれ。
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ベッドから半身を起こし軽くノビをして、長門がベッドから出...
「当然の事をしただけ」
その当然の事が俺にとって、イスラム教信者が聖地エルサレム...
「じゃあ、下に行くか」
そう長門に声をかけると一つ頷きを見せ、俺の後ろから着いて...
ギギギというぴったりの擬音を発しながら俺の頭は後ろから着...
俺のほうが下の段差にいるため長門からの視線は上から届く珍...
「えっとだな、ちょっと頭を整理する。……長門、さっきお前は...
「あなたのベッド」
…やっぱりか。それ以前に気付くのが遅いよ、俺。
「なぜ布団の中にいた?」
「あなたを晩御飯に呼ぶため」
「それはわかった。…でもなんで布団の中なんだ?」
長門はからこの俺の質問を答えるのに一呼吸おいて、
「誤作動」
誤作動って…、もう少しわかりやすく教えてくれ。
「部屋に入った後、あなたの布団に入るまでの間、わたしの意...
わたしはこのことから誤作動と判断した」
わかりやすい説明をありがとう、長門。
「…まぁこの件に関してはもういいさ。それよりも妹も夕飯を待...
「わかった」
こうして階段を降り、リビングの戸を開けるとテレビを見てい...
「もぉーおそいよー、有希ちゃん! キョン君を呼びにいってか...
長門…、三十分もいたのか…。
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そして以下、俺と長門と妹の夕飯のときにあった会話である。
「なぁ長門。今日一日世話をしてくれてとても助かったんだが...
「大丈夫。あなたの風邪が完治するまでいる」
「じゃあ今夜、この家に泊まるつもりなのか?」
「迷惑?」
「迷惑なわけがない。体調が万全でない俺としても、夜に頼れ...
「いい。わたしがしたいからしている」
「そうか…。なら長門のお言葉に甘えるとするよ」
「有希ちゃん、今日泊まるんだ〜。やった〜!」
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というワケで長門が我が家に泊まるコトになったのだが、翌朝...
「おはよう」
「…あぁ、おはよう」
昨日、俺が貸した母親のパジャマ姿である長門と反射的に朝の...
「長門、また俺の布団に入り込んだのか?」
「違う。今回はあなたがわたしの布団に入ってきた」
…確かに見渡すと、今いる布団は長門が寝ていた物で俺のベッド...
昨日、長門はベッドの隣、部屋の真ん中に布団を敷いて寝たは...
「深夜、あなたが一度起きた後」
そういえば、ノドが乾いたので一度起きたという記憶がプール...
そう本棚の反対の壁に寄せられたベッドの場所に入って……なん...
「朝食の準備をしてくる」
長門は平然としているし俺の勘違いなのか? 元々、ベッドは部...
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頭がクエッションマークで満たされながら朝食をすまし、部屋...
やっぱりお前の仕業か…長門。
「嘘はついてはいない」
確かにお前はウソをついていない。俺がお前の布団に入り込ん...
「……」
怒らないから顔をこっちに向けなさい、長門。
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…まぁこんな様子でも看病もしてくれたのは間違いなく、夕方に...
両親が家に帰ってくるとなんとも言えない笑顔を俺に向け、夕...
この後、母親からやけに詳しく長門のコトを聞かれたがとりあ...
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休日を風邪でベッドの上で過ごして潰れたものの登校日という...
市内探索が中止になったツケが授業中、不機嫌ハルヒのシャー...
もちろん病み上がりだからといって帰るコトは許されるコトも...
そこには本を読む長門、お茶を煎れる朝比奈さん、詰将棋にい...
こうして決して有意義とは言えないが、いつもの変わらぬ部室...
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「二日前、あなたから聞いた『わたしをベッドの上で食べたい...
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この後の展開はご想像にお任せする。
俺はもう生きてはここから出られないと思うから…。
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…終わり。
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