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#navi(SS集)
#br
* 作品 [#f9715ba9]
** 概要 [#p2c0712d]
|~作者 |書き込めない人 |
|~作品名 |長門さんと吊り橋 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日 |2006-11-19 (日) 14:38:56 |
** 登場キャラ [#qb5fffaa]
//////////
|~キョン |登場 |
|~キョンの妹|不登場 |
|~ハルヒ |登場 |
|~みくる |登場 |
|~古泉一樹 |登場 |
|~鶴屋さん |不登場 |
|~朝倉涼子 |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜 |不登場 |
|~思念体 |不登場 |
|~天蓋領域 |不登場 |
|~阪中 |不登場|
|~谷口 |不登場|
|~ミヨキチ |不登場 |
|~佐々木 |不登場 |
|~橘京子 |不登場 |
** SS [#bf440930]
//////////
#br
#setlinebreak(on)
晴れやかな空の下、
おなじみ我らがSOS団の面々は登山をしていた。
もちろんSOS団が突然ワンダーフォーゲル部になったという事実...
ではなぜこんな修験道じみたことをしているかというと……
#br
多分言わなくてもわかると思うが……そう、ハルヒのせいだ。
#br
既に2時間近く歩き続けているというのに、
ただ一人元気100%のこの団長様のおかげで、
俺たちは折角の連休を潰される羽目になったのだ。
#br
俺はこの辛さを少しでも紛らわせよう思い、
昨日の出来事を振り返ることにした……
#br
#br
#br
#br
「今度は山の上の洋館に行きたいわね……」
#br
古泉の駒を一つ残らず略奪することに夢中だった俺の耳に、
また訳のわからぬ文字列が飛び込んできた。
#br
「……何だって?」
#br
「洋館よ、洋館」
#br
あぁ、羊羹ね。
ちょうど朝比奈さんが煎れてくれた緑茶もあるし、
食べればいいんじゃないか?
#br
「その『ようかん』じゃないわよ!建物の方!!」
#br
そんな怒鳴らずともちゃんと分かる。
ただ、ちょっとボケただけだ。
#br
「あんたはいつもボケてるでしょ!」
#br
余計なお世話だ。
むしろ俺はツッコミ役だぞ。
そう言おうとすると、
横から朝比奈さんが口を挟んできた。
#br
「山の上……ですか?」
#br
「そうよ!山の上の洋館よ!」
#br
何でそんな自信満々なんだ。
第一、山の上の洋館なんぞに行ってどうするつもりだ?
隣町に行けば洋館くらいいっぱいあるだろうよ。
#br
「わかってないわね〜山の上にあってこその洋館なのよ」
#br
いつから洋館の定義に場所の指定が組み込まれたのだろうか。
いくらこの国が山林地帯の多い地形をしているからといって、
そんな所にわざわざ住もうなんていう奇特な人がそういるだろ...
いや、ハルヒが望めば出てくるんだろうけど……
#br
「そもそも、そんな所に行ってどうするんだ?
舞踏会でもやろうってのか?」
#br
「違うわよ!不思議探しに決まってるでしょ!!」
#br
あぁ、いつもの探索じゃ見つからないから、
探索範囲を広げたいのか……って、無茶を言うな。
俺の反抗を無視して、ハルヒはどんどん演説を続ける。
#br
「きっとどこかに怪しい建築家が建てた怪しげな館があるはず...
中が迷路になってたり、人形や時計だらけの部屋があったり、
怪しげな不死の一族が住んでいたり……」
#br
「人狼がいたり、人魚がいたりするんですね」
#br
おい、何を賛同してんだこのニヤケ面。
ここはなるべく変な刺激をせずにやり過ごすべきだろ。
#br
「そっち路線でもいいわね……さすが古泉君だわ!」
#br
何が『さすが』なのか分からないが、
このまま放置していくと、せっかくの明日からの連休を、
その『洋館探索』とやらに潰されそうだ。
休日くらいは休ませてくれ。
#br
そう思った俺は、本日まだ声を聞いていない、
我らが万能宇宙人に助けを求めた。
#br
「なぁ、長門……」
#br
「なに?」
#br
「このままだと訳のわからん洋館とやらに行かされそうだ……
何とか二人の目を覚ましてやってくれないか?」
#br
もちろん精神的な意味で。
俺の依頼に、長門は力強く頷いた。
おぉ、何と頼もしいことか……
#br
長門はすくっと立ち上がると、
盛り上がる二人の方を向き、
そよ風のような声で話し出した。
#br
「山の上にある洋館ではダメ……」
#br
珍しい無口少女の否定に少々驚いた様子の二人。
さすが長門だ。このまま行けば計画を頓挫させれそうだ……
だが、その次の言葉で、今度は俺が少々……いや、かなり驚くこ...
#br
#br
「山の上の吊り橋の先にある洋館の方がいい……」
#br
#br
……へ?
#br
#br
その後、この摩訶不思議な発言を受けたハルヒが、
『そうよ!そうだわ!吊り橋って大事よね!!』と叫び、
さらにその叫びに同調した古泉が、
『もちろん燃えやすい丸太などの木材で出来た物ですね?』と...
そのセリフを受けて小さく頷いた長門が、
『高くて危険な方が望ましい……』と言った辺りで俺は我に帰っ...
#br
「いや、そうじゃなくt……」
#br
「じゃあ、早速どこにあるか探さないと!」
#br
「それなら僕の知人に丁度そういう洋館を持つ人が……」
#br
人の話を聞いてくれ……
結局俺の嘆きもむなしく、その日のうちに
『SOS団謎の洋館ツアー』は決定されてしまった。
#br
#br
#br
#br
そして、今日に至るわけだ。
それにしてもまさか県内に山中の洋館が見つかるとは……
しかもご丁寧に途中には吊り橋もあるらしい……
などと、正直に感動することが出来ない俺は、
目の前を歩くエスパーに聞いてみた。
#br
「おい。やっぱり今回も……」
#br
「奇特な富豪が建てた別荘……ではダメですか?」
#br
「そうだな。ダメに決まってるだろう」
#br
第一、この状況で『機関』の関与を否定する要素は皆無だぞ?
何たって例の執事とメイドが麓から一緒にいるんだからな。
#br
「皆様、もうしばらく歩かれますと、吊り橋がご覧になれます...
#br
あぁ、そうですか新川さん。
ところでよく執事姿で登山できますね。
#br
「この服装の方が慣れておりますので」
#br
森さん……それはありえないでしょう。
いくら笑顔でもこの山道にその格好は不気味ですよ。
というかあなたの笑顔自体が……
#br
「何か?」
#br
いえ、何もないです。
黙って歩きます。ごめんなさい。
#br
#br
#br
#br
正体不明の執事さんの言うとおり、
ほどなくして、目の前に吊り橋が現れた……
現れたが……
#br
「……」
#br
これは俺の三点リーダだ。
たまには長門から拝借したって構わないだろう。
#br
「これは……予想以上ですね」
#br
笑顔が引き攣ってるぞ古泉。
まぁ、この状況でも笑えるだけすごいとは思うが。
#br
「ふ、ふえぇ〜」
#br
朝比奈さん……まだつり橋を見ただけですよ。
たしかに長さはかなりあるようですが、
もしかしたら意外と高くなかったり……
#br
「こちらのつり橋から下を流れる川まで120m程ございます」
#br
そうですか森さん。
余計な情報をどうもありがとうございます。
おかげで渡る気がまったく起きませんよ。
#br
「120mってことは落ちたらひとたまりもないわね……
それに縄と丸太で出来てるから雷が落ちたら一発ね!」
#br
縁起でもない事を笑顔で言うな。
特にお前が言うとその通りになりかねん。
ほら、古泉なんかさらに笑顔を痙攣してるし、
朝比奈さんにいたっては完全に戦意喪失だ。
#br
「大丈夫……」
#br
ビクつく俺に、長門が優しく語り掛けてきた。
お前が『大丈夫』って言うんなら大丈夫だよな。
さすがに長門は頼りになるぜ……
そう安堵する俺に向って、目の前のスーパー文学少女はさらに...
#br
#br
「この橋が落ちる可能性は0.0000000028%……無視できる範囲」
#br
#br
長門よ……そこは嘘でも『0%』って言って欲しかったぜ……
#br
#br
#br
その場に留まっても仕方ないし、
新川さん曰く、目的の館はもうすぐらしいので、
俺たちはつり橋を渡ることにした。
#br
「では、僭越ながら私めが先に……」
#br
「ダメよ!こういうのは団長のあたしが先陣切らないと!!」
#br
お前は何様のつもりだ?
せっかく新川さんが突撃兵を申し出てくれたのに。
#br
「さようでございますか……」
#br
ほら、執事さんちょっとガッカリしてるじゃないか。
そんな俺の心の声を尻目に、
ハルヒはすたすたと渡って行ってしまった。
#br
ついでに森さんが小型マイクで何やら指示を出していたようだ...
多分下に『機関』の人がいるんだろう。
いつもお疲れ様です。
#br
#br
#br
#br
普通の道と変わらぬ勢いで渡りきったハルヒに続き、
古泉が割と平気な様子でつり橋を渡っていった。
下で『機関』の人がスタンバってるとはいえ、
普通はあんなに悠々と歩けないだろ……
ちょっとだけ見直したぞエスパー。
#br
ところで、あの爆走娘やニヤケ面はいいとして、
こちらには1名大変問題なお方がいらっしゃる。
#br
「あの……これ、渡らないといけないんですかぁ?」
#br
つり橋の姿を見て以来、
ずっと後方10mの地点にいた朝比奈さんがおずおずと言った。
つり橋の姿だけでコレじゃ、下をのぞいたら卒倒してしまうん...
#br
「不安なら私たちがついていきましょうか?」
#br
と、新川さんが申し出る。
誰がついても危険性は変わらない気がするが……
#br
「え、あ、でも……」
#br
この可愛らしい先輩もそれを分かっているのか、
真剣に困った顔をしている。
多分今すぐ帰りたい気持ちで一杯だろう。
#br
「……」
#br
「長門?」
#br
気付くと、いつの間にか長門が朝比奈さんの所に歩み寄ってい...
相変わらず足音を立てないなんて忍者かお前は。
#br
「大丈夫……」
#br
「で、でも……」
#br
そう言って恐々と長門の顔を見る朝比奈さん。
もうどっちが年上か分からなくなってきた。
#br
「大丈夫……アレを見て……」
#br
そういって朝比奈さんの後方を指差す長門。
#br
「アレ……?」
#br
長門の言うとおりに後ろを振り向く朝比奈さん。
釣られて俺もそちらを向く。
一体何があるっていうんd……
#br
#br
トン……
#br
#br
「ふにゃ……」
#br
赤子のような声を出して、
倒れこむ朝比奈さん。って、おい!?
#br
「な、長門!?」
#br
「心配ない……眠らせただけ」
#br
眠らせたって……
首に手刀かまして気絶させるところなんて始めて見たぞ。
#br
「これを……」
#br
そういって朝比奈さんを森さんに渡す長門。
その前に『これ』って何だ、『これ』って。
#br
「かしこまりました……
こちらのお嬢さんは私がおぶって連れて行きます」
#br
そう言ってSOS団専属メイドをおんぶして、
スタスタ渡り始める機関専属メイドさん。
本当にあの人は何者なんだ……
一度聞いてみたいが、『禁則事項です』とか言われそうなので...
#br
#br
#br
#br
「じゃあ、俺も渡るか……」
#br
残るは俺と長門と新川さんだけだしな。
ちなみにこの穏やかな執事さんが殿軍を務めてくれるらしい。
一体何が後方から襲ってくるのかは知らないが。
#br
「待って……」
#br
どうしたんだ長門?
なるべく挫けない内に早く渡りたいんだが……
こういうのは一気に渡ってしまうに限るからな。
そんなことを考えていると、目の前の宇宙人製アンドロイドが...
#br
#br
「私も一緒に行く」
#br
#br
え〜と、それはありがたい申し出なんだが……
まさかとは思うが、もしかして……
#br
「吊り橋が怖い、とか?」
#br
「違う。あなたの身の安全を考えての提案」
#br
そりゃ、お前が一緒にいてくれるなら、
これほど安全なことはない……が、
やっぱりお前こわ……
#br
「違う」
#br
頑なに否定する長門。
やれやれ強情な……
とはいえ、本当に俺の身の安全を考えているのかもしれないか...
この提案はありがたく受諾すべきだろう。
長門の機嫌を損ねたっていいことはないからな。
#br
#br
「わかった……一緒に行くか」
#br
#br
そう言う俺に、長門は俺に分かる程度に小さく頷いた。
#br
#br
#br
事前の情報どおり、
つり橋はかなりの高さだった。
どうやって作ったのか気になるほどであったが、
今の俺はそこまで恐怖心を抱いていない。
なぜなら側に頼れる奴がいるからだ。
#br
つり橋ももうすぐ真ん中だな……って時に、
側にいたスーパーガールが唐突に口を開いた。
#br
#br
「昨日読んだ本に『吊り橋理論』というものがあった」
#br
#br
「つりばしりろん?」
#br
どっかで聞いたような聞いてないような。
あぁ、吊り橋の上で異性と話したら、
不安定な足場へのドキドキを恋と勘違いしちまうって言う……
#br
「そう」
#br
なるほど……そんな本を読んでたから、
昨日急に『吊り橋』なんて言い出したんだな。
やっぱり読書中はその内容で頭が一杯なのか。
そんな風に一人合点をする俺に向って、
目の前の文学少女はさらに話を続ける。
#br
#br
「あなたは今緊張している?」
#br
#br
緊張か……
いや、自分でも意外なほど落ち着いてるな。
#br
「そんなことはないな……
側に頼れる奴がいるからドキドキすることなんかないな」
#br
俺は笑ってそう応えた。
長門がいれば爆発1秒前の時限爆弾の目の前にいても平気だ。
だが、そんな俺の気持ちとは裏腹に、
長門の顔は何か浮かないものだった。
そしてその口から予想外の言葉が発せられた。
#br
#br
「それは……困る」
#br
#br
そう言って長門は下を向いてしまった。
何だ?俺なんか長門が困るようなことを言ったか?
下を向いたまま目の前の小柄な少女は小声で早口に何事かを言...
俺には聞き取ることが出来なかった。
#br
「どうしたんだながt……」
#br
#br
その時俺の耳に嫌な音が聞こえてきた……
#br
#br
ブチッ……ブチブチッ……
#br
#br
驚いて音のする方を向く俺。
何やら俺たちが入ってきたほうの吊り橋のロープが、
じわじわと千切れている。
縄を構成する糸がほつれている様だが、
このままでは非常に危険だ。
#br
「おいっ、長門!ヤバイ!」
#br
俺は長門に緊急事態だということを伝えようとした。
しかし、当の本人からまったく見当違いな返事が返ってきた。
#br
#br
「ドキドキする?」
#br
#br
いや、これはドキドキとか言うレベルじゃないだろう。
というかむしろ完全に違うベクトルの感情だ。
#br
「そう……じゃあ……」
#br
長門はまたも下を向くと、
早口で小さく何事かを呟いた。
#br
「おい、長門!はやk……」
#br
#br
ビシィ!!
#br
#br
何だ?
真下から何か嫌な音が……
#br
「おいおい……」
#br
あまりの出来事に俺は呆然とするしかなかった。
なんてったって足元の丸太にひびが入ってるんだからな……
#br
呆気にとられる俺に、
長門がさらに問いかけてくる。
#br
「ドキドキする?」
#br
あぁ、もうドキドキを通り越して冷静になれたよ。
とりあえず長門は俺を落ち着かせたかったんだろうな。
大丈夫だ。もうドキドキなんてしていない。
とりあえず冷静に状況を判断してみよう……
#br
#br
#br
うん、それ無理。
#br
#br
#br
「長門!ちょっと手荒になるが我慢してくれ!」
#br
そう叫んだ俺は、
長門を抱きかかえた。
#br
「!?」
#br
何やら珍しくこの無口少女は驚いているようだが、
今はそんなことに構ってられない。
俺はそう思い、長門を抱っこしたまま向こう岸に走り出した……
#br
#br
#br
#br
向こう岸に着いたとたん、
ハルヒが駆け寄ってきた。
#br
「有希に何やってんのよ!このバカキョン!!」
#br
痛ぇ!
いきなり殴るな!!
こっちは全力疾走やった後だぞ!!!
そんな俺の様子を見て、古泉がハルヒに話しかける。
#br
「どうやら橋が老朽化していたようですね……」
#br
それを先に言っておいてくれれば、
俺は殴られなかった気がするぞ?
#br
「ふーん……まぁ、有希を守ろうとしたんだから許してあげるわ」
#br
既に刑罰執行した後で許されても……
まぁ、結局橋は概ね無事だったし、
長門も怪我がないようだからよしとするか。
吊り橋の壊れた部分は後で長門の作り直してもらおう。
#br
「ところで長門よ……」
#br
「……なに?」
#br
俺の言葉にいつもより遅めに反応する長門。
何やらぼんやりしているが……
#br
「あの『ドキドキ』がどうのってのは……何だったんだ?」
#br
やたらとこだわっていたようだが……
そんな俺の質問に長門はいつものように小さくこう応えた。
#br
#br
「あれは……なんでもない」
#br
#br
なんでもないことはないと思うが……
大事なことじゃないのか?
#br
「じゃない……それに……」
#br
そう言うと長門は少し嬉しそうにこう付け加えた。
#br
#br
「もう満足した……」
#br
#br
#br
#br
P.S.
#br
ロープがほつれ、丸太にもひびが入っていたはずだが、
新川さんは普通に歩いてきたそうな……
#br
ほんとに何者なんですか?あなたたち……
//////////
#setlinebreak(default)
#br
----
#br
-[[長門さんと洋館と朝倉さん(SS集/405)>SS集/405]] に続く
#br
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終了行:
#navi(SS集)
#br
* 作品 [#f9715ba9]
** 概要 [#p2c0712d]
|~作者 |書き込めない人 |
|~作品名 |長門さんと吊り橋 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日 |2006-11-19 (日) 14:38:56 |
** 登場キャラ [#qb5fffaa]
//////////
|~キョン |登場 |
|~キョンの妹|不登場 |
|~ハルヒ |登場 |
|~みくる |登場 |
|~古泉一樹 |登場 |
|~鶴屋さん |不登場 |
|~朝倉涼子 |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜 |不登場 |
|~思念体 |不登場 |
|~天蓋領域 |不登場 |
|~阪中 |不登場|
|~谷口 |不登場|
|~ミヨキチ |不登場 |
|~佐々木 |不登場 |
|~橘京子 |不登場 |
** SS [#bf440930]
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#setlinebreak(on)
晴れやかな空の下、
おなじみ我らがSOS団の面々は登山をしていた。
もちろんSOS団が突然ワンダーフォーゲル部になったという事実...
ではなぜこんな修験道じみたことをしているかというと……
#br
多分言わなくてもわかると思うが……そう、ハルヒのせいだ。
#br
既に2時間近く歩き続けているというのに、
ただ一人元気100%のこの団長様のおかげで、
俺たちは折角の連休を潰される羽目になったのだ。
#br
俺はこの辛さを少しでも紛らわせよう思い、
昨日の出来事を振り返ることにした……
#br
#br
#br
#br
「今度は山の上の洋館に行きたいわね……」
#br
古泉の駒を一つ残らず略奪することに夢中だった俺の耳に、
また訳のわからぬ文字列が飛び込んできた。
#br
「……何だって?」
#br
「洋館よ、洋館」
#br
あぁ、羊羹ね。
ちょうど朝比奈さんが煎れてくれた緑茶もあるし、
食べればいいんじゃないか?
#br
「その『ようかん』じゃないわよ!建物の方!!」
#br
そんな怒鳴らずともちゃんと分かる。
ただ、ちょっとボケただけだ。
#br
「あんたはいつもボケてるでしょ!」
#br
余計なお世話だ。
むしろ俺はツッコミ役だぞ。
そう言おうとすると、
横から朝比奈さんが口を挟んできた。
#br
「山の上……ですか?」
#br
「そうよ!山の上の洋館よ!」
#br
何でそんな自信満々なんだ。
第一、山の上の洋館なんぞに行ってどうするつもりだ?
隣町に行けば洋館くらいいっぱいあるだろうよ。
#br
「わかってないわね〜山の上にあってこその洋館なのよ」
#br
いつから洋館の定義に場所の指定が組み込まれたのだろうか。
いくらこの国が山林地帯の多い地形をしているからといって、
そんな所にわざわざ住もうなんていう奇特な人がそういるだろ...
いや、ハルヒが望めば出てくるんだろうけど……
#br
「そもそも、そんな所に行ってどうするんだ?
舞踏会でもやろうってのか?」
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「違うわよ!不思議探しに決まってるでしょ!!」
#br
あぁ、いつもの探索じゃ見つからないから、
探索範囲を広げたいのか……って、無茶を言うな。
俺の反抗を無視して、ハルヒはどんどん演説を続ける。
#br
「きっとどこかに怪しい建築家が建てた怪しげな館があるはず...
中が迷路になってたり、人形や時計だらけの部屋があったり、
怪しげな不死の一族が住んでいたり……」
#br
「人狼がいたり、人魚がいたりするんですね」
#br
おい、何を賛同してんだこのニヤケ面。
ここはなるべく変な刺激をせずにやり過ごすべきだろ。
#br
「そっち路線でもいいわね……さすが古泉君だわ!」
#br
何が『さすが』なのか分からないが、
このまま放置していくと、せっかくの明日からの連休を、
その『洋館探索』とやらに潰されそうだ。
休日くらいは休ませてくれ。
#br
そう思った俺は、本日まだ声を聞いていない、
我らが万能宇宙人に助けを求めた。
#br
「なぁ、長門……」
#br
「なに?」
#br
「このままだと訳のわからん洋館とやらに行かされそうだ……
何とか二人の目を覚ましてやってくれないか?」
#br
もちろん精神的な意味で。
俺の依頼に、長門は力強く頷いた。
おぉ、何と頼もしいことか……
#br
長門はすくっと立ち上がると、
盛り上がる二人の方を向き、
そよ風のような声で話し出した。
#br
「山の上にある洋館ではダメ……」
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珍しい無口少女の否定に少々驚いた様子の二人。
さすが長門だ。このまま行けば計画を頓挫させれそうだ……
だが、その次の言葉で、今度は俺が少々……いや、かなり驚くこ...
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「山の上の吊り橋の先にある洋館の方がいい……」
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……へ?
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その後、この摩訶不思議な発言を受けたハルヒが、
『そうよ!そうだわ!吊り橋って大事よね!!』と叫び、
さらにその叫びに同調した古泉が、
『もちろん燃えやすい丸太などの木材で出来た物ですね?』と...
そのセリフを受けて小さく頷いた長門が、
『高くて危険な方が望ましい……』と言った辺りで俺は我に帰っ...
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「いや、そうじゃなくt……」
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「じゃあ、早速どこにあるか探さないと!」
#br
「それなら僕の知人に丁度そういう洋館を持つ人が……」
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人の話を聞いてくれ……
結局俺の嘆きもむなしく、その日のうちに
『SOS団謎の洋館ツアー』は決定されてしまった。
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そして、今日に至るわけだ。
それにしてもまさか県内に山中の洋館が見つかるとは……
しかもご丁寧に途中には吊り橋もあるらしい……
などと、正直に感動することが出来ない俺は、
目の前を歩くエスパーに聞いてみた。
#br
「おい。やっぱり今回も……」
#br
「奇特な富豪が建てた別荘……ではダメですか?」
#br
「そうだな。ダメに決まってるだろう」
#br
第一、この状況で『機関』の関与を否定する要素は皆無だぞ?
何たって例の執事とメイドが麓から一緒にいるんだからな。
#br
「皆様、もうしばらく歩かれますと、吊り橋がご覧になれます...
#br
あぁ、そうですか新川さん。
ところでよく執事姿で登山できますね。
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「この服装の方が慣れておりますので」
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森さん……それはありえないでしょう。
いくら笑顔でもこの山道にその格好は不気味ですよ。
というかあなたの笑顔自体が……
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「何か?」
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いえ、何もないです。
黙って歩きます。ごめんなさい。
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正体不明の執事さんの言うとおり、
ほどなくして、目の前に吊り橋が現れた……
現れたが……
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「……」
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これは俺の三点リーダだ。
たまには長門から拝借したって構わないだろう。
#br
「これは……予想以上ですね」
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笑顔が引き攣ってるぞ古泉。
まぁ、この状況でも笑えるだけすごいとは思うが。
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「ふ、ふえぇ〜」
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朝比奈さん……まだつり橋を見ただけですよ。
たしかに長さはかなりあるようですが、
もしかしたら意外と高くなかったり……
#br
「こちらのつり橋から下を流れる川まで120m程ございます」
#br
そうですか森さん。
余計な情報をどうもありがとうございます。
おかげで渡る気がまったく起きませんよ。
#br
「120mってことは落ちたらひとたまりもないわね……
それに縄と丸太で出来てるから雷が落ちたら一発ね!」
#br
縁起でもない事を笑顔で言うな。
特にお前が言うとその通りになりかねん。
ほら、古泉なんかさらに笑顔を痙攣してるし、
朝比奈さんにいたっては完全に戦意喪失だ。
#br
「大丈夫……」
#br
ビクつく俺に、長門が優しく語り掛けてきた。
お前が『大丈夫』って言うんなら大丈夫だよな。
さすがに長門は頼りになるぜ……
そう安堵する俺に向って、目の前のスーパー文学少女はさらに...
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「この橋が落ちる可能性は0.0000000028%……無視できる範囲」
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長門よ……そこは嘘でも『0%』って言って欲しかったぜ……
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その場に留まっても仕方ないし、
新川さん曰く、目的の館はもうすぐらしいので、
俺たちはつり橋を渡ることにした。
#br
「では、僭越ながら私めが先に……」
#br
「ダメよ!こういうのは団長のあたしが先陣切らないと!!」
#br
お前は何様のつもりだ?
せっかく新川さんが突撃兵を申し出てくれたのに。
#br
「さようでございますか……」
#br
ほら、執事さんちょっとガッカリしてるじゃないか。
そんな俺の心の声を尻目に、
ハルヒはすたすたと渡って行ってしまった。
#br
ついでに森さんが小型マイクで何やら指示を出していたようだ...
多分下に『機関』の人がいるんだろう。
いつもお疲れ様です。
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普通の道と変わらぬ勢いで渡りきったハルヒに続き、
古泉が割と平気な様子でつり橋を渡っていった。
下で『機関』の人がスタンバってるとはいえ、
普通はあんなに悠々と歩けないだろ……
ちょっとだけ見直したぞエスパー。
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ところで、あの爆走娘やニヤケ面はいいとして、
こちらには1名大変問題なお方がいらっしゃる。
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「あの……これ、渡らないといけないんですかぁ?」
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つり橋の姿を見て以来、
ずっと後方10mの地点にいた朝比奈さんがおずおずと言った。
つり橋の姿だけでコレじゃ、下をのぞいたら卒倒してしまうん...
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「不安なら私たちがついていきましょうか?」
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と、新川さんが申し出る。
誰がついても危険性は変わらない気がするが……
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「え、あ、でも……」
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この可愛らしい先輩もそれを分かっているのか、
真剣に困った顔をしている。
多分今すぐ帰りたい気持ちで一杯だろう。
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「……」
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「長門?」
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気付くと、いつの間にか長門が朝比奈さんの所に歩み寄ってい...
相変わらず足音を立てないなんて忍者かお前は。
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「大丈夫……」
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「で、でも……」
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そう言って恐々と長門の顔を見る朝比奈さん。
もうどっちが年上か分からなくなってきた。
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「大丈夫……アレを見て……」
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そういって朝比奈さんの後方を指差す長門。
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「アレ……?」
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長門の言うとおりに後ろを振り向く朝比奈さん。
釣られて俺もそちらを向く。
一体何があるっていうんd……
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トン……
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「ふにゃ……」
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赤子のような声を出して、
倒れこむ朝比奈さん。って、おい!?
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「な、長門!?」
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「心配ない……眠らせただけ」
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眠らせたって……
首に手刀かまして気絶させるところなんて始めて見たぞ。
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「これを……」
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そういって朝比奈さんを森さんに渡す長門。
その前に『これ』って何だ、『これ』って。
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「かしこまりました……
こちらのお嬢さんは私がおぶって連れて行きます」
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そう言ってSOS団専属メイドをおんぶして、
スタスタ渡り始める機関専属メイドさん。
本当にあの人は何者なんだ……
一度聞いてみたいが、『禁則事項です』とか言われそうなので...
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「じゃあ、俺も渡るか……」
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残るは俺と長門と新川さんだけだしな。
ちなみにこの穏やかな執事さんが殿軍を務めてくれるらしい。
一体何が後方から襲ってくるのかは知らないが。
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「待って……」
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どうしたんだ長門?
なるべく挫けない内に早く渡りたいんだが……
こういうのは一気に渡ってしまうに限るからな。
そんなことを考えていると、目の前の宇宙人製アンドロイドが...
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「私も一緒に行く」
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え〜と、それはありがたい申し出なんだが……
まさかとは思うが、もしかして……
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「吊り橋が怖い、とか?」
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「違う。あなたの身の安全を考えての提案」
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そりゃ、お前が一緒にいてくれるなら、
これほど安全なことはない……が、
やっぱりお前こわ……
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「違う」
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頑なに否定する長門。
やれやれ強情な……
とはいえ、本当に俺の身の安全を考えているのかもしれないか...
この提案はありがたく受諾すべきだろう。
長門の機嫌を損ねたっていいことはないからな。
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「わかった……一緒に行くか」
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そう言う俺に、長門は俺に分かる程度に小さく頷いた。
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事前の情報どおり、
つり橋はかなりの高さだった。
どうやって作ったのか気になるほどであったが、
今の俺はそこまで恐怖心を抱いていない。
なぜなら側に頼れる奴がいるからだ。
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つり橋ももうすぐ真ん中だな……って時に、
側にいたスーパーガールが唐突に口を開いた。
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「昨日読んだ本に『吊り橋理論』というものがあった」
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「つりばしりろん?」
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どっかで聞いたような聞いてないような。
あぁ、吊り橋の上で異性と話したら、
不安定な足場へのドキドキを恋と勘違いしちまうって言う……
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「そう」
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なるほど……そんな本を読んでたから、
昨日急に『吊り橋』なんて言い出したんだな。
やっぱり読書中はその内容で頭が一杯なのか。
そんな風に一人合点をする俺に向って、
目の前の文学少女はさらに話を続ける。
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「あなたは今緊張している?」
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緊張か……
いや、自分でも意外なほど落ち着いてるな。
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「そんなことはないな……
側に頼れる奴がいるからドキドキすることなんかないな」
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俺は笑ってそう応えた。
長門がいれば爆発1秒前の時限爆弾の目の前にいても平気だ。
だが、そんな俺の気持ちとは裏腹に、
長門の顔は何か浮かないものだった。
そしてその口から予想外の言葉が発せられた。
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「それは……困る」
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そう言って長門は下を向いてしまった。
何だ?俺なんか長門が困るようなことを言ったか?
下を向いたまま目の前の小柄な少女は小声で早口に何事かを言...
俺には聞き取ることが出来なかった。
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「どうしたんだながt……」
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その時俺の耳に嫌な音が聞こえてきた……
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ブチッ……ブチブチッ……
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驚いて音のする方を向く俺。
何やら俺たちが入ってきたほうの吊り橋のロープが、
じわじわと千切れている。
縄を構成する糸がほつれている様だが、
このままでは非常に危険だ。
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「おいっ、長門!ヤバイ!」
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俺は長門に緊急事態だということを伝えようとした。
しかし、当の本人からまったく見当違いな返事が返ってきた。
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「ドキドキする?」
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いや、これはドキドキとか言うレベルじゃないだろう。
というかむしろ完全に違うベクトルの感情だ。
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「そう……じゃあ……」
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長門はまたも下を向くと、
早口で小さく何事かを呟いた。
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「おい、長門!はやk……」
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ビシィ!!
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何だ?
真下から何か嫌な音が……
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「おいおい……」
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あまりの出来事に俺は呆然とするしかなかった。
なんてったって足元の丸太にひびが入ってるんだからな……
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呆気にとられる俺に、
長門がさらに問いかけてくる。
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「ドキドキする?」
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あぁ、もうドキドキを通り越して冷静になれたよ。
とりあえず長門は俺を落ち着かせたかったんだろうな。
大丈夫だ。もうドキドキなんてしていない。
とりあえず冷静に状況を判断してみよう……
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うん、それ無理。
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「長門!ちょっと手荒になるが我慢してくれ!」
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そう叫んだ俺は、
長門を抱きかかえた。
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「!?」
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何やら珍しくこの無口少女は驚いているようだが、
今はそんなことに構ってられない。
俺はそう思い、長門を抱っこしたまま向こう岸に走り出した……
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向こう岸に着いたとたん、
ハルヒが駆け寄ってきた。
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「有希に何やってんのよ!このバカキョン!!」
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痛ぇ!
いきなり殴るな!!
こっちは全力疾走やった後だぞ!!!
そんな俺の様子を見て、古泉がハルヒに話しかける。
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「どうやら橋が老朽化していたようですね……」
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それを先に言っておいてくれれば、
俺は殴られなかった気がするぞ?
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「ふーん……まぁ、有希を守ろうとしたんだから許してあげるわ」
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既に刑罰執行した後で許されても……
まぁ、結局橋は概ね無事だったし、
長門も怪我がないようだからよしとするか。
吊り橋の壊れた部分は後で長門の作り直してもらおう。
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「ところで長門よ……」
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「……なに?」
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俺の言葉にいつもより遅めに反応する長門。
何やらぼんやりしているが……
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「あの『ドキドキ』がどうのってのは……何だったんだ?」
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やたらとこだわっていたようだが……
そんな俺の質問に長門はいつものように小さくこう応えた。
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「あれは……なんでもない」
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なんでもないことはないと思うが……
大事なことじゃないのか?
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「じゃない……それに……」
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そう言うと長門は少し嬉しそうにこう付け加えた。
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「もう満足した……」
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P.S.
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ロープがほつれ、丸太にもひびが入っていたはずだが、
新川さんは普通に歩いてきたそうな……
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ほんとに何者なんですか?あなたたち……
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-[[長門さんと洋館と朝倉さん(SS集/405)>SS集/405]] に続く
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