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#navi(SS集)
#br
* 作品 [#x0aa4243]
** 概要 [#rb4a3e7f]
|~作者 |十六夜 |
|~作品名 |長門有希の… 閑話2 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日 |2006-10-11 (水) 22:19:01 |
** 登場キャラ [#e85a532a]
//////////
|~キョン |不登場 |
|~キョンの妹|不登場 |
|~ハルヒ |不登場 |
|~みくる |不登場 |
|~古泉一樹 |不登場 |
|~鶴屋さん |不登場 |
|~朝倉涼子 |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜 |不登場 |
|~思念体 |不登場 |
|~天蓋領域 |不登場 |
|~阪中 |不登場|
|~谷口 |不登場|
|~ミヨキチ |不登場 |
|~佐々木 |不登場 |
|~橘京子 |不登場 |
#br
-関連作品:[[長門有希の… 閑話1(SS集/311)>SS集/311]]
** SS [#ke63dc9f]
//////////
#br
#setlinebreak(on)
あの文芸部室で一騒動あった日から一週間。
#br
俺は今、あの長い坂をノタノタ歩いている。梅雨もすっかり明...
さらに一週間前を思い出すと、ハルヒによって二度と部室に行...
あの二人がいるのだ。
この身が朽ちようとも学校・部室には行かなくてはならない、...
#br
ちなみに、
「長門と二人で出かけただけなのに、なぜそんなに怒る」
と悲惨な目に遭いながらハルヒに口出ししたところ、
「うるさい!! だまりなさい!!」
このように逆ギレされ、すでにキレているのにポパイがほうれ...
#br
しかし、男性の俺が女性の考えを分かるワケもなく今に至ると...
#br
そしてようやく、暑く長い坂を上り終えた俺は下駄箱で上靴に...
教室の扉を開けると…俺の席に長門がチョコンと座っていた。長...
教室の表札を見直し…って合ってるじゃないか。ここは俺のクラ...
再度、扉を開ける。
やはり長門が俺の席に座っていた。俺の目がおかしいのではな...
めずらしくハルヒはまだ来ていないようで、長門の席(つまり...
そんなコトより、
「長門よ、なぜ俺の席に座っている」
長門の首が横に向けられ、俺の顔を見る。…朝から長門の顔とい...
「…おはよう」
「あ、あぁ、おはよう。…それでどうしたんだ、まさか用件はこ...
別に長門とアイサツするだけでも俺は十分なんだがな。
「違う。他にも用件がある」
「用件? それならいつもみたいに携帯に電話でも入れてくれた...
ハッと俺は口を自分の手で押さえ言葉を遮る。
さてここで、皆に質問だ。
男子が女子に「いつもみたいに携帯に電話」という会話を聞い...
周りのいくつかの女子グループからはキャイキャイとヒソヒソ...
「あ〜長門、ひとまず教室から出よう」
「私はここでかまわない」
俺がかまうから。長門はこの居心地の悪い空間がどうとも感じ...
#br
ともかくここにいてはハルヒが来るかもしれん、またあのよう...
ハルヒがいつ来るかもわからないので、俺の席からすぐ長門を...
「ほら長門、とりあえず…階段の踊り場にでも行こう」
ハルヒの目もあるが、廊下ではクラスメイトの視線も気になる。
俺が長門の手を引っ張り教室から脱出する。
…俺もバカだな、手なんか握ったら騒ぎがでかくなることぐらい...
「だぁぁぁぁぁぁーーー!!」
とか奇声を上げている。…友達やめようかな。
#br
廊下ですれ違う人からも多くの視線を集めていたが、ようやく...
「いい?」
あぁ、ここならいいとも。それで何だ?
「あなたを夕食に招待したい」
夕食? ついこの間のコトを思い出す。
「また長門の家で何かのパーティでもするのか?」
それなら別にハルヒに聞かれてもよかったな。
「違う。…あなただけ」
……イヤそれはいいのだが、どうしたんだ?
「前にあなたが、わたしがどのような料理をするか興味を持っ...
あー、前にそんなコトを言ったような気がする。確かに、たま...
あの長門が料理をするのだ、興味の無いヤツなんていないだろ...
「そういうことなら喜んでお呼ばれするよ。それでいつだ?」
「今日の学校が終わってから」
またえらく急だな。別に俺はかまわないが、
「しかし、部活はどうするんだ。終わってからだと、遅くなる...
「遅くなってもいい。問題はあなたが了承を得るかどうか」
…そりゃあ、いいに決まっているじゃないか。
#br
長門の招待を快く承り、HRのチャイムが鳴った。
「じゃあ、楽しみにしているよ。また放課後な」
前髪がわずかに揺れる頷きを長門は返す。
こうして俺は教室に戻ると、クラスメイトの女子によるヒソヒ...
ちなみに、谷口だがねたみと憎しみさらに怒りが混じったよう...
「ジャマだ」
の一言で軽くあしらうコトであっけなく勝負がついた。そして...
しかし、この世にはいつまでたっても慣れないものが存在する。
「あんた、カバンだけ置いてどこ行ってたの? なんかクラスも...
どうやらクラスの連中は長門が来ていたコトをハルヒに話して...
「さぁな。俺はトイレに行っていただけだ。抜き打ちテストの...
「…なんか怪しいわね」
なんでこんなにも勘がいいんだ、コイツは。
#br
ハルヒに対してとぼけておいたが、その俺の対応が気に食わな...
こうして、また一歩成績の順位争いから俺は後退するのである。
それにしても、長門の手料理が食べれるとは…、これは放課後が...
しかし、一体長門がどんな料理を作るのかが、楽しみであり不...
#br
#br
そして、授業は早くも終わり放課後。
ハルヒが今日も何かしら起こすだろう部活をするため、部室へ...
…あれ、返事がない。今日はまだ来ていないのか…。
気を落としつつ扉が開けると、もちろん朝比奈さんがいるわけ...
その長門が本から目を離し、俺の方へと向き、
「……」
無言で頭をミリ単位下げる、いわゆる長門流のアイサツだ。
「よう、長門。いつも早いな」
「……」
もう一つ長門が無言で頷く。では、失礼して俺も指定席に座ら...
…ところで長門、お前の座る位置が俺に近づいているのは気のせ...
「気のせい」
ん、…そうか。なんだが毎日、少しずつ決まった間隔で距離が短...
#br
五分ほど経過したが、まだ誰も来ない。
この長門と二人でいる時間は静かでとても心地よいのだが、場...
「なぁ、長門。夕飯なんだが、何の料理を作るんだ?」
このコトを尋ねて見ると、長門は本を読むコトをやめ、コチラ...
「…いろいろ」
「いろいろって…具体的には?」
「来ればわかる」
「…そうか。それなら長門の家に着いてからのお楽しみにするよ」
「そう」
料理するのがハルヒでこんな回答なら俺は、一体何が出てくる...
#br
十分もすると朝比奈さんや古泉も来て、遂にはハルヒもやって...
お決まりのハルヒの、ハルヒによる、ハルヒのための会議は、...
しかし、今日はまだまともなものである。
「あとちょっとで夏休みよ! そろそろ予定も立てなくちゃね!」
…そういやもうそんな時期だな。あの去年の終わらない夏休みを...
そのことを知らないハルヒがホワイトボートに次々と夏休みの...
「う〜ん、こんなものかしらね。あっ、後、一学期の疲れを癒...
お前の辞書に「疲れ」なんて文字はないだろう。きっと塗りつ...
しかし、温泉か…。行くなら冬がベストだが、夏に行くのもまた...
#br
今日はこんな感じで時間が過ぎていき、長門の本を閉じる音が...
しかし、いつもより早いような気がする。長門が早く料理を俺...
そして団員五人で坂道下る。近頃は夕方になっても昼間の暑さ...
しかし近頃はハルヒたちと一緒に何かしらするコトも「慣れる...
#br
#br
ちなみに長門とは一度別れ、近くのスーパーで待ち合わせの約...
俺はこのような若干の不安を覚えながら、長門が待つ目的地へ...
俺の目にスーパーを捉えたその先には、ちょうど長門が反対側...
「おーい、長門ー!」
俺が自転車から降り手を振ると長門もそれに反応したのか、顔...
「待った?」
「イヤ、今さっき着いたばかりで、三十秒も経ってないぞ。ま...
「わかった」
#br
…またこうして長門と二人きりで買い物をする日がこうもすぐ来...
しかし、俺がいくら気にしても長門はいつもの長門であり別に...
俺がカゴを持ち、長門の後ろへとついていく。
長門が向かったまず先は、
「ここ」
野菜コーナーである。まさかまたカレーを作るのにいるジャガ...
…と思ったのだが違ったようだ。長門が手に取ったのはダイコン...
つまり、今晩は和食か。
次に肉コーナーに向かった長門がカゴに入れたのは豚肉である...
#br
レジで精算が終わった今、スーパーの袋に入っているのは上記...
しかしここで不安要素が一つ。…量が多い。
ダイコンは半分のものではなく、丸々一本だし、ほうれん草は...
買い置きするため多めに買ったのか、それとも一日で消費する...
#br
そして今、俺は幸せ・至福・恥ずかしさの山頂にいる。
たとえると、幸せという名のスパイスをこれでもかというぐら...
分かりにくいたとえを使ってしまったな。つまり現状をたとえ...
そして今は下校時間である。前は休日だったのでそれほどいな...
俺は自転車であり、長門は徒歩だ。
「また自転車の後ろに乗るか?」
買い物が終わり、淡い期待を抱き長門に聞くと、
「そうする」
その瞬間、俺は心の中でガッツポーズを取った。…今は少し後悔...
#br
「なぁ、長門」
「何?」
あいかわらず俺の体に腕を回す長門であるが、
「せめて腕を回すのだけは止めてくれないか?」
「なぜ?」
またこのパターンか…、
「ほら、帰宅途中の学生が多くいるし…」
「わたしはかまわない」
だろうと思ったよ。俺も腹をくくらなきゃいけないな、
「わかった、長門の好きなようにしてくれ。落ちたりするなよ」
まぁ、長門が落ちるなんてコトはまずないだろうがな。
「そう」
こう言うと長門はさらに手を深く俺の腰に回してきた。
「これなら心配ない」
長門から俺に伝わる感触、腕の力がさらに増す、もちろん下校...
こうなると俺の理性がとても心配なんだがな。はたして長門の...
#br
#br
正直危なかった、もう三分、もしくは長門から伝わる感触がも...
玄関口のロックをはずし、エレベーターへと歩く。そして七階...
「入って」
「では、おじゃまするとしよう」
玄関でクツを脱ぎ長門の後ろへとついていく。…歩く長門の後ろ...
「座ってて」
長門の一言に我に戻る、またもや危なかった。本能にまかせて...
「じゃあ、ここでできるのを待ってるとするよ。どんな料理が...
「まかせて」
そう言うと長門はキッチンへと入っていき、俺はコタツで待つ...
#br
三十分ほど経過。
俺は待っている時間を無駄にしないために、今日まったく集中...
#br
課題を止めしばらくすると、音だけではなく匂いもこちらに届...
う〜ん、イイ香りだ。…これはみそ汁の匂いだな。
ところが、この届いてきた匂いにひとつ気になる香りがある。...
説明すると、独特な香辛料でブレンドされたスパイシーな香り...
ここまで説明しなくても分かると思うが…カレーの匂いである。
確か、スーパーで買った食材からはカレーはできないはずだ、...
さすがに心配になった俺は、
「なぁ、長門。俺も手伝おうか?」
と匂いの正体を探ろうとしたが、
「大丈夫。座ってて」
あっさり断られた。
仕方ない、前向きに考えるとするか。…きっと料理の味付けにカ...
#br
俺の腹がグーグーと鳴り始めた頃、
「おまたせ」
長門がキッチンから出てきた。まず、コップと飲み物。そして...
おぉ、これはしょうが焼き、スーパーで買った豚肉はこれか。...
長門がもう一度キッチンへと入っていった。そう、和食に絶対...
……俺の推理は半分間違っていた。
イヤ、間違ってはいないな、白米は確かにある。その上にカレ...
「…なぁ、長門」
「なに」
長門はコタツの上にカレーを音も立てずに置く。
「これはなんだ?」
「……?」
長門は頭を右に傾けている。…何を聞かれているかわからないよ...
「なんでカレーなんだ?」
「……?」
今度は頭を左に傾けた。…またもや、何が問題なのかわからない...
「…嫌い?」
いや、嫌いではない。さっきも言ったように、俺の中では好き...
「ちょっとこのメニューには合わないような気がするんだが」
「…そう」
俺だけに感じ取れる長門の残念そうな表情。その顔はレッドカ...
「…たまにはこんな組み合わせもいいな。うん、実に美味そうだ...
俺がスプーンを手に取り、カレーへと突き刺す。すくって、多...
「おいしい?」
…美味いさ、これでもかっていうぐらいカレーであり美味い。
「こっちも」
俺の目の前に出されたのは、山を形成しているしょうが焼きで...
「…いただくとするよ」
水で、口の中のカレーを消す。スプーンからお箸に持ち替え、...
…美味い。肉を歯で噛み締めるたびに、しみこんだタレが口内に...
「驚いたな、そこらの店よりよっぽどうまい。ここまで長門の...
「そうでもない」
もう一枚、肉をつまみ口に放り込む。
「謙遜するコトないぞ、これは俺の正直な気持ちだ。うん、う...
「そうする」
長門流の肯定をして、箸をその手でつかむ。しょうが焼きに箸...
#br
こうして俺と長門は二人向かい合って食べている。
話しのネタも尽きたのでスーパーで材料を買っていなかったの...
「なぁ、長門。今日買った材料にはカレーを匂わせるものはな...
「この前に涼宮ハルヒ・朝比奈みくると三人とでカレーを作っ...
スプーンに持ち替え、カレーへと突き刺す。
「一晩置いたほうがおいしくなると」
なるほどな。それはこの料理知識のない俺でも聞いたコトがあ...
「そう」
こんなに山盛りをか。…言うまでもないと思うがカレーも山盛り...
「…おいしくない?」
何度もそんな目で見ないでくれ、長門。誰もおいしくないなん...
「いやいやそんなわけないじゃないか。長門が作ってくれてし...
長門は持っていたスプーンを置き、俺のほうをその目でじっと...
「…また来る?」
またって…夕飯をこれからもご馳走してくれるのか?
「そう」
「そりゃあ俺は全然かまわないが…長門はいいのか? ハルヒの...
「いい。
…あなたと一緒に食事する事、それであなたの食べる姿を見る、...
それで十分」
長門にここまで言われてしまっては断るにも断れん。そもそも...
「ならお言葉に甘えてたまにご馳走になろうかな」
「…本当?」
「本当だ。さぁ、まだ長門が作ってくれた料理は残っているし...
「……」
数センチの無言の頷き。そして俺も長門も箸とスプーンを動か...
…しかし、なんでここまで俺に長門はしてくれるのかな。
まぁ、今日のところはいいか、長門も自分の作った料理を満足...
#br
#br
後日談。
…こんな理由で長門家にたびたび夕飯のお世話になるコトになっ...
一つは、最近体重が少し増えたコト。
食べれば太る。長門のたくさん食べる姿を見ているとこっちも...
…俺は夜にランニングでも始めるとするか。
そして、もう一つ。なぜか毎回カレーが出る。
別にカレーが嫌いなわけではない、と前にも言ったな。
しかし、冷麺にもカレー、親子丼にもカレー、さらにはカレー...
#br
…今度、長門に相談してみるか。
#br
#br
というわけでさらに後日談。
「なぁ、長門。次はカレー抜きでお願いできないか?」
こう進言したところ、
「…嫌い?」
長門は至極残念そうな表情をして返答した。
俺がなんて答えたかわかるか? もちろん二つ返事で、
#br
「そんなわけないさ。次も長門の作ったカレーを楽しみにして...
#br
と言った。
#br
#br
#br
…終わり
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#setlinebreak(default)
#br
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終了行:
#navi(SS集)
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* 作品 [#x0aa4243]
** 概要 [#rb4a3e7f]
|~作者 |十六夜 |
|~作品名 |長門有希の… 閑話2 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日 |2006-10-11 (水) 22:19:01 |
** 登場キャラ [#e85a532a]
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|~キョン |不登場 |
|~キョンの妹|不登場 |
|~ハルヒ |不登場 |
|~みくる |不登場 |
|~古泉一樹 |不登場 |
|~鶴屋さん |不登場 |
|~朝倉涼子 |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜 |不登場 |
|~思念体 |不登場 |
|~天蓋領域 |不登場 |
|~阪中 |不登場|
|~谷口 |不登場|
|~ミヨキチ |不登場 |
|~佐々木 |不登場 |
|~橘京子 |不登場 |
#br
-関連作品:[[長門有希の… 閑話1(SS集/311)>SS集/311]]
** SS [#ke63dc9f]
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#br
#setlinebreak(on)
あの文芸部室で一騒動あった日から一週間。
#br
俺は今、あの長い坂をノタノタ歩いている。梅雨もすっかり明...
さらに一週間前を思い出すと、ハルヒによって二度と部室に行...
あの二人がいるのだ。
この身が朽ちようとも学校・部室には行かなくてはならない、...
#br
ちなみに、
「長門と二人で出かけただけなのに、なぜそんなに怒る」
と悲惨な目に遭いながらハルヒに口出ししたところ、
「うるさい!! だまりなさい!!」
このように逆ギレされ、すでにキレているのにポパイがほうれ...
#br
しかし、男性の俺が女性の考えを分かるワケもなく今に至ると...
#br
そしてようやく、暑く長い坂を上り終えた俺は下駄箱で上靴に...
教室の扉を開けると…俺の席に長門がチョコンと座っていた。長...
教室の表札を見直し…って合ってるじゃないか。ここは俺のクラ...
再度、扉を開ける。
やはり長門が俺の席に座っていた。俺の目がおかしいのではな...
めずらしくハルヒはまだ来ていないようで、長門の席(つまり...
そんなコトより、
「長門よ、なぜ俺の席に座っている」
長門の首が横に向けられ、俺の顔を見る。…朝から長門の顔とい...
「…おはよう」
「あ、あぁ、おはよう。…それでどうしたんだ、まさか用件はこ...
別に長門とアイサツするだけでも俺は十分なんだがな。
「違う。他にも用件がある」
「用件? それならいつもみたいに携帯に電話でも入れてくれた...
ハッと俺は口を自分の手で押さえ言葉を遮る。
さてここで、皆に質問だ。
男子が女子に「いつもみたいに携帯に電話」という会話を聞い...
周りのいくつかの女子グループからはキャイキャイとヒソヒソ...
「あ〜長門、ひとまず教室から出よう」
「私はここでかまわない」
俺がかまうから。長門はこの居心地の悪い空間がどうとも感じ...
#br
ともかくここにいてはハルヒが来るかもしれん、またあのよう...
ハルヒがいつ来るかもわからないので、俺の席からすぐ長門を...
「ほら長門、とりあえず…階段の踊り場にでも行こう」
ハルヒの目もあるが、廊下ではクラスメイトの視線も気になる。
俺が長門の手を引っ張り教室から脱出する。
…俺もバカだな、手なんか握ったら騒ぎがでかくなることぐらい...
「だぁぁぁぁぁぁーーー!!」
とか奇声を上げている。…友達やめようかな。
#br
廊下ですれ違う人からも多くの視線を集めていたが、ようやく...
「いい?」
あぁ、ここならいいとも。それで何だ?
「あなたを夕食に招待したい」
夕食? ついこの間のコトを思い出す。
「また長門の家で何かのパーティでもするのか?」
それなら別にハルヒに聞かれてもよかったな。
「違う。…あなただけ」
……イヤそれはいいのだが、どうしたんだ?
「前にあなたが、わたしがどのような料理をするか興味を持っ...
あー、前にそんなコトを言ったような気がする。確かに、たま...
あの長門が料理をするのだ、興味の無いヤツなんていないだろ...
「そういうことなら喜んでお呼ばれするよ。それでいつだ?」
「今日の学校が終わってから」
またえらく急だな。別に俺はかまわないが、
「しかし、部活はどうするんだ。終わってからだと、遅くなる...
「遅くなってもいい。問題はあなたが了承を得るかどうか」
…そりゃあ、いいに決まっているじゃないか。
#br
長門の招待を快く承り、HRのチャイムが鳴った。
「じゃあ、楽しみにしているよ。また放課後な」
前髪がわずかに揺れる頷きを長門は返す。
こうして俺は教室に戻ると、クラスメイトの女子によるヒソヒ...
ちなみに、谷口だがねたみと憎しみさらに怒りが混じったよう...
「ジャマだ」
の一言で軽くあしらうコトであっけなく勝負がついた。そして...
しかし、この世にはいつまでたっても慣れないものが存在する。
「あんた、カバンだけ置いてどこ行ってたの? なんかクラスも...
どうやらクラスの連中は長門が来ていたコトをハルヒに話して...
「さぁな。俺はトイレに行っていただけだ。抜き打ちテストの...
「…なんか怪しいわね」
なんでこんなにも勘がいいんだ、コイツは。
#br
ハルヒに対してとぼけておいたが、その俺の対応が気に食わな...
こうして、また一歩成績の順位争いから俺は後退するのである。
それにしても、長門の手料理が食べれるとは…、これは放課後が...
しかし、一体長門がどんな料理を作るのかが、楽しみであり不...
#br
#br
そして、授業は早くも終わり放課後。
ハルヒが今日も何かしら起こすだろう部活をするため、部室へ...
…あれ、返事がない。今日はまだ来ていないのか…。
気を落としつつ扉が開けると、もちろん朝比奈さんがいるわけ...
その長門が本から目を離し、俺の方へと向き、
「……」
無言で頭をミリ単位下げる、いわゆる長門流のアイサツだ。
「よう、長門。いつも早いな」
「……」
もう一つ長門が無言で頷く。では、失礼して俺も指定席に座ら...
…ところで長門、お前の座る位置が俺に近づいているのは気のせ...
「気のせい」
ん、…そうか。なんだが毎日、少しずつ決まった間隔で距離が短...
#br
五分ほど経過したが、まだ誰も来ない。
この長門と二人でいる時間は静かでとても心地よいのだが、場...
「なぁ、長門。夕飯なんだが、何の料理を作るんだ?」
このコトを尋ねて見ると、長門は本を読むコトをやめ、コチラ...
「…いろいろ」
「いろいろって…具体的には?」
「来ればわかる」
「…そうか。それなら長門の家に着いてからのお楽しみにするよ」
「そう」
料理するのがハルヒでこんな回答なら俺は、一体何が出てくる...
#br
十分もすると朝比奈さんや古泉も来て、遂にはハルヒもやって...
お決まりのハルヒの、ハルヒによる、ハルヒのための会議は、...
しかし、今日はまだまともなものである。
「あとちょっとで夏休みよ! そろそろ予定も立てなくちゃね!」
…そういやもうそんな時期だな。あの去年の終わらない夏休みを...
そのことを知らないハルヒがホワイトボートに次々と夏休みの...
「う〜ん、こんなものかしらね。あっ、後、一学期の疲れを癒...
お前の辞書に「疲れ」なんて文字はないだろう。きっと塗りつ...
しかし、温泉か…。行くなら冬がベストだが、夏に行くのもまた...
#br
今日はこんな感じで時間が過ぎていき、長門の本を閉じる音が...
しかし、いつもより早いような気がする。長門が早く料理を俺...
そして団員五人で坂道下る。近頃は夕方になっても昼間の暑さ...
しかし近頃はハルヒたちと一緒に何かしらするコトも「慣れる...
#br
#br
ちなみに長門とは一度別れ、近くのスーパーで待ち合わせの約...
俺はこのような若干の不安を覚えながら、長門が待つ目的地へ...
俺の目にスーパーを捉えたその先には、ちょうど長門が反対側...
「おーい、長門ー!」
俺が自転車から降り手を振ると長門もそれに反応したのか、顔...
「待った?」
「イヤ、今さっき着いたばかりで、三十秒も経ってないぞ。ま...
「わかった」
#br
…またこうして長門と二人きりで買い物をする日がこうもすぐ来...
しかし、俺がいくら気にしても長門はいつもの長門であり別に...
俺がカゴを持ち、長門の後ろへとついていく。
長門が向かったまず先は、
「ここ」
野菜コーナーである。まさかまたカレーを作るのにいるジャガ...
…と思ったのだが違ったようだ。長門が手に取ったのはダイコン...
つまり、今晩は和食か。
次に肉コーナーに向かった長門がカゴに入れたのは豚肉である...
#br
レジで精算が終わった今、スーパーの袋に入っているのは上記...
しかしここで不安要素が一つ。…量が多い。
ダイコンは半分のものではなく、丸々一本だし、ほうれん草は...
買い置きするため多めに買ったのか、それとも一日で消費する...
#br
そして今、俺は幸せ・至福・恥ずかしさの山頂にいる。
たとえると、幸せという名のスパイスをこれでもかというぐら...
分かりにくいたとえを使ってしまったな。つまり現状をたとえ...
そして今は下校時間である。前は休日だったのでそれほどいな...
俺は自転車であり、長門は徒歩だ。
「また自転車の後ろに乗るか?」
買い物が終わり、淡い期待を抱き長門に聞くと、
「そうする」
その瞬間、俺は心の中でガッツポーズを取った。…今は少し後悔...
#br
「なぁ、長門」
「何?」
あいかわらず俺の体に腕を回す長門であるが、
「せめて腕を回すのだけは止めてくれないか?」
「なぜ?」
またこのパターンか…、
「ほら、帰宅途中の学生が多くいるし…」
「わたしはかまわない」
だろうと思ったよ。俺も腹をくくらなきゃいけないな、
「わかった、長門の好きなようにしてくれ。落ちたりするなよ」
まぁ、長門が落ちるなんてコトはまずないだろうがな。
「そう」
こう言うと長門はさらに手を深く俺の腰に回してきた。
「これなら心配ない」
長門から俺に伝わる感触、腕の力がさらに増す、もちろん下校...
こうなると俺の理性がとても心配なんだがな。はたして長門の...
#br
#br
正直危なかった、もう三分、もしくは長門から伝わる感触がも...
玄関口のロックをはずし、エレベーターへと歩く。そして七階...
「入って」
「では、おじゃまするとしよう」
玄関でクツを脱ぎ長門の後ろへとついていく。…歩く長門の後ろ...
「座ってて」
長門の一言に我に戻る、またもや危なかった。本能にまかせて...
「じゃあ、ここでできるのを待ってるとするよ。どんな料理が...
「まかせて」
そう言うと長門はキッチンへと入っていき、俺はコタツで待つ...
#br
三十分ほど経過。
俺は待っている時間を無駄にしないために、今日まったく集中...
#br
課題を止めしばらくすると、音だけではなく匂いもこちらに届...
う〜ん、イイ香りだ。…これはみそ汁の匂いだな。
ところが、この届いてきた匂いにひとつ気になる香りがある。...
説明すると、独特な香辛料でブレンドされたスパイシーな香り...
ここまで説明しなくても分かると思うが…カレーの匂いである。
確か、スーパーで買った食材からはカレーはできないはずだ、...
さすがに心配になった俺は、
「なぁ、長門。俺も手伝おうか?」
と匂いの正体を探ろうとしたが、
「大丈夫。座ってて」
あっさり断られた。
仕方ない、前向きに考えるとするか。…きっと料理の味付けにカ...
#br
俺の腹がグーグーと鳴り始めた頃、
「おまたせ」
長門がキッチンから出てきた。まず、コップと飲み物。そして...
おぉ、これはしょうが焼き、スーパーで買った豚肉はこれか。...
長門がもう一度キッチンへと入っていった。そう、和食に絶対...
……俺の推理は半分間違っていた。
イヤ、間違ってはいないな、白米は確かにある。その上にカレ...
「…なぁ、長門」
「なに」
長門はコタツの上にカレーを音も立てずに置く。
「これはなんだ?」
「……?」
長門は頭を右に傾けている。…何を聞かれているかわからないよ...
「なんでカレーなんだ?」
「……?」
今度は頭を左に傾けた。…またもや、何が問題なのかわからない...
「…嫌い?」
いや、嫌いではない。さっきも言ったように、俺の中では好き...
「ちょっとこのメニューには合わないような気がするんだが」
「…そう」
俺だけに感じ取れる長門の残念そうな表情。その顔はレッドカ...
「…たまにはこんな組み合わせもいいな。うん、実に美味そうだ...
俺がスプーンを手に取り、カレーへと突き刺す。すくって、多...
「おいしい?」
…美味いさ、これでもかっていうぐらいカレーであり美味い。
「こっちも」
俺の目の前に出されたのは、山を形成しているしょうが焼きで...
「…いただくとするよ」
水で、口の中のカレーを消す。スプーンからお箸に持ち替え、...
…美味い。肉を歯で噛み締めるたびに、しみこんだタレが口内に...
「驚いたな、そこらの店よりよっぽどうまい。ここまで長門の...
「そうでもない」
もう一枚、肉をつまみ口に放り込む。
「謙遜するコトないぞ、これは俺の正直な気持ちだ。うん、う...
「そうする」
長門流の肯定をして、箸をその手でつかむ。しょうが焼きに箸...
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こうして俺と長門は二人向かい合って食べている。
話しのネタも尽きたのでスーパーで材料を買っていなかったの...
「なぁ、長門。今日買った材料にはカレーを匂わせるものはな...
「この前に涼宮ハルヒ・朝比奈みくると三人とでカレーを作っ...
スプーンに持ち替え、カレーへと突き刺す。
「一晩置いたほうがおいしくなると」
なるほどな。それはこの料理知識のない俺でも聞いたコトがあ...
「そう」
こんなに山盛りをか。…言うまでもないと思うがカレーも山盛り...
「…おいしくない?」
何度もそんな目で見ないでくれ、長門。誰もおいしくないなん...
「いやいやそんなわけないじゃないか。長門が作ってくれてし...
長門は持っていたスプーンを置き、俺のほうをその目でじっと...
「…また来る?」
またって…夕飯をこれからもご馳走してくれるのか?
「そう」
「そりゃあ俺は全然かまわないが…長門はいいのか? ハルヒの...
「いい。
…あなたと一緒に食事する事、それであなたの食べる姿を見る、...
それで十分」
長門にここまで言われてしまっては断るにも断れん。そもそも...
「ならお言葉に甘えてたまにご馳走になろうかな」
「…本当?」
「本当だ。さぁ、まだ長門が作ってくれた料理は残っているし...
「……」
数センチの無言の頷き。そして俺も長門も箸とスプーンを動か...
…しかし、なんでここまで俺に長門はしてくれるのかな。
まぁ、今日のところはいいか、長門も自分の作った料理を満足...
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後日談。
…こんな理由で長門家にたびたび夕飯のお世話になるコトになっ...
一つは、最近体重が少し増えたコト。
食べれば太る。長門のたくさん食べる姿を見ているとこっちも...
…俺は夜にランニングでも始めるとするか。
そして、もう一つ。なぜか毎回カレーが出る。
別にカレーが嫌いなわけではない、と前にも言ったな。
しかし、冷麺にもカレー、親子丼にもカレー、さらにはカレー...
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…今度、長門に相談してみるか。
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というわけでさらに後日談。
「なぁ、長門。次はカレー抜きでお願いできないか?」
こう進言したところ、
「…嫌い?」
長門は至極残念そうな表情をして返答した。
俺がなんて答えたかわかるか? もちろん二つ返事で、
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「そんなわけないさ。次も長門の作ったカレーを楽しみにして...
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と言った。
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…終わり
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