#navi(SS集)

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* 作品 [#m6bf2e31]

** 概要 [#kcfa9c8d]

|~作者      |江戸小僧  |
|~作品名    |焼餅 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日    |2008-01-02 (水) 21:09:04   |

** 登場キャラ [#xb9904d3]

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|~キョン    |登場    |
|~キョンの妹|登場  |
|~ハルヒ    |登場  |
|~みくる    |登場  |
|~古泉一樹  |登場 |
|~鶴屋さん  |不登場 |
|~朝倉涼子  |不登場 |
|~喜緑江美里|登場|
|~周防九曜  |不登場   |
|~思念体    |不登場  |
|~天蓋領域  |不登場  |
|~阪中      |不登場|
|~谷口      |不登場|
|~ミヨキチ  |不登場    |
|~佐々木    |不登場  |
|~橘京子    |不登場   |

** SS [#hf2c71e0]

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#setlinebreak(on)

「じゃ、みんなたっぷり家族サービスするのよ! あと、今度は6日だからね。キョン、遅刻したら許さないから」
 そう言ってハルヒは1人元気そうに走り去っていった。どうやって振袖姿で全力疾走できるのか不思議でしょうがないが、あいつのやる事にいちいち突っ込んでたら人生の意味に思い悩んだデカルトみたいに哲学を語りだす羽目に陥るであろうからやめておく。
 本来なら受験生である筈の朝比奈さんに気を遣ったのか俺に勉強しろというプレッシャーをかけたつもりなのか知らんが、可能な限りお年玉をかき集めなきゃならんこの時期に団活が休みになるのはありがたい。
「じゃ、キョン君もお元気で」
 ええ、朝比奈さんも。ひょっとして、残りの日は本当の家で過ごすとか。未来の正月でも独楽を回す子供っているんですか?
「独楽? あ、えと、禁則事項です」
 独楽をご存知ないならその帯を使って実演を――いや、とにかく相変わらず愛らしいお姿で振袖を文字通り振りながら朝比奈さんも駅へと消えていく。ああ、6日が待ち遠しいぜ。
「どうやら明日からはのんびりした日々になりそうですね」
 この分ならお前のバイトもなさそうだな。っていうか、組織で出初式とかないのか。デパートだって今日から売り出しやってるのに。
「まさか、ありません。僕も人並みの正月を過ごすことにします。実は部屋の大掃除も終わってないので」
 無料スマイルに僅かに本当っぽい笑みを上乗せして、こいつも雑踏に消えていった。
 じゃ、俺も我が家特製の雑煮でも食べに戻るか。なんだかんだ言っても、やっぱり正月三が日の間はあれを食べたくなるんだよな。
「雑煮はその作成方法に多くのバリエーションがあることが確認されている」
 ああ、そうだな。そういや長門、お前も里帰りするのか?
「私に物理的な故郷は存在しない。それがあなたの質問なら」
 そう呟く小柄な宇宙人。その透き通るような瞳は、どこか寂しげに見えた。
 そうだ。異常動作のせいだったとはいえ、俺のためにこいつと同じマンションに住んでいた仲間のあいつを長門は失うことになった。もしかしたら、あの世界でそうだったようにこいつのたった1人の親友だったかも知れないあいつは、もうこの世界にはいないんだ。
 俺は、綺麗に片付いてはいるが少し寒そうなこいつの部屋を思い出していた。あのコタツでお茶を飲みながら1人読書を続けるのだろうか。
「良かったら俺の家に寄ってくか?」
 気が付くと、俺はそう口にしていた。
 正月だからいつもよりも余計に動かしたのか、その頷きは俺以外でもわかりそうな程大きかった。
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「あ〜、有希ちゃん! 明けましておめでとう」
 おいおい、まだ晴れ着なのか。もう2日なんだから普通の格好してればいいのに。
「今日は学校の皆で初詣行ってきたからだよ。ほら、大吉だったんだから」
 おいおい、持って帰ってきたのか。まあ、いいけどな。
「それより、お夕食!」
 そんなもん、俺に言うなよ。お年玉は父親の役目。食事は母親の役目。因みに俺はいろいろと消費する役を仰せつかってる。
「今夜は泊まってくるって言ってたでしょ。キョン君、忘れんぼ」
 ん、そうだったっけ。
 頬を膨らます妹を見ていたら、確かにそんな事を今朝寝ぼけた頭で聞いたような気がしてきた。
「キョン君がお料理当番だって言ってたじゃない」
「……」
 あー、すまん。関西家庭風の雑煮をご馳走したかったんだが、ちょっと状況が変わっちまった。
「問題ない。作成方法にも興味がある」
 そう言うと長門は妹に引っ張られるままに家の中に入っていった。
「たまには変わったの、食べようよ」
 なんだ、変わったのって。今ある食材じゃ雑煮以外っていうのも考えつかねえぞ。まさか、カレーにしようなんて言うなよ。
「だから、変わったお雑煮」
 さっぱりわからんぞ。
「関東風食べてみたい。ねえ、作って〜」
 無茶言うな。餅を焼くって以外何にもわかんねえ。
「私が知っている」
 なあ、長門。念のために言っとくが醤油で真っ黒の雑煮なら遠慮しとくぞ。
「大丈夫。醤油は味付けのみ」
 うーん、長門の言うことなら信用できるか。
 その時、玄関のチャイムが鳴った。誰だ? 我が家に新年の挨拶が来るなんて事、これまでなかったぞ。
 飛び出そうとする妹を抑えて玄関に向かう。覗き窓から見えたのは、緑色の和服を着て緑色の髪をした北高の先輩だった。
 取り合えずドアを開ける。怒らせると何するかわからないし。
「明けましておめでとうございます。ご挨拶に伺いました」
 ご丁寧にどうも。しかし、わざわざ俺ん家に挨拶にいらっしゃるとは意外ですね。
「ふふふ、丁度夕食をどうしようか迷ってたんですよ」
 あのー喜緑さん。それって、たかりに来たって言いませんか?
「あら、そんな訳ないじゃありませんか。ほら、こうやってご挨拶の品も」
 ……新巻鮭とはまた随分と日本の伝統にお詳しいですね。
 でも今夜は雑煮なんで塩鮭は……わ、わかりました。だからその広げた右手を下ろして口の中で何か呟くのも止めてください。
 既にキッチンでは騒ぎが始まっていた。
「ほら、昆布! お出汁取るんだよね」
 おい、昆布は洗ったら意味ないんだぞ。
「待って。関東風は鰹出汁」
「えー、面白い」
 作り方はわかってもキッチンの勝手がわからないのか、長門の手は止まっていた。
「これでいいですね、長門さん」
 なんで鰹節の場所知ってんですか、喜緑さん。
「目は悪いほうではないし、使い方も知ってますから」
 器用に袖を捲くった正体不明な上級生はそう言って鍋を火にかけた。と思うと陰で新巻鮭に手を置いて――あ、切り身になっちまった。まるで「奥○は◇女」みたいな展開だな。
 あ、そうだ。お前は晴れ着脱いで来い、どうせ汚すから。
「あら、いいじゃありませんか。お正月なんですから」
 そう言って一見上品そうな笑顔で片目を瞑ってみせる。ひょっとして、汚れても元に戻してくれるとか。そりゃ、この人達には簡単だろうが、そういうインチキは妹の前では止めて欲しいんですが。
「ふふ、信用してください。さ、長門さんも着替えてきたらいかがです。私が持ってきてますから」
 さっきは持っていなかった筈の大きなバッグが、リビングの隅に現れていた。
「お部屋、少しだけ借りますね」
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 結局妹に邪魔されながら1人で教えられた通りに進めて後は餅を焼くだけ、という頃に下へと降りてくる2種類の足音が聞こえた。
「いかがですか」
「……」
 今朝、台風娘の真っ赤な振袖姿はいかにもあいつらしく冬の寒さを吹き飛ばす暖かさに満ちて見えた。マイエンジェルのお姿はいつものように記憶に永久に留めたい愛らしさに溢れていた。
 しかし、今俺の目の前にあるものは、他のなにものにも替え難いものだった。
 白を基調にして藤色が踊る振袖姿は相変わらずほっそりとしていて、思わず支えてやりたくなる。朱を刷いた唇は何かを語りかけるようであり、これはいつもと変わらぬ漆黒の瞳と共に音に聞こえぬ声をまっすぐ俺に向けているかのようだ。
 髪は僅かに横を絞り、小さい髪飾りが薄い色の髪に絶妙のアクセントをつけていた。
「キョン君、そんな風にじろじろ見たら失礼なんだよ」
 う、わかってる。
「ご感想は?」
 え、まあ、なんというか。
 無口な少女はまっすぐ俺の目を捉え続ける。根負けして俺の方が先に目を逸らしちまった。
 気のせいか、その口の端に満足げな色が浮かんでいるような。
「さ、お餅はこの角餅を焼きましょう」
 喜緑さん、そんなものまで用意してたんですか。
「せっかくですから」
 まあ、いい。オーブントースターで餅を焼くとあっさり膨らみ始める。
「いっただきまーす」
「はい、いただきましょう」
「……いただきます」
 へえ、関東風も確かに美味しいな。ま、鮭ってのはホントは違うんだろうが。
「ところで、ご存知ですか?」
 何ですか一体。また例によってそんな笑顔で。
「関東では、1つの餅を2人で食べ合うと切っても切れない仲になると言われているそうですよ」
「その情報は重要と判断する」
「へえー、そーなんだ〜」
「あちらでは、毎年そんな微笑ましい光景が見られるそうです」
 ちょっと待った! そんな話ネットですら聞いたことないぞ。絶対今作ったろ。だから長門、信じるな。
「……」
 だから、そんな一晩かけてラスボス戦まで一気に突き進んだ時みたいな目しないでください、長門さん。
「関東と呼ばれる地域の風習は未経験。しかし、それが恒例行事であるなら体験すべき」
 とにかく待て。大体だな、焼いた餅ってのはそうやってどこまでも伸びるから2人で食べ合うなんて……
「美味しい?」
「さ、長門さんはその端から」
 んんんんん!
「あらあら、今更照れなくても」
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「みんな、なんか変わった事あった?」
 集まって開口一番、正月過ぎても元気一杯なこいつはそう言って目を輝かせた。
 松の内が過ぎるまでは不思議だってきっとお休み中さ。
「あら、有希。何かあったの」
 なんだ、長門。お前がネタ振りなんて珍しいな。
「関東の正月を体験した」
 ひょっとしてあの後も怪しい先輩と2人でいろいろやったのか?
「ふーん、旅行してきたの? それとも、向こう出身の友達?」
「未経験者同士で関東の食事の風習を初めて体験した」
 ん? ちょっと待て。
「へー、面白そうじゃない。何やったの?」
 こら、長門。わざわざそんな具体的に話すんじゃありません。
「う……なかなか大胆ね。有希にそんなことするお友達がいるなんて思わなかったわ」
 なぜだろう、逃げるか隠れるかしないといけない気がする。
「どうしたんですか、僕のバックを取るなんて。ああ、遂にあなたもその気に」
 ば、ばか。使い古した冗談言ってる場合じゃねえ!
「そこ、うっさいわよ。せっかくいいとこなのに。ね、誰? 有希とそんなすごい体験した相手って」
 突然、周囲が暗闇に包まれたように感じるのは俺だけの錯覚だろうか?
「へ、へえ。そう」
 おい、なんで皆俺から離れるんだ? 俺たち、仲間だろ!?
 次の刹那、俺の目の前に真紅に染まる2つの光芒が
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以降の観察対象の行動は弓状列島上における直接及び間接の光学情報では確認不可能。
予定レベル以上の情報爆発には成功したが、この爆発により20XX年1月2日へと時空が戻った事から鑑みて刺激レベルの更なる微調整が必要と判断する。
なお、本計画は今後とも主流派端末には秘匿すべきであることを追記するものである。
報告:、ュ、゚、ノ、熙ィ、゚、・
*/

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