#navi(SS集)

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* 作品 [#hbfdecbe]

** 概要 [#b696faf0]

|~作者      |輪舞の人  |
|~作品名    |機械知性体たちの輪舞曲 第16話         『星に願いを』 |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日    |2007-01-30 (火) 11:53:54   |

** 登場キャラ [#r24c188f]

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|~キョン    |不登場    |
|~キョンの妹|不登場  |
|~ハルヒ    |不登場  |
|~みくる    |不登場  |
|~古泉一樹  |不登場 |
|~鶴屋さん  |不登場 |
|~朝倉涼子  |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜  |不登場   |
|~思念体    |不登場  |
|~天蓋領域  |不登場  |
|~阪中      |不登場|
|~谷口      |不登場|
|~ミヨキチ  |不登場    |
|~佐々木    |不登場  |
|~橘京子    |不登場   |

** SS [#b8011d0e]

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#setlinebreak(on)

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『同期の許可を求める』
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 七月七日、夜。
 自室で、三年前のわたしからやって来た同期許可申請を受信する。
 一瞬の躊躇。すでに決まっている事なのに、わたしは戸惑う。
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 過去のあなたは、これからとても辛い事を経験するだろう。
 わたしにはできなかった未来の改変。それはあなたにはできるのだろうか。
 おそらくはできない。規定事項の呪縛の力は、あまりにも強いものだから。
 それはわたし自身が実際に経験したこと。
 いったいそのために、どれだけの報われない努力を払うのだろう。
 かつてのわたしがそうしたように。
 しかも誰にも助けを求めることもできず、たったひとりで。その結果に値する報いもない。
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 わたし自身に対する報い。報いとは何を意味しているのか。
 これは任務だったはず。でも、きっとわたしは期待していたのだろう。
 努力すればかならず報われるはずと、そう信じていたから。
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 朝倉涼子が隣で笑い、わたしと共に学校に通学するという光景。
 あの五ヶ月間のように、またふたりで食卓を囲む光景。
 彼女の人間社会に対する見解、または感情についての考察の談義を夜通し聞く、そんな光景。
 わたしは戸惑いながらも、彼女の言うことを聞き逃すまいと真剣になる。
 そんな様子を見てまた笑う彼女。わたしは少し「不機嫌」になる。
 そして謝りながら、でもまた我慢ができずに噴き出す彼女。
 わたしは、黙ったまま。
 でもそんな時間がとてもここちよいものだった。
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 ……あの笑顔を取り戻せるかもしれない。そう考えていた。ずっと。
 たったの、それだけの小さな望み。ただ、それだけで良かったのに。
 でも現実は、特にわたしの直面した現実というものは、そんな小さな一個体のあがきを一蹴した。結局、世界というあまりに巨大な存在そのものに、わたしは負けたのだろうと思う。
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 今日、学校で彼に手渡した短冊は、時を越えて届く過去の”わたし”へのメッセージが込められている。
 今のわたしに対する同期許可の申請が暗号化され、刻み込まれたもの。
 三年前にわたしがそうしたように、あなたはそれを実行しただけ。
 今になって思う。わたしは、”わたし”を「憎んで」いたのかもしれない。
 なぜそんな事をしたのかと。
 でも、わたしは同期指示を彼女に指示してしまっている。
 それが規定事項だから。
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 これが最後。
 規定事項に縛り続けられたわたしは、この同期を許可することによって、とうとう開放されるだろう。過去のわたしを犠牲にすることで救われるのだ。
 憎まれてもいい。この苦しみから解放されるという現実は、そんな自分勝手で驚くほど醜い己の姿を実感させる。
 もう、終わりにしたい。
 わたしは静かに、ごく僅かに、瞳を閉じる。
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『許可する』
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 過去のわたしがダウンロードを終了したことを確認する。
 終了後、リビングの中心で座り込んだままだったが、やがて立ち上がると、隣で寝ている彼と朝比奈みくるの元へと向かった。
 彼らの帰還と共に、エマージェンシーモードの終了処理をしなければならないからだ。
 三年間、わたしのそばで眠りつづけていた彼ら。
 これですべては復元される。
 何も、かも。
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 こうしてわたしにとっての、三年間の「悪夢」のような時間が終わりを告げた。
 この表現はきっと適切なものであると、そう信じている。
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 覚醒した彼らが部屋を出て行ったあと、ベランダに出てみる。
 夜風が夏の匂いを感じさせる時期。
 七月七日。
 自分の願い事をふたつの星へと捧げる日だという。地球の極東地域の風習。
 ベランダから夜空を見上げ、思考する。
 こんな人形のような存在の願いでも、星は聞き届け叶えてくれるのだろうか。
 昼間に短冊に書いた文字。『調和』と『変革』。
 今、居る場所。彼らとの日常の維持。
 そして定められたあの未来。回避し、覆すことを望む自分。
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 今の自分ではなく、過去の自分に対して、限りなく可能性の低い事象ではあるが、いちるの望みを託す。
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『“彼女”が規定事項の鎖を断ち切らんことを。切に願う』
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 昔のわたしにはできなかった事。
 星は聞き届けてくれるだろうか。
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―ある情報端末の同期終了記録ではあるが、現存は確認できず―
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―第16話 終―
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 SS集/484へ続く
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