#navi(SS集)

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* 作品 [#g5841101]

** 概要 [#c98cca10]

|~作者      |杜山  |
|~作品名    |煽情のメリークリスマス |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日    |2008-12-26 (金) 03:43:19   |
|~キョン    |不登場    |
|~キョンの妹|不登場  |
|~ハルヒ    |不登場  |
|~みくる    |登場  |
|~古泉一樹  |不登場 |
|~鶴屋さん  |不登場 |
|~朝倉涼子  |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜  |不登場   |
|~思念体    |不登場  |
|~天蓋領域  |不登場  |
|~阪中      |不登場|
|~谷口      |不登場|
|~ミヨキチ  |不登場    |
|~佐々木    |不登場  |
|~橘京子    |不登場   |

** SS [#f8f35c8b]

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#setlinebreak(on)

部室にやってきたキョンくんはいつもの席に腰掛けます。
 目の前にはロリ乳がいて、淫婦のリップでキョンくんをたぶらかしています。
 ながとさんは部屋の隅で読書をしながらそんなふたりの掛け合いを無関心を装ってただただ見守ることしかできません。
 キョンくんとお互いの目をまっすぐに見ながら語り合えたらどんなに良いだろう、ながとさんはひとり消沈しながらそんな夢物語を空想します。
 自分はクラスでも目立たない存在だし口下手で原稿用紙一行以上のセリフを喋るときは無条件で妙な電波を受信中だしスカートの丈はこれでもちょっと短いかなと思うのでまあこれは置いておいて……おまけにオールド眼鏡だし。
 キョンくんはもっとハツラツとした女子が好きに違いありません。
 ながとさんは眼鏡のツルをそっと持ち上げて、横目でキョンくんの顔色を窺います。
 誤って一秒以上見てしまい、キョンくんの視線を正面から捉えてしまいます。
 あわてて目を伏せますが、それから下校時間まで、ながとさんは一度もキョンくんを見ることができませんでした。
 いつものようにコンビニエンスストアで夕ご飯を買って、殺風景な分譲マンションに帰り着きます。
 コタツに入って買ってきたお弁当を食べていると、なぜかきょうのお弁当は妙に塩辛いのでした。
 不思議に思ってご飯とにらめっこしていると、顔を伝う違和感に気がつきました。
 確かにこの家には調味料と言える物がありませんが、そんな即席食塩は必要とはしていないのです。
 ながとさんはお弁当を片付けると、制服のまま家を出ました。
 もしかしたら、しおりを見たキョンくんが来ているかもしれません。
 ながとさんは淡い想いを胸に抱いて足早に駅前の公園に向かいました。
 約束の時間まであと三十分あります。
 ながとさんはベンチに腰掛けますが、春先とはいえまだまだ寒い時期ですので、ふるふると身体が自然と震えてしまって座っていることができませんでした。
 しようがないので街灯の下に立っていることにしました。
 灯りがあると、それだけでなんだか暖かい心持ちになるのです。
 手をこすり合わせ息を吹きかけながら、そうして二時間ほど待ちました。
 キョンくんは来ませんでした。
 マンションに着いてコタツで身体を暖めていると、ながとさんはなんだか眠くなってしまいました。
 しばらくうとうととしていて、それでもやっぱり寝てしまって、はしたないとは思いつつもうたた寝を繰り返してしまうのでした。
 こんな弱い女子にしたのはそれはもう、キョンくんの仕業に違いありません。
 ながとさんは夢の中で、バナナボートに乗っていました。
 荒波をかき分けかき分け、飛び跳ねながら失踪……いえ疾走しています。
 前を走るボートには鬱デレとロリ乳が乗っていて、ながとさんが乗るバナナボートを牽引しています。
 ふたりはながとさんを振り落とそうと、ボートを右に左に振り乱します。
 ながとさんは振り落とされまいと、ただひたすら耐えることしかできません。
 ふたりの顔には意地悪そうな表情が浮かび、気がつくとながとさんの顔ははんにゃの面にすり替わっているのでした。
 恥ずかしい声を上げながら目覚めると、ながとさんの顔は涙でぐしゃぐしゃで、顔はむくんで眼鏡もどこかへいってしまっていて、ほっぺたに服のあとがくっきりと付いてしまっているのでした。
 眼鏡を拾うと、そんな自分の不甲斐ない姿をカーテンのない窓越しに見ながら、キョンくんのような男子を好きになってしまった自分の気の迷いを恨みました。
 根本的なクールビズに目覚めたのはつい先月のこと、しかしそんなものは春一番と共にどこかへ飛んでいったようです。
 ながとさんは涙を拭うと立ち上がって窓際まで行きました。
 鏡代わりにして乱れた髪を直していると、窓の外にゴミのような物が落ちていくのが見えました。
 上から下へ落ちていきます。
 よく見るとそれは雪なのでした。
 季節外れの春のユキ。ながとさんはベランダに出ると、掌を上に向けて落ちてくる雪を受けました。
 ふんわりとしたそれは、ながとさんの掌に載った瞬間にすぐに溶けて消えてしまいました。
 なんてきれいで儚いんだろう、ながとさんは水滴の残る掌をぎゅっと握りしめ、胸に抱きます。
 降りしきる雪の中、お祈りするようにそっと口許に持ってゆきます。
 あしたは来るかもしれない、根拠のない希望を焦がれる胸で溶かさぬよう、静かに静かに想い続けるながとさんなのでした。

「あしたは来るといいね、メリークリスマス」

(※クリスマスにアップした作品です)
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