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#navi(SS集)

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* 作品 [#e9a78817]

** 概要 [#r163d637]

|~作者      |輪舞の人  |
|~作品名    |貧乏長門物語 プロローグ |
|~作品名    |復旧中(たぶんアレの続編) |
|~カテゴリー|長門SS(一般)|
|~保管日    |2007-11-11 (日) 23:05:53   |

** 登場キャラ [#i186eaef]

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|~キョン    |不登場    |
|~キョンの妹|不登場  |
|~ハルヒ    |不登場  |
|~みくる    |不登場  |
|~古泉一樹  |不登場 |
|~鶴屋さん  |不登場 |
|~朝倉涼子  |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜  |不登場   |
|~周防九曜  |不登場  |
|~思念体    |不登場  |
|~天蓋領域  |不登場  |
|~阪中      |不登場|
|~谷口      |不登場|
|~ミヨキチ  |不登場    |
|~佐々木    |不登場  |
|~橘京子    |不登場   |

** SS [#uc43b777]

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#setlinebreak(on)

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 ケセラセラですよ、長門さん。
 PCデータ破損につき、更新中です。
 たぶん、アレの続編。
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 ―ある情報端末の現状認識を欠いたひとこと―
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「……倒産?」 
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 情報統合思念体の運用する地球配備端末支援システムの言葉に、情報統合思念体自律進化探求計画、主流派所属、独立第一端末として配備されていた長門有希は、駐留拠点に設定されていたマンションのリビングに正座したまま、ごくわずかに首をかしげ、また母体が意味のわからないことを言い始めたな、と冷静さを保ちながらも送られた内容を分析していた。 
 例の天蓋領域という別存在が頻繁にこちらに接触するようになってから、彼女を生み出した母体である情報統合思念体の動きそのものが何か妙だとは感じていた。向こうの動きに対応して、直接、正体不明のあの情報集合体と積極的に関わろうとしていたのだ。
 しかしそういった一連の対処についての結果報告で現れた言葉が、倒産?
 いつから銀河を統括するという高度知性体は資本運用集団となったのだろう。
(それは正確な表現ではない) 
 支援システムが自身の統括する端末の認識に訂正を要求した。 
 最近よく実施される「言語による接触」によって行われる直接コンタクトの思考波は、いつもより幾分か弱いものに長門には感じられた。
 か細く、あまりにも弱気に感じられるもので、まるで人間で言うなら落ちこんでいるような、そういう語気を長門は感じていた。
「それでは倒産という意味を、明確に、言語を用いての説明を求める。現在、システムの使用している言語情報は正確さを著しく欠いている可能性がある」
(………)
 数秒の沈黙の後に、支援システムは正解に近い言葉を探し出したようだった。
(我々は融合する) 
 晴天の霹靂とはまさにこのこと。 
 事実上、宇宙に存在する高度知性情報体のうちの二大勢力が融和するという事実は、確かに理想的な展開ではあったかもしれない。しかしずいぶんと簡単に結論できたものだと長門は関心も半ば、むしろあきれていた。
 いったいなにがあったのか、ただの一端末にはその経緯の推測もできない。
「それは……素晴らしい、と評価するべきか」 
(そうでもない) 
 またもや弱々しい波が長門に伝わってくる。 
(我々は降格することが決定している) 
「……降格?」 
 格、とは。なんだろう、と長門は思考する。 
 地位? いや、そもそもそういった組織系統のようなものが情報生命体に存在するのだろうか。 
 どうも言語を媒介すると、怪しい表現にしかならない。 
「発言力の低下、ということか」 
(ほぼそれに近い) 
 知らずと変化の乏しい長門の顔に、苦いものがうっすらと浮かび上がってきた。
 ひとつの浮かび上がった疑念を、長門は問いただしてみる。
「情報資源の獲得闘争で敗北したということか」 
(負けたわけではない) 
 少しだけ言葉に力が蘇ったように思われた。 
 長門が分析するに、どうもカラ元気という表現の似つかわしい、むしろ哀れを誘う、それは言葉の波だった。 
(我々は負けたわけではない) 
 思念体の端末支援システムは重ねて言った。 
 なんと言うか、小さな子供が懸命に負け惜しみを言っているような、そんなイメージ映像を長門は自身の思考領域に再生していた。 
「……それで、今後の我々はどうなるのか」 
 それはともかく、肝心なことを訊かなければならない。
 涼宮ハルヒの監視任務に影響が出るのは当然だろう、と思われた。 
 どちらかというと、それに伴う自律進化につながる情報がすべて天蓋領域に寡占されてしまうのでは、という懸念の方が強かったのだが。 
(当面、各端末に任務の変更は通達されない) 
 当面という。その期限もあいまいな情報に触れた長門は、彼女が獲得してきたもののひとつ、第六感と呼ばれる怪しげな感覚が、体の深奥から何かの警告を告げているのを感じていた。 
(ただし、端末への支援は極端に制限される) 
「当面であるとか、極端にであるとか。曖昧な表現は訂正して……」 
(生活せよ) 
 端末の疑問を遮って発せられた思念体の言葉は前後の意味のつながらない、またもや意味不明なものだった。
 無理に言葉などを使わなくてもいいのに、と長門は分析するのだが、どうも習得しつつある人間の情報を使いこなしたいという、思念体なりのこだわりがあるらしい。
「少し……冷静に。言語情報の伝達に明らかな齟齬が発生している」 
(今後、これまで行ってきた人類偽装のための支援行動は中断される) 
「中断?」 
(さしあたっては、現在駐留拠点となっている当該居住区画は「売却」される)
 自然と口が開いていく不随意動作に、しかし長門は気がつかなかった。 
 このマンションを出て行け、と彼女の指令本体が告げている、その事実が容易には受けとめることができなかった。
(とりあえず、その近辺により安価な情報で偽装居住できる物件を手配した) 
 思考波に乗って伝わる支援システムの操る言語情報は、あまりにもくだけた表現で、庶民的で、早い話が貧乏臭く、宇宙的規模で活動する情報生命体の言語認識能力の確かさを危ぶむほどに、とてつもなく情けなかった。
 端末としてさまざまな情報を母体に送信し続けてきた長門自身のプライドというものが存在するというのなら、いたく傷つけられるくらいに、本当に情けなかった。 
 そんなどんよりとした自身の端末の反応にあわてたのか、けっして見放したわけではないと言わんばかりに、思念体端末支援システムは言葉を継いだ。
(学費は問題なく支払われる。通学することには何も問題はない) 
「………」 
 問題がないと言い切る根拠はどこにもないのに、そう言い切った、支援システムの状況判断には徹底的に信頼性というものがなかった。
 その後に続いた言葉がそれを証明している。
(ただし、衣食住の三大要素は今後、各端末が独自に調達せよ。支援はいっさい行われない)
 これで問題がないという。そんな馬鹿な。
 情報統合思念体は、有機生命体の……というよりは、人間の文化的、実利的な生活というもの、そのものを完全に理解できていないに違いない。これまで送り続けていた情報はいったいなんだったのかと、長門は肩を落とした。
 ただの端末である自分はこんな情動表現もできるまでに成長したというのに、その肝心の母体がこの有様とは。
「情報操作でそれらはいくらでも生成が可能では」 
 せめてもの反論は、重要性を理解しているとは到底思えない、まるで人事のような言葉で打ち消されてしまう。
(禁止される。情報リソースの管理は今後、元・天蓋領域と呼ばれた思念流領域が行う)
「………」 
 倒産、という言葉がようやくここで、おぼろげながら実感できるようになってくる。 
 長門は思った。これは、この地球という星で、たった一人で生き抜け、ということなのだろうか。 母体からの支援もなしで。ただの端末の自分が? なんて無責任な。
(各端末の健闘を祈る) 
 長門の宙を泳ぐ視線も感じることもなく、無常にもコンタクトは途絶する。 
 呆然としたまま、長門はマンションの天井を見上げていた。 
 このあまりにもな急展開に、最高の処理速度を誇るはずの端末の思考が追いついていなかった。 
 どうすればいい。 
 着る物も、食べる物も、住むところの家賃さえ、今後は自分で何とかしろと。そういうことなのだろうか。 
 間も置かず、インターフォンから状況にそぐわぬ快活な声が流れてきた。
「こんちわーす。キリン引越しセンターの者でーす」 
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 こうして、長門の任務はまったくの新たな局面を迎えることとなった。
 これまでとは違う意味合いの脅威。まだ長門自身も想定していない脅威が迫ってきていた。
「……甲斐性なし」
 人間から学んだ言葉のうちで、今の状況にもっともふさわしいと思われる言語情報を長門は口にした。
 “彼”であれば、それは適正な評価だと褒めてくれたかも知れないが、たぶん、それを実際に聞いても彼女が嬉しくなるようなことはなかったろう。
 同期を封じた今、長門有希には自身の未来予想図が見えなかった。
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―プロローグ おわり―
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SS集/833へ続く
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