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#navi(SS集)

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* 作品 [#jbdac717]

** 概要 [#ve5ba4df]

|~作者      |七原  |
|~作品名    |closed sanctuary 第一話 |
|~カテゴリー|その他|
|~保管日    |2007-02-02 (金) 21:21:29   |

** SS [#z2a975e8]

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 どうして俺が文芸部員なんて物をやっているかと言われれば、それは俺が本を好きだからというただそれだけの理由に他ならない。
 最初は大好きだった近所の姉ちゃんが本を好きだったからっていうのが理由だったはずなんだが、姉ちゃんが結婚した後も俺は本を読み続けていた。
 ファンタジー、SF、ミステリ……まあ、割と何でもありではあるが、非現実的な物語の方に偏りがちな傾向はあったかもな。ん、ミステリは違うんじゃないかって? あのなあ、あんなきれいに整った論理が組みあがるような状況なんて、文章の上じゃなきゃ有りえないだろうよ。
 まあ、事実は小説より気なりって言葉もあるけどさ。
 ……今のところ俺は、その言葉の意味を実体験したことが無い。
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 そして多分、これから先も、そんなことは無いだろうって思って居たんだよな。
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 何時ものようにホームルームも終わり、さて何時ものように部室に行くかと思っていたら、俺を呼び止める奴が居た。
「また部室に行くの?」
 クラスの委員長であり俺の幼馴染でも有る朝倉涼子だ。
 文芸部員が文芸部室に行って何が悪い。
「だって、文芸部の部員ってあなただけじゃない」
「あそこが一番落ち着いて本が読めるんだよ」
 俺は既に何度か繰り返した面倒なやり取りをすっ飛ばし、単純にして現在の俺にとって不変でもある理由だけを口にし、文芸部室に向かうことにした。
 そりゃあ、本はどこでだって読める。
 けどな、今の俺にとって一番落ち着いて本を読める場所は文芸部室なんだ。
「あ、待ってよ……、あたしも行くわ」
「はあ?」
「だから、あたしも行くのっ」
「お前は文芸部員じゃないだろうが」
 朝倉もどっかの部活に入っていたんじゃなかったか?
「あたしのところは今日は休みだもの」
「文芸部は本を読むところだぞ」
「あら、あたしだって本くらい読むわよ」
 そう言って朝倉が取り出したのは、一冊の恋愛小説だった。
 あんまり俺にとって関心の無いジャンルだな。
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 落ち着かない。
 何時もだったら一人静かに本を読める場所で自分以外の誰かが居るという状況は、はっきり言って落ち着かない。
 別に朝倉が俺に迷惑をかけるようなことをしているわけじゃないんだがな。
「キョンくん、さっきから全然進んでないね」
「……同じところを読み返しているだけだ」
「そんなに面白いところなの?」
 適当に嘘を吐いたら、机をはさんでいた朝倉がひょいと立ち上がり俺の持っている本を覗き込んできた。反射的に本を閉じる俺。何ページだったかな? いや、まあ、さっきから内容なんてさっぱり頭に入ってなかったんだが。
「あっ……」
 今の反応はちょっとまずかったかもしれないな。悪気は無かったんだが、これじゃお前は迷惑だって言っているのと同じだ。
「俺もまだ読んでいる途中なんだ、読みたいって言うなら読み終わった後で貸すよ」
「うん、じゃあお願い」
 俺の言い訳めいた言葉に対して首を縦に傾けた朝倉は、もう何時も通りの笑顔に戻っていた。
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「そう言えばキョンくん、もう図書館には行ったの?」
 帰りの坂道を一緒に下る途中、朝倉がそんなことを言った。
 そうそう、俺と朝倉は同じマンションの違う階に住んでいる。
 朝倉はマンションが立てられたころからの住人なんだが、俺は、わけあって高校入学と同時にそこに引っ越して来た。朝倉が俺のことを気にかけてくれるのは、そのせいもあるんだろうな。まあ、そんなに遠い引越しじゃなかったから、校内に同じ中学出身の奴が居ないわけでもないんだけどさ。
「……そういやまだだな」
 図書館か、そういや、そういう場所も有るんだったな。
 入学前辺りまでは随分バタバタしていた上、入学したらしたで何時の間にか文芸部室と図書室と本屋に行き来するくらいで満足するなんて状態になっていたから、図書館なんてものがあること自体忘れかけていたな。
「行ってみたら? 図書館も悪くないと思うわよ」
「ああ、今度そうしてみる」
 何時も本ばっかりなんだから、何て言ってくる朝倉が俺に図書館行きを勧めて来るってのもちょっとおかしな話だが、図書館ってのも悪くはないか。
 まあ、俺は本が読めればそれで良いんだけどさ。
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 closed sanctuary 第二話に続く
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