#navi(SS集)

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* 作品 [#j2306128]

** 概要 [#v3bfb964]

|~作者      |書き込めない人  |
|~作品名    |長門さんと納涼 |
|~カテゴリー|長門SS（一般）|
|~保管日    |2010-04-04 (日) 22:06:54   |
|~キョン    |登場    |
|~キョンの妹|不登場  |
|~ハルヒ    |登場  |
|~みくる    |登場  |
|~古泉一樹  |登場 |
|~鶴屋さん  |不登場 |
|~朝倉涼子  |不登場 |
|~喜緑江美里|不登場|
|~周防九曜  |不登場   |
|~思念体    |不登場  |
|~天蓋領域  |不登場  |
|~阪中      |不登場|
|~谷口      |不登場|
|~ミヨキチ  |不登場    |
|~佐々木    |不登場  |
|~橘京子    |不登場   |

** SS [#xc141824]

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#setlinebreak(on)

サウナの存在意義を奪いかないほど、
湿度と気温が上昇しつつある梅雨のある日のこと。
俺はいつものように常に不快指数が最大値のＳＯＳ団室で、
不快指数を上げさせるニヤケ面を前にボードゲームに興じていた。
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最初は普段使わない頭を使うと、知恵熱が出てさらに暑くなる、
と思っていたのだが、いかんせん相手が相手なので、
全く頭を使う機会がない。小学生の妹といい勝負、という所か。
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そんなことを考えながら、また一つ白星を稼いだ俺に、
この亜熱帯気候の中でも春の陽気を感じさせる声が聞こえてきた。
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「はい、キョンくん」
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「あぁ、いつもありがとうございます、朝比奈さん」
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渡された冷たい緑茶に口をつけながら、
麗しの天使に小さく頭を下げる。
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「うふ、長門さんもどうぞ」
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「……」
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片や風に鳴る鈴の様な佇まいでページをめくっていた文学少女も、
心なしか目線を湯呑みの方に向けていた。
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「はい、涼宮さんも」
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「ありがと、みくるちゃん」
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そして、今までの心地よいモノローグをぶち壊すくらいに、
エネルギーに充ち溢れた奴が渡された冷茶を三秒で飲み干す。
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本当に、毎日このローテーションの繰り返しならば、
俺ももう少し気楽に生きていけるんだけどな。
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「朝比奈さん、僕の分は……」
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「それにしても暑いわね。キョン、何とかならないの？」
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何事かを呟く古泉の言葉を遮るように、
ハルヒがいつものように無茶なことを口にする。
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「そうだわ！ここで流しそうめんでもやれば涼しくなるんじゃないかしら？」
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「ここ、って、この文芸部室か？」
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そして、その準備をするのは俺か？俺なのか？
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「そうよ、このＳＯＳ団室でやるのよ」
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わざわざ言い直すな。それと顔面全体喜色満面で、
『だから、さっさと準備しなさい』と表現するな。
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しかし、流しそうめんか。たしかに涼しげではあるし、
準備さえ気にしなければ手軽に納涼を感じることは出来るだろうが、
問題はこの部屋の主が許可を下ろすかどうかだ。
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暑苦しく騒ぎそうになるハルヒをスル―しつつそう思った俺は、
ページを破って食べそうなほど読書に夢中だった無口娘の方を向いた。
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「…………」
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オーケー。『本が濡れたら困る』とのことで却下だそうだ。
だが、『納涼を感じる手段を講じることには賛成』との、
譲歩の入ったお言葉も頂けたので、その範囲で何かをするべきかな。
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「わぁ、流しそうめんですかぁ？おもしろそ……」
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「ハルヒ、流しそうめんなんてしたらそこら中水浸しになっちまう。
もっと他の方法で納涼を感じた方が良いぞ」
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なぜか朝比奈さんが視界の隅でしょんぼりしているが、
さすがに長門を怒らせるわけにはいかないからな。
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「他の方法、ね。たとえば？」
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おっと、いきなりの丸投げか、団長さんよ。
どこぞの悪役顔政治家もびっくりな投げっぱなしジャーマンに、
俺の思考が一瞬止まりそうになったぜ。とはいえ、
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「たとえば、か。そうだな……」
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考えた所で何も浮かばないわけだが。
ここはいっそ『家に帰ってクーラーをつける』なんてのはどうだろう。
さぞかし涼しい気分を……まぁ、言ったところで却下されるだろうな。
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仕方ない、ここは我らが万能の頭脳、長門さんに聞いてみるか。
とりあえず、ハルヒが納得するような妙案はないだろうか。
なるべくこの部屋と俺に被害が出ない形で。
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「……」
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なるほど、『全員水着になる』か。確かに涼しいだろうが、
残念ながらこの部屋で水着を持っている人間がいるとは思えない。
そして、お前の情報操作で制服を水着にする、という意見は却下だ。
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「…………」
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確かに、お前や朝比奈さん、ついでにハルヒの水着姿は是非拝みたいが、
さすがに非現実的すぎるからな。あとブーメランて何の事だ？
お前は俺の水着をどうするつもりなんだ？
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とにかく、もっと手軽に涼しくなるようなことはないか？
何か本で読んだこととかあれば教えてほしいのだが。
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「………………」
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……なるほど、怪談話か。たしかに背筋も凍る話、
というのは夏の定番ものだな。少し早い気もするが、
これほどお手軽に納涼を感じるものもあるまい。
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しかし、そう簡単に涼しくなれるような物語があるだろうか？
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「……」
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なに？まずは試しにこの本を声を出して読んでみろ？
そうすれば納涼な気分が味わえるって？分かった。読んでやるよ。
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そうアイコンタクトをした俺は、長門から手渡された薄い本を広げると、
冒頭からゆっくり読み始めることにした。
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「えーと、なになに？『○月×日。今日は授業中に３回も前の席のＫに
話しかけることができました☆』」
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なんだ、こりゃ？日記風の物語か？
主人公の独白、にしてはやけに調子が軽いような。
まぁ、いい。読んでいけば納涼な気分を味わえるんだろう。
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「それと、『今日もＫの寝顔は素敵♪あぁ、もう舐めちゃいたい。
ほっぺたから耳周りまでその寝顔をたっぷり味わったら、
唇から舌だけ突っ込んで堪能したい☆あぁん』」
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なんだこいつ超怖え。
納涼とか言うレベルじゃねーぞ。
というか、こんなもん気味が悪くて読めるか！
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なぁ、長門。もっと他の物語を……
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そう思って万能宇宙人の方を振り向くよりも早く、
背後から暑さを吹き飛ばすくらい冷たい声が聞こえてきた……
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「ねぇ……どうしてあたしの××の中身を知ってるのかしら？」
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俺の体が涼しいを通り越して冷たくなろうとしたのは、
それから数秒後の話……
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#setlinebreak(default)

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