作品

概要

作者ながといっく
作品名長門さんの泥酔
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-01-06 (火) 22:30:25

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「ギョン!だいたいあんらはねぇ!いっつもいっふもだらひないのよ!なってないふぁ!」
 ぐでんぐでんになって俺にくだを巻いている、まともな発音も出来ないほど泥酔している馬鹿。
 誰かと言えば、もちろん我らが団長様、涼宮ハルヒである。
 おいおい、夏の合宿でもう飲まないと誓ったんじゃなかったのか?
 それに俺はそんなモビルスーツみたいなあだ名は持っていない。
「あによ!おひょうがつくらいのんらっていいひゃないのよ!」
 顔を真っ赤にし、呂律が回らなくなっても俺への説教は忘れないハルヒ。
 ここは長門のマンションで、ハルヒは見ての通りのていたらく。朝比奈さんと古泉は既に潰れてしまっている。

 

 ――やれやれ。
 盛大な溜息を尽きつつ、俺はなぜこんな事態になってしまったのかを思い出していた…

 
 

「初詣に行くわよ!」
 というハルヒの一声で新年早々SOS団全員集合させられ、市内の神社を無駄に5件ほど廻った大初詣大会の帰り道のこと。
 長門のマンションで新年パーティをしようとハルヒが言いだした。長門に迷惑じゃないかとは思いつつも、どうせ暇な正月だ。みんなで騒ぐのは悪くない。
 まぁ、ここまでは俺も乗り気だったと言えよう。

 

 さて、例のくじ引きの結果、ハルヒと朝比奈さんと古泉が買いだしに行き、俺と長門が部屋の片づけと宴会のセッティングをするということになった。
 ハルヒは微妙に不機嫌そうな顔をしつつ、
「二人きりだからって有希にエロいことしたら殺すわよ!」
 などと捨て台詞を吐き、大股でずんずん歩いていった。
 その後ろを朝比奈さんと古泉がついていく。古泉、荷物持ち頼んだぞ。朝比奈さんにジュース一本持たせたら許さんからな。

 

 しかし、谷口お墨付きのAランク美女である長門にエロいことか。
 なかなか魅力的ではあるが、如何せん俺にそんな度胸はない。まぁ、決行したところで長門にボコボコにされるのがオチだろう。

 

 長門の部屋は相変わらずきれいで、片付けるものなんてほとんどなかった。それでも昔と比べたらずっと生活感が出てきたと思う。俺は嬉しく思うぞ、長門よ。
 当然だがエロいことも何もなく片付けは終わり、俺と長門はこたつテーブルで本を読んでいた。
 長門に借りた本は存外に面白かった、こいつにはもしかしたら司書の才能があるんじゃないだろうか。

 

 雲行きが怪しくなってきたのはハルヒたちが買い出しから帰ったあたりからだった。
 夕食の材料やお菓子、お茶やジュースの類はともかく、明らかに20歳未満お断りな液体が大量に紛れ込んでいたからだ。
 チューハイにカクテル、日本酒に焼酎にワイン、挙句の果てにウイスキー。

 

「お酒がない宴会なんてつまらないわ」と、遊び盛りの大学生のようなことをのたまうハルヒ。
「どうやって買ったんだ」
「古泉くんに買ってもらったわ。みくるちゃんは無理だし、あたしでもハタチと言い張るには微妙だからね。古泉君なら背高いし、ハタチくらいになら見えなくもないし」
 古泉、お前もたまには反抗しろ。いくらハルヒのイエスマンでも法律に触れることやらすな!

 

 さて、3人娘特製の和洋中折衷おせち料理(言うまでもないが美味かった)を堪能し、お菓子をつまみながらこなした各種ゲームも終わりを迎えた頃。
 ついにハルヒがアルコールに手を出した。
 その時に至ってもまだ俺は甘く考えていた。買ってきてしまったものは仕方ない、まぁ少しなら大丈夫だろう…そんな考えはまさしく甘かった。黒砂糖並に甘かった。
 この時の俺はすっかり忘れていたのだ。夏の合宿で晒した醜態と、何事に関してもこいつが"少し"で済むような性格をしていないこと。

 

 そのわずか1時間後、冒頭お伝えしたような惨状となるわけだ。
「あんらはらんいんとしてのこほろがまえがらってないろよ!」
 もはや目の焦点すら定まっていないハルヒ。頼むから長門の家で吐くなよ。
 しかしなんつー格好だ。スカート履いてるんだからそんなに大股開くな。見えちまうぞ。
「悪いが何を言ってるのかさっぱりわからん。それに飲みすぎて我を忘れるような奴に説教されたくはないぞ」
「うっひゃい!バカギョン!」
 俺への罵倒の言葉を最後にハルヒは床に突っ伏し撃沈した。
 ようやく潰れてくれたか…と、少しほっとしつつ部屋を見渡す。

 

 朝比奈さんはチューハイ一杯でフラフラ状態となり最初に潰れてしまった。今は部屋の隅で熟睡している。どうやら長門が毛布をかけてやったらしい。
 古泉の野郎は日々のイエスマンぶりが災いしたらしく、ハルヒに次から次に飲ませられ、早々とノックダウンした。ざまあみやがれ。こいつに関しては長門の毛布を使うのも勿体ないので窓際に転がしておいた。風邪引いても俺は知らん。
 ちなみに俺はハルヒの相手をなるべく古泉に任せてちびちびと飲んでいたため、今のところさほど酔ってはいない。

 

 さて、ハルヒをこのままにしておくわけにもいかないな。
 長門に手伝ってもらいハルヒを朝比奈さんの隣に寝かせてやる。こいつにはタオルケットくらいはかけてやるか。

 

 少し酔っていたのか、少々悪戯的な思考が俺の脳裏をよぎる。今ならハルヒの奴にいたずらしてもバレないんじゃないか?
 積年の恨み、ちょっとくらい胸でも揉んでやろうかなどと不埒なことを考えていると、
 すぐ脇で長門が俺をじっと見ていることに気付いた。ちょっと怖い。おい、冗談だぞ?

 

「……そう」
 こいつは酔ってないな。相変わらず平静としている。
 そういえば、孤島のときもあれだけバカスカ飲んだのにケロリとしていたな。
「体内でアルコールを完全に分解している。
 そのためエチルアルコールによる脳の抑制作用も、アセトアルデヒドによる中毒作用も起きることはない」
 いくら飲んでも絶対に酔わないってことか?
「絶対というわけではない。特別な情報操作を行わなければ酔うことは可能」
「情報操作無しなら、その身体の人間と同じくらい酔うってことか」
 頷く長門。それを聞いて、この万能宇宙人が酔うとどうなるんだろうという疑問が浮かんできた。
 そのちょっとした知的好奇心を晴らすべく、俺は長門にある提案をしてみた。
「長門よ、もし出来るんなら、少し酔ってみないか?」
「わたし自身も酩酊状態に対する興味はある。
 しかし、その状態に陥った場合、わたし自身にも行動が予測不可能。もしかしたらあなたに迷惑をかけるかもしれない」
 長門はそう淡々と述べ、一息置いてから、
「それでもいいなら」
 構うもんか。こんなちっこい女の子が酔ったところで大して被害は出ないだろう。もし潰れたらちゃんと風邪ひかないように毛布かけてやるから。
 長門は少し悩むように首を傾け、5秒ほど俺の目をじっと見つめたのち、
「わかった。アルコールの分解能力を同体型の有機生命体の水準に設定する」

 
 

 結果から言おう。なんだかんだで俺も酔っていたらしい。
 俺の考えはまたしても甘かった。わたあめくらい甘かった。

 

 宇宙人という属性を除けば長門は小柄で華奢な女の子であること。
 アルコールの許容量は少なからず身体の大きさに比例すること。
 既に長門が何本もの酒を空けているということ。
 それらについて、俺はまったく考慮していなかった。

 

 突然長門がフラつく。
 支えようと思い手を出したが、長門は俺の手は借りずどうにか自分でバランスを取る。
 先程までの直立姿勢はどこへやら、微妙に左右にゆらゆらと揺れる長門。

 

「長門?」
「………なに?」
 なんかいつもより3点リーダが多いような気がするのだが…
「どうだ、酔ってきた感じは」
「………あつい」
 そう言うと、長門はのそのそと上着脱ぎだした。
 真冬だけあって、即下着姿とはいかないが、それでも普段の長門からは考えられないほど露出が増える。
 よく見ると、普段は真っ白な肌には赤みが差し、目がとろんとしている。どことなく"あの世界"の長門を思い出させる。
「そ、そうか」
「………そっけない」
 そっけない?長門の口からそんな言葉を聞く日が来るとは思わなかったぞ。
 それに、そっけないのはどちらかというといつものお前じゃないか?
 内心動揺を隠せない俺に構わず長門は喋りつづける。
「……いつもそう…なんで気付いてくれない…」
 俺はそんなに長門にそっけない態度を取ってたか?
 それに気づくって何にだ。俺が何か見落としていたか?

 

「………わたしに魅力がないから?」
 思わず吹きそうになった。
 一生かかっても長門から聞けないだろうと思っていた台詞をこうも唐突に聞くことになるとは。
「……確かに涼宮ハルヒや朝比奈みくるのように豊満な肉体はない…」
 普段は全く興味がないような顔をしていても、実はそういうことを気にしてたのか。ちきしょう、可愛いなこいつ。
「…でも、わたしは着痩せするタイプ……だから…………」
 だから?
「脱いだら……あなたが思うより……あるよ?」
 そうか、長門は着やせするタイプなのか…というか長門さん、なんか口調が変わっているんですが??
 おい脱ごうとするな!もう一枚脱いだらヤバいぞ!
 あたふたしている俺にはお構いなしに、長門は頬を膨らませ、
「おっきいほうが好きなら情報操作でおっきくする」
 むくれている長門なんて初めて見た。こいつは酔うと感情が溢れ出るタイプなのか?
 とりあえず、そんなことに情報操作を使われても困る。
「長門よ、大きい胸につい目が行くのは男の性ってやつだ。目が行くからって胸が大きい女にしか興味はないってことはないんだぞ。
 それに、長門は今のままでも十分可愛いんだから大きな胸なんか必要ないと思うぞ」
 我ながら恥ずかしいセリフだ。
 多少なりとも酔っているから言えるものの、きっとシラフじゃ無理だな。

 

「……ほんと?」
 長門よ、赤面でその上目遣いは反則だ。
「……ほんとに可愛い?」
 この長門に可愛くないなどと言える奴がいたら出てこい。
 今の長門からは朝比奈さんに匹敵する――いや、今ばかりは朝比奈さんすら敵わないであろうほどの可憐さがあった。
 なんというか、庇護欲をくすぐられるというか、お持ち帰りしちゃいたいというか。いや、しないけどさ。
「ああ本当だ。長門は可愛いぞ」
「………そう」
 優しく微笑む長門。
 ああ、俺はその笑顔が見たかったんだ。"俺の長門"の笑顔が。

 

ふらっ

 

 突然、長門が体が揺れ、俺の方へと倒れ込んできた。さすがに限界が来たのか?
 とっさに両手を広げて受け止める態勢を整える。
「おい、大丈夫か?」

 

ちゅ

 

「!!!???」

 

長門を受け止めようとしたら、なぜか俺の唇に柔らかい感触が。
通俗的な表現を使用するなら、ちゅーに該当する。って、物真似してる場合じゃない。

 

つまるところ、長門に唇を奪われた。
もしかすると、いや、もしかしなくても、長門のファーストキス……
酔ってるからって後で後悔するような真似はよ……せ…?

 

トクン

 

 その時、身体の内側で地震が起きたような妙な感覚が俺を襲った。
 なんだ、これは、急にフラっときた…
 それに鼓動が速く…体も熱い……

 

「………あなただけ酔わないのはずるい」
 長門?俺に何かしたのか?
「………わたしと同じ量のアルコールを摂取してもらった……さっきのキスで」
 さっきのあれで長門に何かをされたらしい。
 それにしても長門は何て言った?わたしと同じ量?
 俺は必死に長門の近くに綺麗に並んでいる缶を数える。視界が歪む。
 チューハイにビールに…そういえばワインも飲んでたな、ウイスキーと焼酎も…
 やばい、数えている間にも頭が回らなくなってきた…

 

「よそみしないで…」
 長門の両手が俺の顔を挟み、視線が強制的に長門の真正面へと戻される。
 不揃いなショートカット、整った顔、雪のように白い肌には少し赤みがさしていて、俺をじっと見つめる漆黒の瞳は、何もかもを吸い込んでしまうかのような深さがあった。
 ……あれ?長門ってこんなに可愛かったっけ?
 ずっと見てきたのに気付かなかった…
 長門かわいいよ長門…

 

「……こっちに来て」
 唐突にそう言うと、おぼつかない足取りで襖のある方向へと歩き出す長門。
 言われるがままについていき、その襖をくぐりその部屋へ入る。
 どこかで見た和室。あれ、ここって俺と朝比奈さんが寝てた部屋じゃ…?
 あれ、長門は一体どこに……
「……こっち」
 振り向くとそこには――

 

「……きて」

 

 ―――布団に身体を投げ出し、両手を広げて俺を見つめる長門がいた。

 

「……好きにして」

 
 

 抗える、わけがない。

 
 
 

 翌日のこと。
 俺はフローリングの上にパンツ一枚で正座させられている。死にたくなるくらい屈辱的な状況だが、事情が事情なので仕方ない。むしろパンツだけでも履かせて貰えただけありがたいかもしれない。
「すまん、全く覚えていない」
ハルヒの追及にしらを切る作戦をとる俺。もちろん嘘だ。夢のようなひとときであり俺の卒業の瞬間でもある。いくら酔っていても忘れることなど出来るはずがない。
「ふざけんな!殺すわよ!!」
 眉間に皺を寄せ、青筋をぴくぴくとさせ、本気でブチ切れていらっしゃるハルヒ団長様。もはや顔芸の域だな。
 さて、なぜこんなことになってしまったのだろうか。

 

 泥酔した長門の誘惑に抗えなかった俺は、同じ布団で長門と一晩を過ごした。
 無論、いつぞやの時間凍結の時とは違い「寝るだけ」とはならなかったことは言うまでもない。
 まさに人生最高の瞬間であり、もし今死んでも悔いはないと思える程だった。ちなみにこの件についてのソースを問い合わせても無駄である。

 

 さて、ここからは俺の想像なのだが、朝ハルヒが起きると俺と長門がいなかった。ハルヒは不思議に思い、当然俺たちを探そうとするわけだ。
 いくら長門の部屋が広いと言っても、寝ることが出来るスペースは数少ない。いま俺が正座させられているリビングと、そこから襖で区切られた和室くらいである。
 小学生でも出来るであろう簡単な推理である。二人がいるとすれば和室しかないのだ。
 こうしてハルヒは首尾よく俺と長門を発見する。
 素っ裸で抱き合ったまま寝ていた俺達を。

 

 ハルヒはその光景を、俺が酔った勢いで長門を無理やり襲ったと解釈したらしい。
 当然激昂したハルヒはいきなり寝ている俺の髪の毛をつかんで無理やり引き起こし、ノンストップで俺の顔面に強烈な一撃を喰らわせた。しかもグーで。
 しかしそんなものでハルヒの怒りが納まるわけはない。強烈な痛みで目が覚めたものの、未だ状況が理解できない俺に構わず、全身にくまなく殴る蹴るの暴行を加えた。
 本当に怖かった。俺のトラウマランキングで朝倉と同率首位を与えてもいいくらいだ。
 どこをどう殴られてどう蹴られたか覚えていないが、ともかく男の急所だけは念入りに蹴られまくった気がする。
 怒り狂うハルヒを古泉が文字通り体を張って必死に止めてくれたため、なんとかこの程度で済んだものの、下手したら本当に殺されかねない勢いだった。スマン古泉。今度はちゃんと毛布かけてやるから。
 というか、あれだけ殴られて口の中が切れたくらいで済んだのは奇跡だな。
 それに、最初の一発以外は思ったほど痛くなかった。あれだけ股間を蹴られたら気絶してもおかしくないであろうに。
 むしろ、巻き添えであちこち叩かれた古泉のほうがよほど痛そうな顔をしている。
 ……きっと、長門が宇宙パワーでこっそり守ってくれたのだろう。

 

 さて、怒り冷めやらぬまま、物凄い形相で俺を怒鳴りつけるハルヒ。
「この大馬鹿キョン!!覚えてないで済むと思ってんの!?
 あんた、有希に何したと思ってんのよ!?レイプよ!犯罪よ!ああ、もう恥ずかしいわ!あたしの団から犯罪者が出るなんて!!」
 嘆いたり怒ったり頭を抱えたりと大忙しのハルヒ。
 いや、どちらかというと長門が誘ってきたような感じだったし、少なくともレイプってことはないだろうが…まぁ、そんなこと信じてもらえたら苦労はしない。

 

「涼宮さん、彼も反省していることですし…それにお酒を買ってきた僕たちにも責任があります」
 顔を青白くさせながら必死でハルヒをなだめる古泉。きっとこの後のバイトは大変なことになるだろう。
 スマン古泉。風邪引いてないようでなによりだ。
「そうですよぉ〜きっとキョンくんもお酒のせいで狼さんになっちゃったんですよ〜」
 朝比奈さん、フォローにならないフォローをありがとうございます。悲しいのでそんなケダモノを見るような目で見ないでください。

 

「ふんっ」
 ハルヒはまるでゴミ虫でも見るような目で俺を睨みつけた後、
「有希、大丈夫?この馬鹿に酷いことされて辛かったわよね?痛くなかった?」
 優しげな声で長門に問いかける。チキショウ、なんだこの不条理は。
「大丈夫。乱暴なことはされていない」
 落ち着いた声、落ち着いた表情で答えるのはいつもの長門。
 どうやら二日酔いはしていないようだ。酷いことはしていないつもりだが、もしかしたら長門は痛かったかもしれない。
 なんせ俺も長門も初めてだったからな。行為に夢中でそこまで気遣ってやれなかったというのものある。
「本当?この馬鹿をかばうことないのよ?有希がこいつと一緒にいたくないならすぐにキョンをクビにしてやってもいいのよ?」
 クビは勘弁してくれ。放課後の居場所がなくなる。
 前から思っていたが、ハルヒの長門に対する気遣いは尋常ならないものがある。
 ハルヒの目には長門はどのように映っているのだろうか。できればその気遣いを他の団員、特に俺にも見せてほしいところなのだが…
「わたしも悪い。自分の許容量を超えて飲んでしまったり、彼の目の前で無防備な格好をしたりとわたしにも落ち度があった。
 それに、彼は本当にわたしに対して乱暴な行為をしていない。だからあまり彼だけを責めないで欲しい……心配をかけてすまない」
 ところどころに真実を交えてフォローを入れてくれる長門。
「まぁ、有希がそういうなら…」
 こいつも長門の意見は割と素直に聞く。
 普段しゃべらないと言葉の重みが違うのだろうか?いっそ俺も無口キャラになってみようか。
「馬鹿。あんたが無口になったって誰も相手にしないわよ。大体そんな無駄口叩くなんて、あんた本当に反省してるの?」
 やばい、せっかく静まりかけた火山を噴火させちまったかもしれん。
「しているとも。長門、この通りだ、すまんかった」
 長門に土下座する俺。情けないことだが背に腹は変えられない。
 そんな俺を申し訳なさそうな目で見る長門。俺だけが責められることに負い目を感じているのかもしれないな。

 

「パンツ一枚で土下座なんて、末代までの恥ね…」
 がそうさせてると思ってるんだ。
「そんなのあんたの自業自得じゃないのよ。
 そうだ、有希、キョンに何かしてもらいたいことある?なんでもいいわよ。1年間くらい有希の奴隷になってもらう?」
 怒りを収めたと思ったら、今度は物騒なことを言いだすハルヒ。
 ……だが、長門の奴隷にならなっていいかもしれないな。
 長門がどんな生活をしているのかは気になるし、飯くらい作ってやってもいい。
 まぁ、長門なら奴隷にするとか無茶なことは言わないだろう。出来れば軽めの罰ゲーム程度で済ませてくれるとありがたいのだが。

 

「………」
 長門は考えるように頭を傾けている。その仕草がまた可愛らしい。
 ――こんなことを考えること自体、もう長門の奴隷になったようなものかも知れんな。
 酒の勢いっていうきっかけが良いものなのかどうかはわからんが、俺のことだからこんなことでもない限り、自分の気持ちに気付かなかったろうしな。
 白状しよう、俺は長門が好きだ。長門の恋の奴隷と言ってもいい。

 

 俺がいろいろ考えている間に長門のほうも考えがまとまったのか、
「では、彼に責任を取ってもらう」
 と宣言する長門。

 

 責任、か。
 いったい何をすれば責任をとったことになるのだろうか。いずれにせよ、この雰囲気では何を言われようと従うしかないだろう。
「わかった。なんでも言ってくれ」
 長門はこちらに顔を向け、黒曜石のような曇りの無い瞳で俺を見つめる。

 

「責任をとって、わたしをお嫁に貰ってほしい」

 
 

 ああ、まだまだ長い一日になりそうだ……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:31 (1868d)