作品

概要

作者Thinks
作品名長門さんとキョンの安直な正月  (挿絵あり)
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2009-01-05 (月) 22:31:35

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

〜長門さんとキョンの、安直な正月〜
 
 なんとなく、やたら寒くなってきたような気がする一月初旬、
ようやく雪山から帰り着き、正月気分に浸り捲くっていた俺は、例のごとく電話一本で呼び出され、
俺らの町からさほど離れていない場所にある神社に来ており、
鳥居の下で五人が集合して、改めて十文字の挨拶をしたところなのだが。
 ちなみに時刻をアバウトに言えば、昼過ぎである。
 
「有ー希。あんたもちゃんと言いなさいっ」
 ハルヒが新年一発目の無茶を言い始めた。
「無茶って事は無いわ、ほーら、神様も怒ってるわよ!」
 古泉曰く、おまえが神で、実際ご機嫌を損ねているようだから、その解釈は間違ってはおらんのだろうがよ。
 
「………」
 誰にも解らんだろうが、俺には解るぞ長門。ちょっと拗ねてるだろ。そんな顔したらせっかくの晴れ着がもったいないぞ。
 そんなわけで、だ。ハルヒ。こいつはちゃーんと会釈をしてた。俺は見てたぞ。その辺で勘弁してやってくれ。
 雪山で疲れてんだよ、こいつも。
「うーん、しょうがないわねぇ………」
 
 この神社はなかなかの由緒を持つらしいのだが、流石に三が日も過ぎるとそれほどの人出も無く。
「さて、順番が来たようですよ」
 ああ、そうだなあ。しかし此処は、基本、厄除け神社だぞ? 新年早々厄除けか?
「ですよ。僕たちには、もっとも必要な効用かと思われますが」
 効用って。神様を漢方薬か温泉見たいに言うな。しかし、そうだな。そう言えばそうだよ。じゃあ、しっかりと厄除けしとくか。
 
 各自がそれぞれの想いを込めて厄除けを祈願したあとは、その祈願内容を追求されてみたり、おみくじを引いて盛り上がったりした。
 そして、鳥居をもう一度潜ったところで、
「あんたにはこれがお似合いよ!!」
「あは、ははは、、、は。応援してます」
 俺はハルヒと朝比奈さんが折半して買ってきたという、恋愛成就のお守りを押し付けられ。
 SOS団は、この神社の立地条件により現地解散となった。
 
 ハルヒと朝比奈さんは路線が異なる。そして古泉は途中の駅で、
「長門さんをお任せしましたよ、では」
 と、一言残して降りていったから、長門と二人になってしまった。この辺り、実に安直な展開である。
「………」
 
 ともかく、だ。
 程なく、電車は俺が自転車を置いており、長門の住むマンションの最寄り駅に到着し、
俺は、カラコロと音を立てながら歩く晴れ着姿の長門を右にして、残り少ない道を歩いている所だ。
 どうだ、羨ましいだろう。
「………?」
 いや、誰に言っているわけでもないから、気にしないでくれ。
 
「………先ほどの」
 ん?どうした。さっきの、って、ああ、お守りか?ハルヒも朝比奈さんも、何の冗談でこんな物押し付けてきたんだか。
「それの効用は?」
 効用、ってかまあ、縁起ってのかね。彼女ができるように、とか、結婚できるように、とかそう言うお守りだ。
「それならば」
 ああ、俺らにゃ必要ねえだろ?
「………そう、ね」
 
 ね、って。なんか別キャラ見たいだってツッコミが来そうじゃねえか。でもちょっと可愛かったぞ。
なんてな事を言いながら、長門の肩を叩いたりなんかしてるうちに、また程なく、マンション前に着いた俺たちである。
 じゃあ、ここで、だな。と言おうかと思っていた俺に、半分は期待していた一言がやってきた。
「……お茶、飲んで行く?」
 そ、そうかっ? じゃあ、遠慮なく一杯だけ。身体も冷えてるしなっ。
 
 俺が、別キャラだと思われかねないテンションになってしまったが。
 俺と長門は、主にハルヒの持ち込んだ物により、少し殺風景から脱出した長門の部屋に上がりこんだ。
 
 上がりこんで直ぐ。真新しいパソコンデスクと、やたらでかいタワー型筐体が目に付いた。
 おまえん家にもパソコンあったのな。何でそんなにでけえんだそれ。部室のやつよりでけえぞ?
「コンピューター研究部から支給された。デイオブサジタリウス4の開発に使用する」
 あれ、続編作ってるのかよ。誰が遊ぶんだそれ。
「この娘にはGPGPUを搭載しており、今後、クラスタ演算やレイトレーシングなどに利用できると推測される。
デイオブサジタリウス4は、フル3DCGを使用したネットワーク対戦型リアルタイムシミュレーションであり、GPGPUは非常に有益な技術。
また、これを使用すれば、大規模な分散計算も可能であり、これにLarrabeeを含めると、
有機生命体の情報処理能力が飛躍的に向上するため、総合統合思念体も期待を持っている」
 
 それ、日本語か?意味が解らない。特に、パソコンをこの娘と言う辺りがさっぱりだ。 
 
 俺がさっぱりわからない風のアクションを取ったからか、長門はそれ以上パソコンの事で何も言う事は無かった。
「………」
 晴れ着に身を包まれた長門を眺めつつ、その長門が淹れた、無言で置かれた茶を啜る。なんとなーく心地の良い沈黙の時。
 その中に、ヤケにはっきりと、
 ぐう。
 音がした。
 
 なんだ、腹減ってるのかよ、おまえ。さっき、出店か何かで食べてくりゃ良かったのによ。
「………着物を汚すと後が大変」
 そうだな。じゃあさ、たまには俺が飯作ってやるよ。冷蔵庫に何か入ってるか?
 俺は、台所に向かおうと立ち上がったのだが、長門が目の前に立ち塞がって言う。
「だめ」
 なんでだよ、これでも俺、少しは飯作る事もできるんだぜ? 少なくとも、喰えねえ物にはならねえよ。
「この国の言葉に、こんな言葉がある。男子厨房に立つべからず。あなたもその言葉に従うべき」
 何時の時代の話だよ。良いから。俺に何か作らせてくれ。
「…………」
 いつもより少し長い沈黙で、抗議をする長門。
 じゃあ、二人で作るってのはどうだ。
 それは見たことがあるとか、安直でベタだって言うのが居ても、それはそれで良いから。
「わかった」
 
 長門の先導で台所に行き冷蔵庫を開けると、そこには割と贅沢に食材が揃っていた。
「なかなか頑張ってるみたいだな?」
「………たまに」
 そう言うわりには、大根、ニンジン、ごぼうなんかの根菜やら白菜、餅まで入ってるし。
 餅があるから、雑煮にでもするか?
 俺がそう言うと、長門は少し上のほうを向いて、考えるような仕草を見せた。
「食肉が無い。豆腐も欲しい。薬味に柚子などがあれば」
 はいはい。それじゃ買いに行くか。近所のコンビニで良いだろうよ。あ、でも柚子なんかあるかね?
「その前に、着替えを。この服では行動に制限が科される」
 料理もするしな、それじゃおまえが着替えるまで、外で待ってるから。
 
 誰だ、帯を解くのならそれもベタに行け、なんて言ってるヤツは。
 
 俺が俺の中の悪魔と戦っているうちに部屋から出てきた、例のごとく、制服にダッフルコートに着替えてしまった長門を連れて、駅前のコンビニに歩く。
 まだ街は正月気分だ。だから人通りも車も少ない。この広い道を二人で使っている感じがする。なかなか良いもんだ。
 しかし、右を綺麗な姿勢で歩いている長門は、どうやらまだ何か考えているようで。
「………雑煮には、各地で種類があると聞いている。この地方ではどのような物を作成すれば良い?」
 ん、ああ。この辺りの、ってなもんか良く解らんのだけども、
 俺の家の雑煮は、鶏肉に昆布出汁で、野菜は適当だな。
「そう。ならば、味噌は必要ない」
 だな、俺ん家じゃ入れたことねえし。あと、柚子も、無けりゃまあ、ネギでも散らしゃ良いだろうよ。
 
 コンビニの棚を眺めつつ、俺は思った。
 最近のコンビニには、乾燥粉末柚子皮なんてな物も置いてあるらしい。
 しかし、鶏肉は、無い事は無いがさくっと揚げられており、豆腐も良く出汁が染み込んでいる様な感じのものしかなかった。
 まあそうだよなあ、今晩の飯を作るヤツが買いに来る所じゃねえもんな。
「………この店舗には、更なる食材の陳列を要求する必要がある」
 待て、長門、店員さんに無茶を言うな。柚子の皮だけでも良いだろうよ。
 で、フードを掴んで阻止した俺なのだが、何でおまえはそんなに器用に、そのまま歩く仕草がキープできるんだ?
 そんなこんなが有ったが、肉にはおでんのバラ串、豆腐も焼き豆腐(80円)を使用するという事で長門を納得させ。
 俺たちは、短い帰途に着いたのであった。
 
 再度部屋に上がりこんだ俺は、直ぐに調理に取り掛かることになった。
 仕方が無いだろ。帰り道で、両手に下げたおでんの匂いにだかなんだか知らんが、何度も腹を鳴らす娘が居るんだから。
 こいつは基本が無言だから、発する音が良く聞こえて困る。
 
 それほど広くない、長門の部屋にあるキッチンで、俺はニンジンの皮を剥き始めた。長門には白菜を刻んでもらっている。
 …の、だが。
 長門。俺らが作るのは二人前の雑煮だぞ?
 丸ごと一個の白菜をザク切りにしてどうすんだ、今からキムチでも漬けるのかおまえは。
「必要十分」
 長門はそう言うと、冷蔵庫に入っていたニンジンと、白菜をもう一個持って来た。
 追加かよ。焼き豆腐10個、バラ串10本、の時点で気が付くべきだったか。まさか、あの徳用パック餅も全部使うつもりじゃあるまいな。
 まあ、良い。こいつの満足なように作ってやろうじゃないか。
 しかしこのニンジン、でけえな。イチョウ切りだと口に入らねえんじゃないかこれ。
「この鍋を使用する」 
 俺がサイズで言えば特大に当たるニンジンを眺めている間に、何処からか長門が取り出していた鍋、サイズは小さめのものではあるが。
 長門。それは鍋とは言わない。ズンドウって言うんだ。って、何でそんなもん持ってるんだよおまえは。
 やれやれ、付き合うようになって、こいつの大喰いには何度か驚かされてきたけれども、また今日もそう言う事になりそうだ。
 
 出来上がった雑煮は、俺の家なら正月三が日分くらい、それだけを食べ続けられるほどはある量だった。美味そう、なんだけどなあ。
 ぶっちゃけ、割と詰っていた冷蔵庫の中身プラスアルファがそのまま鍋の中で湯気を立てているわけだし。
 餅はどうするのか訊いてみたら、
「焼いて入れるほうが良いと思われる」
 とのことなので、豪勢に焼餅三十個入りだし、ズンドウのままコタツの真ん中に置かれているもんだから、
座って居ちゃ、長門の姿も雑煮の姿も見えんと言う有様だ。何処の大家族だよ、これだけ雑煮を作る家は。
「………」
 ぐー。
 解った解った。それじゃ早速いただこうか? じゃあ、いただきます。
「いただき、ます」
 
 正月特番の大食い対決のような状況になってきたが、俺と長門は二人で作った雑煮を食べる事になった。
 お互いの姿が見えないという問題は、コタツの一辺に二人で座ることで解決した。
 長門は餅を食うのに慣れていないのか、最初は伸びる餅と格闘する一幕もあったのだが。
 慣れてしまえば長門のペースであるから、次々と椀を空け、また立ち上がり、次を自分でよそって食べ続ける。
 目の前にあるのに立ち上がらなければよそえないのは、そりゃズンドウに入ってるからだ。
 餅と格闘したのは可愛いと思った。だから、ふーふーするとかもやって欲しいと思うのは俺だけか?
 
 かくして。俺の胃袋は、五個の餅に始まって大量の野菜と少々の豚肉によって満たされてしまった。
 これ、すっごい美味いんだけども。もう入らねえや。
 エネルギー充填120%って、昔あったよなあ、とか思いながら、俺は未だ雑煮を食べ続ける長門を見ていた。
 椀が空いて次第、セルフサービスでお替りをする格好を取ったもんだから、
お互い、今何杯目か、なんてことは全く不明だが、ズンドウの中身はまだ残っているようで。
 なので、音も立てずに椀の中身を飲み干した長門が、
「………」
 無言で手を差し出してきた。やっぱ、次をよそう、と言うことなのだなあ。だが、俺はもう、満腹だぞ。
 おまえの食べっぷりを見てると、もっと喰えそうな気がしなくも無いんだがよ。
「………もう、無理?」
 ああ、限界だ。
 そう言って、膨れた腹を叩いて見せた俺なのだが。長門はこう言って、更なる一杯を勧めてきた。
「情報操作を施す事により、あなたの消化器官の許容量を増す事ができる。そうすれば、まだ」
 いやいやいやいや、待て待て待て。そこまでして喰わなけりゃいかんのかよ。ズンドウを空けないといかん理由を教えてくれっ。
「………」
 いや、そう寂しそうにされても。
 解った、後三十分、此処に居させてくれ。そうすれば後一杯、いや二杯はいけるから。
 
 俺の説得により、俺は休憩時間となったが、長門は雑煮を食べ続けていて、餅を伸ばしつつ啜っていた。
 こいつの腹はどうなってんだ、まったく。
 
 しばし、ズンドウから眼を逸らして長門の部屋を眺める事にした俺は、腹が苦しいから横になっても良いかと提案する事にした。
「わたしはかまわない」
 とのことなので、遠慮なく横になる事にする。そして直ぐに長門が次をよそいにかかり、
俺はあることに気が付いた。と同時に、
 
 意識が、飛んだ。ああ、赤いモノと共に吹っ飛んで行った。
 
 
 俺の目が覚めた時、長門の顔が目の前にあった。
「………大丈夫?」
 ……ああ。大丈夫だ。それほど長い時間、吹っ飛んでたわけでもなさそうだし。
 膝枕を受けながら、そう言った俺は、それに続いて長門に説教をすることになったわけだ。
 
「なんでおまえ、はいてない、んだよ!? 鼻血吹いちまったじゃねえか!!」
 鼻に詰められていたティッシュを取り除きながらの俺の台詞に、長門は平然と答える。
「下着?」
 そうだ、そうだよ。ってか俺、そんな状態で膝枕……。勘弁してくれ。
「洗濯機が故障した。年末年始だったためか、未だ修理が完了していない。十二日目になる今日、着用できる下着が無くなった。故のこと」
「故のこと、じゃねえよ! パンツくらいならそれこそ、そこらのコンビニにもあるだろうがっ!」
 起き上がっても何か鼻に違和感があるモンだからちと上を向いて小言をたれる俺。
「………同じ柄の下着を穿く気にはならない……」
「なら、遠出してでも買ってくれっ! ってか、手でも洗濯できるだろ!」
「……どうやって?」
「どうやって、って。おまえ、もしかして洗濯は洗濯機でしか出来ないと思ってたのか?」
 こくり、と頷く長門。
 
 それから。
 長門ん家の風呂場に入った俺は、長門に手での洗濯の仕方を教える事になった。
 いつぞや、ハルヒが脱ぎ散らかせたその御本人と朝比奈さんの、生暖かーい下着を片付けた事はあったが。
 付き合ってる娘のパンツを洗うって事にはなるとは思わなかったよ、この年で。
 
 しかし、基本の白にリボン、黒はおまえにはどうかと思うが、単色でのバリュエーション群は普通だろう。この良く解らない、ハルヒみたいな黄色いのを付けたキャラ物、いちごパンツなんかも良しだ。
 しかし、ピンク、黒、水色、緑色と、
この四色揃ったストライプのヤツは、こだわりってヤツですか?
 ……まぁ、良い。
 こうやって、洗剤で揉み洗いすりゃあ、綺麗になるんだよ。解ったか?長門。
 いや、今は見てるだけで良いから。だから、しゃがむな。
 
 
 やれやれ、今年はこいつに、恥ずかしがる事、ってのを教える必要が有りそうだ………。
 
                                             おしまい。
 
 
「しかし、長門よ。ま、あー、はいてない、状態でコンビニまで行ってしまったわけだが、寒くはなかったのか?」
「……少し、スースーする。でも、問題ないレベル」
「そうなのか。ま、無茶はすんな……って、脱ぐなあぁーーーーーーっ!!」
 
 
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ぬぐなーっ

 



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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:31 (1806d)