作品

概要

作者ながといっく
作品名長門さんの空腹
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-12-28 (日) 03:35:06

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 ぐぅ

 

 昼下がりの文芸部室。
 静寂に包まれた空間に似つかわしいとは言えない音が部室内に響いた。

 

「………」
「………」
 今この部屋にいるのは俺と長門だけ。
 ということは、必然的にというかなんというか、今の音は長門の腹の音ということになるんだろうが、いや待て、長門が腹を鳴らすなどと、そんなことが起こった日には天変地異の前触れなのではないか。
 むしろ、おかしいのは俺の耳なのではないか?いや、幻聴にしてはやたらとはっきりと聞こえた。
 そうか、ハルヒの仕業か?そうだろうな。そうじゃなければ長門が腹を鳴らすなんてことは――

 

「聞こえた?」
「ひゃい!」
 我ながら恥ずかしい声を出しちまった。
「な、何のことだ長門?何か俺に話したのか?ぼーっとしてたから聞き逃しちまったかもしれん」
 必死に言い逃れる俺。我ながら情けないぜ。
「………」
 あのー長門さん?そんな目で見ないでいただけませんか?
 なんかこっちが悪いことをした気分になってくるんですが…
 しばらくいつもの無表情――心なしか、元気がないように見えるが――で俺を見つめたあと、長門はゆっくりと口を開いた。

 

「75時間26分に渡って食事を取っていない」
 驚愕した。
 なぜだ?また敵の嫌がらせか何かか?何で俺たちに相談しないんだ――
「あなたのせい」
「はい?」
 意外な言葉が長門の小さな口から洩れた。
「先日あなたが言われた通り、情報統合思念体に"くそったれ"と伝えた。そうしたら怒られて今月の食費を振り込んで貰えなかった」

 

 正直、悪く思う気持ちや、長門の親玉に対する怒りより、呆れが先に来た。
 宇宙を統括する存在にしてはやることがせこいな。
 そもそも、そんなことしてハルヒの観察に支障が出たらどうするんだ。

 

「もともとインターフェースは食事を必要としない。活動に必要なエネルギーは常に供給されている。生命活動及びに支障は無い。しかし空腹感までは制御できない」
「得意の情報操作とやらでなんとかできないのか?」
「情報統合思念体に、食物生成に関する情報操作に制限をかけられた」
 どうやら、随分深刻な親子喧嘩らしい。
 そりゃそうか、実の娘に自分を消し去られ、挙句"くそったれ"じゃな。
「これ以上食事の出来ない生活が続けば、私の中にエラーが蓄積し、以前のような暴走を引き起こす可能性がある。今の私には脱出プログラムを用意する気力もない。非常に危険」

 

 またも世界の危機。
 一人の少女の空腹で世界が終わるとは、これじゃ世界の大安売り、大バーゲンセールだ。随分安くなったなぁ、世界。
 しかしながら、これは俺にも大いに責任がある。なんとかしてやらんとな…

 

「…長門、今日うちで晩御飯食ってくか?
 いつもお前が食ってるような量は作れないかもしれんが。うちの母親も事情を話せば喜んで作るだろうし」
「……いいの?」
 長門が当社比150%くらいに目を輝かせて俺を見る。
「ああ、もちろんだ。いつも世話になってるお礼だよ。そもそも今回は俺に責任があるみたいだしな」
「……わたしという個体はあなたにとても感謝している。
 お礼にわたしにできることならなんでもする。あなたはわたしに何をしてもいい。好きにして」

 

 ずいぶん大袈裟だな。食事をとらなくても生きるのに支障はないんじゃなかったのか。
 あと、その言葉は男にいらぬ誤解を招かせるから言わないように。

 

「誤解ではないから問題ない」
「ん?なんか言ったか、長門」
「なにも」

 

 その後、宇宙規模の親子喧嘩はあっけなく収束した。
 話によると、俺の家で食事を食べたことが長門の親玉にとってはえらく堪えたらしく、その晩に長門の口座に半年分の食費が振り込まれていたという。
 宇宙一の親馬鹿子煩悩だな。実は娘より人間味あるんじゃないのか?

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:29 (1772d)