作品

概要

作者罪と罰
作品名【砂吐きそうな僕等】〜長門さんは耳が弱い〜
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-07-28 (月) 15:39:31

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

※外が土砂降りなのでキョンと長門さんは長門さんの部屋でイチャイチャするようです。本文を読んで、動悸、眩暈、砂を吐く等の症状が現れても、当方は一切責任を負いませんのであしからず。

 
 
 

 世間では梅雨明けなどと言われていたのに、窓の外を見やれば空は厚い雲に覆われ、バケツをひっくり返したような土砂降りだ。
 全く気象庁の言うことなど信用できんもんだと思いながら、視線を窓から下へと移す。視界の半分程を占める、色素の薄い黒髪と、黒のソックスに包まれた細っこい両脚。
 雨音だけが静かに響く部屋の中で、ぱらりとページをめくる音が耳に届いた。
 抱き締めるように腹の前に回した右腕にほんの少しだけ力を込め、手持ち無沙汰だった左手を頭の上に。そのまま細く滑らかな髪を梳くようにそっと撫でる。
「…………」
 ふと、見上げてきた逆さまの顔と目が合った。相変わらず磨かれた水晶のように透明な瞳に、危うく吸い込まれそうになる。
「ああ、すまん。邪魔しちまったか」
「…………別に」
 一つ瞬きしてそう言うと、目線を本へと戻す。ただ少しだけ、胸への圧迫感が強くなった。
「そのままで、いい」
 言いながら、俺より一まわりも二まわりも小さな手が、頭の上に乗せた俺の手に重ねられた。ひんやりとした感触が、柔らかく俺の手を包み込む。
「…………そうか」
 許可が出たのなら問題があろうはずもない。俺は頬が緩むの抑えることもせず、癖のある猫っ毛を弄くる作業に戻る。
 望むべくも無かった筈の、安らかな時間。俺がこいつとこういう関係になったはいつからだったか――――。
 ともかくも、この体勢は最近のこいつのお気に入りだった。
 俺が広げた脚の間にこいつが座り、俺がこいつを後ろからそっと抱き締める。そうするとこいつは、まるで甘える子供みたいに小さな頭を俺の胸板に擦り付けてくるのだ。
 普通なら暑苦しく感じる格好かもしれんが、中途半端に肌寒い外気と、ひんやりしたこいつの体のおかげで、それほど不快なものではなかった。何より、こいつの希望を俺が叶えてやらないわけがないのだ。
 ――――しかし、こうも腕の中で無防備な姿を晒されてしまうと、悪戯心が沸いてくるというのも男の性というやつなわけで。
「…………ん」
 頭にやっていた手で、そっと耳を撫でてみる。小さくあげられた声に不快そうな色は無く、それに気をよくした俺は、もう片側の耳朶を上唇と下唇で優しく噛んだ。
「――――ぁ」
 肩がぴくりと震える。俺は構わず、耳の形に沿って小さく出した舌を這わせた。耳が弱いのは学習済みだ。
「――――ん、…………ん」
 抱き締めた腕の中で、くぐもった声を上げながら小さな体を捩じらせる。俺が耳から唇を離してこいつの顔を覗き込もうとしたのと、こいつが俺の方を振り向いたのはほぼ同時だった。
「…………」
 無色透明な双眸が、じっと俺の顔を見つめてくる。俺だけに分かる、催促のサイン。
「――――ぁ、む…………ぅ」
 何かを言いかけて開かれた唇を、自分の唇で塞いでやる。触れ合わせるだけのキスを数秒続けると、見開かれた目がゆっくりと閉じて、脱力した体を俺に預けてきた。
「…………ふ、ぁ」
 すぐ近くで注視して、やっとそれと分かる程度に潤んだ瞳と、上気した頬。俺だけに見せる表情に、沸いてくる征服欲。俺だけが、知っているこいつ。
「すまん、またお前が欲しくなっちまった」
 耳元で囁いてやると、ぱちりと一つ瞬きをして、不思議そうに首を傾げる。何故そんなことを言うのかとでも言いたげに。
「わたしは、あなたのもの」
 まるでそれが宇宙の摂理であるかのように、本当に他意なく紡がれた言葉。
「あなたの、好きなようにして、いい」
「…………そう言ってくれるのは、嬉しいんだけどな」
 だがな、俺はもっとお前のことを大切にしたいんだ。お前は自分の全てを俺に捧げてくれると言ったが、俺だって自分の全てをお前に捧げる覚悟がある。それでもまだ、俺がお前と釣り合ってる自信なんてないけどな。
「…………あなたは自分を卑下しすぎる傾向にある」
 そう言って、俺の頬に小さな両手を添え、
「誰の意思でも無く、わたしが、あなたの傍にいたいと思った。…………傍にいて欲しいと、思った」
 そっと、唇が重ねられる。ゆっくりと押し付けられ、緩く吸われ、更にゆっくりと解放される。
「…………信じて」
 じっと、瞳を覗き込まれる。…………そうだな、お前の言葉を信じないというなら、他に何を信じろというのか。それは俺が一番よく分かっている筈だ。
 揺らぐことの無い限りなく透明な水面のような瞳に映し出されているのは、俺だけだった。だから俺は、吸い込まれるようにこいつの唇に、唇を落とす。
「…………ん」
 ただ重ね合わせるだけのキスを、何度も、何度も。唇を押し付け離す度に、ちゅっ、と濡れた音が鼓膜を揺らす。
「――――ぁ、は…………ぁ」
 唇を触れさせる位置を、唇から頬へ。そのまま再び耳朶へと戻る。先程と同じように、唇で挟み、舌を這わせ、汚れ一つ無い穴の中まで蹂躙する。
「ふぁ、あ、ぁ、ぁ…………」
 段々と弱々しくなってくる声。全身を弛緩させたのを確認して、その体が倒れないように支えながら体勢を変え、右腕を膝の裏に差し込んで立ち上がる。所謂、お姫様抱っこってやつだ。
「…………っ、…………」
 頬を薄く染めて、薄っぺらい吐息を忙しく出し入れする腕の中の少女に、俺はもう一度問いかけた。
「お前が欲しい。…………いいか?」
 珍しく二度、三度と繰り返し瞬きをして、うっとりと目を細めたこいつから帰ってきた言葉は。
「…………いい。…………わたしも、あなたが欲しくなった」
 言ってから不安げな色を瞳に滲ませて、目線で「いい?」と問いかけてくるこいつに、俺の返答は、当然ながら決まっていた。
「もちろんOK、さ。お姫様」
 似合わないキザったらしい台詞を吐いて、こっ恥ずかしさを隠すように、額に口付ける。
 そうさ、それでいいんだ。お前がもっと人間らしくなりたいと願うなら、その為の努力を俺は惜しまないし、それは俺の願いでもあるんだ。
 だから、お前が普通の、人間らしい恋愛なんかをしてみたいと望むなら、俺はその望みを叶えてやるだけだ。

 
 

 お前が胸の上に大事そうに抱えてる、その恋愛小説みたいにな。

 

 ま、ここから先は、《禁則事項》ってやつで。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:26 (3094d)