作品

概要

作者ちの たりない人
作品名守ってあげたい 第七話 〜オワリノナイハジマリ〜
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-07-06 (日) 09:56:40

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里登場
周防九曜登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子登場

SS

 

俺には何の力もない。
ハルヒの鍵だのなんだのと言われたところで、こう言う場面でははっきり言ってお荷物だ。
古泉達はそう言う意味合いを含め、朝比奈さん達には連絡係として、と言う名目で外に残ってもらうと言い出したんだろう。
それは正解だった。
だが、俺はそう言うわけには行かない。
今回は必要が無いのだろう『ジョーカー』も、俺でなければ出す意味がない。

 

うっすらと開いた目で俺の背後、俺達、主に俺に襲い来る"何か"と、それを弾く『何か』を長門は見つめていた。
長門がやっているとか、そういうわけではない事位、俺にだって解る。
表情を変えない長門のその顔に、驚きの色を俺は見て取っていたからだ。

 

―あたしは、あなたたちに任せたんだもの、ちゃんと、長門さんをつかまえてなくちゃ―
何もないはずの空間。
"何か"を弾くそこに俺は、長い髪がたなびくのが見えた気がした。

 
 

「――!!……」
「!」
音はしなかった。
それは、いつか古泉に連れて行かれたハルヒの閉鎖空間、その終焉と酷似していた。
訂正しないといけないか。
ひとつだけ、音と呼べるかは解らないが、こう聞こえた。
―その手を離したりしたら、解ってるわよね? じ・ゃ・あ・ね―

 

「終わった、ようですね」
古泉が息をはき、呑気に延びているハルヒに視線を落とす。
「全くこんなだから……」
ぶつぶつと何かを言っている橘も元気そうだった。
……と言うか、手っ取り早く言ってやろう。
俺が一番重傷だ。

 

まぁ、すぐに治してはもらったわけだが。穴が開いたズボンも含め。
「疲労、そのものは残るとは思います」
「痛みがなくなればこれ位、なんともありませんよ」
なぜ、お前が答える、古泉。
と、言うか、ハルヒはまだ起きないのか?
「簡単に、目を覚まされても困りましたので」
告げる喜緑さんから、古泉に負ぶわれたハルヒに視線を移す。
呑気にいびきかいてるし……。

 

「長門、立てるか?」
少しふらつきつつ「大丈夫」と言う長門だが、さすがに三日程飲まず食わずは堪えたか……。
「ほら」
と、半ば強引に長門を背負う。
「……」
「取り合えず、長門さんの部屋までお願いしますね」
何か言おうとした長門を遮るように、喜緑さんが俺に声をかける。
「ついでに、長門さんに何か食べさせてあげてください。飢えてると、何をするか解りませんから」
そうですね。
いや、長門、こんな冗談位で怒りオーラ出しているんじゃない。

 
 

それは、長門の部屋で缶詰カレーを長門に食べさせた、帰り道。
まぁ、長門を背負ってなきゃ何かしら、買い物でもして帰れたんだろうが、ともかく。
「お疲れ様でした、キョン君」
やはりと言うか、朝比奈さん(大)が俺を待っていた。
「今回の事は、歴史的になかった事だとか?」
と、朝比奈さん(大)はゆっくりと首をふる。
「少し、違います」
「と、言うと?」
「今、ここに居るあたしは、長門さんを助けに向かったキョン君たちを心配していた事も、涼宮さんが囮になると、あたしに最初に言った時の顔も、全部覚えています。でも」
「でも?」
「キョン君に最初にあった……時系列ではなく、この姿のあたしが、部室でキョン君と最初に再会した時は、そんな記憶はなかったんです。歴史が繋がった、とそう言うことなんだと思います」
おそらく、繋がらなかった歴史もあり、そして、それはおそらく……。

 

「こちらのあたしを、もうしばらくの間、よろしくお願いします」
朝比奈さん(大)は、そんな言葉を残して去っていった。

 
 
 

七月七日 月曜日

 

昼休みにすでに確認済みではあるが、やはり昨日までの事もあり、俺は多少なりの不安を持って、部室のドアをノックした。
静寂……いや、この場合は無言の、と言っておくべきだろう、返事があった。
俺は安堵と共にドアを開けた。
あいつが、いつもの無表情で座っている事を期待して…………。

 

長門は確かに、定位置に座っていたし、いつものように本を読んでいた。
だが俺は、最初それが長門だと気付けなかった。
「長門……だよな、なんだ、その格好は?」
「織姫」
「…………ハルヒか?」
「そう」

 

と、バーンと言う勢いの良い音と共に、扉が開く。
「やっほー! あ、キョン、丁度良かったわ!」
上機嫌の上にさらに上機嫌なハルヒが、俺に紙袋を手渡してきた。
「なんだ、コレは?」
「彦星」
着るものだって事は理解したが、俺がか?
「そうよ。あたしが着ても良かったんだけど、有希に聞いたら、あなたにって」
俺は視線を、織姫の格好のまま本を読む長門に向ける。
いや、頷かれても。
「ごちゃごちゃ言わずにさっさと着なさい。これからみんなで笹持って、校内歩くんだからね!」
それはあれか? 晒し者か?
「文句ある? それとも有希だけその、さ・ら・し・も・の・にするつもり?」
「……やれやれ」

 

不承不承、ソレを制服の上からかぶりつつ
「しかし、なんでまた長門と俺なんだ?」
いつもなら『みっくるちゃ〜ん♪』とか言って、朝比奈さんと、おそらく古泉に着せていたと思うが。
と、長門に聞こえないようにか…多分無意味だと思うが、小声で
「昨日までの事もあるから……有希、今日もちょっと元気無さそうだったし」
と。
それでなぜコスプレなのか、は問うまい。

 

「ふえぇ〜重いぃ……」
と妖精がへちゃげるような…我ながら変な喩えだが、声で朝比奈さんがやって来た。
……笹を持つのは良いですが、咥えるのはどうかと思いますよ? パンダみたいで愛らしいですが。
「ほら、みくるちゃん貸して。全員一本づつ持つ、キョンも!」
解った解った。
で、古泉は短冊配布係りか?
「ええ、あなたもおひとつどうです?」
まぁ、後でな。

 

「あたしとしては、ちょっと物言い入れたいのよね、この行事」
みんなで並んで歩き出したその時、ハルヒが呟いた。
「本当に会いたいとか思うんなら、天帝だかなんだか知らないけど、蹴倒してでも会いに行けば良いじゃない? なんで年一回なわけ? しかもたいてい雨降るから、天の川なんて見れない事多いのよ」
「伝承に文句言っても仕方ないだろうが」
なんで雨の多いこんな日にしたのか? とか、わけの解らん事を言いながら、笹をぶんぶん振り回して歩くハルヒ。
四年前だかの七夕は晴れてたぞ、確か。
それに、天の川は時期的に今らしいしな。
ずいぶん見て無いが。

 

「……」
と、横を歩く長門と視線が合う。
「まぁ、なんだ、今日は俺で我慢してくれ」
「…………いい」

 

そうだな、そんな日が本当に来るのかは解らんが、そう言う事に長門がなったとして……
その相手が誰かは別にして、長門の親元を蹴倒しに行くのはきっと、ハルヒなんだろうな。
まぁ、ほぼ間違いなく付属品の俺たち、SOS団は結局それについて行くんだろうが。

 

そんな事を思った。

 
 

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:25 (3094d)