作品

概要

作者ちの たりない人
作品名守ってあげたい 第一話〜オワリノハジマリ〜
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-07-06 (日) 09:46:53

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

七月七日、月曜日。

 

昼休みにすでに確認済みではあるが、やはり昨日までの事もあり、俺は多少なりの不安を持って、部室のドアをノックした。
静寂……いや、この場合は無言の、と言っておくべきだろう、返事があった。
俺は安堵と共にドアを開けた。
あいつが、いつもの無表情で座っている事を期待して…………。

 
 

七月四日、金曜日。

 

朝、遅刻寸前で辿り着いた教室。
俺の席のその後ろ、そこに座っている奴は突っ伏していた。
その光景は、それ自体はっきり言ってしまえば当たり前の、なんでもない日常風景である。
そのはずだった。

 

今からでも朝比奈さんに頼んで、その時の俺を蹴り飛ばしにいきたいところではある。
いや、蹴り飛ばした所で、状況に変化などありはしなかっただろうがな。

 

無言で自分の席に座った俺に、後ろの席からこう、声がかかった。
「今日のSOS団活動は休止ね」
俺は取り合えず振り向く。
「珍しいな、どうかしたのか?」
「別に。ただ、あたしは今日の放課後、用事あるし、有希も用事で学校休んでるのよ」
長門が休んでいる、と言う点が引っかかりはしたが、俺は相槌をうっていた。
「そうか」
と。

 

授業中も静かなものだった。
俺はまた、こいつが何か企んでいる、そんな程度に思っていた。
その日の昼休みまでは。

 
 

「ここにいらしたんですか」
購買でパンとコーヒー牛乳を買い、さて、どこで食べたものかとぶらぶらしていた俺を、いつものではない、翳った笑みが呼び止めた。
「飯を食うのに良い所を知らないか? 今日は部室は閉まっているだろうし……」
そう言いかけた俺に
「長門さんが休んでいる事は、ご存知なんですね?」
と、溜息まじりに聞いてきた。
「ああ、朝にハルヒから聞いてるが……」
「単刀直入にお聞きします」
何時になく真剣な顔に、俺は一瞬たじろぐ。
そして、古泉は怒りすら混じるかの瞳で、こう言った。
「長門さんと、何かありましたか?」

 

一瞬、理解が遅れた頭を再起動させ、俺はありきたりな文句で問い返す。
「どう言う事だ?」
「言葉どおりの意味です、が……どうやら、本当に思い当たる節は……」
ここしばらくの事を頭でハイスピード再生してみるも、答えは
「無いな。ハルヒはともかく、お前や朝比奈さんに隠し立てしなきゃならない事はな」
だけだった。
俺のその答えが気に召さないのか、古泉は「ふぅむ」と顎に手を当てる。

 

「何か、あったのか?」
そう問いかけた俺に、爽やかさをそこいらに捨てたような顔で
「『何か』なんてもんじゃありませんよ」
と古泉は、こいつが知っている状況を、とつとつと話し出した。
「過去の例で言えば、あなたと涼宮さんが閉鎖空間に閉じ込められた、あの時に匹敵する、もしくは、それ以上の異常事態です」
あの時の事は、俺にとってはそのほとんどが、忘れ去りたい記憶なわけだが、今はそういった場合では無さそうだ。
しかし……それ以上だと?
「はい。かつて類を見ないほど、巨大な閉鎖空間が、今現在も拡大中です」
「……」
「我々の機関が調べた所、長門さんは昨日帰宅後、一歩も自室を出ていないようです。そして、閉鎖空間が現れだしたのは今朝、こちらもおそらくですが、涼宮さんが長門さんが休む事を知った、その直後から発生しています」
「それで、俺が長門に何かしたのでは? か」
そう言った俺を見つめた古泉は、疲れた笑みを見せる。
「しかし、あなたは嘘をついているように見受けられません。他の事が要因ですね」
いや、ちょっと待て。
「長門は今もあの部屋に居るはずなんだな?」
言って携帯を取り出し、すでに覚えちまっている番号を押した。
「はい、そのはずです、が……僕も試しましたよ。長門さんの携帯の方もね」
音信不通。
そんな生易しいものではなく、電話自体が繋がっているといった感じじゃあない。
本当の無音。

 

雪山での事が脳裏に浮かぶ。
「長門に何かあったんじゃ無いのか!?」
「ぼ、僕に言っても解らないのは同じです」
気がつくと、俺は古泉の肩を押さえていた。
「す、すまん」
「いえ」
そういって溜息を吐くと、古泉は諭す様な声音で告げる。
「それで、おそらくあなたと何かがあり、結果として長門さんが我々との接触を閉ざした。そう思っていたわけですが」
昨日やその前、何かあったかと思い出そうにも、ただ、部室で本を読んでいたあいつが浮かぶだけだった。

 

「状況を整理します。今朝、長門さんが休む事を知った涼宮さんが、巨大な閉鎖空間を発生させています。そして、長門さんは音信不通。要因にあなたは入っていない。いいですね?」
「あ、ああ……」
さっき言った事をただ羅列しているだけ、とも言える古泉の言葉。
ただ、その気迫に俺は押された。
「長門さんに何かがあった、そして、それは涼宮さんだけに知らされた。ここまでもいいですね?」
「何が言いたい?」
いらだち紛れに聞く俺に、古泉はこう告げた。
「長門さんをどうにかできる存在なんて、そうそう居るわけがない。その事も解ってますか?」
と。

 

そう、情報統合思念体謹製、有機アンドロイドの長門に、ただの押し込み強盗だとかが太刀打ちなど出来ない。
俺の脳裏によぎったのは、別の宇宙的存在が送り込んだ、真っ黒いあいつの姿だった。

 

だが、本当の要因はあいつ以上に、それこそとんでもないものだった。

 
 
 
 
 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:24 (2710d)