作品

概要

作者KANKO
作品名傍に その2
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-06-29 (日) 21:28:55

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 
 
 
 

 さて人間って奴は、眠くなるとどうしても頭がぼーっと
してくる。 今の俺がまさにそうだ。
だが、それがずっと続けばさすがに気分が悪い。
いやいや、結構眠っていた時間の方が長かったりするんだ
が。 さすがにこの状態がずっと続けばどうにかなってし
まうんじゃ無いだろうかと思っている。
 いや、すでにどうにかなってしまっているな。
 手を見てみれば、血まみれ状態。 
 そりゃそうだ、俺自身がつけた傷なんだからな。 
 無駄だとは分っているんだが、やらなければ俺の気がす
まない。 そんな感じだ。
しかし、この壁はどの程度殴れば壊れるんだろうね?

 

 せめて、古泉のような力があれば、何とかなったんだろ
うが、これも無理だな。 最後の希望の長門。
 だが、待てど暮らせどやってくる気配は無い。
ああ、もう! 誰か教えてくれ! 何で俺がこんな目にあ
うんだ! 俺が何かしたか? 教えてくれ!

 

「こうなりゃ、俺の手が壊れるか、この壁が壊れるまで、
やってみるか」
「まって」

 

俺が野球選手の如く大きく振りかぶって、灰色の壁を殴り
つけようとしたその時、後ろから俺が良く知っている声が
聞こえた。 俺の最後の希望、長門のはずだ。

 

「迎えに来た」
「…長門だよな?」
  つい、そう聞いてしまう。 なんたって人とあったの
も久しぶりのような気がするからな。
「そう、貴方が知っている対有機生命体コンタクト用ヒュ
ーマノイドインターフェイス。それが私」

 

 俺は気が付けば長門を抱きしめていた。 
何でこんな事をするかって? そりゃあ、このへんてこな
空間、多分だが閉鎖空間みたいな所に何日も閉じ込められ
ていたんだからな、誰にも合わずに。
 おそらくだが結構な日数が経っているだろう。 
 そこに最後の希望と思っていた長門がやってきたんだ。 
 嬉しくて抱きついてしまっても問題は…あるな、うん。

 

「わ、悪い、長門! つい…」
 「いい、悪いのはわたし。 もっと早くに貴方を助け
ていればこんな事にはならなかった」

 

 そう言いながら、長門は俺の手を両手で包むように握っ
た。 何か、長門の顔が落ち込んでいる様に見えるが。 
「両手とも骨にひびが入っている」
 ああ、おもいっきり殴ったりしていたからな。
 今じゃ、その痛みも感じないほどだ。 
「手の再生をする」
 そう言うと、俺の手を優しく握りながら、いつぞやの早
口言葉を発する長門。 良く見ていると、何やら意味のあ
る言葉を発しているような気もするが、凡人である俺には
わからんな。
「再生完了」
「ああ、ありがとな長門。血も出ていないしばっちりだ」

 

 まったく、俺はどこまで長門に世話を焼かせるんだろう
かね? おそらくここにくるまでに、随分と時間が掛かっ
たんだろう。 
その後は俺の傷を治すとか、どこまで長門を便利道具とし
て扱っているんだか。

 

「ごめんなさい」
「何言っているんだ。お前が謝る必要なんてどこにも無い
ぞ」
「貴方がこの空間に閉じ込められているのは知っていた。
 でも、情報統合思念体からあなたを救出する許可が降り
 なかった」

 

 なんですと?…これは長門の親玉の仕業だったのか…
と言うか何でだ、長門? 俺を閉じ込めてどうしようとし
たんだ? 意味が分らん。

 

「涼宮ハルヒの観察のため。 今までとは違った方向で観
察しようと貴方の人格と記憶を持ったインターフェイスを
作った。 これにより、涼宮ハルヒに刺激を与えて新たな
情報を得ようとした」
「よくわからんな、確か余計な刺激は与えない方が良かっ
 たんじゃないのか?」
「今の涼宮ハルヒは暴走の回数も減り、安定した状態にあ
 る。 この状態では大小関わらず情報を得る機会が減っ
 てしまう、そのため鍵である貴方のコピーを作った。 
 これにより、彼女に刺激を与え、世界を改変しない程度
 の情報を得ようとした」

 

 久しぶりに聞く長門の長い台詞だ。 それにしてもだ。
 なんでハルヒに刺激を与えるために、俺のコピーを作ら
ないといけないんだ。 刺激を与えたかったら、ハルヒに
適当な事を言って焚きつけちまえばいいんだよ。 
 多分だが、世界が変わっちまう事は無いだろう。 
 
「お前の正体をばらすとか、他に方法はいくらでもあった
んじゃないか?」
「その方法は推奨できない。 彼女の力は世界を変えてし
まうほど強力なもの。 それは貴方も知っているはず」

 

 あーお前が暴走した時に起こしたアレか。 
 だがな長門、お前が起こしたアレは、何百年も同じ事を
繰り返して、お前の中のエラーが大きくなってしまったわ
けだろ? 
 つまりイレギュラー、事故って事だ。
 第一、ハルヒを見てて安定してるなんて、お前の親玉は
よっぽどの節穴だな。 確かに最初の頃よりは落ち着いて
きているだろうが、それは火山で言えば休火山みたいなも
んだ。 何かの拍子で爆発するかもしないぞ?

 

「まあ、なんだ。 今回はお前の親玉の責任と言う事か」
「そう」
 さて、ここでふと気付く。 さっき長門は何て言った?
 助ける許可が降りなかったとか言ってなかったか?

 

「長門、俺を助けたと言う事は、今回の観察は終わったの
か?」
「まだ終わっていない。 これはわたしが独断で行なった
事。 情報統合思念体からの許可は今も降りていない」

 

 まてまて、それはまずいんじゃないのか?
 暴走の件にしても、俺がハルヒに全て話すと言ったから
お咎め無しとなったんじゃないか。 今回は暴走ではなく
て、お前の意思で親玉の命令を聞かなかったんだろ?

 

「そう、わたしがこの事を知れば、貴方を助ける事は間違
い無いと情報統合思念体は判断した。 その為わたしには
今回の事は知らされなかった」
「じゃあ、どうやって見破ったんだ?」
「アレは貴方と違って、涼宮ハルヒが起こす行動を止める
事はしなかった」
「それだけか?」

 

俺の問いに小さいうなずきで返す長門。
偽者を見破ってくれたのには、嬉しく感じたんだが
 それだけで偽者とわかるもんだろうか? もしかしたら
 俺の異変に気付いた長門が、偽者を調べて正体を突き止
めたんだろう。 いくら万能と言っても出来ない事だって
ある筈だし、多分そうなんだろう。
 にしても、俺の偽者をアレ呼ばわりとは、長門にしては
感情がこもっているような言い方だな。

 

「それにしても、偽者だって事はハルヒに知られていない
 のか?」
「気付いていない。 古泉一樹、朝比奈みくるも同様。む
しろ貴方の変化を喜んでいる」

 

 まじでか…いや、仕方が無いだろうな。 古泉からはハ
ルヒに対してもう少し優しくしろだとか、何とか色々言わ
れていたし、朝比奈さんにいたっては、俺がハルヒと口論
したら、おろおろしだすし、ハルヒにいたっては…まあな
 そう考えたら、長門は良く気付いたもんだ。
 俺の偽者は、ある意味SOS団が望んでいた俺なのかも
しれんな。
 どうした、長門。 そんなに俺を見て?
 俺の顔に何かついているか?

 

「わたしは望んでいない」
「何をだ?」
「アレが貴方の代わりになること。例え、涼宮ハルヒの観
測が容易になろうとも、アレが貴方の代わりになる事は
わたしと言う個体が望んでいない」

 

 いつもの感情が見えないような喋り方なのだが、いや、
だからこそなのかもしれない。
 長門の強い意志を感じたのは。
 あの事件以来、長門にもちゃんと感情は備わって
いるってわかっていたんだ。
 ただ単に、感情を上手く表現できないだけだったんだ。
 
 それにしてもだ。 長門がここまで、はっきりと俺でな
いとだめだと言ってくれたのは嬉しくもある。 
 おそらく、それは仲間として言ってくれたんだろう。
 いくら俺でも、そこまで自惚れていない。

 

「ありがとな、長門。そこまで言ってくれると嬉しいよ」
「いい」
「後、古泉たちだが、責めるのは勘弁してやれよ。 お前
以外気付かなかったって事は、うちの親も気付かなかった
んだろう? そこまで似せていたなら、仕方が無いのかも
しれん」
「…わかった」

 

 長門は、何か納得していないような感じで返事を返して
くれた。 長門よ、納得していないのは俺も同じなんだが
な。 だが、これ以上ここであーだこーだしていても無意
味だと思うしな。
 だからな? さっさと帰ろうぜ。

 

「貴方にお願いがある」
「何だ? 今の俺は長門の頼みなら何でもやってやるぞ」
「観察は後一日で終了する。だからもう一日待って欲しい」

 

 驚いたね、助けてくれた本人から、そんな事を言ってくる
とはね。 まあ、長門が助けてくれたし、それはどうでもい
い事だが、それにしても、後一日か。 正直、この空間には
もういたくないと言うのが、俺の意見なのだが。 

 

「せめてここから出ることはできんのか?」
「それは可能。 ただし、他の人間に見られるとまずい為
 わたしの家に来る事を推奨する」
「一人だと退屈するが、それなら…って、おい!」
「なに?」
「色々とまずくないか、それ?」
「大丈夫。 わたしがそばにいる」
 何が大丈夫なんだろうね? まあ、今の長門なら安心して
もいいかも知れん。今回は、俺が誤解されるような事は
何も無いことだしな…って何か重要な事を聞き逃したような
気がするが。

 

「そばにいるって、ハルヒとかにはどう説明するんだ?…
SOS団の人間がいなくなったら大騒ぎするだろう」
「平気、情報操作は得意」 
 ここまで言ってくれたのだ。 俺は長門の厚意をむげにす
るほど、心は狭くない。
「んじゃ、お言葉に甘えるか。 決まったら、さっさと出よ
うぜ、こんな所」
「わかった」

 

長門はそう言うと、手をかざして情報操作を始めた。
徐々に周りの空間が、俺の見覚えのある景色に変わってゆく
のはSF映画を思い出すもんだ。
「こっち」
「おお」
ふと、この瞬間を誰かに見られたらやばいんじゃないのかと
思っていたのだが、周りに人気が無いな。
これも長門の力かも知れん。
 いや、たいしたもんだ、長門。 やっぱりお前がいないと
俺は駄目だったかも知れんな。 頼ってばかりじゃ駄目だと
思っているんだが、肝心の俺はただの凡人だ。
でもな、凡人である俺だが、お前が困っている時は全力で助
けるからな。 
ところでだ、手を握って歩くのは少しばかり恥ずかしいんだ
が…まあ、いいか。 今日ぐらいは。

 
 
 

 さて、長門のマンションについたはいいが、本人を横に申
し訳ないが、長門の部屋の中も何も無いに等しいんだよな。
いや、正確には俺の興味を引くようなゲームとかがないわけ
なんだが。
しかし長門は俺の気持ちを察してか、色々な本を薦めてくれ
たわけだ。 あの空間で何も出来なかった俺は、暇つぶしと
ばかりに読んでみたんだが、これが結構面白いんだ。
 まあ、長門が読みやすいものを選んでくれたと言うのも
理由の一つなんだがな。
 その後はカレーをご馳走になったり、慣れていないせいか
読書の途中で眠くなって、長門に膝枕をしてもらったりと、
のんびりとした一日を過ごさせえてもらった訳だ。

 
 
 

「起きた?」
「ん、ぁ…長門か…今、何時だ?…」
「午後11時45分20秒を回ったところ」

 

そんなに眠っていたのかと、窓の向こうを見てみれば、真っ
暗だ。 こうやって、長門に膝枕をしてもらっているからだ
ろうか、ぐっすり眠りこけていたようだ。 あの空間でも結
構寝ていた記憶があるんだがな。
 ちなみに、俺の名誉のために言っておくと、膝枕は長門が
してみたいといったから、やっているのであって無理に俺が
やった訳ではない事を言っておく。
 長門曰く、興味があるからだということだ。

 

「悪い、長門。 随分眠っちまったみたいだな。 膝痺れて
いないか?」
「大丈夫」

 

いつもの無表情で、そう返してくれるから、俺としても安心
しているわけだが。 本来なら恥ずかしくてこんな事は出来
ないと思うんだがな、長門だからこそなのかもしれない。
 ついでに言うと、長門が俺の頭を撫でてくれている訳で。
 その優しい動作に起きるタイミングを逃しているのは内緒
だ。

 

「俺の髪は面白いのか?」
「わからない、でも、心地よいと言う情報が観測できる」

 

 そうか、長門にも心地よいと言う事がわかるんだな。
 普段聞けなかった長門の感想に俺も心地よいと言う情報が
観測できる、なんてな。

 

「…明日は、探索の日だったか?」
「今までの涼宮ハルヒの行動を考えると間違いない」
「そっか」
「そう」

 

 なんと言うかね、部室で長門と過ごしていると物足りない
って感じていたんだ。 会話が少なすぎてな。
 でも、今ならそれもいいと思うんだ。 こういう静かな時
間も悪くないって思えるしな。 あれか、あの何も無い空間
で過ごしたせいで、静かな時間に慣れてしまったのかね?

 

「そういや、俺の偽者はどうなるんだ?」
「午前0時に情報連結を解除される」
「なら、家に帰るのはその後だな」
「…そう」
何だ長門、そんな寂しそうな顔するなよ。 俺はもう二度と
いなくなったりしないぞ、多分。
「そうだな、明日は一緒に集合場所に行くか?」
「貴方は寝ていたため、今日の就寝時間が遅くなる恐れがあ
る」
「それは、罰金確実ということか」
「そう」

 

 何が言いたいんだろうか。 いや、まて。
 ここまで来たなら、長門が何を言いたいかわかる気がする
 なあ、長門。 俺の自惚れじゃないんだよな?
 もしそうだったら、はっきりと否定してくれよ。
「じゃあ、長門に起こしてもらった方がいいか」
「…」
 ええい、俺! 言うんじゃなかったのか!
 ここまで来てヘタレになるな!
「んじゃあ、長門、泊まっていいか?」
「いい」

 

 間髪いれずに返答してくれた長門に、俺は苦笑せずにはい
られなかった。 長門は俺から言ってくれるのを待っていた
様な気がするからな。
 何だ不器用なのは長門だけじゃなかったじゃないか。
 いや、俺の方が不器用だったかも知れんな。

 

「長門、俺の事どう思っている?」
「…わからない…でも、そばにいて欲しいと感じている」
「それだけ聞ければ充分だよ」

 

静かな空間はもうごめんだと持っていた筈なんだがな。
でもな、この静かな時間は、これからも続いて欲しいと思う
もんだ。 断言する。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:24 (1952d)