作品

概要

作者NEDO
作品名長門フォルダ
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-06-28 (土) 19:49:01

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 
 

 そんなことより聞いて欲しい。 
 めくるめく不思議現象に巻き込まれるのがほぼ日常化しているかわいそうな
俺だが、今日ついにその荒んだ心を癒す新しい手段を手に入れたのだ。

 

 つい先程の話だ。部室のPCで暇つぶしをするために団長席につくと、
ハルヒが置き忘れていったであろうフラッシュメモリーを発見した。
なんとなく中を覗いてみると、そこには様々なコスチュームに身を包んだ
長門の画像データが入っていたのだ。
 俺は獲物を狩る肉食獣のような素早い動きでそれらの画像ファイルを
『nagato』と命名した新規フォルダの中にコピーして、何事もなかったような顔で
メモリを元の場所に戻した。

 

 この事実を知っているのは俺だけだ。部室には一応長門もいるが、長門の
いる角度からは俺のPCのモニタは見えないし、モニタを覗きに来てもいない。
そもそも長門は普段俺が面白ニュースサイトの巡回をしていても、手元の本が
面白いのかこれっぽっちも興味を示さないからバレるはずがない。

 
 

 そして現在に至り、俺はnagatoフォルダ観賞の真っ最中である。
 朝比奈さんの健康的かつ肉感的な色気もいいが、長門のアンティークドールの
ような神秘的な魅力というのもなかなかどうして悪くない。スライドショーをめくって
いくと、様々な衣装に身を包んだ長門の姿がモニタに映される。
夏祭りの時の浴衣や学校祭の時の魔法使いの仮装といった青春アルバムの
一ページのような微笑ましいものから、水着やバニーガールや中世ファンタジーの
女盗賊衣装といった露出が高めでR15指定になりそうなモノまである。

 

 ハルヒがこんなものをいつの間に撮影したのか小一時間問い詰めたい。
そもそも女のハルヒが同性である長門の写真を見ても仕方あるまい。
情熱をもてあます俺のような紳士の目に触れて初めて資源の有効活用に
なるというものだ。

 

 ふむ、このバニー長門はなかなか。
 バニースーツの隙間から長門の薄い胸にギリギリ出来た谷間を見事に捉えた
決定的瞬間はハルヒのカメラマンとしての腕前にシュプレヒコールを贈りたくなる。
 こっちは水着の食い込みを直してる長門だ。
 普段女らしい仕草をあまりしない長門が見せる生々しい色気がたまらない一枚だ。
 おお、これなんかヤバいだろ。
 浴衣の隙間からもう少しで胸の先端が見えてしまうところだ。
 チラリズムの極致だ。実にけしからん。

 

 ――時間の流れを忘れてしまうほどの至福なひと時。

 

 そうさ、俺はこんな時間がずっと続けばいいと思ってたんだ。
 しかし、こうした俺の心の平穏は往々にして破られるわけで…

 

 俺の右前方で座って読書に耽っていたはずの姿がいつの間にか消滅していた。
俺はとっさにスライドショーを閉じて周囲の状況を走査した。

 

 ――右?左?いない!?…しまった、背後!!

 

 ビックリした俺は思わず膝で机をガタンと鳴らしてしまった。しかし動揺を
悟られてはならない。たった今まで長門の15禁画像集を見ていた事を本人に
知られてはこの部屋から生きて出ることすら怪しくなる。

 

 俺はなるべく平静を装って声をかけた。
「や、やあ長門。そんなところにつっ立って、何か用か?」
「あなたが変な顔をしてるから気になった」
 変な顔って…いやそれはいい。今は長門に何を見てたか知られたかどうかを
確認するのが先決だ。

 

「み、見てた?」
「見てない。これから確認するところ」
 長門の淡々としたPC内捜査開始宣言に戦慄した俺は、開きっぱなしの
nagatoフォルダを表示したウインドウを閉じるためマウスを動かそうとしたが、
長門によって右手首をがっちり掴まれて、そのまま合気道の師範代のような
淀みのない動きで捻り上げられ、あっさりとマウスを奪われた。
 腕に当たった柔らかい感触は、きっとこれから修羅場に落とされる哀れな俺に
対する神からの贈り物なのだろう。
 捻り上げられてる右手が結構痛い。長門はたまに俺の体に対する気遣いが
ゼロになるから困る。朝倉と戦ってる時の膝蹴りもそうだったが。
 そんな俺の痛みもおかまいなしに、長門は左手で俺の右腕をロックしながら
右手でマウスを操作し始めた。
「このnagatoという名前のフォルダは何?」
「い、いや〜、それは見てもつまらんぞ」
「あなたは嘘をついている。つまらない物を見てあんな顔をしたりはしない」
 そんなに変な顔だったのか。ショックだ。
「本当にやめた方がいい。長門が見たら絶対後悔するぞ」
「しない」
 俺の心ばかりの忠告を0コンマ2秒で否定して、長門はマウスの左ボタンを
二回鳴らした。

 

「……」
 目の前のモニタにnagatoフォルダの中身がサムネイル表示された。
長門がどんな表情をしてるかは見えないが、いつもの無表情が俺にだけ
わかるレベルで青ざめていることだろう。
 しばらく硬直した後、長門は画像の一枚にカーソルを合わせて
ダブルクリックした。そして赤裸々にプレビュー表示されたバニー長門。

 

「……」
 再度の沈黙。
 俺の右腕をロックしていた手がゆるんだので体を起こしてみると、
長門は焦点の合わない目でモニタを見つめたまま放心状態になっていた。
「おい長門、しっかりしろ!帰って来い!」
 体を揺すって呼びかけること数分、長門はようやく意識を取り戻した。
 
「…これは、何?」
「いや、これはだな…」
 長門の冷淡な声に返答次第では首が飛ぶと予感した俺は必死で
自己の正当性をアピールした。
 これは決してやましい行為ではなく、思春期の男性が同年代の女性を
見るのは当たり前の行為であり、むしろ健全である証だということを
必死のボディランゲージを交えて説明した。

 

「言ってる事は理解できた」
 それはよかった。宇宙人製アンドロイドでも話せば分かり合えるものだな。
「しかし…画像がわたしなのは何故?」
「いや、それはだな…」
 お前だけじゃなく朝比奈さんのもある、と言いそうになったがとっさにこらえた。
それを言ったら余計話がややこしくなって弁解どころか墓穴を掘るところだ。

 

「た、たまたまハルヒがデジカメで撮った長門の写真を見つけてだな…」
「誰でもよかったの?」
「い、いやそれは違う!その写真が長門だったからこそ観賞していたわけで…」
「それは好意的な意味と判断していいの?」
「う〜ん…まあ、嫌いな奴の画像ならこうやって観賞したりしないな」
 長門はまとわりつくような視線と共に誘導尋問のような質問を浴びせてきた。
明らかに不利な立場の俺はじりじりと後退を余儀なくされた。

 

 そして長門はさらに攻勢に出た。
「では、あなたはわたしに好意を抱いているの?」
「い、いや、それはどうかな。少なくとも外見は、なんというか…いいかなと」
「わたしの内面は嫌い?」
「嫌いではないけど…」
 ここで俺は格好の反撃の手段を閃き、言語化した。

 

「もう少し物分りがよくなったら好きになるかもな」
 長門の尋問がピタリと止んだ。有効どころか技有りだったようだ。
かなりギリギリな発言をしてしまったような気がするが、背に腹は変えられん。
長門は黒曜石のような瞳でしばし見つめた後、ちょっとむくれたような声でつぶやいた。
「分かった」
「じゃあ、このことは許してくれるか?」
 『このこと』がnagatoフォルダの画像全部の保有権を意味してるのは言うまでもない。

 

「交換条件」
「は?」
「わたしもあなたの写真を所有する。それで対等」
 そう言って長門は棚におきっぱなしのデジカメを手に取った。
「ど、どんな写真を撮るつもりだ!?」
 俺は初めてハルヒに拉致された時の朝比奈さんのように
これから身に降りかかる恐怖に身を震わせた。

 

 どんな恥ずかしい写真を撮るつもりだ?
まさか撮りながら一枚ずつ脱がしていくわけじゃないだろうな?
成人指定されるような写真は駄目だぞ。肩書き上はお前も高校生だ。
それとも、そこにある衣装で女装させるつもりか?
そんなものを撮影されたら俺はお婿に行けなくなるぞ。
そうなったら責任取ってくれるのか?

 

 などと自分の将来を案じていると、長門は俺の隣に並んで
デジカメを持っている右手をいっぱいに伸ばしてこちらに向けた。
「笑って」
 命令されるがままに引きつった笑いを浮かべると、
長門の持つデジカメのシャッターが切られた。
片手撮りによるごく普通のツーショット写真の完成だ。

 

 一枚撮り終わると長門はデジカメのプレビューで今撮った写真を確認しはじめた。
お婿に行けなくなるような羞恥プレイを想定していた俺はあっけにとられていた。
「この一枚だけでいいのか?」
「いい」
「これでもう俺を許してくれるのか?」
「許す」
 長門はデジカメの液晶画面を見つめながら、さも満足そうにうなずいた。
こんな親友同士で撮ったような一枚だけで満足だなんて
なんとも無邪気で可愛らしいじゃないか。
変態的な写真を撮られることを妄想した自分が恥ずかしいね。

 

 
 長門さんの寛大な裁きに感謝しつつ、俺はPCの前に座ってまったりと
nagatoフォルダの観賞を再開しようとした。が…
「おうあ!?」

 

 nagatoフォルダの隣にあるはずのmikuruフォルダが跡形もなく消えていた。

 

「な、長門ぉ!お前、ここにあったみく…もう一つの画像フォルダ知らないか?」
「知らない」

 

 根本的に劣勢の立場だった俺は泣き寝入りするしかなかった。
 デジカメの画像を自分のノートPCに取り込んでいる長門の無表情が、
『計画通り』と言わんばかりの黒い笑みをたたえているように見えた。

 
 

             −おしまい−

 
 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:23 (1744d)