作品

概要

作者NEDO
作品名小さなヒーロー 第二話 「電話」
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-06-24 (火) 01:09:52

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 
 

 平和のままに迎えた翌日。

 

 その日の昼休みも、俺は長門有希監視業務に勤しんだ。世界の平和を守るヒーローには昼休みなどないのだ。ごめん、ちょっと言ってみたかっただけだ。

 

「長門、お前って昼飯はいつもどうしてるんだ?」
 飯も食わず読書にふける長門に聞いてみた。
「大丈夫」
 どう大丈夫なんだよ。食わなくてもいいのか、それとも早弁でもしてるのか?俺一人だけ食ってると、減量してるボクサーの前で大盛りラーメンをこれ見よがしに貪るほどではないがいささか気がひける。
 なので言ってみた。
「明日あたり俺と一緒に食わないか?」
 長門は小さく頷いた。

 

 放課後のSOS団。ハルヒはネットサーフィン、朝比奈さんは専属メイド、長門は本の虫、俺と古泉は挟み将棋とそれぞれの役割を果たしていた。ふと、ハルヒがマウスを不機嫌そうにカチカチ鳴らしながら言った。
「ちょっとキョン!これネットに繋がらないわよ!」
 俺が昼間に使った時はちゃんと繋がっていたぞ。
「いいからさっさと直しなさい」

 

「長門の方が詳しそうだから長門に見てもらえばいい」
そう言って長門の方を見ると、長門は俺に向かってふるふると首を振った。また何か情報生命体がらみのトラブルか?そう思った俺はハルヒに聞こえないように小声で長門に尋ねた。
「何があった?」
「特に何も。ただ、私が調査すると人類の文明レベルを超えた操作をしてしまうかもしれない。涼宮ハルヒの目の前で行うのは危険。あなたが見るべき」
 長門のささやき声がちょっと色っぽかったのは内緒だ。
「こら、さっさと直せって言ってるでしょ!」

 

 団長命令により俺の持てるいい加減な知識で30分ほど調べた結果、LANケーブルが抜けてるだけだと発覚した。
「だらしないわね。ちゃんと繋いでおきなさいよ、バカキョン」
 俺のせいかよ。
「ごめんなさい、それ、さっき私がケーブルにつまずいたせいかも…」
「ああそう、みくるちゃんなら構わないわ」
 朝比奈さんなら無条件で許したくなる気持ちはわかるが、俺にももう少し優しさをくれ。
 古泉が困った感じのスマイルを見せたが、どうでもいい。

 

 その後は何事もなく帰宅。
 夕飯を終えてくつろいでいると、妹が俺の部屋に入ってきた。
「キョン君、でんわ〜」
 妹は子機を手渡すと、その身代わりなのかシャミをだっこして出て行った。

 

 電話の相手は中学時代の旧友、中河だった。
 去年の暮れ、たいした親交もなかった俺に唐突に長門に一目惚れしたと告白し、ものの三日で勘違いに気づきあっさり身を引いたアイツだ。

 

 まさか気が変わってまた長門に会わせろとか言うんじゃないだろうな?俺はつい愛想の無い口調になっていた。
「何の用だ?」
「ああ、去年の怪我の再検査に行ってきたんだが、ついに医者の先生から異常なしというお墨付きを貰ったんだ。これで休んでた練習も再開できる」
 長門が関わってる怪我だ。こいつの選手生命を奪うほどの重症ということはないだろう。
「お前には見舞いに来てもらった手前、一応報告しておこうと思ってな」
 律儀なやつだ。こいつが悪いやつではないのは昔から分かってる。
「大事に至らなくて良かったじゃないか。だが、あまり無理はするなよ」
 と、社交辞令で言っておく。
「気をつけるよ。じゃあ、また同窓会の時にでも」
 そんなやりとりをして、俺は電話を切った。

 

 中河が長門のなの字も出なかったことに、俺は妙な安心感をおぼえていた。
 何故?
 また長門に惚れただのなんだのという話になって欲しくないからだ。
 それは何故?
 去年から薄々気づいていたことだが、どうやら俺は長門に対してある種の占有欲を抱いているようだ。しかしそれは長門に対してじゃなく、SOS団発足当初から俺の憧れの存在である朝比奈さんにも言えることだ。ハルヒは…どうだろう?まあ置いておこう。
 俺は意外と嫉妬深い性分なのかもしれないな。

 

 俺は次の日もその電話をひきずっていたらしく、授業も上の空で考え込んでいた。
 そういえば、あの一連の出来事を長門はどう思っているんだろう。以前、中河から告白された事の感想を尋ねたら、長門は残念と答えた。告白が超常現象がらみの錯覚でなく本当のものだったなら試しに付き合ってみたかったとでも言うのだろうか。
 だとしたら少しショックだ。
 長門が親しくもない男からラブレターを贈られてそれを鵜呑みにしてホイホイ付き合うなんて、考えられん。もし相手がいい加減な男で、さんざん弄ばれた挙句あっさり捨てられて、それが人間の恋愛というものだと誤認したらどうなるんだ?人類の沽券にかかわるぞ。

 

 …って、何バカな事考えてるんだ俺は。俺は長門の保護者かよ。

 

 自分にあきれながら溜息をつくと、ハルヒに背中をシャーペンでつつかれた。
「どうしたのよ。溜息なんかついちゃって」
「なんでもねえよ」
 本当になんでもない事だ。
「あんたでも悩む事ってあるんだ」
 俺の悩み事は大半がお前がらみだ、とは言わないでおく。
「だからなんでもないって」
 ハルヒは意味ありげに、ふーん、と鼻を鳴らした。なんだか誤解されてそうな気がするが、俺の話をろくに聞かないハルヒ相手に訂正するのもめんどくさいので放っておいた。

 

 そして昼休み。
 長門との約束を思い出した俺は弁当箱を片手に迅速に部室へと移動した。長門がどんな弁当を持ってくるのか正直興味があった。
 部室に入るとやはり長門は定位置の窓際に座っていて、その側のテーブルの上にはコンビニ袋が置いてあった。
「弁当ってそれかよ」
 長門の外見によく似たかわいらしい小さめの弁当箱にコンパクトに詰められた女子高生的な弁当、正直俺はそういうのを期待していたのに。
「時間効率を優先」
 コンビニ袋から幕の内弁当を取り出しながら長門は答えた。
 なるほど、長門らしい理屈だ。確かに一人暮らしで早起きして弁当を用意するのはちょっと大変かもな。
「大変」
 でもなあ長門、コンビニ弁当ばっかりだと体によくないぞ。たまには自炊もした方がいい。親に任せっきりの俺が言うのもなんだが。
「している」
 まさかカップラーメンとかじゃないよな?
「……」
 長門は沈黙をもって返事とし、食べ終わった容器を片付けた。
 食うの早いな、さすが長門。

 

 放課後、第何回になるか最早見当も付かないSOS団活動。
 古泉が早々とバイト宣言をして去ってしまったので、俺は仕方なく詰め将棋で時間を潰していた。長門は黙々と読書、ハルヒは朝比奈さんの髪を弄ってポニテメイドを爆誕させようとしていた。しかし詰め将棋の手を止めて朝比奈さんウォッチを楽しむ俺の視線に気づいたのか、ハルヒはせっかくのポニテをさっさと解いてツインテールにしやがった。
 何がしたいんだこいつは。

 

「明日は久しぶりのSOS団不思議探索の日だからね!ちゃんと来なさいよ!」
 ハルヒの指差し確認を伴った命令によりその日の部活は終了した。

 

 ここまでは、俺の比較的好きな平和な三日間だった。
 しかしその陰で災いの種が着々と撒かれていることに、俺はまだ気づいていなかった。

 
 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
長門有希の思考記録(抜粋)

 

 最近彼が私を気にかけてくれる機会が増えた。
 それはとても嬉しい事。
 でも、それに呼応して涼宮ハルヒの精神波形が振れ始めている事を、彼の好意に甘えたくて忠告できない自分が疎ましい。

 

 最大の懸案事項、手作りのお弁当の製作については保留。

 
 

  −第三話に続く−

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:22 (1774d)