作品

概要

作者T−SY
作品名長門と
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-06-06 (金) 23:03:48

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

ある日の放課後の部室。

 

「はい、キョン君」

 

「あ、どうも」

 

俺は朝比奈さんが淹れてくれたハーブティーをすすりながら、長門から借りた本を読んでいた。
1ページを繰るのに5分位の時間がかかる代物だが、読んでみると意外と楽しい本だった。
俺が読んでいるのはSFものの小説だ。
たまーに矛盾があったりするが、そこはスルーだ。
いや、「宇宙空間で何故爆発音がするんだ」とかそういった矛盾だからだ。
そんなことを気にしているのは俺だけなんだろうな、きっと。

 

その時、音もせずに部室の扉が開かれた。入ってきたのは珍しく俺よりも来るのが遅かった長門だ。
長門は入ってくるなり俺の隣までやってきて、

 

「面白い?」

 

と俺に尋ねた。

 

「ああ」

 

俺が答えてやると、

 

「そう」

 

長門はそれだけ言っていつもの席に座り、読書を開始した。
長門が読んでいるのは俺よりももっと分厚いハードカバーの本で、六法全書を思わせるような難しい感覚を漂わせていた。
本なんか俺とは無縁の物だと思っていたが、案外そうでもなさそうだ。
長門に出会ってなきゃ、俺は本なんか読んではいなかったんだろう。感謝、感謝。

 

・・・決して、恋愛とかの感情は持ってない。神に誓ってやるさ。
俺がさてもう一度と集中力を高めていた矢先、

 

「遅れてごっめーん!」

 

ハルヒがやってきた。

 

「何だ、今日は?また随分とハイテンションじゃないか」

 

こいつのテンションの高さは鶴屋さんの次に凄いからな。例えるなら火を入れたコロニーレーザーだ。
・・・すまん、我ながら意味の分からん例えだな。

 

「あれー、古泉君は?」

 

そういえば見ていないな。ハルヒが機嫌を悪くしてあの妙な灰色な閉鎖空間を作って
機関とやらの奴等と仲良く神人を狩りに行ってるわけでもないだろうし、
ましてや本当にまともなバイトをしているわけでもないだろう。
圭一さんのような親戚がいるんだ、どうせ金には困っちゃいないんだろ。

 

「ここに居ますよ」

 

ハルヒの後ろには既に古泉がいつもの笑顔で立っていた。やれやれ、忍者かお前は。

 

「あら、今日は皆早目に揃ったじゃない。」

 

ハルヒ良い事だわっと機嫌良さげに言って、団長席に座った。
団長席にはコンピ研から貰った(無論脅迫で)パソコン一台、そして「団長」と書かれた三角錐が置かれている。

 

ハルヒは意気揚々とパソコンの電源を入れ、ネットサーフィンを始めた。
どうせ我が団のくだらんHPのアクセス数チェックだろ。見るも無残な感じで回ってないんだろうが。

 

俺はもう一度本に視線を落とした。今日は俺が長門の代わりになってやる、と言わんばかりのやる気でな。
過去最大級のやる気で俺は本を読んでいた。

 

長門が本を閉じたことによって部活動終了となった。
いや、活動のへったくれもないんだがな。

 

俺が校門を出て、あの恨めしい坂を下っていくと先に出ていた長門が居た。

 

「何だ長門、帰らないのか」

 

「・・・・」

 

長門は無言で突っ立っている。どうしたんだ、一体。

 

「今日の夕飯」

 

「え?」

 

「カツカレーにするかそれとも普通のカレーにするか」

 

おいおい、どっちも大差ないじゃないか。

 

「ある。普通のカレーならば材料費を低価格で済ませる事が可能。しかし私には物足りない。カツが入ると満足できると思われるが、
材料費がどういう使い方をしても規定の価格を超えてしまい結局無駄遣いになる。この差は大きい」

 

普段全くといっていい程喋らない奴がカレーについて熱弁しだしたら正直言ってドン引き、といった表現がお似合いだろう。

 

・・・仕方ない、一肌脱いでやるか。世話になってるしな。

 

「長門、それだったら奢ってやるよ」

 

長門は瞬時にこちらに振り向いて俺の袖を掴むと、早歩きで走り出した。

 

「お、おい長門?」

 

長門は返事をせずに歩いていた。鶴屋さん風に言うとめがっさ早く。

 
 
 
 
 

長門に引っ張られて俺はスーパーにやってきていた。スーパーは暗くなっても相変わらず賑わっていた。
長門はそばに置いてあった買い物籠を取って俺につきつけ、

 

「持ってて」

 

とだけいって俺をまた引っ張っていった。
やれやれ、相当のカレー狂だな。

 

「カレーは有機生命体が生み出した食の極み。誰が食べても必ず「美味」と答え誰が
食べても必ず「楽」という感情になることが出来る素晴らしい料理」

 

いや、ちょっと大袈裟かもしれないが確かにそうだな。
俺だってもっとちっこい頃にはカレーは大好きだったし、
いつも笑顔で「おかわり!」とか言ってたっけな。懐かしすぎるぜ、幼少時代。

 

長門は手当たり次第にカレーの材料を放り込むと、肉のコーナーに突っ走った。着くやいなや豚肉の選別を始めた。

 

「こちらの豚肉は脂肪分がこちらの豚肉よりも0,2%高い。よって体に悪影響」

 

そう言いながら片方の豚肉を戻した。その豚肉のパックには「238円」、
長門が持っているパックには「542円」と書いてあった。おいおい・・・

 

長門がレジの前まで行くと、俺に道を開けた。いやいや・・
俺は肉だけを奢るつもりだったんだが・・・と言おうとしてやめた。
命の恩人でもあるんだ、これ位してやるさ。
レジに表示された金額に少々青ざめつつも、会計を済ませた。

 
 
 

俺は長門と共に両手に袋を持って(つまりは4袋)歩いていた。

 

「なあ長門」

 

「何?」

 

「これ、お前の家まで持っていった方がいいか?」

 

「当然」

 

聞くだけ無駄だったな。
いやいや、まさか材料がこんなに
多いなんて思ってもみなかったんだ。
普通に一人暮らしなはずなのに、なんだこれ。
ちょっとしたパーティーをするのか。

 

「カレーは一晩寝かせるとコクが増す。つまり、多めに作る事によって明日まで残る。一粒で二度美味しい」

 

おい。この量を一人で食い切るつもりだ。それも明日までに。
なんてったって、パーティーぐらいの量なんだぜ?
これは・・・多分5人くらいでテーブルを囲んでやると丁度良い位の量だな。

 

そうこうしてるうちに、長門のマンションの前までやってきた。

 

「入って」

 

また、長門の家か。

 
 
 
 
 
 

俺は長門のあのある種印象的な部屋に来ていた。
相変わらず部屋のど真ん中にテーブルが置いてあるだけの殺風景な部屋だった。
流石に情報ナントカ思念体の産物の
有機生命体用のコンタクトなんだらかんだらでも、
タンスとかそういった家具がないと不便だろうに。

 

「不必要。私はコマンド詠唱によって様々なコスチュームに着替えを行うことが可能」

 

「へぇ便利だな。で、どんな服になれるんだ」

 

「私は有機生命体が着衣するようなコスチュームは知らない。だから、涼宮ハルヒが朝比奈みくるに持ってくるコスチュームを参考にした」

 

ってことは。

 

「まさか・・・メイド服とかナース服じゃ・・・」

 

「そう」

 

・・・長門。それは間違ってる。確かにお前が着ても似合うだろうがそれは間違ってる。
と言ってやりたかったが俺はあえて言わないことにした。
もしやいつか拝む日が来るかもしれない・・・という小さな希望からだ。悪いな、長門。

 

「・・・調理を開始する」

 
 

長門はそう言ってカレーの下拵え(業界用語ならばプレップ)を始めた。
何故だかいつもよりいきいきして見える長門は素早く下拵えを進めていく。

 

「なぁ、長門」

 

我慢ならずに声をかけた。

 

「何」

 

「俺も手伝って良いか?」

 

少し間が空いて、

 

「効率が上がる。問題無い」

 

そう言われて安堵の溜息を吐いた後、俺はカレーの下拵えを手伝いだした。
長門が人参を切るならば俺は玉葱を切り、長門が味見をするならば俺は横になり・・・おっと、失言だな。

 
 
 
 

「調理完了。食事に入る」

 

やがて、長門の口から紡ぎ出された言葉によって夕食が始まった。俺もご馳走になる事になっていた。
まぁ、俺の金だからな。この材料の金は。

 

「いただきます」

 

長門が自分の顔の前で両手を合わせて食事を始めた。
黙々と食べているが、無表情だから美味いのかそれともその逆なのかも不明だ。
俺も一口、口へとカレーを運んだ。
・・・何だ、美味いじゃないか。

 

「長門、どうなんだ?」

 

長門は視線をカレーから離さずに

 

「美味」

 

とだけ言った。・・・やれやれ、多少は顔に出したほうが良いぞ?お前には笑顔が似合う筈なんだから。
・・・恋とかそういう感情じゃないぞ。うん、そうだそうだ。

 

食事を済ませて、長門が皿を運んでいった。あれ、お代わりとか要らないのか?

 

「不必要。後5日は持たせる」

 

ああ、流石に2日は無いか。俺の勘違いで良かったよ。・・・でも5日間カレーまみれってどうなんだ。
ま、聞かないことにしておこう。いちいち言われたら長門だって嫌がるかもだしな。

 

「じゃ、ご馳走様。また明日な」

 

長門は表情を1mmくらい変えて、

 

「さよなら」

 

と言った。
長門の姿がキッチンへと消えていくのをなんとなく確認しつつ、俺はマンションを出たのだった。

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:20 (2710d)