作品

概要

作者alpha
作品名涼宮ハルヒの終焉
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-04-23 (水) 16:52:48

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

全身の血が凍りついて凍死しかけそうなくらい寒い日のことだ。
今は二月中旬。今年のシベリア寒気団は後半戦のストレートが得意なようで俺はこのところフル装備でこの登下校と言うラウンドで戦っている。
マフラー、ウィンドブレーカー、セーターのフル装備でも寒いものは寒いのだ
しかも、この地獄破りの坂もついてくる。最初のころに比べれば息切れとかしなくなっただけましかと思うけれど、これって洗脳状態に近いものを感じる。
この二年間で俺もだいぶ免疫がついてきたと考えておこう。
「よっ、キョン。な〜にやってんだこんなところで。」
唐突だな。お前も知り合って二年が経とうとしているんだな、谷口。
俺は馬鹿な谷口のために振り返って挨拶をするような馬鹿なことはしない。馬鹿な・・・
「うるせぇ、馬鹿を三度もつけて言うんじゃねぇ。お前もどっこいどっこいだろうが。」
うるせぇ。しかし痛いところを・・・。
俺だってこいつのことを言えた立場などでは決してないんだ。この前行わなくてもいいのに行われた課題テストでは赤点ぎりぎりタッチの差でセーフってとこだ。
こんな奴と張り合っている俺はいったい何者なのだろうか。そして俺の未来はどう転ぶのか。(転ぶこと前提だ)
「それでよ、キョン。お前には俺は質問をしてんだぜ。『何やってんだ?こんなところで』お前、いつも来るのはこの時間よりも遅いだろ?」
ほう、お前にしては物覚えがいいじゃねぇか。
「別に少し早く起きちまって二度寝も億劫だったから早めに出たんだよ。まぁ、この寒さだ。コンマ一秒で後悔したがな。」
そうだ、少なくとも家にはストーブやら暖房器具があるからな
「そうか?普通じゃねぇのか?」谷口は俺よりもかなり薄い服を見せながら言った。
そうか、馬鹿は風邪を引かないというが、寒さすら感じなかったのか。
「おい、だから馬鹿馬鹿言うんじゃねぇよ。」
今度は露骨に無視する。
「で、お前はこんな時間に何のようだ?聞いてやる。」
「おう、ダチの中に一人なかなか良質のブツを手に入れたって言う奴がいるから、早めに行ってそいつと取引だな。」
聞いた俺が馬鹿だったとこの二年でどれほど思っただろう?
「いいか、谷口。そういうのもいいが、現実を見ろ。そんな奴が俺たちの回りに一体何人いるか。お前だってこの前フラれたばかりだろ。」
言ってやったぜ、谷口には効果覿面のこの言葉。二年もこいつと付き合ってりゃ扱いも慣れてくる。
ほぉら、うるせぇとかつぶやいていじけた。
「でもな、お前が言うとなんか変だな。」
谷口の反抗。なんだ?俺が言うと何だって?彼女いない暦16年の俺が言うんだ、これ以上望ましい奴などいるものか。
「お前が言うとどうも説得力がないって言ってるんだよ。うらやましぃ・・・。」
ハ?お前にうらやましがられる要素など1ダースも持ち合わせた覚えはないが…。
アレか?つまりは俺の周りがうらやましいってか。
まずは我が麗しの天使、エンジェル、憩いのオアシス、妖精…常套句しか浮かばない未来人の先輩兼メイドの朝比奈さんだろ…。
後はその友人、常に花火のようにはじけながらハイテンションで場を盛り上げるロングの黒髪美人の鶴屋さん。
同じく、こちらは花火などというものではなく、むしろ原爆を抱え込んで生きてるようなハルヒも認めたくはないが、容姿はぴか一だ。
あとは、もうすっかり顔なじみとなった喜緑さんに今はもうここにいないが朝倉ともぶっ飛んだところでいろいろと接点がある。
なるほど、言われてみりゃ谷口の言うとおり美女に囲まれているなハーレムの一歩手前じゃねぇか。だがよ、谷口。そういうのはその相手に脈がないと叶わないんだよ。
「やっぱ、お前はお前だな。」
何がいいたいかさっぱり伝わらないぞ、谷口。小学生に戻って初歩の文法から学びなおしてみろ。
「じゃ、俺は先に行っとく。あばよ。・・・・・・・うまくやれよ。」
え?後から何言った?よく聞こえなかったが、なんか言ったろ、なんつったんだ?
こんな寒い中元気すぎなほど坂道を駆け上る谷口の後ろ姿を見て、俺はため息をついた。
やっぱり、あいつの相手するのはなれたってつかれるぜ。
「そう。」
どぅわぁ!な、なな長門か。驚かすなよ。いい加減気配を消して後ろに立つのはやめてくれ。心臓に悪い。
と、俺は思ったが口に出すのはやめた。なぜかって言うと、俺だって大きな声を出して長門を驚かせちまったからだ。
「よ、よう、長門。珍しいな、登校時に会うのは。同じ方向だとは思っていたけれど、こんなに早くに学校へ行ってたんだな。」
「違う。いつもよりかは結構遅い。大体二十分程度の遅れ。今日は意識の活性化にタイムラグが発生したから。」
と、言うことは開門する前に行っているってことか。意識の活性化の遅れって、つまりは寝起き損ねたってことだな。こいつは高校生らしからぬ辞書直行な複雑言語しかしゃべらないからな。まぁ、昔と比べると多少言葉も柔らかくなってきたが。あと、表情とかもな。
「あの人は気づいてた。」
は、ハイ?な、長門?なんだか妙に殺気立ってるが何のことでしょう?
「あなたと歩いていた人は私の存在に気づいていた。でも、あなたは気がつかなかった。これは由々しきこと。」
谷口のやろう。気づいてるんなら、早く言ってくれ。と、いうより、ずっと後ろいついてたのか。
「由々しきこと。」
長門さん?何か言い知れぬ恐怖のせいであなたが大きく見えますよ・・・?
こ、これは、何か分からんがここで何か言わないと明日の日の出は拝めそうにない。
「そ、そんなこといってもな・・・お前はいつも気配がないし・・。」
決して存在感がないってわけじゃないんだ、長門。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あ、分かった。俺、ここで死ぬんだ。
小泉、ハルヒが暴走したら頼む。そして、妹、兄を決して忘れないでくれ。・・・ついでに机の下にあるものも頼んだぞ・・・。
すると、長門は俺を視線から放してまた歩き始めた。ふぅ、万事休す。
「あなたはなぜ、こんな時間に?」
突然長門から投げかけられた質問だった。
「あぁ、早く起きちまって何もすることないからたまには早めに学校に行くのも悪くないかと。」
「そう。」
ハイ、そこで沈黙。普通の人なら何か気まずくなったりするかもしれないが俺にとってこの沈黙は心地よい。
俺たちはしばらく何も話さず、ただのんびりと校舎を目指した。
だが、時々吹き抜ける凍てつくような風が俺を貫くたび、ぶるぶると震えた。
「さみぃなぁ。」
「今現在の気温は摂氏2度。」
どうでもいいような独り言に反応する長門。しかし、二度か!?マジでか?
「マジ。」
そんなことなら聞かなかったらよかったな。(聞いてはないが)余計に寒く感じるというものだ。地球さん地球さん。あなたは何を考えてるんですか?仮にも二月、体を傾け始めてるころでしょう?あなた、大丈夫ですか
そこで、俺はあることに気がついた。長門の今の格好だ。いつもどおりの制服にカーディガンを羽織っただけの姿。これは寒いぞ、地球の傾きが及ぼす温度差を甘く見すぎだ。
「大丈夫。寒いという概念は私の中には存在しないから。」
うそ、だな。そういううそをつく前にそのいつも白い顔がさらに白くなっているのと唇がわずかに震えているのをどうにかしろ。
俺はゆっくりとウィンドブレーカーを脱ぎ、長門にそっとかけてやった。
ん・・と、声を漏らして驚く長門。そしてこちらを見る。
「着てろ。そんな格好じゃ死んじまうぞ。俺なら一時間で凍死の自信がある。」
「なぜ?私にはそんな概念なんて・・・。」
「でも着てろ。女の子がそんな滑降してるのを見ると俺のプライドが許さん。」
「いい。変わりにあなたが外気に多く触れることになっちゃ・・」
「俺はもう平気だって。」
「寒いって言ってたくせに・・・」
「俺にはまだ、コートってもんがある。それに・・・俺がそうしたいからな。」
「「・・・・・・・」」
俺たちは討論の末、黙りこくってお互いを見る。
その強い漆黒の瞳に一瞬押されそうになる。でも、引けないね、ここだけは。
大きなお世話の小さな親切って奴だ。
「おれが、そうしたいからな。」
最後に言ったセリフをもう一度ゆっくりと言う。これで長門も折れたようだ。
「・・・分かった。」
声にはやけくそ感とともになぜか喜色の類も感じられた。
それから俺たちは再び歩き出し、坂道を登る。
長門が俺のウィンドブレーカーを大事そうにぎゅっとつかんでいる。そんなに寒かったのかね?

 
 

そうこうしている間に北高の校門が見えてきた。早いな。
「・・・これ・・・。」
長門が口を開く。少々ぶかぶかの俺のウィンドブレーカーが揺れた。
「あぁ。それなら帰ったあとに返してくれたらいい。帰るころにはだいぶあったかくなってるだろ。」
「分かった、放課後、あなたに返す。」
苦々しげに長門は言った。
さてと、俺も自分の教室へと向かうかね。早すぎて暇だろうが。

 

階段の踊り場の窓から長門がこっちを見て笑っていたような気がする。

 

思えば、このときからすでに始まっていたのかもしれない。俺とSOS団を巻き込んだぶっ飛び事件の数々も、終焉に向かって進んでいたのかもな。

ここで、長門の異変に気づけなかったのは失敗だった。諸行無常の何とやらだな。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:15 (2732d)