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作者 | 紅蓮 |
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作品名 | 許可を。 |
カテゴリー | 長門SS(一般) |
保管日 | 2008-03-29 (土) 20:40:49 |
キョン | 登場 |
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キョンの妹 | 不登場 |
ハルヒ | 不登場 |
みくる | 不登場 |
古泉一樹 | 不登場 |
鶴屋さん | 不登場 |
朝倉涼子 | 不登場 |
喜緑江美里 | 不登場 |
周防九曜 | 不登場 |
思念体 | 不登場 |
天蓋領域 | 不登場 |
阪中 | 不登場 |
谷口 | 不登場 |
ミヨキチ | 不登場 |
佐々木 | 不登場 |
橘京子 | 不登場 |
「許可を」
長門は澄んだ瞳で俺を見つめる。
こいつはこんなことに熱くなるような奴じゃない。
だが瞳の奥には青く輝く炎が見えるような気がした。
「ひょっとして、勝ちたいのか?」
俺の問いかけには一点の曇りのない目で答える。
勝ちたいんだな、このゲームに。
「おし、やっちまえ」
長門は一言だけ、そう、と答えるとエンターボタンを押した。
俺は不思議な気持ちでいた。
あいつに許可を求められたことが前にもあったような………
そうだ、あの時だ。
――――――1ヶ月前の休日。
携帯のバイブ音で目が覚める。
俺は眠い目を開けられず、手探りで携帯を探した。
薄目で携帯のディスプレイを見ると、そこには「着信:長門有希」と書かれている。
あいつが……電話?
不思議に思ったが電話が鳴っているのは事実だ。
急いで電話に出る。
「もしもし?」
「……もしもし」
電話の声は確かに長門だ。
「どうした?電話なんて珍しいな」
「……図書館にいる」
ガチャ、という音とともに電話が切れた。
さっぱり意味がわからない。
図書館に来いってことか?
携帯の時計を見ると10時20分を指している。
長門から電話がかかってきたことがどうしても引っかかる。
行ってみるか、図書館に。
俺は急いで着替え、家を出た。
図書館の入り口の自動ドアが開く。
周りを見回したが、長門の姿はない。
ここにいるんだよな?いや、長門が呼び出しておいていないはずがない。
そんな自問自答をしながら、俺は図書館の奥へと進んだ。
一番奥の棚の前で、六法全書みたいな大きい本を立ち読みしている長門を見つけた。
あの小さな体でよくあんな重い本持てるな……。
俺はしばし長門に対する疑問について考察したが、よく考えればあいつは不思議だらけだった。今さら考えてどうする。
俺は長門に近づいて声をかけた。
「よっ!何の本読んでるんだ?」
「……医学の専門書。本の名前は……」
「いや、いい。聞いたって混乱するだけだ」
「……そう」
「ところで、いきなり電話なんかして、どうしたんだ?」
長門は視線を周りに向けた。何か気にしているようだ。
「図書館出ようか?話しづらそうだし」
「……いい。早く話した方が良い」
「…そうか」
そう言ったきり、長門はうつむいて動かなくなった。気のせいか、顔が少し赤い。
数分経ったと思う。長門は手に持っていた分厚い本を元の棚に戻し、その透き通った瞳で俺の方を見た。
「……話すことがある」
俺は緊張して唾を飲み込んだ。
「…なんだ?またハルヒのことか?」
「……違う。……私はあなたを好きになった」
俺は一瞬目の前が揺れた。長門よ、今なんて言った?
「私はあなたに好意を持っている。でも、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェースにとって、それはあってはならない感情。私はあなたを好きになってもいいのか、確信できていない。だから……」
「許可を」
俺の心は落ち着いていた。長門が俺を好きでいてくれる。それは最高に嬉しい。ヒューマノイド・インターフェースとか、そんなことはどうでもいい。俺も長門のことが……。
俺は長門の瞳だけを見て話した。
「許可する」
終