作品

概要

作者ちの たりない人
作品名Sleepless-Beauty
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-03-16 (日) 15:16:16

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

起きろ、と言われて起きるのに、少しばかりイライラが混じるのは、起こしてくる対象にもよるんだろう。
「そう言うわけで、俺の睡眠を返せ、古泉」
「この現状を見ても寝ていられるなら、どうぞ、としか」
古泉の、無駄に熱っぽい声で起こされて見てみれば、そこは灰色の世界だった。
「て、閉鎖空間?」
「はい、それも特殊な部類に入るものですね」
いつもの爽やかスマイルが影を潜める。
確か、俺はベッドで寝ていたはずなんだが……
「何で今度はお前と二人っきりなんだ?」
朝比奈さんと二人っきりなら、どんな状況でも楽園と化すが、古泉と一緒では地獄…とまではさすがに言わないが。
「いえ、僕達だけではありません。朝比奈さんと長門さんには、この空間の範囲がどの程度か調べてもら……丁度戻ってこられました」
見ると、困惑顔の朝比奈さんと、いつもどおりの無表情……に一ミクロンほど疲れたような長門が連れ立ってやって来た。
「どうでした?」
「範囲はおそらく、この校内のみ」
「あの時と同じか……」
長門の報告に呟く。あの時ってのはまぁ……記憶から封印したいあの時だ。
しかし、長門の報告はそれで終りではなかった。
「文芸部部室に涼宮ハルヒが居ると思われる」
「個々にはあまり動かない方がいいかもしれませんね。涼宮さんと合流しましょうか」
その意見に異を唱えるものも無く、俺たちは部室へと向かったわけだが…………。

 

「これが、涼宮さんなんでしょうか?」
部室のハルヒの机の上。そこに鎮座する存在をおっかなびっくり見つつ、朝比奈さんは聞いてきた。
「おそらく……そうだと思いますが」
何故だろうか、古泉はそれに近付こうとしない。
まぁ、俺も近くには居るものの、どうしたら良いのか皆目見当もつかんわけだが。
と、
「この赤ん坊が涼宮ハルヒに間違いはない」
長門はそれ……赤ん坊になっているハルヒを抱き上げた。
なんと言うかだ、妙にさまになっている。

 
 
 
 

「しかし、どう言う事なんだ、これは?」
ハルヒの願望が赤ちゃんになる事……なわけは無いだろうし……。
「それについてなんですが」
意見を言うのは構わんが、古泉もっとこっちに来れないのか?
「いえ、ここで……。まずですね、これは涼宮さんの願望とかではなく、誰かの夢に涼宮さんの力が働いた、そう言う感じではないかと」
古泉、スマンがそれは余計解らんぞ。
「端的に言えばですね、この場に居る涼宮さんを除く誰かの願望、もしくは夢ではないか、と」
俺と朝比奈さんが古泉を凝視し、長門は我関せずとばかりにハルヒ(赤子)をあやしていた。

 

「ここが普通の閉鎖空間じゃない事はお察しの通りですが、どうやら、過去にあなたと涼宮さんの居た閉鎖空間とも違いまして」
「どう違うんだ?」
「僕の力がまるっきり作用してませんね。あの時は不完全ながらも力が出せましたから」
そう言えば、赤い玉になってやっては来ていたな。だが、仲間の力を借りてだったと思うんだが。
「あの時は百分の一でも力が作用していたから出来たわけです。今はゼロですね」
ゼロに幾らかけてもゼロってアレか。
「はい。おそらくですが、長門さん。情報統合思念体と連絡は取れてますか?」
「定期的に連絡を取ろうと試みてはいるが、現状では出来ていない」
ハルヒ(赤子)をあやしながらなので、緊迫感は無いんだが。
これはあれか?緊急事態というやつなのか?

 

「取り合えずですね、この中の誰の夢、もしくは願望なのかが解れば、それを解消するだけで済むとは思うんですよ」
どうでも良いんだがな、古泉。異様に話し難いからもっとこっちへ来い。
「いえ、遠慮しておきます」
俺は溜息を吐き
「この場に居る俺、朝比奈さん、長門、古泉、後一応ハルヒ……誰の夢か、か?」
「あたしの可能性も、あるんですよね?」
そう困惑気味に告げる朝比奈さんに頷き
「はい。誰としても言える事は、自覚はしていないと言う事なんです。だから、僕の可能性も十分あります」
と、部室の端の方で言う古泉。
もしかして、古泉は赤ん坊が怖いとかか?
「まぁ、苦手ではありますね」
この時点で古泉の率は薄れるんじゃないか?
「いえいえ、涼宮さんを僕たちの都合の良いような性格に育てる、というのは、あながち持ってない願望ではないと思いますので」
そうは言ってもだ、そこまで近づけんとなると何もできんのではないか?
「そうなんですけどね」

 
 
 

さて、古泉の可能性は多分無いだろう。
と、なると残るは三人プラス一人。
朝比奈さんは……古泉ほどではないがこれも無いと思える。
赤ん坊を抱く朝比奈さん、という図も素晴らしく捨てがたいものではあるが、だからと言ってハルヒを赤ん坊にしてしまうというのは違う気がするわけだ。
俺がむしろなりたいとか思っているのは伏せておくとする。

 

と、なると、残るは俺か長門。
長門のわけは無い……と言う言葉を思い浮かべかけて、俺はひとつの可能性に辿り着いた。

 

この状況……俺は、今日…もう昨日か、あった事を思い出していた。

 

「有希は間違いなく、良い奥さんになるわね」
そこに至った紆余曲折は省くが、長門がハルヒに弁当を作るというみょうちきりんな事になった。
まぁ、結局何故だか全員分の弁当を長門は作るハメになったのだが。
いつものように文句も言わず、長門はきっちり、全員分のを作ってきたわけだ。
で、食べ始めたハルヒの第一声がこれだった。
そして、続いてこんな言葉も吐いていたはずだ。
「有希の子供ってのも悪くないわね」
と。
「お前の親、ってのは心労が耐えないだろうけどな」
「何言ってんのよ。こんな素晴らしい娘なんて、世界中探してもあたし位よ」
「確かにお前位だろうけどな」
俺はやれやれと肩をすくめる。
確か、それに対するハルヒの切り返しはこうだった。
「あんたが親でも同じ事を思うわよ」
そこで俺はなにを考えた……かだ。

 
 
 

「その推論で行きますと、やはり涼宮さんの可能性もあるのではないでしょうかね?」
「それはない」
古泉の意見は長門によって即、否定された。
「涼宮ハルヒが望んだのは、子供であって赤子ではない」
確かに、ハルヒ(赤子)では無く、ハルヒ(小)程度の希望だったはず。

 

こう、
「ただいま〜」
と小学生位のハルヒが少し大人びた長門に抱きつく……いかん、これでは俺が首謀者のようじゃないか。
「違うんでしょうか?」
やかましいぞ、古泉。

 

しかしである、現状のようなものを夢想したのも事実なわけで……原因は俺なのか?
「早計ではあると思いますが、あなたが一因であると見るのは、間違いはないとは思います。しかし」
「しかし? なんだ」
一旦区切りを入れ、思案顔をし、古泉は続けた。
「要因があなただけ、なら、この状況はすでに叶った状態になる……違いますか?」
「むっ」
言われてみれば確かに…………俺はいつの間に所帯じみていたんだろうな。

 

「あの、間違ってたらすみません……もしかして、その」
言いよどむ朝比奈さんの視線の先、ハルヒ(赤子)をあやす長門が、じっと俺を見ていた。

 

「推論ですが…」
と、前置きをし、古泉は言った。
「涼宮さんが長門さんの子供になってみたいと思い、あなたは長門さんが母親である状況を想像した、もうひとつを長門さんが思い描いた…と」
「もうひとつ?」
そう、長門に問いかけるも、長門はハルヒ(赤子)を抱いたまま、俺を見ているだけだった。
「そうですね、僕たちはお邪魔のようですし、神人見物に行きませんか?」
と、古泉は朝比奈さんを伴って部室を後にしようとした。
「ちょっと待て、それは危険だろう」
古泉は爽やかな笑顔で
「もちろん、冗談ですよ。それでは」
と告げ、二人して去っていく。

 
 
 

さて、どうしたもんかね。
当の長門は、俺の横でハルヒ(赤子)を抱いて立っている。
ちなみに、ハルヒ(赤子)はいつの間にか眠っていて、いつもの小憎たらしい顔からは想定不可能な、まさに天使の寝顔と言った風情だ。
古泉の言うのはつまり、ハルヒを筆頭に似た状況を望み、それがこの現状の要因になった、と。
ハルヒと俺の妄想は、ある意味すでに叶っているわけで……残るは一人。
「長門の願いってのは何だったんだ?」
じっと俺を見つめる長門。
瞳の中に2ミリ程度の困惑が浮かんでいる。
喋ってしまう事が出来ない事なのか、言い難いだけなのかは解らんが……俺に察しろと、そう言う事らしい。

 

と、無駄に考える振りは逃げだな。答えはとうの昔に予想はついている。
フロイト先生、笑ってくれてかまわんぜ。
俺は、どことなく不思議そうに見上げる長門の髪を撫でる。
形式に習い、俺は目を閉じる。

 

―罪でもいい、夢でもいい

 

そんな声を聞いた気がして、俺は自分のベッドで眼を覚ました。

 

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:13 (2732d)