作品

概要

作者ちの たりない人
作品名JOINT
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-03-16 (日) 15:14:20

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

注)約束ネタバレ含みます

 
 

教室にたたずみ、彼が現れるだろう時を待つ。
星の瞬きのない、灰色の空が窓に映る。

 

わたしが彼を殺す。
その情景を、涼宮ハルヒに見せる事により発生するであろう、情報爆発を用いてこの空間を脱出する。
これが、現状を打開するための最終手段。
情報統合思念体の決定。
わたしはわたしの役目を果たすだけ。

 

―本気? 冗談でもちょっと笑えないかな

 

聞いた記憶のある声に、わたしは思考を止めて辺りを見る。
当たり前だが、誰も居ない。
古泉一樹称するこの、閉鎖的閉鎖空間にはわたしと彼、朝比奈みくる、涼宮ハルヒ、そして鶴屋という朝比奈みくるのクラスメートの五人しか居ないはずだからだ。

 

いや、そもそも先に聞こえた声、その人物が居るわけがない。
わたし自身の願望が聞こえて来てでもいるのだろうか。

 

―あなたの役目はあなた自身が決める事

 

幻聴と呼ぶにははっきりした、現実と呼ぶにはぼやけた、それでも確かに、その声は私に向けてはなたれている。
この空間の異常性も要因なのかもしれない。
わたしはその声にはっきりとした意思で、耳を傾けてみる事にした。

 

しかしそれは、言葉ではなく、情景として浮かんできた。

 
 
 

情報改竄により閉鎖された異質な教室。
彼女のナイフを素手で受け止めているわたし。
その時の記憶、流れ行く情景に、記憶にはないと思える会話が重なる。

 

―もしも、もしもよ。ソレが許されるんだったら…どうしたい?
「えっ?」
わたしの顔に、疑問符と言うものが浮かんでくれる事は無い。
―あたしが言えた義理じゃない、そんな事は解ってて言うけど
その時はそう思っていたし、事実としてそうだった。
―あなたの役割を決めるのは、あたしでも、もちろん他の誰でもなく、間違いなくあなた自身よ
「わかっている」
そう、これはあくまで過去。
「わたしはわたしの役割を果たす、だけ」
その時見たその微笑は、今にして思えば、本物の微笑であったのかもしれない。

 

目の前にはいつの間にかやって来た、彼が立っていた。
自身がどうなるのか、それがどう言う意味をもたらすのか、すべて知ったその上で、彼はここへとやって来た。
なのに彼は、自身におとずれる事を端へとおいやり、それを引き起こす存在……わたしに対して謝罪する。
自分自身にかかった運命、それを行う事になった私に対して、
「嫌な役回りさせちまうな」
と。
場違いな優しさ。
わたしは……もし私が人間であってもこれに関しては大差ないのではと思えた。
どんな顔で彼を見ればいいのか、解らない。
「謝らなくていい。あなたは何も悪くない」
そう、悪いとするならば、他の手段を逃してしまったわたし。

 

教室の外から朝比奈みくると、それに連れられてくる涼宮ハルヒの声が聞こえてくる。
チャンスは一度。
二度同じ手は使う事は出来ない…………
「いく」
短く宣言し彼を見据え、あの時の彼女と同じ力を行使する。

 
 
 

力を失うように、倒れいく。
それは、わたし自身の体。
わたしは、わたし自身が作り出した刃に貫かれていた。
慌てて駆け寄ってくる涼宮ハルヒと朝比奈みくる。
呆然と立ち尽くす彼。

 

そう、死を見せるのは何も彼である必要性はない。
今の涼宮ハルヒなら、この場に居る誰でも……今はこの場に居ない何人かも含め、それほど大差のない感情を抱く。
それには、わたしと言う存在も含まれていた。

 

もっとも、私自身も少し驚いている。
その瞬間まで、彼の死を演出するつもりだったから。

 

彼女や彼が創っておいてくれた道を、わたしは自分の手で崩す愚行を犯すところだった。
彼が迷いの内にも私の前に現れた意味を、その時になってようやっと理解出来た気もした。

 
 

彼が机に伏すように、寝息を立てている。
文芸部の部室。
日付は変わっていた。
もうすぐ彼も目覚める。
涼宮ハルヒもやってくるだろう、先の事を夢として。

 

文化祭当日の喧騒を聞きながら、わたしは手にしていた本を開く。
彼女が、隣で微笑んでいる、そんな気がしながら。

 
 

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:13 (3087d)