作品

概要

作者ちの たりない人
作品名旅立つ朝に〜T掘
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-02-18 (月) 20:20:48

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

これはSS集/864の続きに当ります

0-α.
「……」
誰かがわたしを呼んでいる。
「……」
浅い眠りが妨げられ、意識が覚醒へと導かれる。
「……」
呼びかけは声だけに留まらず、わたしの体を揺すり起こそうとしているようだった。
わたしは両の瞼を開き、そこに、懐かしい笑顔を見た気がした。

 
 

0-β.
休日の朝。
私は、適当な所でモーニングセットを食べていた。
あの、胡散臭い方からの、胡散臭いと言うより、みょうちきりんな依頼もなく、かと言って、友達との約束らしいものもない。
言うなれば完全無欠にフリーな日だった。
「ちょっといいかしら?」
その人が、私にそう言って話し掛けるまでは。

 
 

1-α.
もちろん、部屋にはわたし以外には居なかった。
ここにはわたししか居らず、そう言った行動を取る可能性のあった存在は、もはや居ない。
解っていた筈の規定事項に、なんらかの力が奪われたような気がした。
そもそも、わたし自身が夢らしきものを見た事、それすらも脱力の要因ではあるが。

 

休日ではあるものの、涼宮ハルヒは今日を市内不思議探索の日と決めていた。
考えても無駄とも言える思考を払い、わたしは出掛ける用意を始める。
朝食を取る必要性を感じはしたが、先の件もあってか、ソレを用意する気になれなかった。
おそらく、確率的に100%と言えるが、喫茶店でのブリーフィングが入るだろう。
朝食の代わり位はその時にでも、と、わたしは家を出た。

 

足取りそのものが重く感じる。
体調、それ自体に不備は無く、朝食がまだであるという一点のみが不安要素のはずだ。
と、考えるのは言い訳である、と言う事も私自身は理解もしている。
概念として識っている事とは別のなにかが、わたしの中で燻っていた。
おそらく、こられはエラーではなく、わたし自身の仕様。
エラーである、とでも言ってしまえば、少しは楽なのかもしれない。
そんな事を思った頃、いつもの場所に辿り着いていた。

 
 

1-β.
私は、そう言って話しかけてきた人を見てみたが、はっきりきっぱり会った事は無い人だった。
サングラスをしているし、ポニーテールにしているし、それら取っ払った顔を見たらば、って考えたけど。
どう、頭のデータをほじくり返しても、記憶にない顔だった。
ただひとつ、私が持つ私の力……みんなは借り物と称しているけれど、で解った事が一個ある。
んでおそらく、だから私に声をかけた可能性がある。
その人はTFEIだった。

 

「なんです?」
私はそう言って、相手の顔を良く見る。
サングラスなんで顔がイマイチはっきりしないけど、多分美人だなってのは解る。
ポニーテールもなんだけど、ある意味、芸能人かなんかの下手な変装に見えた。
言ってしまえば、その二点に関して、彼女の容姿や雰囲気からは似合っていないからだ。

 

「うん。ちょっと、あなたとお話したいんだけど、相席させてもらっちゃっていいかな?」
柔らかい物腰でそう告げられる。
最初、大人っぽく感じたけど、声とかも換算すると私と大して歳の差は無いのかもしんない。
実年齢じゃない方の。
「いいですけど、私じゃ大したお話できませんよ?」
某胡散臭い人なら、結構彼女達、TFEIの方々が知りたい情報ももってそうだけど、超末端ってか異端扱いされてる私じゃ、彼女が所望するような情報は無さそうだ。
「んー、あたしがあなたとしたいお話は、あなたかもう一人位しか心当たり無いわ」
私の前の椅子に座りながら、彼女は続けた。
「だって、長門さんについてのことなんだもの」
にっこりとそう言った笑顔は、こう言っては失礼かもだけど、不思議と暖かく感じられた。

 
 
 

2-α.
これは規定事項と言うよりも、ある種、涼宮ハルヒの力が関係しているとすら思える。
最後にこの場にやってくるのは、やっぱり彼だった。
なんらかの要因、要素が絡んだ場合を除き、こうなると言う事を彼も解っているのだろう、いつもの台詞を言うだけだった。
ただ、いつもとの違いをここで上げるならば、彼はわたしを見て、ほとんど間をおかずこう言ったのだ。
「長門、調子悪いのか?」
と。
彼に余計な気を回させてしまったが、朝食がまだである事と、支払いは後でするので喫茶店で食べる旨伝える事にした。
ただ、彼はやはりと言うべきか、こう言った。
「サンドイッチとか程度だろ? その位なら許容範囲だ」

 

喫茶店でのいつものやり取りを、何処か遠い世界に感じながら、わたしは頼んだサンドイッチに口をつける。
何故だろうか、味をあまり感じない。
人間が言う、食が進まないとは、こう言う時の事を言うのだろうか。
引いた爪楊枝に印は無い。
わたし、朝比奈みくる、涼宮ハルヒの三人がソレに該当し、彼と古泉一樹がペアとなった。
彼の場合、現在のわたしの異常に気を使ってしまうだろう。
そう言う意味では、この編成は救われたとも思えた。
それと同時に、彼と共に居たかったと言う事もまた、いつものように感じはしたが。
「12時にここ集合よ」
と言う涼宮ハルヒの声によって、市内不思議探索・午前の部が開始された。

 
 

2-β.
「長門さんの?」
どうしてまた?という疑問も沸いたけど、もう一個の疑問を私は口にした。
「それだったらキョンシーさんのが、情感たっぷりお届けしてもらえると思うんだけど?」
そう言う私に、彼女はしかし「彼は駄目」と首をふった。
どうして?と思った私の顔に、答えがしっかり返ってきた。
「SOS団員とは、あたしは会ってはならないの。特に彼とはね」
と。
疑問がさらに沸いて出たが、TFEIの方々も色々あるんだろう、うん。

 

「後、あたしとあった事はここだけの秘密、にしてもらえると助かるな」
唇に人差し指を当てて、舌をちょろっと出して笑う。
助かるな…って、きっと言ったら情報操作でなんかされるんだろうなぁ、なんて思ってみたり。
「それは大丈夫。今のあたしはそう言った事は許されてないから」
あれ? 私はまた迂闊スキルを発動させていたらしい。

 

「け、ど。私だって大した話はできゃしませんよ? 会話だって成立はして無いし、キョンシーさんみたいな特殊スキルは持ってないし」
なんだか苦笑をされてしまう。
私はなんか変な事でもまた、口走ってしまったんだろうか?
「ごめんなさい」笑いながら言われても、説得力はありません。「やっぱり長門さんは誰に対しても長門さんのまんまだな、ってちょっと安心しちゃったから」
私はちょっと、あほな子の顔をしたと思う。
そして、彼女は微笑を絶やさぬままで、多分本題だろう事を語り始めた。

 
 
 
 

3-α.
涼宮ハルヒはわたし達の先頭を、後ろを振り向かずにずんずんと歩いていく。
不思議探索、と称してはいるが、ここの所の状況を見るに、不思議を探すという当初の目的は無くなっているように思えた。
この三人での場合、ウィンドウショッピングと言う形容がもっとも正しい。
涼宮ハルヒがショーウィンドウや店先で何かを見つけ、わたしと朝比奈みくるを呼び、そのものに対して二人が何かを言い合うのを、わたしが眺める。
たまに、二人が何かを買い求めるなどの事が含まれるが、概ねは上記のようなものだった。
ただ、わたしの横を歩いていた朝比奈みくるが、わたしに対して次のような事を言ったのは、想定の範囲外。
「長門さん、調子悪いんですか?」

 

わたしは、わたしの基準においては驚きの顔で、朝比奈みくるを凝視した。
「いえ、なんだかサンドイッチも喉を通ってなかったみたいでしたし、ぼんやりしているみたいだったから」
朝比奈みくるは何事かを考慮してか、前を行く涼宮ハルヒには聞こえない程度の声でそう告げた。
「そう」私は、何故そうしたのかは自分でも解らないが、素直にこう告げていた。
「多分」と。

 

「何か、あったんですか?」
朝比奈みくるは、わたしが体調を崩すという事をまず無いと理解をした上で、そう聞いてきた。
「夢を見た。おそらく要因はそれ」
「夢、ですか」鸚鵡返しに言った後、おずおずと続ける。「差し支えなければ、どんな夢なのか言っていただけます?」
わたしは躊躇無く、今朝見た夢について話していた。

 
 

3-β.
彼女の話は概ね、長門さんの近況についての質問だった。
1.ご飯等の生活面 2.交友関係 3.私から見た変化
と言った感じだろうか?
そもそも、んな事本人に聞けばとか、情報統合思念体がデータとして持ってそうなもんだったが、彼女曰く
「さっきも言ったけど、SOS団の団員の人との接触は厳禁なの。それと、情報統合思念体はあたし達に、全ての情報を示すわけではないわ。知っていては不都合が生じる事、なんてのもあるから」
との事。

 

けども、である。どうやら彼女は私の告げた事により新規の情報を得た、と言うよりは、過去の情報を再認識したって雰囲気がある。
私が話す言葉に「やっぱり」とか相槌打ってたくらいだし。
「なんて言うのかな、長門さんってほっとけないじゃない」
微笑んでそう告げる彼女に、今度は私が頷かざるを得ない。
そして、なぜだろう、なぜかしら。
いや、理由は解っているんだけどあえてそう言ってみる。
私達は、意気投合していた。

 

ただ、疑問…と言うか、彼女と話してて思った事がある。
どうせ迂闊スキルも発動する率あるわけだし、私はその事を聞いてみていた。
彼女が長門さんの名前を口にするたびに感じる、ちょっぴりの寂しさみたいなものについてである。

 
 
 

4-α.
わたしは、夢の話を補足するように"彼女"に関する話もしていた。
おそらく、この場合の相手が朝比奈みくるではなく彼であったなら、わたしは夢の話すら濁していただろう。
彼の心情を考慮して、と言う事ももちろんあるが、何故だか、今の彼にはまだ、この話はしたくない、そうとも感じてしまっていた。

 

「夢判断とか、あたしも良くは知らないですけど」
と朝比奈みくるは前置きをする。
文化祭の準備時にはその類の本を読んだが、平均的な人間でないと当てはまる事はないであろうし、また、一般的に言われる超常的な解釈は一切ない。
故に、それらを頭のデータから読み取ることを、わたしはしなかった。
「もしかすると、その方が何処かで長門さんを見ているのかもしれませんね」
「それは…」無い、とは断言こそ出来ないが、可能性としてはかなり低い。
彼女の取った行動等を考えても……。

 

「予知夢の可能性、とかもありますよ」
朝比奈みくるは邪気の無い優しい笑みで、そんな言葉を漏らした。
「予知夢?」
鸚鵡返しでわたしは問い返す。
「デジャヴでは説明できないのもある、とかって…あたしもクラスの人とかの話で聞いただけで、良く解ってないんですけど」
朝比奈みくるが言うには、まるっきり同じ事柄や、それと酷似した事柄が現実に起こる……そんな例を聞いたと言う。
わたしが見た夢がそれに該当するかどうかは、その瞬間が来るまでは解らない。

 

ただ、朝比奈みくるにこの事柄を話した事で、わたしは今朝のあの感覚を受け入れる事が出来ていた。

 
 

4-β.
「あなた達に……本当は、主に彼にかな、お願いしてもいいかな? 長門さんのこと」
別れ際、彼女はそんな事を言っていた。
私が首を振ったら彼女、長門さんの家に急行しかねないな、なんて思う。
キョンシーさんなんかは、頼まれなくてもそうするだろうし、その事に関しては不安は無いだろうけども。

 

どうしてSOS団団員と接触できないのか、とかは、後で機関のデータベースでも調べりゃ解るだろうし、聞かない事にした。
答えにくい事と言うのが、彼女達TFEIにあるのか無いのか、なんて事は、長門さんとか見てたら普通に解るし。

 

ああ、それでも、私は彼女に聞いておく事があった。
と、言いますか、最初に聞くだろう普通、と言った突込みが来るだろう事を覚悟して、私は彼女に問いかけた。
「あ、そだ、名前。私は……」
「あなたの名前は知ってるわ。あたしはまだ名乗ってなかった? あたしは…………」

 

彼女と別れた頃、それは、もうすぐ昼になろうかと言う時間だった。
喋ったりなんだりだけでも、お腹はすくらしい。
私はいつもの所で昼食をとる事にした。

 
 
 

5.
私は昼食を済ませ、いつもの所を後にする。
ちなみに、いつもの所定食がお勧め。

 

「あで?」
目の前に見知った二人が居たので、私はそう口走っていた。
「あでってなんだ、あでって?」
疲れた顔で言うキョンシーさんと
「艶姿?」
と首を……何とか解る範囲で傾げる長門さんが立っていた。
「じゃあ、壁」
私は言って、目の前にあった壁を次の台詞にあわせて叩く。
「壁、壁、壁、○゛ガ」
「お前、本当の歳は幾つなんだ?」
もちろん、私は唇に人差し指を当て、ウィンクつきでこう言った。
「乙女の歳を聞くのは野暮ってものよ」
あ、キョンシーさん呆れてる。

 

「図書館ならこっちは遠いと思うけど?」
私は思った言葉を口にした。
「いや、今日は図書館に行くつもりないから」
そう答えるキョンシーさんに「そなの?」と呟く私。それに頷く長門さん。
おそらく、市内不思議探索行とかなんだろう。
ある意味、そうでもないとこの二人、デートとかしそうにないし、まだ。

 

さっきの彼女の事がポコンと頭に浮かぶ。
「ま、大丈夫かな」
なんとなくだけど、そう思ったら呟いていた。
「何がだ」
と言うキョンシーさんと、その言葉を瞳にこめて私を見つめる長門さん。
私はそんな二人に含みのある笑みをむけ、
「お邪魔虫は退散」
と、その場を駆け出した。

 

そして私はその後、次の項目を機関のデータベースで照合する。
朝倉涼子

 
 

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:12 (2709d)