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作者 | 電波の人 |
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作品名 | 長門有希の意思 |
カテゴリー | 長門SS(一般) |
保管日 | 2008-02-17 (日) 02:53:44 |
キョン | 登場 |
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キョンの妹 | 不登場 |
ハルヒ | 不登場 |
みくる | 不登場 |
古泉一樹 | 不登場 |
鶴屋さん | 不登場 |
朝倉涼子 | 不登場 |
喜緑江美里 | 不登場 |
周防九曜 | 不登場 |
思念体 | 不登場 |
天蓋領域 | 不登場 |
阪中 | 不登場 |
谷口 | 不登場 |
ミヨキチ | 不登場 |
佐々木 | 不登場 |
橘京子 | 不登場 |
12月18日の世界改変以来、私は情報統合思念体に24時間体制で監視され、処分が検討されていた。
結果、12月25日未明に私を廃棄することにし、代わりに新しいインターフェースを派遣することに決定した。私自身消されてもおかしくないことを犯してしまったのでその結果自体には納得してしまっている自分がいる。
このことはSOS団の涼宮ハルヒ、朝比奈みくる、古泉一樹、そして彼には絶対知られてはならない。
特に涼宮ハルヒに知られた場合、どのような事態に見舞われるか情報統合思念体でも予測不可能である。
この任務は誰にも悟られずに行わなければならない。
SOS団のクリスマス会が終わり、時計は0時ぴったりになっている。
皆かなり騒いでいたので疲れて寝ている頃だろう。もちろん彼も。
・・・エラー発生。
彼のことを考えるといつも原因不明のエラーが生じる。
いつものエラーとは違い、胸が締め付けられるような痛みがある。
身体には何処にも異常は無い。
痛みの発生原因も不明。
・・・治まらない。
・・・・・・体の制御が効かない。
瞳から流れるもの、水よりも寂しく緩やかに頬を伝わり落ちる。
私はあと数時間でこの地球上から姿を消し、皆の記憶からも消去される。
彼の記憶からも・・・・・・。
・・・嫌。
・・・・・・破棄されたくない。
消されたくない。
自分の存在を忘れて欲しくない。
彼と話がしたい。
彼に伝えたい。
彼に会いたい。
手が勝手に動き、携帯を取る。
気がついたら彼に電話をしていた。
夜まで続いたSOS団のクリスマス会で彼は相当疲れていると考えられる。それなのに・・・。
けど、もう時間は無い。
彼になんて思われてもいい。
とにかく今は彼の声が聞きたい。
事実を話したい。
「・・・もしもし」
眠そうな声が電話越しに聞こえる。
『私・・・。』
「長門か?どうした?こんな夜分遅くに何かあったのか?」
彼は怒る様子もなく私の話を聞いてくれようとしている。
嬉しい・・・。
・・・エラー発生。
エラーの処理はもうどうでもいい。
彼に今の現状を言わないと・・・。
『緊急事態、聞いて。私は・・・』
・・・・・・駄目だ。言えない。彼に迷惑をかけたくない。
「おい!?どうした長門!?いますぐおまえのとこにいk『ピ』」
彼は必死に私のために何かを言ってくれてたが、私の頭はそれを理解しようとせず、電話を切ってしまった。
最後の最後にまた彼に迷惑をかけてしまった・・・・・・。
瞳から出る水は止まらない・・・。
どうして私はこうなってしまったのだろう?
今となってはもう解らない。
俺は今、自分の限界を超えたスピードで自転車をこいで長門の家に向かっている。
あの長門が電話を自分から掛けること自体珍しいのにあまつさえ緊急事態と言っておきながら俺が話している途中で口籠り電話を切ってしまったからな。
あいつがそんな中途半端な行動をするはずがない。
そうとう何か嫌な予感がする。
絶対長門の身に何かあったんだ。
急げ、俺。
俺が着くまで何もするなよ長門・・・。
・・・・・・・もうすぐ時間になる。部屋に何も痕跡を残さないように情報改竄を施さなければ・・・。
ガチャ!!玄関の扉を勢いよく開ける音が聞こえた。
肩で息をしている彼が心配そうな様子で私の元に駆けつける。
「おい!!長門!大丈夫か!一体何があったんだ!?教えてくれ!!」
・・・・・・彼が来てくれた。嬉しい。
瞳から流れる止まらない寂しい粒を零しながら彼に抱きつく。
普段の私からは考えられないことをしてしまっているので、彼は非常に困惑していた。
しかし、彼は私の気持ちを察してくれたのか私を暖かく包み込んでくれる。
安心する。思考が止まりそうになる。
駄目だ・・・ずっとこうしてはいられない。
彼に今から起こる事実を話さなければ・・・・・・。
今日は少し彼に頼ってもいいかな?
彼ならなんとかしてくれる・・・。
そんな甘い気持ちが私の思考回路を支配する。
もう時間は無いのに・・・でも、私は消えないような気がする。
一番の信頼を寄せている彼が今ここにいるから・・・。
彼なら絶対私を救ってくれる。絶対・・・・・・。
長門が泣いて俺に抱きついている・・・。
あいつの泣き顔にも驚いたが、あいつの口から発せられる事実に驚愕してそれどころじゃなかった。
・・・長門が消される?ここからいなくなる?
何でだ?あの世界改変が原因か?もともとは長門の親玉がハルヒの観察任務のために長門に無茶をしてきたのが原因だろ?それをたった一回の暴走で処分するなんて・・・ふざけるな!
長門の親玉に言葉に出来ないほどの怒りが立ち込める。
俺に抱きついている長門の力が弱まっていく。それと同時に朝倉が長門に消されたように長門の手足が光に包まれ無に帰ろうとしている。もう時間はない。
長門、お前はこのまま消えていいのか?嫌なら嫌って言え。
何とか声を絞り出す。
「・・・嫌。消えたくない。私は貴方のいる世界にいたい。また図書館に行きたい。私の知らない世界をもっと楽しみたい。私は・・・私は・・・」
長門は頬から涙をたらしながら俺に助けを求めるように言った。
もう腕は消えてしまっているのに強く抱かれているような感じがした。
長門を泣かせるなんて長門の親玉は最低だ。
おい!長門の親玉!聞いているか!長門を消すのを今すぐ止めろ!!もしこのまま消してしまったらどうなるか分かっているか!!俺はお前らからしたらハルヒの鍵と言われている存在だ。ハルヒを焚きつけることぐらい動作ないぞ!!もし、このまま長門を消しやがったら、ハルヒに長門を消した存在を全て告白し、あいつの力でお前らの存在を今までのあらゆる歴史上から無かった事にするぞ!!!これは脅しじゃないぞ!!今からハルヒに電話して今の状況を全て説明してやる。
思いつく限りの言葉を怒りに任せて力の限り叫ぶ。同時に携帯を取り出しハルヒのに電話を掛けようとする。
その刹那、消えかけていた長門の体が先ほどまでの逆再生のような感じで形を取り戻し行く。
長門の体は完全に再生が終わり、長門は俺の胸で俺に自分の顔が見えないように埋めている。
少し長門の体が震えている。長門はまだ泣いているようだ。
「ありがとう」
しばらくの沈黙が空間を支配した後、落ち着きを取り戻した長門から発せられた言葉に俺は安心する。
「おかげで私の処分は当分保留となった。貴方の発言と実行力の賜物。貴方には感謝してもしきれない。本当にありがとう」
力の篭った声ではっきりと長門は言った。泣き止んで目が少し充血しているのが新鮮だ。
俺は何も言わず、そっと長門の目線まで腰を落とし、長門の頬についた涙を拭いてあげる。
ふっと長門の体が動き、顔と顔の距離がゼロになる。
俺の口から長門の甘く暖かい息が侵入する。今起きている状況を理解するのに俺は少し時間が掛かった。
俺は長門にキスをされている。
「お礼」
俺の唇から自分の唇を話して長門はあっさり言った。
そのときに見せた長門の嬉しそうな微笑は忘れることは出来ない。
後日、俺はある約束をはたすためにいつもの駅前で長門を待っている。あいつは消される前俺と一緒に図書館に行きたいと言っていた。図書館に行った後はあいつが今まで行ったことのない映画館に連れて行くつもりだ。これじゃまるっきりデートだな。
遠くから長門の姿が見えた。俺の存在に気がついたのか俺の元に向かって履きなれないブーツでとてとてと走ってくる。おいおい、こけるなよ。
これからお前の知らないこの世界の楽しみを一杯教えてあげるから今日一日付き合ってくれよな。
俺の元に来た長門の小さく柔らかい手を取って、俺達は歩き出す。
二人の世界、誰にも邪魔はさせない。
終わり