作品

概要

作者ちの たりない人
作品名一年後の、とある日の前日
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-02-14 (木) 00:21:11

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

去年の今日と同じく、涼宮ハルヒはわたしの家へと訪れていた。
甘い匂いの充満したキッチンでふたり、作業の最終段階に入っている。
朝比奈みくるは居ない。
彼女はすでに任期を終え、自らの時間平面へと帰還をしていた。
その事も含め、この一年でわたし達はかなりの変容を見せていた。
変化らしい変化をして無いのは、朝比奈みくると彼位だろう…と、彼に告げた所、軽く拗ねてはいたが…。

 

驚愕すべき事実があった。
その事に関してわたしは、情報制御をされていたらしく、それを知るに至った際のわたしの反応は彼曰く。
「撮っておきたかった」
彼自身も驚きの中にあった為、その事が実行される事は無かったが。
そして、その事を知ると言う事をトリガーにわたしは、わたし本来の仕様に戻る事が出来た。

 

涼宮ハルヒはその事実を知る事で、彼がすでに明言していた事を事実だと知るに至る。
ただ、その事がきっかけで彼女がわたし達にした事は…少なくとも、わたしにとっては些細な事であった。
涼宮ハルヒはこう言ったのだ。わたし達…SOS団の彼女以外の全員に、立場に縛られない接し方をして欲しい、と。
彼女自身が感じ始めていた、仲間意識と呼べるものが本物かどうかが解らなくなった…そんな所だったのだと思える。

 

わたしや彼、朝比奈みくるは立場上において禁則とすべき事柄はあったものの、もともと自分のままに接してはいた。
微妙な感情などの、普通に接する関係においても隠すようなものを除き、ではあるが。
さらに言えば、彼や朝比奈みくるは、拒否しても撤廃されていた…というだけである。

 
 
 

ただ一名、古泉一樹だけは涼宮ハルヒの杞憂に該当はしていた。
仲間意識、と言う点においては別にして、古泉一樹はイエスマンの仮面を脱ぐ必要性が出たわけである。
その変化に関しては、見ている分には面白かった、とは言えた。
また、この事は現状に多大な影響を及ぼした。

 

わたしは回想と共に、その古泉一樹に渡すべき分を仕上げた。
モノは去年と同じ。文面は『義理』とした。
この場に居ない朝比奈みくるが去年書いた文字ではあるが、この場合はこれが妥当と思えたからである。
そして、涼宮ハルヒは彼の分を仕上げていた。
文面は『チョコレート』。
去年と同じではあるが、おそらくは乗せた意味合いは別のものだろう。
そして、わたし達二人は互いのもうひとつのモノを前にフリーズした。

 

去年と同じ文面とも考えたが、あの言葉に今のわたしを乗せることは難しく思えた。
様々な本などの情報から、ぴったりな文面は確かにあるものの、それはどこか陳腐に思える。
涼宮ハルヒもわたしも、互いに何を書くのかと横目で見つつ、しばらくの時間が過ぎた。

 
 
 
 

わたしはふと、クラスでなされていた会話を思い出した。
その行動を取った際の彼の様子はシミュレートを不要とする位、手に取るように解る。
実際その状況を見てみたくもある自分も居るが、今はまだである、と言う自分が勝る。

 

ただ、わたしはその事をヒントに文面を仕上げた。
わたしが書いた事の意味を汲み取り、
「有希って…結構大胆なのね」
そう言って涼宮ハルヒは「そうだ!」とわたしのと同じ意味合いの、別の書き方…ある意味、彼女らしい言葉を書き込んだ。

 

ケースに詰め、ラッピングを施す。
後頭部で束ねていた髪を解き、わたしは彼女に告げた。
「お風呂、入っていい。片付けはわたしがする」
「……」
なにか、別の誰かを見るような視線でわたしをしばし見つめ、どこか慌てるように
「そうね、そうさせてもらうわ。ありがと」
とキッチンを出て行った。

 

わたしは一人片づけを開始する。
鈍感な彼は、わたしが書いた言葉の真意を汲み取れるだろうか…
ただ、これを見て最初に発するであろう言葉は、決まっている。

 

わたしがチョコレートケーキに書いた文面は唯二文字。
有希

 

彼はどんな表情でこう言うのだろう。
「やれやれ」
と。

 

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:11 (3093d)