作品

概要

作者見守るヒト
作品名雪と有希
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2008-02-06 (水) 20:16:49

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

何気ないある冬の日の放課後。
暴走した機関車のごとく教室を出て行ったハルヒを見送り、特に用事も無い俺はいつものように文芸部室の戸を叩く
コンコン
返事は、ない。しかもこの感じは恐らく無人だ。
ガチャリ
開けた戸をくぐればやはりそこには誰もいない。部室の隅で本を読む長門の姿さえなかった。
珍しいこともあるもんだ。長門より、と言うより俺が一番にこの部室へと辿り着いたのは初めてのことではなかろうか。
鞄を机の上へと放り投げ、ドカリと椅子へ座り込む。
恐らく10分もしないうちに誰かが来ることは確かだろうがその間何をしようか。
古泉のように一人でゲームをするのは避けたいし、俺がお茶を準備したとしても朝比奈さんには遠く及ばないだろう。
かといって何もしないのも気が引ける。パソコンでも起動させるのも手ではあるが…ここは読書でもするとしようか。
その考えに行き当たり、腰を上げたところで窓から覗く外の様子が目に入った。
「ん?何だ、雪か?」
外では雪が降っていた。本当に珍しい。悪いことは重なると言うが、珍しいことも重なるものなのかね。
本を取りに行こうとしていた足を窓辺のほうへと向け歩み寄る。
窓から見上げた空はどんよりとしており、そこから次から次へと降り注ぐ雪はどこか寂しさを感じさせた。
「雪、か」
窓を開けて手を伸ばす。降り注ぐ雪は俺の手の平へと舞い降りて、その後すぐに溶けてしまう。
地面に降り立つ雪も同じように溶けて消えていく。
そんな情景を見ながら思い出したのは、あいつの顔。
長門有希。
いつか書いた文集。それに書かれていた、恐らくはあいつの名前の由来。
あいつはこの雪を見て何を思ったのだろう。
春になれば消えてしまう雪に、いつか役目を終え消えてしまう自分を重ねたのだろうか。
…ばかばかしい。そんなことを考えて何になると言うのだろう。俺程度にあいつの考えがわかるはずも無い。
仮にそれが真実になったとしても俺はそんなこと到底受け入れられない。
あの夜に誓ったのだ。もしあいつが理不尽な理由で消されるようなことがあれば必ず助けて見せると。
役目が終わったから消える?扱いにくくなったから消す?ふざけるな。
あいつがそこにいる。それだけで生まれる価値がどれほどのものかを理解しようともしないやつらが勝手なことを言うな。
いつか消えてしまう雪なんかじゃない。あいつは有希、希望が有ると書いて有希だ。
それこそがあいつの全てを現している。俺はそう思う。絶対に消させるものか。
ガチャリ  ビクッ
考えにふけっていた俺はその音についオーバーに反応してしまった。
振り向いたそこには長門が立っていた。さっきまで長門のことを考えていたせいだろう、少々動揺してしまう。
「よ、よう長門。お前にしては遅かったな。何かあったか?」
「掃除当番」
掃除当番ね。それなら遅くなっても仕方ないか。
「何をしているの?」
「ん?ああ、雪が降ってたからそれを見てたんだ」
「雪…」
長門が俺の横に立って俺と同じように空を見上げる。
そんな長門の横顔を見て思った。
雪、ユキか。そうだな、それもいいかもしれん。
こいつは有希。雪なんかじゃない、そうはさせない。
「なあ、長門」
これは俺の誓いと、想い。
「何」
それをカタチにしよう。忘れないように。こいつの親玉への皮肉をこめて。
「お前のことをさ」
こいつに、そして自分自身に言い聞かせるように。
「有希って呼んでもいいか?」

 

(終)

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:10 (3088d)