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作者 | しめじ |
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作品名 | TOGETHER |
カテゴリー | 長門SS(一般) |
保管日 | 2007-12-24 (月) 02:12:11 |
キョン | 登場 |
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キョンの妹 | 不登場 |
ハルヒ | 不登場 |
みくる | 不登場 |
古泉一樹 | 不登場 |
鶴屋さん | 不登場 |
朝倉涼子 | 登場 |
喜緑江美里 | 不登場 |
周防九曜 | 不登場 |
思念体 | 不登場 |
天蓋領域 | 不登場 |
阪中 | 不登場 |
谷口 | 登場 |
ミヨキチ | 不登場 |
佐々木 | 不登場 |
橘京子 | 不登場 |
今日は、一年ぶりのクリスマスだ。
ん? まあ当たり前だな。
今日は予定通り、長門の家で鍋パーティなのだが、どうにも寂しい。
あの日、髪の長いハルヒを捕まえ、脱出プログラムを起動した。
が、突き返した入部届けを、泣きながら受け取った長門を見ていて、つい、別のキーを押してしまった。
_>N.YUKI you've terminated this program
そして、こう続いた。
_>N.YUKI TOGETHER
数秒後、OSが立ち上がり、メッセージは消えてしまった。
それ以来、SOS団に名を連ねた面々の中で、いつでも会えるのは長門だけになってしまった。朝比奈さんや鶴屋さんには変態扱いされてるし、ハルヒや古泉はあれっきりさ。
俺は呆然としつつも、その日のうちに入部届けを渡し、一応部員となった。
「まあ、よろしくな。俺なんかでよけりゃ」
「ありがとう……」
と、小さく頭を下げた長門は、少しためらった後、顔を上げた。
「クリスマスの夜…」
「がどうした?」
「……くる?」
「何処に?」
「…………わたしの家」
そうして、今日は鍋パーティだ。
こっちではちゃんと存在する長門の級友数人と、谷口や国木田、それに同じアパートの朝倉さんが集まってくれた。
さすがに、二人ってのも妙な者だと思ったので、声をかけたわけだ。まあ、殆ど朝倉さんがやったんだけど。
目の前で、長門が眼鏡を真っ白にしながら、少しずつ鍋をつついてる。
しかし……やはり、寂しい。
ハルヒたちの連絡先を、聞いておくんだった。いや、ここに居ても飽きるだけか、古泉とデートかどっちかだな。
そして、パーティは二時間もせずに終わり、俺と長門、それに朝倉さんだけが、後片付けのために残った。
「キョン君も手伝って」
「洗った皿を拭けば良いんだね」
長門がテーブルを片付ける間に、洗い物だ。あの朝倉さんと、二人で隣り合うなんて、妙な気分だが。
「ねえ、キョン君。教室では、あの話、だめよ」
「え?」
「涼宮さんとかの、ね。あと、長門さんにも」
「な!?」
「しーっ」
右手の指を鼻に当てた朝倉さんの右手には、包丁がにぎられてた。
「あ、これ? もう刺さないわ。あたしももう、普通の女の子だから」
「も、って。覚えてるのか?」
「うん。でも、人間の気持ちが分かったわ。ごめんね、あのときは」
「まあ、仕方ないさ。幸い、俺は生きてるしな」
「この気持ちがわかったら、思念体ももう少し進化したかも。だけど、もうなにも通じないわ」
「全てを覚えてるのは、俺たちだけ、か」
「多分、ね。こんどは、ちゃんと長門さんのこと、大切にするのよ……じゃないと」
「刺す?」
「さあね。さ、片付いた。それじゃあ、あたしは帰るわ」
「それなら、俺も」
「キョン君、わかってない。選んだのは、あなた」
朝倉さんは、俺の腹を軽く指で刺すと、そのまま帰ってしまった。
俺が、選んだ?
たしかに……
あのメッセージが頭の中でリピート。
you've terminated this program
TOGETHER
一緒に居てくれと?
そっちのお前とは、お別れなのに? いや、同じ者なのか?
「……お茶」
キッチンで呆然としている俺に、鏡の長門が声をかけて来た。
「ありがとう。じゃあ炬燵で」
コクリ、と小さく頷く。
俺が座ると、ついて来た長門が、俺のすぐ横に寄り添うように座って来た。
握って来た手が、少し震えている。
あのときとは違う震え方。
俺は、なんだかとてもあったかい気持ちになってる。
そして、あの画面がもう一度、脳内で繰り返される。わずかにずれて。
you've terminated this program TO GET HER
分かったよ、長門。もちろん、大切にするさ。
お前しか残ってないんだからな。