作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと親子丼
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-11-14 (水) 21:05:13

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

どんな生き物であれ、親というものは子を守るものである。
百獣の王と呼ばれるライオンであっても、
子供が生まれたら千尋の谷に突き落とすような真似はせず、
一人前に狩りができるようになるまで面倒を見るだろう。
もちろん人間も例外ではなく、わが子を躾けることは大事だが、
虐待するようなことはあってはならず、
大事に育てていかなければならない。

 

などと珍しく教育論めいたことを考える俺。
そんな俺の目の前にある母親が書いた一枚のメモには、
確かに母親の字でこう書かれていた……

 
 
 

『一泊二日で温泉に行ってきます。
ご飯ちゃんと食べること  父母より』

 
 
 
 

「キョンくん!きょうはおかあさんたちかえってこないんだって」

 

あぁ、そのようだな。
俺としてはそのセリフはお前じゃなくて、
伴侶となってくれるような相手に言ってもらいたいところだが。

 

「だから、きょうはいっぱいあそんでもおこられないね!」

 

「まぁ、母さんたちが怒ることはないだろうな」

 

代わりに俺が面倒を見ることになるので、
俺が叱り付けることになるだろうが……

 

しかし、今はそんなことを考えている場合じゃない。
夜更かしする気満々の妹をどうやって寝かしつけようだとか、
シャミセンの餌がどこに置いてあるのか探さなければならないとか、
そんなことよりもっと懸念すべき事項がある。
両親からの伝言にもご丁寧に記されていること……

 
 

そう……飯をどうするか、だ。

 
 

自慢じゃないが俺の料理スキルは、
一般男子高校生レベルを超えることはなく、
正直家庭科の教科書を見ながらでも旨い飯が作れる自信がない。
今更ながら母親の日々の家事のありがたみを痛感しちまうぜ。

 

「あ、でもおかーさんがいないなら、ごはんはないの?」

 

どうやら妹も俺と同じ疑問を抱えたらしい。
兄としては、ここはカッコよく『俺に任せとけ』と言いたいが、
先ほど述べたとおりの不甲斐ない俺にはそこまでの蛮勇はない。

 

「とりあえず晩飯をどうするか……」

 

家庭科の授業をもう少しまじめに聞いておけば、と後悔する俺。
そんな俺の耳に、我が家の長女の予想外の言葉が聞こえてきた。

 
 

「じゃあ、あたしがつくるよ!」

 
 

「いや、それには及ばん」

 

頭に押し付けられた拳銃の弾丸さえも避けられそうな反射速度で、
俺は妹の提案を却下する。

 

「え〜、せっかくつくってあげようとおもったのに〜」

 

その気持ちはありがたい。
今すぐ全世界同時中継でこの感動を大声で叫びたいくらいだ。

 

「でもお前に包丁や火を使わせるわけにはいかん」

 

「ぶ〜」

 

妹の身を案じる兄の心が分からない様子で、
我が家の姫君は口を尖らせる。
分かってくれ。お兄ちゃんだって可愛い妹の手料理は食べたいのだよ。
例えそれが焦げて火がついたバーベキューの炭になってようが、
砂糖の代わりにホットペッパーが入ってようが食べたいのは間違いない。
ただ、それで万が一、いや十が一、いやいや一が十、
お前が怪我するようなことがあったら困るからな。

 

とはいえ、誰かが作らないと晩飯が食べられない。
俺一人ならコンビニ弁当でも何でも良いのだが、
妹にはちゃんと栄養のあるものを食べさせてやりたい。
だが、俺にはそんなものを作る実力はないし、
かといって外食というのも……

 
 

〜〜♪〜〜〜♪〜〜♪

 
 

そんな風に悩む俺の耳に、
テーブルの上から聞き覚えのあるメロディが流れてきた。

 

「あれ?キョンくん、でんわ?だれから?」

 

妹の質問に対し、俺はディスプレイに表示された名前を見ながら、
端的に答えた。

 

「長門からだ」

 

あいつから連絡してくるなんて珍しいな。
まさかまた何か面倒なことが起こってるんじゃないだろうな?

 

そんな風に考える俺に対し、
受話口からいつもの淡々とした声が聞こえてきた。

 
 
 

『あなたに頼みたいことがある』

 
 
 

まず電話で話すときは少なくとも『もしもし』くらい……

 

『もしもし』

 

「いや、もう遅いぞ」

 

『そう』

 

「まぁそれはおいといて、『頼みたいこと』ってなんだ?」

 

やはりまた何か事件でも起きたのか?
さっきからリビングのソファで丸くなってる猫が必要なら、
いくらでも持って行ってやるぞ?

 

そう心構える俺に、無口宇宙人は驚くようなことを言ってきた。

 
 

『作りたい料理がある……』

 
 

「料理?」

 

『そう』

 

お前が作りたいって言うのなら、俺にNOと言う理由など
日曜夕方のアニメに出てくるお父さんの髪の毛ほどもないが、
一体俺に何を頼みたいんだ?まさか手伝えというのか?
はっきり言って戦力外通告を自己申告したいくらいだ。

 

予想外の答えに戸惑う俺に、
長門はいつもの調子で答える。

 

『今日読んだ本の中に興味深い料理があった。
でも作るには今現在の私の部屋の冷蔵庫の中身だけでは足りない。
だから今からあなたの家の冷蔵庫の中身を拝借させてほしい』

 

つまり、食材を提供しろってことか。
確かに一人暮らしの長門の部屋よりも、
一家丸ごとに猫まで住んでいる我が家の方が食材は豊富だろう。

 

『だめ?』

 

「いや、構わないぞ。むしろ大歓迎だ。
まぁ、うちの冷蔵庫の食材だけで足りるかは保証できんが……」

 

『それは大丈夫。充分足りる』

 

ずいぶんはっきりと断言するな。
まるであらかじめ我が家に忍び込んで、
冷蔵庫の中身を詳細にチェックしていたかのようだ。

 

『…………』

 

とにかくこのタイミングで申し出てくれて助かったぜ。
ちょうど晩飯をどうしようか悩んでたときに連絡をくれるなんて……
本当にどこかからカメラの映像で見ていたかのようなタイミングの良さだ。

 

『……………………』

 

「ん?どうした長門?黙り込んで……」

 

『でんなもない』

 

「はぁ?」

 

『間違えた。なんでもない。言い間違っただけ。
別に狼狽していない。少し喉から声が出なかった。
私はいつもどおりこの部屋にいた。アリバイもばっちり』

 

「よく分からんが……とにかく今から来てくれるのか?」

 

『行く』

 

端的にそう言うと、長門はさっさと電話を切ってしまった。
何だか様子がおかしかったが……まぁいいか。
せっかく飯を作ってくれるって言うんだ。
ここは有難くその恩恵を受けようじゃないか。

 

眠たげなシャミセンにちょっかいをかけようとする妹を引っぺがしながら、
俺はあの無口少女が何の料理を作るのか聞き忘れたな、などと考えていた……

 
 
 
 

飢える子羊たちへの女神からの救いの電話から3分後。
妹に晩飯のあてができたことを伝え、
有難い来客に備えるために部屋の片づけを命じていた俺の耳に、
聞きなれた電子音が聞こえてきた。

 

「あ、キョンくん!来たみたいだよ〜」

 

いくらなんでも早すぎるだろう。
きっと回覧板か何かだな。
そう思った俺はインターフォンに応答する。

 

「はい、どちらさまですか?」

 

『わたし』

 

「へ!?」

 

予想だにしない短い返事に、
つい変な声が出ちまった。

 

「わたし、って……もしかして長門、か?」

 

『そう』

 

いくらなんでも早すぎるだろう。
自転車を飛ばしてもお前の部屋まで数分で行くのは不可能だぞ?
それともお前の部屋から俺の家まで滑り台でもできたのだろうか?

 

とはいえ、せっかく来てくれたのだから、
早く中に入れてやるべきだろう。

 

そう思った俺は玄関に向かって、扉を開けた。

 

「こんばんは」

 

その扉の向こうに立つ大きなカバンを持った文学少女は、
時間帯に見合った挨拶をする。

 

「あぁ、こんばんは。ずいぶん早かったな」

 

「そう?」

 

「まぁいいか。とにかく上がってくれ」

 

「わかった」

 

おそらく調理器具の類が入ってあるであろうカバンを持ったまま、
躊躇なく靴を脱ぎ、妹に抱きつかれながらリビングに向かう長門。

 

「っと、台所の位置は……」

 

「把握している」

 

俺のアドバイスは必要無いと言わんばかりに即答する長門。
どうやらこの万能宇宙人の脳内には、
俺の家の見取り図まで収録されているらしい。
本当に一家に一人といわず五人くらいほしいくらい便利な奴だな。
維持コストが高くつきそうだが……

 

そんなことを考えているうちに、
一日コックさんはキッチンに到着したらしく、
さっそくがさごそと準備を始めていた。

 

遅ればせながら台所に入った俺は、
せっせと割烹着を身にまとう長門に声をかける。

 

「ところで、何を作るつもりなんだ?」

 

「鶏肉と鶏卵の親子丼……」

 

鶏肉と鶏卵以外の親子丼があるのかは知らないが……
まぁ、丼物なら俺でも米を研ぐくらいなら手伝えそうだ。

 

母親が『切れ味が悪い』と常々ぼやいている包丁を使って、
鶏肉を細かく切っていく小柄な少女の姿を見て、
柄にもなく俺は調理補助をしようなどと思った……

 

「あたしもほーちょーてつだう!」

 

「お前はあっちでシャミと遊んでなさい」

 
 
 
 
 

結局普段より量の多い米を研ぎ、
炊飯器にセットした俺は配膳の段階までお役御免となり、
シャミセンと妹の相手をすることになった。
どうやら細かい味付けはともかく、
大まかなものは俺の嗜好に合わせてくれているらしい。
本当に長門ママンは子供想いのお母さんになりそうだ。
関係ないが、割烹着を着た女の子が、
お玉片手に小皿で味見する姿はすばらしい物だと思う。
もちろん割烹着の下は制服か飾り気の無い私服な。異論は認めない。
裸エプロンなんて煩悩の固まりも俺は認めないぞ。見たいけd(ry

 

そんなことを考えていると、
台所のほうから静かな声が聞こえてきた。

 
 

「できあがり」

 
 

「早いな、もうできたのか?」

 

ダシをとったり、材料を順番に入れたりしないといけないから、
もう少し時間がかかるかと思ったが……

 

「できた。後は配膳するだけ」

 

「わぁ〜い、じゃあはやくたべよ〜よ!」

 

「じゃあちゃんと容器をもってこい。
俺は丼で食うけど、お前はそこまで大きいのじゃなくてもいいだろ?
あと長門は俺と同じものでいいぞ」

 

たぶん俺より食うからな。
先ほど研いだ米の量も3人分とは思えなかったし。

 

「はい、これ」

 

空腹にもかかわらず元気一杯に妹が持ってきた容器に、
俺が研いで炊飯器が炊いた米を入れ、
その上から宇宙人特製の親子丼をかけていく。
正直なところ匂いを嗅ぐだけで空腹が促進されて、
丼よりも直に胃に収めたい所だ。

 

そんなことを思いながらも何とか我慢し、
俺は3つの容器に親子丼をよそい箸とともに食卓に配膳する。
そして各自着席し手を合わせ、

 

「いただきま〜す」

 

「いただきます」

 

「召し上がれ……」

 

三者三様の食前の挨拶をして、
俺たちは本日の夕餉をいただくことにした……

 
 
 
 
 
 

「ごちそうさま〜」

 

元気よく箸とお椀を置く妹。
その顔は思わぬ絶品を食せたことに対する喜色と幸福に満ちていた。

 

「おいしかったね〜キョンくん」

 

あぁ、そうだな。
ここまで旨い親子丼なんて、
一見さんお断りの高級料亭にも無いんじゃないか?
材料が特売の鶏肉と安物の卵だとは思えん。

 

「ごちそうさま。マジで旨かったよ長門」

 

「そう」

 

短く答える長門の顔が、
少しだけ嬉しそうに見えるのは気のせいではあるまい。

 

「こんな旨い物ならまた作ってもらいたいくらいだ」

 

そんな風に賞賛する俺に対し、
長門は小さな声でそっと呟いた……

 
 

「あなたが望めば……いつでも作ってあげる」

 
 

「そうか、それは有難い。
また卵と鶏肉を用意して楽しみに待っておくよ」

 

あと、玉ねぎや鰹節もな。
何ならお前用の食器も用意しといてやる。

 

そんな俺の提案に、
一日コック長は小さく頷きこう言った……

 
 

「わかった……私も楽しみにしておく……」

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

オマケ

 

「そういえば……あのカバンは結局なんだったんだ?」

 

俺が見る限り活用された様子は無かったが。
マイ包丁の類が入ってるようでもないし……
そんな俺の疑問に、静寂少女はいつものように答える。

 
 

「あれは別の料理に使うもの……」

 
 

「別の料理?」

 

「そう」

 

「また丼物か?」

 

「そう」

 

どうやらこの宇宙人製の本好きアンドロイドは、
ご飯物が好きらしい。まぁ作るのが楽だとは思うが……

 

そう思う俺に、長門は静かに言葉を続ける。

 

「作るにはあなたたちの協力が必要」

 

「俺たち、って俺と妹か?」

 

「そう。調理はわたしがする」

 

また米を研いで欲しいと言うことか?
だが妹の協力が必要とはどういうことだろう?

 

疑問に感じる俺をよそに、
あとはお風呂に入って歯を磨いて寝るだけの妹が話しかける。

 

「あたしとキョンくんならいくらでもてつだってあげるよ〜」

 

そりゃ、こんな旨いものを食わせてもらったんだ。
手伝うのはやぶさかではない。
そんな俺たちの言葉に長門も手伝ってもらおうと思ったのか、
妹に指示を出した。

 

「それなら、あのカバンの中に入ってる道具を取ってきてほしい」

 

今から作る気か?
一応食後なのだが……

 

そう言いたい所だが、
楽しげに長門のカバンに向かっていく妹の姿を見るかぎり、
そんな言葉は俺の喉の関所を通すわけには行くまい。
代わりに俺は長門に向かって話しかけた。

 

「なぁ、ところで今度はどんな料理をするつもりなんだ?」

 

何とはなしに聞いた質問に、
長門はらしくない人を魅了するような愛らしい笑顔を見せてこう言った……

 
 
 
 
 

「兄妹丼……」

 
 
 
 
 

その言葉が聞こえると同時に、
妹が開けた長門持参のカバンの中には、
明らかに大人的な意味の玩具というか器具が見えて、
いつの間にか長門の柔らかな(省略されました。続きは各自でご想像ください)

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:04:02 (3088d)