作品

概要

作者能天気
作品名300円の価値(1)
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-09-08 (土) 18:53:58

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 みなさんは遠足というものをご存知だろうか。幼稚園児や小学生が、先生方に引率されてちょっとした集団ピクニックをするやつだ。修学旅行や自然学校と違い、何泊もするわけでも思い出を作るわけでも、更には何らかの知的、精神的向上意義があるわけでもない気がする。日頃の勉学タイムからちょっと気分転換って感じだ。懐かしいとは思っても、もう一度体験してみたいとは思わない。分相応の年齢だから楽しめるのであって、高校生が目的もなく行っても退屈するだけだろう。まあ、最近のハルヒの横暴から一時だけでも開放されたいとは思うが。で、遠足の醍醐味といえば、なんといってもお菓子タイムだろう。弁当でそこそこ腹が膨れているとはいえ、野外で食べるお菓子というものは不思議とおいしく感じるものである。人とトレードしたり、ゲームで争奪戦に持ち込んだりといった新たな楽しみも生む。
                     
 なぜこんな話をするのか。俺がその遠足とやらの一端に突然巻き込まれたからである。断っておくと、うちの高校で遠足が……などというではない。行くのは我が妹だ。下手をすると高校になっても修学旅行を『キョンくん、下関に遠足に行くんだよー』などと言いそうだということはとりあえず置いておくとして、次の金曜日にちょっとした山に行くらしい。そうかそうか、実質3日連続で遊べてラッキーな奴めと羨ましげに朝食終了後の食卓から自室へ向かおうとしたところ、『天気予報が微妙だから照る照る坊主作って』とせがまれた。自分で作れそんなもん、と言いたかったのだが、母親に『ただでさえ成績やら成績やら成績やらでいいとこ見せてないんだから、そのくらいやってあげないと兄として威厳保てないわよ』という視線で睨まれた俺に何ができようか。2択問題でフィフティーフィフティーはハンソクだぞ、母よ。時たま乱入してくるハルヒに感化されているのだろうか。仕方なく、適当に布切れと輪ゴムを拝借して製作を開始した。豆知識だが、照る照る坊主は本来ティッシュを丸めて作るものではない。勿体無いということではなく、雨に濡れたときの丈夫さに大きく関係するので要注意だ。
                     
 丸めてくくる、丸めてくくる、丸めてくくる。ヤケになって作れるだけの坊主を召喚した。各部屋の窓1面ごとに1つ吊るしても余るんじゃないか、これ。余った奴は全員護衛用戦士として雇ってやろう。守備表示にすることで防御力50、10体合体でなんと500!……弱い。
                     
「わぁ、すごーい。こんなにできたんだ。ありがとー」
                      
 そうかそうか、余りに純粋でお兄ちゃんはうれしいぞ。次からは自分で作ろうな。
                       
「じゃあ、次はお菓子300円分買ってきてね?」
「な?ちょっと待て、さすがにそこまで手助けする気はないぞ。というより、他人任せの菓子なんて美味くないだろ。こういうのは自分であれこれ迷って買うからだな……」
「いいのいいの。とにかく、とりあえず合格って感じの味と、嫌って言うほどお腹いっぱいになる量を確保してくれれば文句言わないよー。それに、これからみんなとプラン立てなきゃいけないし。ね?お願いー」
                       
 ……ええい、なるようになれだ。
                      
「えへっ」
                        
 ここで一瞬だけでも俺の頭がクラス平均並みに良ければ、この後の惨事は免れたに違いない。遠足は各班自由行動などというものがないのだから、プランなどほとんど立てようがないのである。せいぜい、目的地までのバス内で、あるいは昼食後何して遊ぶか、ってとこだろう。面倒くさがりの妹にまんまと騙されたことになる。残念ながらこのことに気付いたのは渋々玄関を抜け5分ほど経った後だった。しかし、それでも普通に駄菓子屋かスーパーに行って普通に目的のものを買って来ればそれで済んだのだろう。だが、俺は2つ目のミスをしでかす。一蓮托生……もとい一緒にショッピングと洒落込んでしまおう、と携帯を手に取った。その先には……長門のアドレスが載っていた。
                     
 最近付き合いがほんの少し良くなっているとはいえこんな私用では断られると思ったが、返答は意外なものだった。
                      
「わかった。10分後に公園で待ち合わせ」
                     
 拍子抜けしたまま言われた通り行ってみるとすぐに発見。スマンな、昨日の不思議探しで疲れてるってのに呼び出して。まあお前が本当に疲れるとも思えんが。
                      
「大丈夫、心身ともに正常。それに義妹のためなら多少無理もできる」
                     
 ……今の発言は聞かなかったことにしよう。
                       
「一般的地球人がお菓子と認識する物質の中で、非常に美味の商品が置いてある駄菓子屋を知っている。味のほかにも、地球人的美感覚における最高級の見栄えのよさ、そして十分な個数、総体積を併せ持つ。あなたの妹も喜ぶはず」
                      
 そりゃ凄い、そんな菓子が存在するとは。長門のナビ機能もたいしたもんだ。で、それは幾らなんだ?
                      
「通常サイズとお徳用サイズが存在するが、実は包装分を除いた質量で比べると通常サイズのほうがお得。通常サイズは1袋3500円、お徳用サイズは1袋6000え」
『却下だ』
                      
 こら、そんな目で睨むな。誰がそんな大金掛けて遠足に備えにゃならんのだ。いいか、遠足のお菓子は300円までしか使っちゃいけないんだ。意味?そりゃあ、食いすぎて寝て過ごすやつが増えるからじゃないのか。弁当をしっかり食べさせるというのも目的としては大きいと思う。小遣いの差で量が大きく変わるのが不公平だからってこともありそうだな。こっちが本命か?
                       
「その制限の意味は理解した。しかし有効であるとは到底言えない。購入金額を偽るのは比較的容易。この金額の範囲内で購入したと言い張れば、教師側は確認する術がなく認めざるを得ない」
                      
 む、誰しも考える永遠の謎に頭を突っ込んだか。かく言う俺も、幼少の砌には340円くらいまで注ぎ込んで300円だと言い張ったものだ。その話を聞いた妹は去年俺の真似をして、没収されて半泣きで帰ってきた。700円も使ったら当たり前だな。限度を知らんのか。それはさておき。
                       
「今だから思いつくんだろうが、300円以内というのはむしろプラス要素なんじゃないか?」
「何故?」
「そう決めた以上、完全一致の領収書やレシートを証拠品に出されたら、どれだけ大量に持ってこようと教師側はOKと言わざるを得ないんだからな。安売りを見計らってまとめ買いするとかいいと思わないか?」
                      
 我ながら醜い屁理屈だ……あれ、長門さん?目の色が変わったのは気のせいですか?キュピーンって効果音が鳴ってますヨ?
                       
「戦略を理解した。さっそく買いに行く」
「あ、そ、そうだな、ここでじっとしていても始まらないか。で、どこに行くん」
                       
 カプッ。
                     
「その前にナノマシン注入を行う。今回投与するのは空間移動時のダメージを軽減するもの。時間移動による影響も軽減することは可能だが、その効果を付加させた場合処理完了までに9.34秒もの時間が余計に消費される」
                      
 噛みながらしゃべるとは流石だな、というか声が口というより頭頂部の方向から聞こえてくるんですが。こいつの能力からすれば不可能でも何でもないんだろうが、能力の無駄遣いだ。説明してからナノマシンの順でも良かったんじゃないのか。ついでに欲張れば、もう少し回りを見て欲しかったぞ。男の指に噛み付く少女なんて構図におのずと視線が集まるじゃないか。殺気が多分に含まれているようであるし。空間移動の前に何とかごまかしてくれよ、女に指を噛ませる悪趣味の男がいるなんて変な噂が立つのは御免だぜ。
                     
「わかった。私とあなたは既に妊娠5ヶ月の胎児を見守るオシドリ夫婦だということにする」                     

 そっちかよ。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:58 (2732d)