作品

概要

作者109
作品名リクSS その1
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-08-26 (日) 23:41:27

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

《リクエスト スレ84冊目》


464 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日: 2007/04/03(火) 18:50:51 ID:FUUoGOqH
「もしもし、長門か?」
「…」
「え〜と…もう用件はわかってると思うがなんだこれは?」
「預かって」
「は?」
「預かって」
「なんで?」
「涼宮ハルヒに見つかったら捨てられてしまう」
「あ―、それってハルヒが前言ってたフリマの話の事か?」
「そう」
「う〜ん、でもなぁ…」
「お願い」

日頃お世話になっている長門のお願を無碍にするほど薄情者じゃない俺は目の前で山となっているダンボール(inハードカバー)を眺め、
「やれやれ、わかったよ」
と、いつものセリフを吐くしかなかった。

こうして長門はキョンの家に入り浸る口実を手に入れた!って感じのSS頼む


「もしもし、長門か?」
 休日の朝っぱらから懸案事項を放り込まれた俺は、俺専用のサポートデスクと化している番号をダイヤルした。ただ今回の場合、いつもとは事情が異なる。
「…」
 ワンコールでつながった。心なしかいつもの無言の挨拶が、やや遠慮がちに聴こえる。
「え〜と…もう用件はわかってると思うが、なんなんだ、これは?」
 コンマ数秒の沈黙。見聞きした情報が脳に伝達されアクションを開始できる時間…てのは誰が言ってたっけ?
 ただそれは人間の場合であって、長門ならナノセコンド以下で反応できるだろう。コンマ数秒は、長門にしては長すぎるブランクだ。
「…預かって」
「は?」
「預かって」
「なんで?」
 『何を』と問い返さなかったのは、すでに長門が預かって欲しい物が分かっていたからだ。
「涼宮ハルヒに見つかったら捨てられてしまう」
「あ―、それってハルヒが前言ってたフリマの話の事か?」
「そう」
 ハルヒが思いつきでフリーマーケットに出展するなどと言い出したせいで、思わぬ災難が長門に降りかかった。さながら平和な日常を過ごしていると予期せぬ火山の大噴火で生き埋めになってしまったポンペイの悲劇…というのはさすがに大げさだが、当の長門にとっては災難と表現しても言い過ぎではあるまい。
「う〜ん、だがなぁ…」
 俺が言葉を濁したのは今朝まさに、長門からの預かり物の一件で母親から問い詰められたからだ。一箱がずっしりと重量のあるダンボールが山となって、玄関をところ狭しと埋め尽くしている。
「お願い」
 日頃お世話になっている長門にこう言われて『No』と断れるほど、俺は冷めたアメリカンコーヒーのような情の持ち主じゃない。
「やれやれ、わかったよ」
 と結局、いつものセリフを口にした。二階の物置を整理すれば、恐らくすべて入りきるだろう。
「あなたには迷惑をかける」
 まあ気にするな。おまえ相手ならこの程度のこと迷惑のうちに入らん。迷惑料をぶん捕りたくなったら、長門の分もまとめてハルヒに請求してやるさ。
「今からそちらへ行く。手伝う」
 いやいい、と答えようとしたが改めてダンボールの山に目をやり、じゃ頼むと答えた。
 長門の顔を見れば、うちの母親も駄目とは言えまい。

******

 通話を切ると、あっという間に長門がやって来た。一体どこから電話してたんだろうか。
「………」
 俺の顔を見た長門は顎を数ミリ下げた。なあに、そんな恐縮しなくてもお安い御用さ。案の定おまえが来たおかげで、母親も簡単に折れたどころか、物置の整理まで手伝ってくれたしな。
しかし物置を引っ掻きまわしたおかげで、改めてうちにガラクタがいかに沢山あるか分かった。丁度いい、これをフリマに出すことにしよう。
 物置の整理がついた時点で、やたら世話を焼きたがる母親と、はしゃぐだけで役に立たない妹にはご退場願った。
「本はわたしが運ぶ」
 長門はそう言うと、ハードカバーがぎっしり詰まっているであろうダンボールをひょいと持ち上げる。何箱か手伝ったが、紙の原材料は木でしかも同サイズの木材より高密度だという事実を身をもって認識させられた。
「終わった」
 物置に辛うじて人ひとり座れそうなスペースを残し、すべて収まった。
「もうひとつ、お願いがある」
 分かってる。本を取りに来ていいかって訊きたいんだろ?
「少し異なる。ここで読んでもいい?」
「俺んちで?…まあ、別にかまわんが…」
 うるさくて本に集中できないかもしれんぞ。おまえの家に較べるとディ○○ーランド並みの騒がしさだからな。
「いい。騒音は妨げにならない」
 まあ、長門なら平気か。きっとすぐ傍でジェットエンジンの試運転を行っても、そよ風程度にしか思わんだろう。
ふと、ダンボールに囲まれた物置にちょこんと座った長門が本を読む姿を想像した。読書好きな座敷わらしを家に招いたようで微笑ましいが、さすがに物置ではあんまりなので、箱から出したハードカバーを胸に抱えた長門を自分の部屋へと案内した。
「俺の勉強机で良ければ使っていいぞ。妹には入ってくるなと注意しておく。用があったら呼んでくれ」
 部屋を出ようとした俺を、長門の目が引き止める。
「ここに居て」
「え?」
「ここはあなたの部屋。あなたが出て行く必要はない」
「しかし…」
 口を開きかけたが、長門にしてみれば追い出したようで、かえって居心地悪く感じるのかもしれないと思い直し、扉を閉めた。
 勉強机へ向かった長門は、椅子に座ると分度器で測るまでもなく背すじを90度に伸ばして本を開いた。偉いね、俺は勉強しているときですら、あんなに姿勢良くならない。もっとも真面目に勉強することじたい、廃坑で金が見つかること並みに希少だが。

 さて…と…俺は何をしよう?長門を見ていると勉強しないまでも、自分も何か読まないといけない気になってくる。俺は本棚から以前買ったラノベを取り出した。長門のハードカバーに較べるとまるで冥王星並みの質量と内容だが、このくらいが分相応さ。
片手で軽々持てる文庫本を、ベッドに寝っ転がりあお向けになって読み始める。
 最初の30ページほどは集中してたと思う。ふと気付くと、いつの間にか長門がベッドの側に立っていた。
「どうかしたか、長門?」
「その姿勢は良くない」
 そう注意されたときの俺は、左手で本を支え、もう片方の手はページをめくる以外は頭の下に敷き、ひざ立てした左足に右足をのっけた格好だ。なるほど、お世辞にも行儀良いとは言えない。
「本と目の距離が近過ぎる。体幹も歪んでいる。視力の低下や骨盤の歪みを引き起こす恐れがある」
 ま、たしかにそうだけどさ。こうやって読む方が楽なんだ。いつでも寝れるしな。
「読書があなたの健康を損なう危険性を、わたしは黙視できない」
「そんな杓子定規にならなくてもいいじゃないか。読みかたなんて人それぞれ、楽しく読むべきさ」
「………」
 長門が口を噤むと、海が時化る寸前にも似た静寂が襲ってきた。どうやら俺は、羅針盤の使い方も知らない半人前の水夫が嵐の訪れを察知出来なかったのと同じくらいの失敗をやらかしたらしい。

 突然、するりと長門がベッドにもぐり込んできた。いくら小柄でも、只でさえ狭いシングルベッドに二人は定員オーバーだ。
「ちょ、ちょっと待て!一体なにを――」
「考えを改めた。ここはあなたの部屋で、わたしは間借りしている身分。あなたのルールに沿うべき」
 長門は右手を伸ばして俺の文庫本をつまみ、身をよせてきた。身体の半分と半分がぴったりとくっつく。いつの間にか俺の右腕は、長門の首の下に押さえつけられていた。
「この部屋では、わたしもあなたと同じ姿勢で読むことにする」
 恐ろしく近い距離から長門の声が聴こえる。うっかりそちらへ首を向けようものなら、頬が触れ合うほどに。
二人も仰向けになれるほどベッドの幅が無いので、長門がやや右半身を浮かした分、体重が俺に掛かってくる。
「い…いやさすがに、この体勢はまずいって!」
 あろうことか、華奢な脚が俺の太股に乗っかってきた。ただでさえ健全な高校生男子にはやや毒ともいえる短さのスカートが現在どうなっているかなんて、想像するだけでヤバい。
「分かった!俺が悪かった。ちゃんと座って読むから取りあえず離れてくれ、な?」
「却下する。わたしもこの姿勢に馴染んできた」
 ……おまえ、怒ってるんじゃなくて意固地になってないか?
「ない」
 いや、ムキになってるって、絶対。
「今日はあなたに楽しい読みかたを教えてもらった。また教えて欲しい」
 耳朶に息が掛かるほどの超至近距離で、長門が囁いた。

 …長門よ、頼むからベッドの上で『教えて欲しい』なんて言うな……俺の理性が持たない。

END

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:56 (2003d)