作品

概要

作者十六夜
作品名シンデレラ 長門
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-08-26 (日) 04:27:26

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

#1 設定

 

ある平和な国に少女三人が住む家がありました。
まず長女の喜緑 江美里。
特徴としてワカメのような色彩を持ち、ワカメのようなウェーブがかかった流れる髪が魅力的です。
「ワカメ」。この場合は褒め言葉でお願いします。……言い忘れてましたが腹黒いです。
次女の朝倉 涼子。
腰まで届く青い髪にちょっと特徴ある濃い眉毛をして、
包丁の代わりにサバイバルナイフを使った料理が得意な女の子です。
笑顔でナイフを扱う姿には、違った意味で見惚れます。
最後に三女の長門 有希。
設定上シンデレラという名ですが、皆は「有希」と呼んでいます。
一番体型は小柄で胸も小s(禁則事項)な胸ですが、
きっと成長すると信じて今日もたくさんカレーを食べてます。
けど栄養の全てが胸にいくと思ったら大きな間違いです。
そもそも、「それがいい!」という人もたくさんいますし、私もそのままで結構かと思います。
ちなみに江美里には穏健派、涼子には急進派、有希には主流派とそれぞれ父親がいますが、
あまりに親バカで、過保護すぎるということで現在別居中。
当初、キャストとして一緒に住んでいた設定だったのですが、ネタの都合上なくなりました。
すすり泣く声が聞こえてきそうですが、無視の方向で。
姉妹なのに親が別々なのはなぜ?
なんて疑問を持っても無意味です。なぜならそういう仕様なのですから。
……それでは設定はこんなトコで物語を始めます。

 
 

#2 日常

 

この家ではいつも以下のようなやりとりが行われています。

 

「有希ー。あたしナイフを研ぐのに忙しいから代わりに買い物行ってくれない?
 そこに買い物カゴあるからよろしくね(はーと)」
台所にナイフを十本ほど並べて、一本一本丁寧にナイフを研ぐ涼子。
光に反射して妖しい色で輝くナイフに眼をやって恍惚の表情を浮かべています。
側に生肉がたくさん転がってる事から、試し斬り・試し刺し・試しえぐりをしたのでしょう。
「了解した」
そんな涼子の指令に逆らう事なく有希は頷き、買い物カゴ片手に外に出ました。
買い物といっても、キャベツとレトルトカレーを買うだけですので全く苦になりません。
むしろ自分の好きな夕飯になるので、足取りは非常に軽やかです。
買い物も終わり部屋に戻って趣味の読書に勤しもうとすると、もう一人の姉とすれ違いました。
おめかしをしていて、どこか出かけるようです。
「あっ、有希ちゃん。わたしはデートしてくるからお洗濯頼むわね。洗濯板はいつもの場所にあるから」
おそらく相手から最後の一銭まで搾り取るデートに出かけるのでしょう。
外面上はとてもそうは見えない大人しい顔をしていますが、お腹の中はマックロクロ○ケなのですから。
ついでに「洗濯板」と聞いて、この家に住む三女を連想した人は夜道に気をつけてください。
「わかった」
またもやイヤな顔一つせず有希は了承し、
庭へと向かうとタライには男に貢がせた衣類がヒマラヤ山脈のごとく積み並んでいました。
さっそうと有希が腕まくりして取り掛かります。
「汚れだけを情報結合解除。……終わった」
有希が自分たちの洗濯物に手をかざすと、新品のような輝きを持つようになりました。
これは洗濯板は必要なしでしたね。ここでまた三女を連想した人は昼間の道でも気をつけてください。
こうして押し付けられた家事をすませた有希は読書にふけこむために自分の部屋に戻っていきました。

 
 

#3 出会い

 

このようなやりとりがいつもの日常ですが、今日はシンデレラこと有希がお出かけのようです。
その様子をピックアップしてみましょう。

 

てくてくてく。
有希は手に分厚い五冊ほどの本を小s(禁則事項)な胸で抱えて歩いています。
その足の目的地はお城の外れにある大きな図書館。
世界中の各地から集められた数々の本が収められている
この国自慢の図書館では多くの人に読めるように一般開放されています。
有希はいつもここで本を借りているのです。
……実は有希がここに来るのは本を借りるのとは別にもう一つの目的がありました。
その目的とはある一人の男性に会いたいがためでした。

 

それは有希が初めてここに来た際のこと。
どうやって本を借りてよいかわからず途方に暮れていたあの時。
いっそこのまま得意の情報操作で本を持ち出そうかとしていると、
有希よりも小さな少女を連れた一人の男性――というには若すぎる男の子が声をかけてきました。
「あ〜、さっきから本を持ってこの辺をウロウロしていたがそれを借りたいのか?
 初めてならカードを作らなくてはならんのだが、やり方は……知らんみたいだな」
姉妹以外はあまり会話をしない人見知りの有希はその男の子の問いにだた頷くだけです。
「仕方ないな。……妹よ。
 おにいちゃんはやる事ができたからちょっと待ってろよ」
「はぁーい! キョンくんっ!」
「何度も言うがおにいちゃんと呼びなさい」
「ちぇっ。わかったよ〜、キョンくん」
ハァ、とため息混じりに表情にあきらめを見せる『キョン』
と呼ばれる男の子は受付の年配の女性を呼び出しました。
「すまないが、この子の貸出しカードを作ってくれないか?」
「あっ、あなた様は……。し、承知したしました。すぐにお作りいたします。
 あの、それでその女の子のお名前は……?」
なにやら物々しい口調で対応する受付の女性ですが、
この『キョン』と呼ばれる男の子は一体どういった人物なのでしょうか?
それは物語が進めば明らかになることですが、今は謎のままにしておきましょう。
「……シンデレラ。でも……長門有希とみんな……呼んでいる」
「シンデレラ……長門有希か。
 どうせなら皆から呼ばれている名のほうがいいな。それでよろしく頼むよ」
またも有希は沈黙したまま頷くだけですが、
キョンは心に温かなものを感じつつその様子をじっと見ていました。
その間に受付の女性は焦りつつも手際よく手続きをすませます。
「お待たせしました。このカードを提示して下さればいつでも本をお借りになれます」
キョンは『長門有希』と書かれたカードを受け取り、その持ち主になる少女へ手渡しました。
「ほら。これにて俺の役目も終了だ」
「……ありがとう」
たったこの一言ですが有希は感謝以上の気持ちがこもっている心からのお礼を伝えました。
「気にするな。この図書館に昔から世話になってるから一人でも多く来てくれるのは嬉しいものさ。
 ……それじゃあ、戻るぞ、妹よ」
「有希ちゃん、またね〜。ほらっ、キョンくんも有希ちゃんにあーいーさーつー」
「ああ、わかってるよ。えー、長門……って呼んでいいのかな?」
腕に妹が巻きつかれ、照れくさそうに有希の名を呼ぶ思春期真っ盛りなキョン。
同じく思春期が到来している有希ですが、二次成長の証でもある胸の成長は全く見られ……
ゲフンゲフン。この上一行は(禁則事項)ですので忘れてください。
「いい」
「じゃあ、長門。またな」
妹に引っぱられる形でこの場を退散するキョンを目で追いながらの有希の言葉。
「また図書館で」

 

こんな早摘みイチゴのような甘酸っぱいストーリーがありました。
それからというもの有希は週に一、二回は図書館に顔を出しています。
初めのうちは毎回キョンに会えたわけではありませんが、
次第に来る日を合わせるようになり、二人で過ごす時間が増えていきました。
しかし会っても、隣同士で本を読むぐらいのことしかしていません。
それでも有希にとっては心休まるときであり、
今日も今日とてお城の図書館に足を進めるのでした。

 
 

#4 それぞれ思う事

 

ある晴れた日のこと。
この国を治める城から一枚の御触れが出回りました。
その内容は以下のようです。

 

 後日、お城で大舞踏会を開きます。なおこの舞踏会では王子も参加することが決まっています。
 王子に見初められるチャンスですので、若い女性たちは奮ってご参加ください。
                            お城より 

 

これはどうやらお城で盛大な舞踏会が開催される旨のよう。
このような催しは王子本人の意向にそわれたもので無いのはお決まりパターンともいえますが、
今作品はどうかはわかりませんよ、皆さん。
まあ、それに気にすることなく国中の若き女性は舞踏会に向けて準備を進めます。
もちろん。
物語の主要人物である江美里、涼子、そして有希の耳にもこの報せは届いて準備をしています。
それではこの三人の様子を窺ってみましょう。

 

・江美里
「あら。これは願ってもいない機会ですね。
 そろそろこの辺りの男性のふところは搾りとってしまいましたし、玉の輿でも狙いましょう。
 これはわたし以外の――人間ごときには無理です(ハレ晴れユカイVer.喜緑江実里風に)」
もうこの世の全ての色を混ぜたかのように黒を超えた暗黒ですね。

 

・涼子
「お城にはきっと名ナイフや、曰くつきの刃物があるのよね。
 この国の妃になればそれも全部わたしの物となるまたとない機会だわ。
 『やらなくて後悔するよりも、やって後悔したほうがいい』って言うし。
 王子を殺してこの国の出方を見る……のも面白いかしら」
もう書いている私が朝倉が怖くて恐くて仕方がありません。

 

・有希
「……豪華ディナー。……食べ放題」
有希の黒曜石の瞳にはお触れの一番大きく書いてあった内容には
全く興味がないようで、その下に小さく書いてあったこの二つの文章しか映っていません。
もう私の口からは何も言いません。

 

――とにかく。
三者三様な願望を胸に秘めながらその舞踏会の日が近づくのでした。
ついでに有希の思い人、なのかは有希本人が知るのみですが、
ここでキョンの様子を見てみましょう。

 

・キョン
「……はぁ。全く、止めろと言ったのに舞踏会なんか計画しやがって、あの野郎」
ブツクサと窓の外へため息とグチをこぼすキョン。
その後ろには図書館で借りた絵本を寝転がりながら読む妹の姿があります。
「でもキョンくん、出るんでしょ? ぶとーかい? いいな〜、あたしも出たいな〜」
「世間の顔もあるし、出ないわけにもいかんだろう。
 この国も含めてずいぶんと遠くの国にまで知らせを出したらしいからな。やれやれだ」
お前はまだ早い、それとだらしがない、と妹にお小言をプレゼントしたキョンは再び窓の外へため息とグチ。
これが彼のここ最近のつまらない日課である。

 
 

#5 死闘

 

さて。
舞踏会の日が明日となり町を歩く人々、特に年頃の女性は話に花を咲かせています。
話題はもちろんこれまで手の届かない存在であった王子の事で、
様々な憶測やウワサが乱れあっています。
王子は争いの絶えぬ地で常に前線で戦っていた――とか、
将来、国を背負う立場であるための勉強に一日の大半をつぎ込んでいる――とか、
はたまた、平民にまぎれてこの国を見守る必殺仕事人――
なんていう背びれ尾びれがついたウワサがアチコチに広まっていました。
おっと。いつまでもこんな話をしていると皆さんが退屈してしまいますね。
ここらで有希の家の様子を見てみましょう。
きっと三人とも明日に向けての準備で大忙しでしょうね。

 

と思ったのですが、三人はテーブルをはさみ鎮痛な顔立ちで座っています。
「はぁ〜〜〜。よりにもよって明日にパパたちが様子を見に来るなんてね……」
腕組した片手に一枚のハガキを持ち大きくため息をつく涼子。
「そうね〜。せめて一日でも遅かったらよかったのに」
いつも裏があるフェイスの江美里も今ばかりは本当に困った顔。
そして有希はいつもの無表情を変えずに言葉を発しました。
「……明日に標準を合わせていた可能性がある。
 彼らはわたしたちが舞踏会に行くことを反対していた」
「だからわざわざ舞踏会当日にこっちに来て足止めする気なのね。……涼子ちゃん、有希ちゃん。
 ここは誰かが一人犠牲になってお父様たちの相手をしないといけないわ」
策士・江美里が身が凍るようなにっこりとした仮面に付け替え、二人を威圧します。
修羅場を通った達人でも逃げさってしまうプレッシャーに対抗できるのはさすがの妹たち。
涼子はポケットからオシャレなハンカチーフを取り出すかのようにナイフをだし、
ドンッ!! と硬いヒノキの机に深々と突き刺します。
「いやだと言ったら?」
それに負けず劣らずなのが我らが女神、長門有希。
「……」
鈍器顔負け分厚く重かろう本を
それの重量を感じさせないほど軽々と片手で持ち、相手二人の出方を待ちます。
この史上最強の姉妹ゲンカを目の前で観戦するには命が担保として必要です。

 

空間が歪みたいと訴える膠着状態が小一時間。
このままではラチがあかないと判断した江美里はある勝負方法を提案しました。
――それは『ジャンケン』
この勝負内容を記述してもかまわないのですが、同じ事の繰り返しなので簡略してお伝えします。
あいこが15498回続いた次に長きにわたった死闘にケリがつきました。
有希の負け、という形で。
それは激しい情報戦でしたが、有希のお腹が『ぐ〜』という空腹の報せによって
自分自身の情報処理能力が遅れたその結果でした。

 
 

#5 いざ、お城へ

 

舞踏会当日。
たっぷりのおめかしをした江美里と涼子は玄関の外で。
いつもの普段着(高校の制服と受け取ってください)の有希は玄関の内。
「じゃあ有希ちゃん。わたしと涼子ちゃんはお父様たちが来る前に出るから
 あとの事はよろしくね。わたし達がいない上手い言い訳、頼んだわよ」
「そんな顔してもダメよ、有希。
 食べ物ならタッパーに入れて持って帰ってあげるから待ってなさいよ」
以上のセリフをお留守番・有希に渡し、自分たちはお城へと向かって行ってしまいました。
日の入りが近づいた頃。
長門表情鑑定士有段者でしかわかりませんが家ですねている有希が一人たたずんでいます。
かわいそうかと思いますが、少しはそういう姿も原作やアニメで見てみたいという人がいるでしょう。
私もその一人ですからね。
「陰謀」でのあの図書館辺りのやりとりを早く見てみたいものです。
図書館に現れたキョンを素通りするすねたとしか言いようが無い長門、
先行して歩く長門にキョンが謝ると機嫌が良くなったのか歩行が微速になるとことかを特に。
……それた話を戻します。
とっぷりと日が沈んでしまった時。
とんがり帽子とマントを装備した『いかにも魔法使い』の二人が玄関の前に現れました。
「こんばんわっ!! あたしは魔法使いハルヒ!!」
「お、おじゃましまぁす! え、えっと、あたしは魔法使いみくるでぇす!」
悲鳴をあげそうなほど豪快に蹴られた玄関の戸には同情の言葉しかでません。
そしてこれには、ふてくされていた有希も何事かと物音する玄関へと足を動かします。
「……なにか……用?」
「物語もいよいよ中盤!!
 ここらで一気にそして強引に話を加速させるから、今から有希にはお城に行ってもらうからねっ!!」
有希の言葉には全くお耳を傾けない唐突に話を進める魔法使いハルヒ。
「あの、な、長門さん。このガラスの眼鏡をかけてください」
同じく有希に比べて当社比何倍もある胸をした魔法使いみくるも話を進めます。
とりあえず言われるがまま、みくるから渡されたガラスレンズの眼鏡を有希はかけてみました。
そうするとアラ不思議。
有希は制服から光に包まれ雪の結晶がモチーフされた純白のドレスをまとった姿に早変わり。
っとここで一つ。
長門がかけていた眼鏡って世間一般のプラスチックレンズじゃなくて、
ちょっと重たいけどちゃんとしたガラスレンズだった、と思う今日この頃。
「お次は外よ。お城へと超特急で向かう車を用意してるから」
ハルヒは白い細い手を引っぱり暗くなった外へと有希を連れ出すと、
そこには大きなネコが気だるそうに横になっていました。
「この子の名前はシャミセンっていうですよぉ。
 長門さんにはこれに乗ってお城に行ってもらいます」
このシャミセンは『となり○トトロ』のネコバスをイメージして下れば結構です。
「さあ、有希! 乗って乗って!」
「長門さん。魔法が切れるのは十二時だからそれを忘れないでくださーい!」
ハルヒに急かされ急かされシャミセンに乗る有希にみくるの忠告。
シャミセンは一あくびして勢いよく走り出しました。
以上のように、ハルヒとみくるいう激流に有希は木の葉のように流されながら話は進みました。

 
 

#6 彼らの出番はここだけ

 

一方、有希たちの父親、主流派・急進派・穏健派はというと
有希たちの住む町に続く道を歩いているところでした。
主「有希たちの住む町ももうすぐだな」
穏「少し遅れてしまいましたね。まだ舞踏会に出発してなければいいのですが……」
急「それはなんとしても阻止だな。
  俺の可愛い涼子が下賤な輩に誘惑されるなんて考えただけでも死刑ものだ」
主「同意だな、急進派よ。
  ……ん? 前から……何か来るな」
急「ホントだな。すごい土煙でよく見えんが一体、何が……」
穏「巨大なネコのように見えるのですが気のせいでしょうか?」
主「そんなデカイネコがいるわけ……って」
主&急&穏「アッー!!!」
なんという運命の悪戯でしょう。
主流派たちが歩いていた道は町からお城へと続く道でもあったのです。
もちろんこのデカイネコというのは有希の乗るシャミセンであり、
主流派たちはこれに吹き飛ばされてはるか彼方の星になってしまいましたとさ。
めでたしめでたし――。

 
 

#7 王子の正体

 

お城についた有希はシャミバスに乗車賃として
どこから取り出したのか大量の煮干しを渡し、帰りもお願い、と伝えると
「確かに承った。呼べばいつでも駆けつけよう」
と人語で了承しました。魔法がこの世にあるなら猫もしゃべるさ、という設定のようですね。
とにかく途中で誰かを吹き飛ばすアクシデントがあったものの、有希は遅れながら無事お城に到着です。
ところで皆さんは有希の目的はお覚えでしょうか?
眼鏡ver.有希は人の賑わう舞踏会場へと入ると迷い無き瞳と足を真っ直ぐ目的のモノへ近づき、捕らえ
家から持ってきた有希印の大きいお皿に次々とのせていきます。
リブロース、パスタ、シーザーサラダ、お寿司、海老の甘酢かけ、エトセトラエトセトラ。
すでにデザートも奪取しており、有希の戦闘態勢は万全のようです。
女性の食事風景を描写するほど失礼なものは無いのでここで舞踏会全体を見渡してみましょう。

 

まず……江美里がいましたね。
これだけ大きな舞踏会となると隣国からの貴族やお偉方も来ています。
江美里はそれにも標準を合わせているようかな振る舞いをしており、そのせいあってか
美人で笑顔もよく、気立ての良さそうな彼女の周りには多くの人が集まっています。
まるで、海草に群れてくる魚類です。
……魚たちはその海草がいつ、食虫植物だと気づくのでしょうか。
次に涼子を探してみましょう。
………………いませんね。
おそらく凶器類を求め武器庫にでも侵入しているかと思われます。

 

パンパカパーン!!
おや。そんなこんなしている内にこの国の王子がご登場のようです。
いくつもの武勇伝がウワサされる王子とは一体、誰なのでしょうか?
場が静まりかえると、カツカツカツ、とリズムよい足音が
メイン舞台のすそからコチラに近づきながら大きく響き渡ります。
一度静まりかえった場がざわざわとしてきます。
それもそのはず。町の女性たちはこれを目的としてきたのですから。
カツン!
最後の足音が奏でられ、顔をバッとあげた凛々しき王子……その名も!!

 

「俺がこの国の王子!! 谷口ですっ!!」

 

――後に従者である国木田がこう打ち明けました。
「あの時の情景といったら例えようがないよ。
 皆が期待していた想像人物よりも見た目が三枚目。顔からしてウソとわかる武勇伝の数々。
 実際、王子が勝手にながしただけのウソだらけの武勇伝だしね。
 王子が計画したこの舞踏会。唯一にして最大の失敗が王子が谷口だった、ということだね」

 
 

#8 キョン

 

時間を現在進行形にしましょう。
がっかりして舞踏会の途中なのに帰る女性。
ターゲットの賓客の男性に移す女性。
一緒にダンスを、と声をかけてはお断りの言葉をもらう王子・谷口。
壁にもたれながら「やっぱりな」という表情の――キョン。

 

さて。なぜキョンがここにいるのか、その素性などを説明しましょう。
実はキョンというのは目と鼻の先であるすぐお隣の国の貴族なのです。
といってもかなり端の位ですが、この国の王子・谷口の悪友であるため今回の舞踏会に誘われたのでした。

 

「まったく、アホというのに相応しすぎる奴だな」
キョンは無様な谷口を見ての一言。
その隣には同じ国から一緒に来た古泉がいます。ちなみに彼も貴族の一人です。
「まあ当然の結果でしょう。……ところであなたにはダンスのお相手はいないのでしょうか?
 僕がパートナーを務めてもよかったのですが生憎、先約がいましてできないのですよ」
「まず前提としてお前とは断固お断りだ。次に相手がいるならこんなところでヒマしていない。
 ここに来ているお偉いさんには一通り挨拶はしたし、今から俺は飯でもつまむとするさ」
「了解しました。それでは後ほど……」
ルックス抜群の古泉は同じくスタイル抜群の令嬢の元へと歩み始めますと、
周りの男性・女性たちは次元が高いカップルに羨望の眼差しをしていますが
キョンは少し違うようですね。
「さすがに羨ましいとは思うが、俺だとあまりに釣り合いがとれんな。
 ――そうだな。俺はあの図書館でしか会うことがないが……」
その名を呟こうとするキョンのはるか目の先にまさしくその人物がいました。
雪のように純白のドレスで着飾り眼鏡をかけていますが、
あの少女は間違いなくシンデレラこと、長門有希でした。
「なんでここに長門が? こういうイベントには興味がないと思っていたが……」
キョンは謝罪の言葉ととも人波をかきわけ、有希との距離を縮めて縮めていきます。
そして、二人の距離が手を伸ばせば届く位置まできた時。
「長門、いや、シンデレラ。俺と一緒に踊ってくれないか?」

 
 

#9 そして、有希

 

ここでほんの少し時間を戻して、有希サイドで物語をみてみましょう。
バイキング形式だった食事を全て堪能した有希はここで初めて料理以外に目を向けました。
有希と同じぐらい、また少しの上の年頃の女性が同じ年代の男性とダンスを踊っているのを。
それは有希にとっては見たこともない光景で、どういった目的なのかもわからずでしたが、
たった一つですが、彼女にとっての初めてともいえる願望が生まれだしました。
――彼と踊ってみたい、という。

 

運命とはこのような事をいうのでしょう。
ここで有希と、そしてキョンの。
その時間が重なるのです。

 

有希にとって願いが現実となる突然の一言。
それはカレーにキャベツの千切りがついていなかった時の晩御飯のように呆然としてしまいました。
「ダメ……か?」
続く残念そうにするキョンの言葉に我を取り戻した長門。
その有希の回答はすでに決まっています。
「わたしからもお願いする。……一緒に踊って」
キョンはその言葉を聞き安堵の息をはくと、優しく有希の手をとり
ダンスが繰り広がられるホールの中心へと二人、一緒に歩みます。
有希とキョンは互いに視線を重せ、流れる時間をも重ねそして踊るのでした。

 
 

#10 誰がために鐘は鳴る

 

舞踏会も終息を迎え、今、有希とキョンはバルコニーで二人過ごしていました。
けれど、時間というのは残酷なもので楽しい時はすぐに過ぎ去るもの。
もうすぐ有希にかかった魔法がきれる十二時が近づいてきているのです。
――そして遂に、十二時を告げるお城の鐘が響きはじめました。
「時間が……」
ここで有希は自分にかかった魔法が切れることを思い出し、
キョンがいるこの場から急いで離れようとします。
「おい、どうしたんだ、長門!?」
とっさ手を掴んだキョンでしたが、
それを振りほどかれ有希は外につながる階段を勢いよく降りていきます。
「待ってくれ、長門!」
その時、かけていたガラスの眼鏡が落ちてしまいましたが、それを拾う時間もおしい有希は
「来て」
と澄み切り、響き渡る声をあげると暗闇の森からあのシャミセンが出てきました。
「先ほどの煮干しはありがたく頂いた。
 さあ、乗りたまえ。帰りも送迎の任をまかせてもらおう」

 
 

#11 大トロ

 

原作(シンデレラの)ではここでシンデレラに逃げられてしまうところですが、
我れらがキョンはやるときはやる男です。
原作(ハルヒの)でも場面場面でもそれを見せるのが、多くの人に好かれている理由でしょう。
有希が乗り、今にも出発しようとするシャミセンにキョンが大声で叫びます。
「待つんだ、そこのデカイ猫!!」
「すまないな少年。私にはこの少女を帰す役目があり、そしてここに留まる価値を持っていない」
「じゃあ、調理場で舞踏会に出された大トロの刺身を貰ってきてやる! 脂が特にのった本マグロだぞ!」
この言葉を聞いたシャミセンはピタッと体をとめました。
さすがはキョンといった所ですね。そこに痺れる、憧れる。
「……申し訳ない少女よ。私は一度いいから……缶詰でないマグロを……食してみたかったのだ。
 それもあの少年はあの大トロの刺身だという。……この機会を逃してはもう二度と訪れぬかもしれん」
食に関しては理解ある長門はその言葉の前にはもう何も言えませんが、
止まったシャミセンにキョンが近づいてくると自然に口から声がでました。
「近寄らないで。……今のわたしは魔法が解けてしまっている」
そう。十二時を回ってしまった時点で有希にかかっていた魔法はなくなり、
いつもの高校指定の制服へと成り下がっていたのでした。
キョンは一つのため息をはき、制止する長門を押し切り
「いいか、長門。俺は服や装飾で決めたわけじゃない。
 『お前だから』ダンスにも誘ったんだ!」
キョンは長門をその手で引き寄せます。
これは二人の恋が成就する瞬間でしょうか?
「わたしはまだ、ここにいてもいいの?」
「当たり前だろ」
「それなら……」
ついに終焉のときを迎えるときがやってきました。
有希の次のセリフでこの物語の締めくくりとなります。

 

「それなら……わたしも大トロを食べたい」

 
 

#12 後日談

 

・有希とキョン
二人の距離はあの舞踏会からちょっとづつ縮まりを見せてはいるものの、
まだもう一押し足りないな、というものを見せつけ、周囲は「さっさとくっつけ」と
生殺しのような感情を覚えながら、そのオーラを二人(主にキョン)にぶつけています。

 

・江美里
あの舞踏会場で『会長』と呼ばれる若い男性と知り合い、
その後、その男性の下、執行部筆頭でありながら書記として働きだしました。
近い将来、この国の黒幕になることでしょう。

 

・涼子
培ったナイフ術を生かしての護身術を開発しました。
生来持つ人徳もあり、中々の盛況ぶりをみせています。
しかし『護身術』という名目ながら、自分から切りかかる動作が多々あるのはなぜでしょう?
ちなみにお城の武器庫から頂戴した『モノ』はしっかりとコレクションの一部となっています。

 

・ハルヒとみくる
幸せをふりまきながら世界で暴れまくっています。

 

・古泉
貴族としてその身分に恥じない生活を過ごしてます。

 

・主流派と急進派と穏健派
星になったままです。

 

・有希の眼鏡
落としてしまったガラスの眼鏡ですが、あの後キョンがちゃんと回収し有希の手に帰りました。
ですがキョン曰く、「……してないほうが可愛いと思うぞ。俺には眼鏡属性ないし」
というわけで、あまりかける機会はありませんが有希の大切な思い出として大切に保管しています。

 

・谷口
知ったところで何の意味もないので割愛させていただきます。

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:56 (2710d)