作品

概要

作者罪と罰
作品名【長門有希の実践】〜人間クーラー編〜
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-08-23 (木) 06:58:20

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

※このSSは結構キャラが破綻してたりします。積極的でちょっとえっちな長門さんなんて見たくない!
 という方は今のうちにお戻りください。内容については全年齢向けなのでご安心を。

 
 
 
 
 

 ――俺は最初、そこに何があるのか分からなかった。
「…………」
 扉を閉める。開ける。
「……おかえりなさい」
 俺はもう一度扉を閉めて、マリアナ海溝にさえ届きそうな溜息を吐いた。
 いつもどおりに団活を終え、家に帰り自分の部屋へと戻ってみれば、俺を出迎えてくれたのはあまりに予想外の人物で、俺は意表を突かれた。
 SOS団が根城としている文芸部の真の主であり、情報ナントカ体とやらに作られた人間ソックリのアンドロイド――。
 長門有希がそこにいた。

 
 

【長門有希の実践】〜人間クーラー編〜

 
 

「…………」
 仕方なしに再び扉を開ける。残念なことにそれは見間違いでも何でもなく、確かに凛としてそこに在った。
 ベッドにちょこんと腰掛けて小鳥のように首を傾げる様は正直言って非常に愛らしいことは間違いないのだが、本来そこにいるべきはずのない人物が、まるで当然のことのように居座っているというのはあまりに異質な光景でもある。
 そして悪いことに異質はそれだけに留まらず、人物が場違いならばその格好も相当に場違いなものであった。
「……長門。お前は何故ここにいる? そしてその格好は何だ」
「……試しにきた」
 相変わらず話の噛み合わない奴である。
「何をだ」
「人間クーラー」
 ああ、そういえばハルヒが砂漠がどうの、ピラミッドがどうのというついでにそんな話もしていたな。ハルヒに抱きつかれてかいぐりされながら満更でもなさそうにしていた長門の表情はなかなか印象的だった。
 ……ハルヒが羨ましいなんてことは、微塵も思ってなかったぞ。
「……本来、人間クーラーとは古代エジプトで外気より低い温度の人肌に触れることによって涼を得ていたという習慣に基づくもの。今日の涼宮ハルヒのように、衣服をまとったままでは良い効果は得られない」
 そりゃ、そうだろうな。だがいくらなんでも校内でマッパになるわけにもいくまい。今のハルヒならそれくらいの常識はわきまえてるだろうさ。
「でも、わたしはそれによって得られる効果がどれほどのものなのか、興味がある」
 そうか、それでそんな格好で俺を待っていたわけだな。
「そう。でも、わたしが人間クーラーとしての役割を負った場合、その効果はわたしには判断できない。そこで、あなたに協力をお願いしにきた」
 今日に限って随分と饒舌な宇宙人は、ベッドから降りるとゆっくりと俺の前まで歩いてきて、俺を見上げた。
「許可を」
 惜しげもなく雪のような素肌を晒しながらじっと俺を見つめてくる人間クーラー志望者の少女一名。
 ……ちなみに誤解のないように行っておくが、今の長門は別に素っ裸というわけではない。ただ、普段よりかなり露出が多い格好をしているだけだ。ここで勘違いされては俺の沽券に関わるような気がするんでな。いろいろと。
 黒曜石な瞳を俺に向けてくる長門が身に纏っているのは、こいつにしては大胆なビキニだったが、その純白の生地は長門の肌と溶け合うことでむしろ清楚さを強調し、腰に巻きつけた淡いブルーのパレオが心地よいコントラストを与え、見る者全てを惹きつけるような魅力を放っていた。
 これを選んだのは誰だ。ハルヒか。だとしたら今日くらいはお前に100点満点をくれてやろう。
「……選んだのは涼宮ハルヒ」
 やはりそうか。あいつもたまには良い仕事をする。
「……どうして、後ろに下がるの?」
 気が付けば、俺は数歩下がった位置から長門を眺めていた。どうして、俺は後ろに下がっているのか。Why? 何故?
 答えは簡単だ。白状するが、今の長門の格好は健康的な一男子高校生たる俺には刺激が強すぎるのである。ここで胸の話をする奴の一人や二人出てきそうなところだが、そんなことは問題ではないのだ。
 普段、滅多に肌を見せることのない少女が、わざわざ肌を見せるような姿で、大胆にも、男の部屋で、二人きりになる時を待っていた。というこのシチュエーションが大事なのである。
 ……もちろん、この場合、この後に連想されるような甘く熱い一時なんてのは微塵も用意などされていないわけだが、別に寂しくなんかないぞ。
「……はなれないで」
 などと言いつつ、長門はぺたりと座り込んだかと思うと四つん這いになって俺のもとへとにじり寄ってくる。そうしてまた俺の目の前に陣取ると、今度は女の子座りで俺をじっと見上げてきた。
 広げた膝と膝の間に両の手をついているせいで、控えめな二つの膨らみはそれでも柔らかく寄せ合わされ、酷く魅力的な谷間を形成している。
 ……こいつ、わざとやっているんじゃないだろうな。
「わたしに触れるのは、いや?」
 いつもどおりの透き通った声に、僅かに哀しげな響きを含ませながら、その顔に浮かぶ表情は声色と同じではなかった。
 両の瞼を軽く閉じ、唇の端を僅かばかり持ち上げている。俺にはそれが、まるで小悪魔のような笑みに見えた。こいつ、いつからこんな蠱惑的な表情ができるようになったんだ……!!
「んなこたないが……、その、問題がありまくりなんだよ! 倫理的にだとか、だから、つまり、いろんな法律に引っかかる!!」
 どうやら俺は相当混乱しているらしい。自分でも訳の分からないことを口走る。
「と、ともかく俺はいっぺん部屋を出るから、お前は着替えて自分の家に――」
 振り向いてドアへとダッシュしようとして、俺はそれができなかった。不意に足から力が抜け、膝から落ちる。膝立ちになった俺の腰を長門の手が引っ張り、無理やり正座させられる。アリかよ、反則だ。動くことのできない俺に、後ろから長門が覆いかぶさってきた。
「……だいじょうぶ。この国の法律に抵触するようなことは何もない。何の問題もありはしない」
 長門の腕がゆっくりと回され抱きしめられる。背中にふにょりというマシュマロのような感触が伝わってきて、俺の頭は熱暴走寸前だ。体からは変な汗が噴出し始めた。
「あついの……?」
 そんな俺の様子を見たのか、長門が耳元で囁いてくる。しなやかな指が動いて、シャツのボタンを一つひとつ外していく。
「まかせて、すぐに涼しくなる」
 ボタンを全て外し終えると、露わになった俺の肌に、そのひんやりとした指を這わせてきた。
「あなたが気持ちいいことは、わたしも気持ちいいから」
 回された腕にきゅっと力が込められる。シャツ越しに長門の鼓動を感じる。こいつにもちゃんと心臓があるんだな、なんて感動を覚えている暇は、残念ながら今の俺にはなかった。
 まてマテ待て! 藪から棒に何なんだこの状況は。冗談はよせ! 意味が分からないし笑えない!!
「……あなたは動かなくていい。」
 と、首筋にしっとりとした感触。長門の唇か、と気づく前に肌を思い切り吸われた。
「うっ」
「……わたしに、まかせて」
 胸の辺りにあった長門の手がするすると下へ動いていく。そのまま俺の制服のズボンに手をかけ――いや、これはまずいって!
 そう思った瞬間、動かなかったはずの手がぴくりと動いた。
 ――動ける?
 そう感じた俺は、力を振り絞って長門の腕から逃れようと立ち上がる。
「あ」
 長門が珍しく驚いたような声を上げる。俺はこの状況を打破する為に、立ち上がると長門へと向き直り――、
「んぁ」
 ――長門を思い切り抱き締めていた。
「…………ん」
 不思議なことに、長門は抵抗するでもなく――まあ、こいつから襲ってきたんだが――俺の腕の中で甘えるような声を一つあげると、そのまま大人しくなった。
 俺はといえば、抱き締めた長門の柔らかい感触と、ふわりと漂ってくる女の子のほのかな香り、そしてさっきの長門の声のせいでオーバーヒート寸前だった。
 というか俺は馬鹿か。動けるならそのまま逃げ出せばよかったものを、何でわざわざ抱き締めるなんて選択肢を選んだんだ。まあこれなら長門も動けないし、こんな姿の長門をそのままにしておくのもなんだから、別にいいか――。
 などと様々な思考が頭の中を駆け巡っていたが、腕の中で大人しく俺に身を預けている長門の表情を見て、俺は次第に考えるのをやめた――。

 
 

 この後のことについては、特筆すべき事項は何もない。何故かというと、実際「何もなかった」からだ。
 俺は長門を抱き締めただけでそれ以外には何もしていないし、当の長門も俺に何もしてこなかった。
 ベッドに運ぶことも考えたが、そうすると変な気が起きそうだし、結局その場でずっと抱き合っていただけだ。それだけに留まったことをむしろ褒めて欲しいくらいだね。
 後になってから、長門には「……いくじなし」なんて言われちまったが――。

 

 ――だけど、なあ?

 

 あんな幸せそうな寝顔を見せられちまったら、オイタなんてできるわけないだろ?

 
 

 ちなみに、長門が可愛い寝息を立てながら眠っている最中に、寝言で俺の名前を呼んでくれたことは、長門にも言っていない、俺だけの秘密だ。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:55 (2734d)