作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんの悪ふざけ
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-08-22 (水) 02:07:00

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

とっくに残暑って時期は過ぎたのに、
暑さが一向に弱まらないある日の昼休み。
あたしはいつもの様に食堂に向うべく席を立った。

 

「じゃ、あたしはご飯食べてくるから」

 

「ん?あぁ、行ってこい」

 

何よその投げやりな返事は……
ま、あんたらしいといえばあんたらしいけどね。

 

「馬鹿なこと言ってないで早く行った方がいいんじゃないか?
お前の胃袋が鳴り出しちまうぞ?」

 

「うっさいわね〜あんたに心配されなくたってもう行くわよ!」

 

いつも通りの憎まれ口の罵りあい。
でもお互い本心から言ってるわけじゃないよね?
もう付き合いも長いからそれくらい分かるわ……

 

な〜んて、そんなことは口に出すはずもなく、
あたしはさっさと教室を出ようとして……

 

「……ッ!?」

 

「きゃっ!?」

 

ドアを出た瞬間に死角から飛び出てきた人影に軽くぶつかってしまった。

 

もう、こんな所で危ないじゃない。
前方不注意なんじゃないの?
そう文句をつけようとしたあたしは、
ぶつかった相手を見て驚いた。

 

「あら、有希じゃない!?」

 

「……」

 

あたしのエクスクラメーションマークもさほど気にならない感じで、
目の前のSOS団が誇る万能選手は小さく頷いた。

 

「こんな所で何してるのよ?」

 

「……」

 

あたしの質問に手に持ったものを軽く挙げて答える有希。

 

「それ……お弁当?」

 

「そう」

 

「自分の教室で食べないの?」

 

あたしの当然の質問に有希はゆるく首を振った。
でも、それならどこで食べるつもりかしら?
文芸部室?屋上?それとも秘密の隠し部屋でもあるのかしら?

 

そんな風に頭を巡らせているあたしに、
目の前の物静かな女の子は小さく何かを言った。

 

「食堂」

 

「え?」

 

「食堂……行かなくて良いの?」

 

食堂って……あ、そっか、あたしお昼ご飯食べに行こうとしてたんだっけ。
思い出したと同時にお腹から抗議の音が聞こえてくる。

 

「そうね、行ってくるわ。
有希も来ない?」

 

「いい……」

 

まぁ、有希にはあんな騒がしいところより、
防音設備の整った静かな場所のほうが似合ってるわね。
そう思ったあたしはそれ以上誘うこともせずに食堂に向かうことにした。

 
 
 
 

……この時に彼女がどこで食べるか聞いておけば、あんなことにはならなかったかもしれない……

 
 
 
 
 

頼れるSOS団員と立ち話をしていたためか、
あたしが食堂に着いたときには既にいつもより長い列が出来ていた。

 

今から並ぶのはちょっと面倒ね……
かと言って割り込むのもちょっとね〜

 

そんな風に考えていたあたしの耳に、
聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 
 

「おや、涼宮さん。こんな所で出会うなんて奇遇ですね」

 
 

「?あら、古泉君じゃない」

 

列の前の方から声をかけた副団長に、
あたしは手を挙げながら近づいていった。

 

「珍しいわね。いつもお弁当じゃないの?」

 

「たまには食堂の料理も味わって見たいと思いまして。
涼宮さんはもうお食べに?」

 

「残念ながら今来たところよ」

 

いつも古泉君がやってるように手を横にしながらあたしがそう言うと、
役に立ってくれる副団長はこんな提案をした。

 

「それなら僕が涼宮さんの分も買いましょうか?」

 

「……そうね、今から並ぶのも面倒だからお願いするわ」

 

「では、お手数ですがテーブルを確保してもらえますか?
いくら残暑と言ってもまだ暑いですから」

 

「まかせといて!あ、あたしカツカレー大盛りね!!」

 

それだけ言ったあたしは、
早速食事をするための席を探すことにした……

 
 
 
 

「古泉くん!こっちこっち」

 

「お待たせしました。ご注文の品はこれで?」

 

「うん、オッケーよ。じゃあいただきます」

 

「では僕もいただきます」

 

あたしたちはそう言って昼食を摂り始めた。
それにしても古泉君と二人で食事なんて初めてじゃないかしら?
いつもSOS団の皆で行動してるからね……

 

「たまには、こうして一人の団員と食べるのも団長の務めよね」

 

「団員とのコミュニケーションを取る事も大事、というわけですね」

 

「その通りよ!さすが、古泉君!よくわかってるわね!!」

 

「お褒め頂き光栄です」

 

そうね、たまには一人ずつ食堂に呼び出して面談でもしようかしら?
有希はいい子だからあたし達に心配をかけないよう言いたいことも我慢してそうだし、
みくるちゃんはあたしが直々に色々注意しないと悪い人に騙されそうだし、
キョンは……まぁ、あたしがいなきゃダメよね。それに団員が不祥事を起こしたら困るから、
不本意だけどちゃんと監督責任を果たして指導しないと……

 

そうと決まれば早速明日は問題児の指導ね。
いや、明日一日じゃ足りないかもしれないから今週一杯、いえ今月一杯は指導しなきゃ。

 

「でもそんなに食堂に呼び出してしまうと、
彼のご母堂が弁当をお作りになる楽しみを奪ってしまいますよ?」

 

「それもそうね……」

 

確かにキョンのお義母さんがお弁当を作るのを止めさせるなんて
差し出がましいことは出来ないし……

 
 

……あ、そうだ!

 
 

「?どうか、なさいましたか?」

 

「ううん、何でもないわ」

 

食堂で話さなくても、あたしがお弁当を作ればいいじゃない。
別にキョンを食堂に来させるのはいいんだけど、
キョンのお義母さんに迷惑をかけるわけには行かないからね。
それに厳しくするだけじゃ、部下はついてこないのよ!
ほら、え〜と……そう、飴と鞭よね!
指導が終わればあたしの手作りのおかずを少しばかり食べさせてあげれば、
キョンだってもっとあたしのこと……

 

「……本当に、どうかなさいましたか?」

 

「え?あ、あぁ、何でもないわ」

 

「そう、ですか?」

 

あ、でもお弁当のおかずどうしようかしら。
やっぱり団長としては団員に上げるものなんだから、
手を抜くわけにはいかないけれど、何がいいのかしら……

 

そうだ、古泉君にちょっと聞いてみようかしら?

 

「ねぇ、古泉君」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「今食べてるそのお肉なんだけど……
やっぱりキy……男子ってそんなのが好きなの?」

 

危ない危ない……
つい口を滑らせるところだったわ。
まぁ、別にやましくないんだから隠さなくたって……

 

「そうですね……彼はもう少しさっぱりした方が好みではないでしょうか?」

 

「ふ〜ん、意外ね……キョンってもっと味の濃いものが好きそうなのに」

 

「意外と和食などが好きなのでは?」

 

和食、ね……だし巻き卵と胡麻和え、白身魚とかかしら?
それとも肉じゃが……

 

そんな風に明日の献立を考えていた私に、
いつの間にか食事を終えていた副団長が話しかけてきた。

 

「ところで、涼宮さん」

 

「なぁに、古泉君?」

 

今ちょっと手が離せないんだど……
あぁ、親子丼を別のタッパーに入れて持ってきても良いわね。

 

「僕は先ほど『彼は』としか言ってないのですが……」

 

「えぇ、そうね」

 

お味噌汁は……ぬるくなるかしら?
ちょっとくらい冷たくてもいいわよね?

 

そんな風に古泉君の話そっちのけで考え事をしていたあたしに、
有能な副団長は続きを述べた。

 
 

「いつの間にか涼宮さん中ではもう一人の男子団員の話になっているようですね」

 
 

「あ……」

 

いつものニコニコ顔の古泉君の言葉を聞いて、
あたしは一瞬頭の中が真っ白になった。

 

「ち、違うのよ。たまたまあたしの耳には『キョンは』って聞こえたのよ!
きっとこのカツカレーから出る蒸気が古泉君の声を歪めたんだわっ!!
そうよ!きっとそう!!」

 

「そうですか。ではそういうことにしておきましょう」

 

あたしの弁明を悠然と聞いていた古泉君は、
それだけ言って笑顔のまま食器を持って去っていった。

 
 

一人残されたあたしは気恥ずかしさを飲み込むように、
目の前のカツカレーを胃に流し込むことにした……

 
 
 
 

昼食を終え、教室に帰ろうとしたあたしは、
再び廊下で有希と出くわした。

 

「あら、有希……もうお昼食べたの?」

 

「食べた」

 

「ふーん」

 

それだけ話すと有希は自分の教室に入っていった。
でも、有希が来た方向って屋上でも部室でもないわよね……
あたし達の教室?誰かSOS団以外に有希の知り合いいたかしら?阪中?
それともどこか別の……

 

そんな事を考えながらあたしは自分の席に着いた。
あ、そうだ……

 

「ねぇ、キョン」

 

「ん?なんだ?」

 

「あんた明日もお弁当でしょ?」

 

「あぁ、そのつもりだが」

 

じゃあ、明日から早速団長直々の指導開始ね!
っと、大事なことを忘れてたわ……

 

「あんた好きな食べ物とかある?」

 

「はぁ?何だいきなり」

 

「いいから!団員の嗜好を知るのは団長の責務でしょ!!」

 

「ったく……そうだな、肉も好きだが……結構和食もいいな」

 

う〜ん、あまり参考にならないわね。
そういえばキョンって義妹ちゃんと違って好き嫌いないんだっけ?

 

「飲み物なら断然朝比奈さんが煎れてくれたお茶だn痛ぇっ!?」

 

でも可愛い彼女の手作りって、どんなものでも美味しいって言うわよね。
べ、別に彼女じゃないけど、団長の手作りならまずいはずがないわ!

 

「おい、何でいきなり蹴るんだよ!」

 

そうと決まれば今日はSOS団の活動はお休みにして、
早速家でお弁当作りだわ!!

 

「そういうわけで、今日はSOS団は休みね!」

 

「……一体、何が『そういうわけ』なんだ?
あと、何で俺が脛を蹴られないといけないんだ?」

 

「ほら、もう授業始まるわよ。
さっさと前向きなさい」

 

「ったく……」

 

明日が楽しみね……
あはは。

 
 
 
 

とっくに残暑って時期は過ぎたのに、
暑さが一向に弱まらないある日の放課後。
俺はのんびりと通学路である坂道を下っていた。

 

理由はよく分からんが、
ハルヒが今日の活動は無しだと言ったので、
俺は喜んで家路についているわけだ。

 
 

「どうかした?」

 
 

俺の喜色満面の様子を不審がったのか、
傍らから蝶の羽音の様な声が聞こえてきた。

 

「ん、いや、別に……久しぶりに早く帰れてちょっと嬉しくなっただけだ」

 

「そう」

 

何となく嬉しいってのはどうなんだ、などと自分の発言を反芻していた俺の耳に、
またもや可憐な声が響く。

 

「今日は助かった」

 

「ん?助かった?何がだ?」

 

「昼休みのこと……」

 

「あぁ、あれか……」

 

突然の感謝の言葉に驚いた俺は、
長門が指摘した昼休みのことを思い出していた……

 
 
 
 

いつもの様にハルヒが食堂に向うところを見送った俺は、
さっそく母親が作った弁当を持って谷口と国木田の元に行こうとした。
たまには谷口の与太話以外のBGMを聞いて飯を食いたいもんだな、
と思いながら席を立った俺の耳にさっき聞いたばかりの声がした。

 

『きゃっ!?』

 

音のした方を向くと、なにやらハルヒが誰かと話をしているようだ。
さっきの悲鳴は……大方ハルヒが今話してる人物とぶつかりでもしたんだろう。
そそっかしい奴だからな。

 

だが、ハルヒがぶつかった相手に文句を言わないなんて、
あいつも成長したもんだな……などと少し驚いていた俺は、
その迷惑娘と接触事故を起こした相手を見て納得した。

 

「あれ、長門じゃねーか」

 

なるほど、相手が大事なSOS団員、それも静寂担当の長門なら、
ハルヒが文句を言わないのも納得できる。
むしろ今度は長門が誰かとぶつかるなんて方に驚きを隠せないな。

 

そんな風に俺が考えている内に、
二言三言話したハルヒは食堂へ走っていった。
いつも思うが、あいつは小学生のときに『廊下を走るな』と成績表に書かれなかったのか?
だれか注意してやってくれてもいいだろうに……そもそもツッコミ役が一人ってのは……

 

「話がある」

 

「おわ!?」

 

突然背後から声をかけられた俺は盛大に驚いた。

 

「な、長門?お前今そこに……」

 

いない!?
一体いつの間に移動したんだ!?
まさか宇宙的な力を……

 

「単にあなたが考え事をしていて気付かなかっただけ」

 

「いや、それならそれで何で俺の背後に立ってるんだ?」

 

「男性の背後に静かにたたずむのがよい女性だと以前読んだ本に書いてあった」

 

古い!古すぎるぞ長門!!
そんな活版印刷があったかどうか疑わしい時代の思想を語らないでくれ。
今の時代、気配もなしに背後に立たれて喜ぶ男は稀だ。希少価値だ。

 

「そう」

 

「ところで、話って何だ?
ここで出来る類のものか?」

 

これで長門が『ちょっとこちらで情報空間を作りますので、
そこまでご足労いただけないでしょうか?』なんて言い出したら、
俺は全力で拒否したいところだが、
目の前の無口少女は俺の予想をいい意味で裏切ってくれた。

 

「大丈夫、ここでできる。
だから話は……」

 

「話は?」

 

俺がオウム返しにそう聞くと、
長門は片手に持っていた物を軽く挙げ、
いつもの冬に舞う新雪の様な声でこう言った。

 
 

「お弁当を食べながら」

 
 
 
 

長門の提案を無碍にするはずもなく、
俺は普段とは違って自分の席で弁当を拡げた。
ちなみに長門はハルヒの席に横がけに座り、
普段のこいつの食事量から見ればかなり小さい弁当は俺の机の半分を占拠して広げている。

 

ついでに言っておくと、
長門の提案に対し、俺は本当にすんなりと承諾した。
セリフだけで言うとこんな感じだ。

 
 

「弁当を食いながら話そうってことか?」

 

「お、なんだキョン?いつの間に長門有希とそんな関係に……」

 

「そう……ダメ?」

 

「いや、別に構わないぞ(そういうことだから谷口と食っていてくれ、国木田よ)」

 

「あはは(いいよ、谷口は僕が黙らせておくから)」

 

「くそ〜抜け駆けか!?抜け駆けするつもりなのか!?」

 

「じゃあ、向こうで……お前はハルヒの席に座ってくれるか?(国木田、恩に着るぜ)」

 

「わかった」

 

「そんなことは許さんぞ!この谷口さmがはぁっ!?」

 

「あれ、一体どうしたんだい谷口?
急にお弁当に顔をつっ込むなんて……(何かは知らないけど頑張りなよ、キョン)」

 
 

な?本当にすんなり事が進んだだろ?

 
 
 
 

「で、話って何だ?」

 

弁当の中身が3分の1ほど無くなった所で、
俺は先ほど目の前の無口少女が言っていたことを尋ねてみた。
本当は食べながら話をするのはマナー違反だが、
既に弁当箱を空にしている腹ペコさんの視線を浴びながら、
無言で飯を食う度胸は俺にはない。

 

そんな思惑から、できればのんびりと他愛ない話をしてくれれば嬉しかったのだが、
長門は単刀直入に話を切り出した。

 

「頼みたいことがある」

 

「頼みたいこと?」

 

何だ?まさかこの世界がまた誰かが改変したもので、
どうにかして元の世界に戻せとか言うんじゃないだろうな?
もちろんお前に頼られるのは定期テストが1週間延期するより嬉しいが、
この万能宇宙人が助けを求める状況ともなると、果たして俺如きに何が出来るのだろうか。

 

そんなことを不安に思う俺に、
目の前で物足りなさそうに俺の弁当箱を見ていた長門は、
心配無用とばかりに俺の目を見てこう言った。

 
 

「明日は一緒に部室で昼食を食べて欲しい」

 
 

明日『は』?あぁ、今日は教室だもんな。
で、部室ってのは文芸部室兼SOS団室のことだな?

 

「そう」

 

「明日か……(というわけだ。悪いが明日も谷口を頼むぞ、国木田)」

 

「……(別にいいよ。長門さんの頼みなら聞いてあげればいいんじゃないかな?)」

 

「おい、国木田お前さっきからキョンと何をアイコンタkぐぉふぉ!?」

 

「わかった。たまには別の場所で食ってみたいと思ってたところだしな。
ありがたく部室を使わせてもらうよ」

 

「……」

 

俺の返答に小さく頷いた長門は、
名残惜しそうに俺の弁当を見たあと静かに自分の教室に帰っていった……

 
 
 
 

「それにしても明日の昼時をSOS団室、もとい文芸部室で過ごせ、ってのは何か理由があるのか?」

 

「ある」

 

即答だな、おい……
できれば理由を聞かせてもらいたいんだがな。

 

「それは……秘密」

 

「そんなに、やばい事なのか?」

 

「大丈夫、私も同室する」

 

微妙に答えになってないような気がするが……
まぁ、この超有能アンドロイドが一緒にいるなら、
それこそ地球滅亡クラスの危機でも何とかなりそうだ。

 

それに本当にヤバイことなら、
きっと包み隠さずに教えてくれるだろう。
『秘密』ってのはハルヒか誰かに『そう言え』って言われてるんだろう。

 

そんなことを思いながら、
俺は長門と二人で坂道を降りることにした……

 
 
 

……後にこの判断は間違っていたと俺は知る……

 
 
 
 
 

さて……明日のお弁当作りのための材料は買ってきたけど……
メニューはどうしようかしら?
それにちょっと買いすぎちゃったかも。
スーパーで5千円も買い物したの始めてだわ。

 

でも、本当に何を作るべきかしら?
まずはこの小松菜とゴマで……

 
 

〜♪〜〜♪〜〜〜♪

 
 

電話?
今から大事な作業をするってのに、
タイミング悪いわね。

 

「もしもし?」

 

『あ?もしもしぃ〜涼宮さん?あたしです〜』

 

あら、みくるちゃんじゃない?
一体何の用かしら?

 

『えっと、さっき涼宮さんスーパーで買い物しませんでした?』

 

「え?したけど……どうしてそれをみくるちゃんが知ってるの?」

 

『実はあたしもお買い物してたんです〜』

 

うそ!?全然気付かなかった……
少し驚いたあたしを気にせず、みくるちゃんは話を続けた。

 

『それで、涼宮さんがレジを通った後に、
店員さんが「さっきの人の忘れ物だ」って……
白味噌のパック忘れませんでした?』

 

「白味噌?」

 

みくるちゃんの言葉を聞き、
あたしは財布からレシートを取り出した。

 

「白味噌、白味噌……あ、これね。
あれ?袋に……入って、ない?」

 

『あっ、やっぱり〜』

 

「それなら、早く取りに行かないと!」

 

急いで出かける仕度をし直すあたしを、
みくるちゃんは電話口で制した。

 

『大丈夫ですよ、わたし預かっておいたんです。
今から届けに行きますね〜』

 

あぁ、さすがよ、みくるちゃん!!
それでこそSOS団のメイドよ!!

 

『それにしても涼宮さん……』

 

「ん?なぁに、みくるちゃん?」

 

『たくさんお買い物してましたけど……何か作るんですか?』

 

「え、あ、あぁ、ちょっと和風弁当でも作ろうかな、って」

 

別にやましいことは一つも無いんだけど、
何となく後ろめたい気分になったあたしのことなどつゆ知らず、
みくるちゃんは話を続けた。

 
 

『和風のお弁当ですか〜お茶が合いそうですね』

 
 

お茶が合うって……本当にあたし達のメイドさんはお茶好きね。
……でも、待ってよ?そういえばお弁当食べてる連中って、
飲み物持参してるわよね……

 

「ねぇ、みくるちゃん?」

 

『?何ですかぁ?』

 

「その、お茶なんだけど……和風の食べ物によく合うお茶って無い?」

 

キョンはいつもみくるちゃんの煎れてくれたお茶をおいしそうに飲んでるけど、
あたしだって美味しいお茶をキョンに……

 

そんな私の空想をみくるちゃんのかわゆい声が邪魔をした。

 

『和食によく合うお茶、ですか?いくつかありますけど……
どんなのがいいですか?』

 

「え、そそうね……キy……じゃない、男が好きそうなの」

 

『男の人、ですか?』

 

「そうよ!ほら、あたしって上品なお茶よりそういうお茶のほうが好きだから」

 

『そうなんですか〜』

 

ふぅ、何とか誤魔化せたかしら?
危ないところだったわ。

 

『そうですね、やっぱりまだ暑いから、
冷めても美味しく飲めるお茶がいいと思います』

 

「それもそうね」

 

『あと、キョン君のお弁当につけるなら、
甘みを抑えて少し苦味がある物の方がいいかもしれませんね』

 

「そ、そうなの?」

 

やっぱり毎日お茶を煎れるみくるちゃんには、
茶葉の味の違いとか分かるのかしら?
もしかして色の違いもバッチリ?

 

『あたし、丁度そんなお茶持ってるから、
よかったら涼宮さんに分けてあげますよ?』

 

「え?いいの?」

 

『どうせ、涼宮さんの忘れ物を届けに行こうと思ってましたし。
あ、ちゃんと煎れ方もお教えしますね』

 

「あ、ありがと……」

 

もう、ほんとにみくるちゃんたらいい子なんだから……
そんな風に少し涙が出そうなくらい感動していたあたしを、
次のみくるちゃんの一言が一瞬で石化させた。

 
 

『ふふ、やっぱりキョン君にお弁当作ってるんですね』

 
 

「え!?な、何を言ってるのよみくるちゃん!?」

 

『とぼけても無駄です。
さっき自白したようなものですよ?』

 

そういえば、さっき何か言ってたような……
まさか、みくるちゃんに謀られた!?

 

『安心してください、ちゃんと秘密にしておきますし、
忘れ物もお茶もちゃんと届けますから、うふ』

 

呆然とするあたしに対し、みくるちゃんは、
にこやかな様子でそう言って電話を切った。

 
 
 

15分後、届け物を持ってきたみくるちゃんの顔が、
気恥ずかしさ100%のあたしの魔の手にかかり、
両頬を引っ張られる憂き目に会ったのは別の話。

 
 
 
 
 

長門からよく分からない頼み事をされた翌日。
午前中の授業を右耳から左耳に受け流す作業を終えた俺は、
さっそくあの無口文学少女の願いをかなえるべく、仕度をしはじめた。

 

「あ、お箸忘れちゃった……」

 

そんな俺の背後で間抜けなことを抜かすマイペース娘。
というか弁当の箸を忘れるなんて……
そんなバカは谷口くらいだぞ?

 

まぁ、あいつは箸がカバンの中にあるのに箸がないと言い出し、
あげく昼休み全部使っても見つけられず昼食を抜いたりするわけだが。

 

「食堂の箸を借りてくればいいじゃねーか」

 

「うぅ、この際仕方ないわね!
ちょっと取ってくるわ!」

 

そう言って勢いよく席を立つハルヒ。
しかし、その勢いのまま教室を出ずに、
昼飯を食うべく席を移動しようとしていた俺の友人に長い人差し指を突きつけこう言った。

 
 

「国木田!今日はキョンとお弁当食べちゃダメよ!!」

 
 

「なんだってお前にそんなこtげぇはぁ!?」

 

「はは、わかってるよ涼宮さん。あれ?谷口どうしたの?」

 

……やはり、昨日の『長門のお願い』はお前プロデュースなのか。
心配せずとも長門が協力してるんだから、
ちゃんと文芸部室に行くよ。

 

既に教室を後にした団長様の見えぬ姿に、
俺は心の中でそう呟いた。

 
 
 
 
 

もう!こんな時に限って箸を忘れるなんてミスするなんて……
だからお弁当って面倒なのよ。
ホントにもう……

 

でも、もう箸は取ってきたし、
これでキョンと二人でお弁当……
急がないと!つまらない事でタイムロスしたんだから1分1秒でも惜しいわ!

 

そう思いながら、それでも期待に胸を一杯にしたあたしは、
短距離走の様な勢いで教室に向かい、そしてドアを開いた。
そう、キョンの呆れたような顔がそこには……

 
 

「お待たせ、キョ……」

 
 

でも、そこには、なにも、なかった……

 
 
 
 
 

長門の指定どおり、そしておそらくハルヒの計画通りに、
俺は昼休みの文芸部室という名のSOS団室に来た。
普段ならノックのひとつやふたつはするが、
今日は中にノックをしなければならない状況は広がっていないことは自明であるので、
普通に挨拶をしながらドアを開けることにした。

 

「よぉ、長門……来たぞ」

 

「待ってた」

 

「そうか、待たせてスマンな」

 

「そんなに長く待っていたわけではない。
それに呼んだのは私。待って当然」

 

相変わらず正論を坦々と言ってくれるが、
これがハルヒの何かしらの考えの元で行われているなら、
長門を待たせたのはやはり忍びない。

 

「とりあえずここで飯を食えばいいんだよな」

 

そう言っていつもの定位置である、
長門の対面の席に座ろうとした俺を、
珍しく本を読んでいない文学少女が制止した。

 

「こっち……」

 

「こっち?」

 

一体どこに座れというんだ?
頭上に縦列にはてなマークを並べる俺に、
長門は手招きすると自分の横にある椅子を指差した。

 

「え〜と、横に座れ、ってことか?」

 

「そう」

 

それはさすがに少し気恥ずかしいのだが……
まぁ、毒を食らわば皿までとも言うし、
こうなりゃお気の召すまで言うことを聞いてやるか。

 

「わかった、ありがたく座らせてもらうよ」

 

「……」

 

俺の言葉に、
長門はいつものように自然に頷いた……

 
 
 
 
 

「あ、れ……?」

 

教室に着いたあたしは予期せぬ光景に凍りついた。

 

「キョ、ン?」

 

キョンがいない。
さっきまでいつもの席に座ってたのに……

 

今は教室のどこにも、いない。

 

呆然とするあたしに、
どこからか声が聞こえてきた。

 

「どうかした、涼宮さん?」

 

この声……国木田?

 

「ねぇ、キョンはどこに行ったの?」

 

「え?キョンなら……あれ?涼宮さんが何か計画してたんじゃないのかい?」

 

計画?何のこと?
確かにあたしはキョンの指導をしてあげようと思ってたけど、
それならキョンはここにいるはずよ?

 

「じゃあ、昨日のあれは……まさかホントにそういうこと……」

 

「そういうこと?どういうことよ?」

 

「いや、何でもないよ。
キョンならその内帰ってくるんじゃないかな?」

 

「ねぇ、あんた何か知ってるんじゃないの?
キョンはどこ?教えなさいよ!!」

 

「だ、だから知らないって!」

 

「嘘!キョンがどこか行くならあんたに一声くらいかけていくでしょ!!」

 

その時、詰問していたあたしの横から、
別の声が聞こえてきた。

 
 

「うるせーなー、キョンならさっき文芸部室に行ったよ」

 
 

「文芸部室?」

 

「谷口!!」

 

「昨日お前のお仲間の長門と弁当食ってるときに約束してたんだよ。
明日は文芸部室で昼飯どうですか〜ってんぎゃぁ!?」

 

「妄言はそこまでにしといたほうがいいよ、谷口。
涼宮さんも今のは谷口流のジョークだと……」

 

国木田が何か言っていたけど、
あたしの耳にはまったく入ってこなかった。

 

文芸部室?SOS団室のことよね?
でもなんで?どうしてキョンがそこに?
それに昨日有希がキョンとお弁当を?
今日も?どうして?なんで?一体何を……

 

気付けばあたしは手作りのお弁当と、
折れた割り箸を握り締めて走り出していた……

 
 
 
 

「あちゃ〜さすがにキョンも年貢の納め時、いや、命の終わり時かな」

 

「なんだ?キョンがどうかしたのか?」

 

「僕、谷口はもうちょっと空気を読んだ方がいいと思うよ……」

 
 
 
 

SOS団が誇るサイレントガールと並んで食事をしていた俺は、
ある程度弁当の中身が減ったところで長門に質問してみた。

 

「なぁ、長門」

 

「なに?」

 

「一体何が目的なんだ?」

 

自分でもどうかと思うくらいストレートな質問に、
長門は箸を動かすのを止め、こう答えた。

 
 

「あなたと二人きりでご飯が食べたかった」

 
 

「え?」

 

まっすぐに見つめられて言われたその言葉に、
俺は一瞬我を忘れて呆然となった。
これが誰かの入れ知恵による隙を見せるための作戦なら褒めてやる。
その後一発ぶん殴るけどな。

 

「あなたとこうして二人並んで食事がしたかった」

 

「それならいくらでも……」

 

狼狽しながら答える俺に対し、
長門は更なる追撃をしてきた……

 
 

  ふわっ

 
 

  ぎゅ……

 
 

「な、ながと!?」

 

突然の出来事に俺の脳が考えることをやめそうになる。
なんだ?長門は何をやっている?
両手をゆっくり広げてそのまま俺の方に……抱きついた!?

 

パニックに陥る俺の耳元で、
いつもは無口な文学少女が静かにこう囁いた……

 
 
 

「こうしてあなたと二人きりでいたかった……」

 
 
 

その言葉を聞いて、本能のままに背中に両腕を回し、
小さな体を抱えようとした俺の背後で……

 
 

けたたましくドアを開ける音と、
別の少女の声が聞こえてきた……

 
 
 

「何やってるのよ!!」

 
 
 

その言葉を聞いた時、
俺はまず誰がそれを発したか考えた。
もちろんその答えはすぐに見つかった。何たって毎日聞いてるからな。
そう、現れたのは涼宮ハルヒその人だ。

 

そしてその答えにたどり着いた俺は、
次に今の自分の心境をまとめることにした。
驚き?あぁ、それもあるだろう。
焦り?そうだな、間違ってはいない。

 

ただ、それ以上に俺が感じたのは、他でもない『怒り』だった。

 

長門に訳の分からん演劇をやらせたあげく、
いきなり現れてそんなセリフを吐くような奴だとは思わなかった。
むしろそのセリフは俺が言いたいくらいだ。

 

そう思った俺は、一度長門を席に座らせて、
バカな娘を怒鳴りつけてやろうと勢いよく振り返った。

 
 

だが、怒鳴るよりも先に、
俺は目の前の光景を見て心の底から困惑した。

 
 
 

そこには顔を赤くして大粒の涙を流しながら睨みつけるハルヒが立っていた……

 
 
 

何だ?一体何がどうなっている!?
これはハルヒの悪巧みじゃなかったのか!?
混乱の極みに達しようとする俺に対し、
ハルヒはむせびながら声を出した。

 

「なに、やって、ズッ、んのって、聞いて、ズズッ、のよ!」

 

状況がまったく把握できない俺の代わりに、
背後から坦々とした声で返事が聞こえる。

 

「二人で昼食を摂っていた」

 

「嘘!抱き合ってたじゃない!!」

 

「あれは抱き合っていたのではない。
私が彼に抱きついただけ……何か問題があるの?」

 

「あるわよ!あるに決まってるわ!!」

 

あくまで淡々と正論を述べる長門に対し、
感情をむき出しにしたハルヒが食ってかかる。

 

まるで互いに射殺さんばかりの視線を交錯させてる様子を見て、
俺はとっさに二人の間に入った。

 

「おい、落ち着けハルヒ!!」

 

「あんたは黙ってなさい!!」

 

そう言われて、はいそうですかと黙るわけにはいかん。
俺はハルヒの肩をつかんで落ち着かせようとした。

 

「大体なんでここに来たんだ?」

 

「谷口が、あんたなら文芸部室だ、って……教えて、くれたの!」

 

谷口か……あいつの空気の読まなさっぷりを考えれば間違ってはなさそうだ。
って、俺が聞きたいのはそんなことじゃない。

 

「俺の場所なんて聞いてどうするつもりだったんだ?
何か用でもあったのか?」

 

「なによ!用がないのに探すわけないじゃない!!」

 

ハルヒはそう叫ぶと、今度は下を向いて、
足元に落ちる水滴とともにぽつぽつと何かを話し出した。

 

「なによなによ……せっかく昨日からがんばって用意したのにっ……
みくるちゃんにも、ズズッ、お茶、教えてもらって、煎れてきたのに……
なのに、なのになんで……なんで有希と食べてるのよ……」

 

「ハルヒ……」

 

「あ、あたしだって……グスッ……あたしだって、キョンとお弁当……
食べたかった、のに……一生懸命、作ったのに……なんで……」

 

そこで俺は初めてハルヒの手に持ったものに気付いた。
少し小さな包み……
思えば、普段食堂のこいつが、『箸がない』と言った時点で、
俺はいつもと違うことに気付いてやるべきだったのかもしれない。

 

だが、そんな後悔など何の役にも立たず、
かけるべき言葉も見つからないまま俺は嗚咽するハルヒの言葉を聞いていた。

 
 

「あたし、だって……二人きりで……ご飯、食べたいのに」

 
 

「あたしも、キョン、と二人きり、一緒、いたいのに……」

 
 

「あたしだって、キョンのこと……」

 
 

それくらいもっと早く叶えてやればよかった、と思いながら、
俺はハルヒの泣き声を聞いていた。

 
 

何を言えば良いか分からない。
けど、何かしたい、してやりたい。

 

そう思った俺はそっとハルヒに手を差し伸べようとした……

 
 
 

……カタン……

 
 
 

最初、俺は世界の崩壊が起こった音だと思った。
突然背後から聞こえてきたその音に対し、
もはや俺はそんなことを考えてしまうくらい落ち込んでいたからだ。

 

だが、その次に聞こえてきた物は、
先ほどまで俺を支配していた混乱を、
呼び戻してくれた。

 
 

『ひゃっ、すすすすみません〜』

 
 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

上から順に、それぞれ目を赤くしたまま呆然と見上げるハルヒ、
再臨した混乱に支配された俺、
そしておそらく音源である掃除用具入れのロッカーを睨む長門の三点リーダだ。

 

そんな突如変わった場の空気をものともせず、
その声は呑気にこんな事を言い出した。

 

『あ、あ、静かにしておかないと……シィー』

 

俺以上に混乱しているであろうハルヒと目を合わせてから、
俺は静かにロッカーに近寄っていく。

 

どうやら誰も止めないようなので、
ぎりぎりまで近づいた俺は一気に開けはなち、
そして、中にいたものに対してこう言った……

 
 

「……何やってるんですか?」

 
 

勢いよく開けたロッカーの中で、
いつものメイド服を身にまとった未来人が、
申し訳なさそうな顔で俺の質問に答えた。

 
 

「あ、え、えぇと……キョン君、こんにちは……」

 
 
 
 
 
 

「全部説明してもらおうかしら、みくるちゃん?」

 

すっかり元通り元気になったハルヒは、
まるで照れ隠しといわんばかりに鬼気迫る表情でメイドさんを詰問していた。

 

「ひ、ひぇ〜」

 

「おい、ハルヒ、朝比奈さんが怯えてるじゃないか」

 

「あんな所でコソコソ何をやってたのかしらぁ?」

 

「あわわわ〜」

 

そんなまるで齧り付かんばかりのハルヒの様子を見て、
とにかく落ち着かせないと朝比奈さんの身が、
色んな意味で危ないと思い始めた俺の背後から、
予想外の答えが返ってきた。

 
 
 

「ドッキリ」

 
 
 

「は!?」

 

「え!?」

 

突然の長門の発言に、
意味が分からず俺達はただ呆気にとられた。
そんな二人の事など気にせず、
目の前の無口な宇宙人は話を続ける。

 

「あなたたちはお互い素直じゃない。
だから一計を案じさせてもらった」

 

「一計?いや、その前に素直じゃないって……」

 

「たまには、怒ったり本音を言い合うべき」

 

「そ、それはそうかもしれないけど……」

 

戸惑いながらそう言うハルヒに、
長門は事務的な口調で喋り続ける。

 

「だから、古泉一樹、朝比奈みくると共に今回のドッキリを考えた」

 

その言葉にハルヒが『そういえば二人となんか誘導されてるような会話したわ』と思い出す。

 

「発案者は古泉か?」

 

「違う、私」

 

はっきりと断言する長門。
たしかに長門の行動は自然な感じだったし、
古泉がここまでハルヒを刺激するようなことをするとは思えん。
ちなみに我らが副団長は朝比奈さん曰く『バイト中』だそうだ。

 

そんなことを考える俺と、まだ顔の赤いハルヒに対し、
長門は今度は少しだけ申し訳なさそうに言った。

 
 
 

「ただ、少し悪ふざけが過ぎた……ごめんなさい」

 
 
 

そんな儚げな謝罪に対し、
おそらく今回のメインターゲットであるハルヒは、
満面の笑みでこう答えた。

 
 

「あたしのためにやってくれたんでしょ?
なら謝る必要なんてないわ。むしろこっちがお礼を言いたいくらい。
ありがと、有希」

 
 

奇遇だな、もう一人のターゲットであろう俺も、
まったく同じ気持ちだよ……

 

ハルヒに抱きつかれて戸惑う長門と朝比奈さんの様子を見て、
俺はそんなことを考えていた……

 
 
 
 

P.S.

 

「それにしても演技とはいえ、有希もよくあんな思い切ったことしたわね」

 

あぁ、あれはさすがに俺も驚いたぞ。
危うく理性が崩壊するところだった。

 

そんなことを考える俺に対し、
長門ははっきりとこう答えた。

 

「あれは演技ではない」

 

「え?」

 

「は?」

 

突然の発言に驚く俺達に、
目の前の無口美少女は更にとんでもないことをしでかした……

 
 

「もう一度……」

 
 

そう言うと長門は静かに俺の体に抱きついてきた……

 
 

俺の右頬が真っ赤に腫れ腫れ不快になったのは、また数分後の話……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:55 (2625d)