作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと孫の手
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-07-04 (水) 20:07:16

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

カレンダーを1枚めくり梅雨の季節とはおさらばしたはずなのに、
何故か太陽がストライキをしているかのように雨の日が続いた初夏のある日。
俺はもはや日課と化したSOS団でのボードゲームに興じながら、
人知れず朝から俺を悩ます敵と戦っていた。

 

「……どうかしましたか?」

 

目の前のニヤケ面が少し奇妙な面持ちで尋ねてくる。
どうでもいいが、そこに駒を置くというのは俺に王の身柄を献上するという意思表示か?

 

「なんのことだ?」

 

「いえ、先ほどからゴソゴソとしていらっしゃるようですから」

 

「ん、あぁ、すまんな。ちょっと背中が痒くてな……」

 

そう言って俺は背中を椅子の背もたれにこすり付ける。
……あまり効果は無いようだが、何もしないと痒みで頭がおかしくなりそうだ。

 

「蚊に刺されでもしたのですか?」

 

「そうみたいだな。いつやられたのかは分からんが……」

 

それにしても背中のど真ん中を狙うなんて大胆にも程があるだろう。
やはり寝巻きから制服に着替える時に、
暑いからと言って上半身を露わにした状態で過ごしたのが間違いだったのだろうか。

 

「手で掻けばよろしいのでは?」

 

「生憎俺はそこまで体が柔らかくない」

 

むしろ硬い方だな。
宝石で言えばダイアモンド並だろう。

 

「それはそれは……」

 

苦笑しながら駒を並べる古泉。
この短いやり取りの間に負けたというのに、
お前はまだ無謀な戦いを挑むつもりなのか。

 

背中の痒みにイラつきながら、
盤上に駒が配置される様子を眺めていると、
不意に背後から柔らかい声が聞こえてきた。

 

「あのぅ……」

 

「何ですか?朝比奈さん」

 

若干顔を赤らめながら、
愛しのエンジェル兼可憐なメイドさんは話を続ける。

 

「何なら、わたしが……その、掻いてあげましょうか?」

 

「そ、それは……」

 

ありがたい申し出どころか、
土下座をして腹を切ってでも受けたいサービスではありますが……
もしその行為を行っているときに、
現在鋭意掃除当番中の団長様が部屋に入ってきたらと思うと……
やはり命は惜しいです。

 

「折角の申し出ですが、朝比奈さんの御手を拝借するのは忍びないですよ」

 

「そ、そうですか?」

 

何故か微妙にがっかりしたような、でもほっとしたような表情で、
朝比奈さんは俺の断りを受け止める。
あぁ、この笑顔が拝めるなら、俺の体液を盗んでいった虫にも感謝が出来そうだ。

 

そう思っていると、
今度は別の方向から静かな声が聞こえてきた。

 
 

「それなら私が掻く……」

 
 

「な、長門?」

 

いつの間にか読んでいたはずの本を閉じ、
こちらを見つめる無口少女の言葉に俺は思い切り動揺した。

 

「患部の位置を把握するため、あなたには上半身裸に……」

 

「だぁー!ちょっと待ってくれ!」

 

いきなり実力行使に出ようとする長門を、
俺は全力で引きとめる。

 

「大丈夫。爪の長さを変え効果的に刺激を与えるようにする」

 

ちょっと、長門さん?
何ですかそのクリーチャーな指先は。
そんなもので掻かれたら俺の背中は真っ赤な肉塊になってしまいますよ?

 

「それならば直接ナノマシンを注入して……」

 

「余計にダメだ」

 

そんないじけるような表情をしたってダメな物はダメです。
こら、爪をカチカチ言わせるんじゃない。
怖いとか言うレベルじゃねーぞ。
こらこら、古泉で切れ味を試そうとするんじゃない!
試すなら朝比奈さんの衣服……なんでもない。

 

「しかし、僕としましても集中力の欠けたあなたと勝負するのは、
忍びないのですが……」

 

何で負けっぱなしのお前がそのセリフを言うんだ?
普通それは実力の拮抗した者が言うべきものだと思うぞ。

 

「だが、そうだな……孫の手があればいいんだがな……」

 

もしかしたらハルヒの机の中にあるかも知れんが……
勝手にあさっているのがバレたら後でどんな目に遭うかわからん。
やはり自分の命は惜しいしな。

 

だが、代用品がこの部屋にあるとは思え……そうだ!

 

唐突にいいことを閃いた俺は、
読書を始めようと本を持った少女に尋ねてみた。

 
 
 

「なぁ、長門。『孫の手』が欲しいんだが何とかならないか?」

 
 
 

そして次の瞬間、俺はありえない現象を目にすることとなった。

 
 

バサッ……

 
 

「……」

 

「な、長門?」

 

突然持っていた本を落とし、
限界まで見開いた目をこちらに向けた文学少女に、
俺は心の底から驚いた。

 

「まご……?」

 

「あ、あぁ……孫の手、だが……」

 

俺の言葉に微妙にキョドキョドしだす長門。
何だ?宇宙には蚊がいないから孫の手も無いのか?
羨ましい限りだな。

 

「そ、それは……まだ無理」

 

「は?」

 

いきなりの断言に俺は驚いたような呆気にとられたような表情で、
その表情を表せるような声を出した。

 

「孫はまだ……もう少し待って欲しい。でも……」

 

「いや、長門……一体何を」

 

なにやらもじもじと余りに意味の分からない言葉を綴る長門に、
俺の頭脳は世界恐慌並の混乱状態に陥った。

 

だが、そんな普段はもの静かな少女の次の言葉で、
俺の頭は完全に思考を停止した……

 
 
 

「子供なら……今から作れる……」

 
 
 

P.S.

 
 

顔に朱を染めた長門に、
『孫の手』は背中を掻くための道具だと説明するより先に、
俺の意識が遠のいていった話はまた後日……

 
 

「随分おもしろそうな話してるわねぇ〜、キョン?」

 
 

ちょ、ハルヒ、そこは延髄ど真んなk……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:50 (2704d)