作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんとベッド
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-06-05 (火) 21:12:08

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

昔の偉い人が『春眠なんとやら』と言ったように、
春真っ盛りの朝の睡魔は、1年を通して最も強くなっているようだ。
この強敵と戦うくらいならそこら辺に落ちてる棒切れを持って、
重さ数tの人造人間に立ち向かう方がまだマシだな。

 

「キョンく〜ん、あ〜さ〜だ〜よ〜」

 

「ふがぁ?」

 

しかも今俺がその身を包んでいる布団は、
お袋がバーゲンで買った安物ながら、昨日の天日干しにより、
無類の心地よさを提供している。

 

「ほ〜ら〜、おきて〜」

 

「ふが……」

 

そんな最高の環境で最高の気分を味わう俺の邪魔は、
例え血を分けた可愛い妹であってもだな……

 

「どこのびっちとねてるつもりだ?さっさとおきろ、このどうてい!!」

 

「!?」

 

「あ、きょんくんやっとおきた〜?おはよ〜」

 

今物凄い勢いで罵られたような気がしたんだが……

 

「え〜?きょんくんのきのせいじゃない?
それともへんなゆめでもみてたの?」

 

「そ、そうだよな……夢でも見てたのかもしれん」

 

何だか釈然としなかったが、
刻一刻と家を発つ時間が近づいているため、
俺は四角い天国から起き上がり朝の仕度をすることにした……

 
 
 
 

そして学校に行った俺は昼夜を問わずステータス異常にしようとする強敵と闘いながら、
授業という拘束時間を乗り切った。
途中何度も上瞼と下瞼がくっついて離れなかった気がするが……

 

しかし放課後になったというのに、
まだ俺の頭の周りには眠気がダース単位でまとわりついている。
正直このままでは帰宅途中に横になってしまいそうだ。
さすがに暖かくなったとはいえ、路上で寝る気にはなれない。

 

……仕方ない。
ハルヒも掃除当番で遅れるようだし、
先に団室に行ってしばし夢の世界に旅発つことにしよう……

 
 
 

眠気眼で団室にたどり着いた俺は、
いつものようにドアをノックした。
ぼんやりしててもこういうことは忘れない辺り、
物覚えはいいのかもしれない。
残念ながらそのスキルが勉学に使われることはなさそうだが。

 

「……」

 

ふむ……この『返事』から察するに、
まだ今日は一人しか来ていないようだ。

 

「よぉ、長門だけか……」

 

そういいながらドアを開けた俺に対して、
長門は持っていた本から顔を上げ、
俺の方を見て小さく頷いてまた読書を始めだした。

 

その様子を見た俺は、
邪魔をしないように机に鞄を載せ、
いつもの席に座った。

 

「ふぅ……」

 

「どうしたの?」

 

ついこぼした吐息に、
長門が少し怪訝な声で尋ねてきた。

 

「ん、あぁ……実はちょっと眠くてな。
できればココでハルヒが来るまで寝ていたいんだが……いいか?」

 

「いい……」

 

「サンキュ、助かる」

 

そう答えて、机の上に置いた鞄を枕に、
夢の国に旅立とうとした俺に長門が声をかける。

 

「こっち」

 

「へ?」

 

「来て」

 

何だ一体……
半分あちらの世界に行きかけている思考を何とか呼び戻し、
俺は長門の呼びかけに応じて移動する。

 

そんな俺の様子を見もせずに、
目の前の無口少女は椅子を並べ始めた。

 

「なぁ、長門……一体なんn……」

 
 
 

「ここで寝ればいい」

 
 
 

「へぁ?」

 

突然の言葉と目の前の光景に眠気がすっ飛ぶ俺。
市販の黒いガムでもココまでスッキリしないぞ。

 

「ここ、って……」

 

「あなたの身長に合わせている。
机で寝るよりもリラックスできる」

 

呆気に取られている俺に、
並べた椅子をたたきながら長門が言う。

 

「いや、だが……」

 

どうみてもお前が指差す簡易ベッドは椅子が1つ足りないぞ。

 

「大丈夫……」

 

俺の疑問に、
自信満々に長門はそう言うと、
更に堂々と俺の指摘に対する策を口にした……

 
 
 

「頭はココ……」

 
 
 

そう言いながら目の前の無敵宇宙人は、
自分の膝をポンポンと叩いていた……

 
 
 
 

P.S.

 
 

長門が用意してくれた簡易ベッドは、
想像以上に心地よく、はるかかなた1万光年に吹き飛んでいった睡魔も、
長距離ワープを駆使して戻ってきた。
どこがどう心地よかったかは想像に任せる。

 
 
 
 

それからどれだけ時間が経ったのか、
俺は暖かな夢の中、声を聞いた。

 

「起きて……」

 

「ん……もうちょっと……」

 

「だめ、起きて……」

 

夢の中でもはっきりと分かる長門の澄んだ声が、
更に俺の精神を穏やかな気持ちにさせる。

 

「起きて」

 

「あと5分……」

 
 
 

「なぁにが、『あと5分』なのかしらぁ!?」

 
 
 

「!?」

 

突然の大声に文字通り飛び起きる俺。
危うく俺の顔を覗き込んでいた長門の顔にぶつかりそうだった。
避けてくれて助かったぜ、長門……

 

って、そんな場合ではない。

 
 

「掃除当番で遅れてきたら、
あんたはなにをやってるのかしらね?」

 
 

「え〜とだな、ハルヒ……」

 

「なに、キョン?何か言いたいことがあるの?
言ってみてちょうだい」

 

「こ、これはその……」

 

「膝枕をしていただけ」

 
 

ちょ、長門!
もうちょっと時間稼ぎをだな……

 
 

「ふ〜ん、そう……よかったわね、キョン……」

 

「い、いや、だからな、ハルヒ……」

 

「有希の膝枕なんて滅多に受け取れないわよ。
いい冥土の土産になったわね、キョン♪」

 

にっこりとそう言うハルヒの声を最後に、
俺はしばらくあちらの世界に旅立つこととなった……

 


トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS
Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:45 (2625d)