作品

概要

作者nanashi
作品名謎の彼女N
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-06-03 (日) 22:20:54

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

※植芝理一作品を用いています。

 そして僕は久しぶりに またあの夢を見た。
 知らない街で 僕と長門が踊っている夢−

 −その夢から目覚めた朝 ベッドの中で
 僕はその日長門に”ある事”を伝えようと,決意した。

「キョン君…また明日…」
「ま,待ってくれ,長門!!」
「お…俺,今日…長門に伝えたい事があって…」
 長門が駆け寄り,上目遣いに僕を見つめた。「伝えて…」
 距離の近さと,長門の真っ直ぐな視線に,僕はややうろたえ気味に切り出した。
「その…つまり,俺は…俺は長門の事が好きだから…俺とつきあってくれないか? 長門が俺の彼女になってくれたら…俺,長門の彼氏になるから…って,当たり前か!は,ははは…」
 長門はいつもの静謐な面持ちを崩すことなく,返した。
「…では,わたしに今何かアプローチして。」
「アプローチ?」
「今日からわたしがキョン君の彼女になるのなら…それを証明するようなアプローチを行動にして示して。」
「証明するようなアプローチ…か」
 冷静に考える余裕も無い頭で捻り出した答えは,キスだった。
 僕は腹を括って,長門の両肩をつかみ,ゆっくり顔を近づけていった…
 と,その刹那,長門が僕の唇に指を当てた。「待って。」
「こんなありきたりなアプローチではだめ。」「ええ!?」
「こんな普遍的な事ではなく,独創的な,キョン君にしか表現できないアプローチでないとだめ。」
「そ,そんなの思いつかないよ!」
「べつに今日でなくてもいい。キョン君がどんなアプローチをしてくれるのか…わたしはいつまでも忘れずに待っている。」
 そういうと,長門は歩き出した。
「長門… !”いつまでも忘れずに”待っている…? そうだ!」
 僕はとっさに閃くものがあった。忘れられない未練を思い出したのだ。慌てて長門を呼び止めた。
「長門!戻ってこい!大至急!カムバーック!」
 再び,長門は僕に駆け寄った。「何?」
「長門,ハサミ貸してくれないか?」「ハサミ…?」
 と言うや,長門はスカートをたくし上げ,下着に挟んだハサミを僕に手渡した。なぜそこにハサミを仕込んでいるのか,今持って謎だが。
「お,俺は別に,お前のパンツ見るためにハサミ借りた訳じゃないからなっ!」恐らく全く気にしていないだろうが,一応,言い訳をしておいた。「そう。」
 僕は,財布に挟んでいた一葉の写真を取りだした。
「長門!この写真見てくれ!」
 その写真に写っているのは2年の朝比奈さんだ。愛らしい顔立ちに素晴らしく発育の良い体,そして優しく淑やかな佇まいで,学校中にファンがいる。この写真は文化祭の模擬喫茶でウェイトレスをしている彼女を写したものだった。
「これが,何?」
「この人はずっと憧れていた人なんだよ。高校に入ってたまたま会話をしてからずっと忘れられなくて,文化祭の時に隠し撮りしたこの写真を,財布に入れてずっと持ってたんだ…」
「でも,あの日… 長門のよだれをなめた日から,俺こんな写真が財布に入ってるのなんてすっかり忘れちまってた…」
「だから… 長門!これがお前へのアプローチだ!」
 僕は長門の手から写真を取ると,ハサミで切り刻み,空へぶちまけた。
「もう手の届かない憧れはいらない! 今日から長門が俺の彼女になるんだから!」

 時間にするとほんの数秒だったが,随分長い事お互い固まっていたような気がする。
 と,その時,長門が「ごふっ」と大量のよだれを吐き出した。
「ど,どうした長門!」
「キ,キョン君が…いきなりそんなアプローチするから…」
 長門は顔を紅潮させ,潤んだ瞳で僕を見つめていた。こんな感情を露わにする長門を見るのは初めてだった。
「わたしは,非常に嬉しい事が起こると,口から大量によだれがあふれ出てしまう…」「な,何で!?」
「わたしはそういう仕様だから…」
 説明になっていないし,「仕様」ってのは一体何だ…と考えていたら,とんでもない事を訊かれた。
「キョン君,…あなた,童貞?」「えっ…」「童貞じゃないの?」
「あ,その…ど,童貞だよ!」往来で童貞カミングアウトだ。
「そう…よかった… わたしも,処女。」何故か,ほっとした。
「わたしが転校してきた日,あなたを午後の授業中ずっと見ていたことを気付いていた?」「ああ…気付いてたよ…」
「わたしあの時,お父さんの声が聞こえてきて,その内容があまりに突飛だったから,思わずあなたを見つめてしまった…」
「お父さんの…声…?」「わたしのお父さんは…うまく言語化できない存在。ただ,声はわたしの頭の中で聞こえる…」
 僕はもう何も言わず,ただ彼女の言葉を待った。
「そしてあの日,何気なく隣の席のあなたを見ていたときに,お父さんはこう言った。」
「キョン君…あなたが…わたしの生まれて初めてのSEXの相手となる人間だと。」
「私は,あの日からずっと,今日のようにあなたが好きだと言ってくれるのを待っていた…」

 夕暮れが迫り,照柿色の舗道に影が伸びる。長門は,膝を払いながら立ち上がり,「もう帰る時間。また明日。」と,普段の調子に戻って歩き出す。

 ふいに振り向く長門。夕陽を背に,僕を見つめると,恐らく最初で最後だろう,まるで「普通の高校生」のような澄んだ笑顔で僕に言った。
「キョンくーん! 今日からわたしは,キョン君の彼女だよー!」

 その日 僕に生まれて初めての彼女ができた。
 名前を −長門有希という−

                        FIN 

 

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:45 (3088d)