作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんとコーヒー
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-05-16 (水) 07:30:45

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる登場
古泉一樹登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

1週間のうちでただ一日だけ日付を赤く色どられた安息日。
この赤い数字を見れば週末の苦行とも言える日々にも
少しは報われる気がするのが普通だが、
生憎普通ではない迷惑娘に付き合わされる俺にとっては、
むしろこの赤数字は鬼門になりつつある。
ついでに毎週この日には財政状況の赤数字が累積されていく。

 

そんな風に苦々しく思いながら、
俺は今日も自転車を漕いで行った……

 
 
 
 

「遅い!罰金!!」

 

まだ集合時間まで10分はあるぜ。
というか何でお前ら揃いも揃って、
俺より先に来てるんだ。

 

「皆あんたと違って遵法意識が強いからね。
あんたも正しい団員の在り方というものを、
もう少し意識しなさい」

 

「ちゃんとお前の指定した集合時間には間に合ってるだろう」

 

「だーめ。団員たる者、団長を待たせることがあってはならないの!わかった?
だからとりあえず今日もあんたは私たちにドリンクの1杯くらいは奢らないといけないの」

 

まさに理不尽を声にしたようなセリフを吐き、
ハルヒは颯爽といつもの喫茶店に向って行った。

 
 

……本日も債務がかさむわけか……

 
 
 
 

喫茶店に入り、
俺たちは各自注文を決めた。

 

「えっと、カプチーノにミックスサンド、ホットケーキに……」

 

おい、人の金だからっていくら頼むつもりだ?
『ドリンク1杯』とか言ってたのはどの口だ。

 

「うるさいわね〜ケチケチしないの!
で、有希は?」

 

俺の言葉を軽く聞き流したハルヒは、
横で静かにメニューを眺めていた長門に声をかけた。

 

「オレンジジュース……」

 

さすが長門。
目の前の極悪非道娘とは違って、
俺の財布のことも考えてくれt……

 
 

「と、ハムエッグ、トーストセット……」

 
 

……訂正。
極悪非道娘『達』。

 
 
 
 

「ところでハルヒ」

 

「何よ?」

 

ミックスサンドを口に放り込む作業をしているハルヒに、
前々から疑問に思っていたことを聞いてみた。

 

「何でいつもこの喫茶店に来るんだ?」

 

俺としては駅前のファーストフード店で充分だぞ。
お前が奇抜な呪文を唱えれば、
今ならもれなく割引券ももらえるらしいしな。

 

「そんなの決まってるじゃない」

 

俺の金銭面でかなり深刻な疑問に、
3杯目のドリンクを飲み干したハルヒは、
まさに当たり前のようにこう言った……

 
 
 

「コーヒーが美味しいからに決まってるじゃない!!」

 
 
 

「……」

 

これは長門から無料レンタルした3点リーダだ。
無表情まではレンタルできなかったから、
今は呆れ顔で我慢してくれ。

 

「やっぱり上質の飲料あってこその会議よ」

 

「仰るとおりです」

 

いつものようにニヤケ面が賛同する。
ちなみにこいつがコーヒーを飲んでる姿は、
悔しいが様にはなっている。

 

「ほら、いつもSOS団室で会議する時も、
みくるちゃんの美味しいお茶が不可欠でしょ!?」

 

「えっ、あ、ありがとうございます」

 

褒められて赤面する朝比奈さん。
こうしてまた俺の脳内mikuruフォルダに画像が1MB増加した。

 

「……お前が飲み物の味が分かるなんて初耳だがな」

 

俺の記憶に重大な欠陥がなければ、
お前が朝比奈さんから湯飲みを手渡されて、
3秒以上時間をかけて飲んでいる姿を見た覚えはないんだが。

 

「失礼ね。あたしくらいになれば、
香りを嗅いだだけで味も分かるの!」

 

いつの間にお前はソムリエになったんだ?
むしろ警察犬かトリュフを探すブタか?

 

「ここのコーヒーは豆から直に焙煎してるから、
香りが強くて美味しいのよ」

 

「お前、適当に言ってるだろ……」

 

「あ〜でも……」

 

俺のツッコミを無視して、ハルヒは人差し指を唇につけ、
隣でチビチビと2杯目のドリンクを飲んでいる無口少女に目をやった。

 
 
 

「有希ってここでコーヒー飲んでないから分からないか……」

 
 
 

「……」

 

コクリと頷く長門。
そういえばこいつはいつもアプリコットだとか、
ジュースだとかそういった物しか飲まないな。

 

「ねぇ、有希も飲んでみたら?
どうせキョンの奢りだし」

 

なんて言い草だ。
俺への感謝の気持ちはないのか?

 

「なによぅ、元はといえばあんたが毎度毎度遅刻するのが悪いんでしょ」

 

だったら、今度は1時間くらい早く来てやる。
そのためには妹の攻撃に素直に起きる必要があるが……

 

「ほら、有希。ブレンドとかどう?
それともウインナ?」

 

「いい。遠慮する……」

 

ハルヒの提案に対し、
何故か頑なに拒み続ける長門。
その姿に何やらピーマンを皿に盛られた妹の姿が浮かぶのだが……

 

何となく気になった俺は、
素直に長門に質問してみた……

 
 

「長門……お前もしかして……」

 
 

「なに?」

 
 
 

「コーヒー……飲めないんじゃないか?」

 
 
 

俺の一言に凍りつく空気。
体感温度絶賛低下中だ。

 

「………………………そんなことはない」

 

何だ、その間は。長すぎるぞ。
そして目を背けるんじゃない。

 

「もう、キョンたら……有希に限ってそんなことあるわけないじゃない」

 

ねぇ、と言いながら笑顔で長門の方を向くハルヒ。
長門も素直に『そう……当然』なんて答えているが、
俺の目にはいつもの悪巧みを思いついた顔が1つ見える。

 

「コーヒーくらい、いくらでも飲めるわよね?」

 

「飲める。余裕。問題ない」

 
 

「……じゃあ、有希とあたしの分のおかわり注文するわ」

 
 

「!!?」

 

明らかに動揺している長門。
そんな長門に気付かないフリをしながら、
ハルヒはウェイトレスを呼ぶ。

 

「ご注文でしょうか?」

 

「え〜と、カフェラテと……有希にはエスプレッソで」

 

「かしこまりました」

 

無表情を装っているが、
泣きそうな顔でチラチラこちらを見る長門。

 

いや、俺にはどうすることも出来んのだが……

 
 
 

数分後、そこには目の前の小さなカップに注がれた、
尋常じゃないほど漆黒色の液体を一気に飲み干して、
尋常を通り過ぎるほど涙目で無表情を装う少女と、
その光景を見て嬉しそうにする少女の姿があった……

 
 
 
 

P.S.

 
 

そういえば、さっきのウェイトレスさん、
なんだかウェーブがかった髪をしてたけど、
まさか……

 
 
 

「ふふ、あんなに泣きそうになっている長門さんを見れたのなら、
わざわざ苦味成分15倍濃縮物を用意した甲斐がありますね……」

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:44 (3087d)