作品

概要

作者なにかよからぬもの
作品名Knight Save the Prince 第二話 『ジェラシー ハート』 
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-05-06 (日) 22:41:14

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

―――初めてのキスはほんの少し、ほんの少しだけ心が温かくなった気がした―――

 
 
 

               『ジェラシー ハート』

 
 
 

あの俺が今まで生きてきた中で最もスリルを味わったであろう長門の素敵な自己紹介の後のこと。
ハルヒが何故かしばらくうちの国に滞在することが決まった。
そこに俺の国の意見(9割方は俺)は華麗なまでにスルーされており、あの超わがままお姫様の相手をせにゃならんのかと今から憂鬱な気分である。
何故だ。理不尽すぎる。
しかも妹までが

 

「えーっ、ハルにゃんが来るのー?わーい、良かったねー、キョン君」

 

良くない。全く良くないぞ妹よ。
お前はあいつの起こす迷惑度100%の騒動に巻き込まれないからそんなことが言えるのだ。
ああ、今から遺書の用意でもしておくか…

 

「…来た」

 

…そうだった。
そのハルヒが来る日ってのが今日だった。
あまりの理不尽さにどうやら俺の脳は軽く現実逃避していたらしい。
しかし時の流れはなんと残酷であろうか。
来るべき時は必ず来てしまうモノなのである。
ああ、このまま時間が止まってしまえばいいのに。
なんてセリフはもっと別の、そう、愛しい人を胸に抱きながら耳元にそっと囁きたいモノだ。

 

…いかん、また現実逃避をしていたようだ。
ってか居たのか長門よ。全然気付かなかったぞ。

 

「キョーーーン、来てやったわよーーっ!!」

 

おお、とうとう来てしまったのか。
俺に災厄をもたらす恐怖の大魔王が。いや、王女か?
何にせよ俺に降りかかってくる被害ができるだけ少ないように祈るしかない。
アーメン。

 

「あ、あの〜、お久しぶりですぅ〜。しばらくお世話になるのでよろしくお願いしますぅ」

 

キタ。キました。
メイド服を着込んだ俺の女神、あるいは天使のご降臨です。
ああ、朝比奈さん、しばらくと言わず、ずっとここにいて下さい。
あなたが毎日自分の世話をしてくれると考えるだけで、俺の脳は一瞬にしてバラ色に染め上げられてしまいます。
ああ、何故かハルヒや長門の視線が痛いけど全く気にならない。

 

「おや、お久しぶりです。しばらくお世話になりますのでよろしくお願いします」

 

…せっかくの至福の時間がこのにやけ執事の所為で台無しだ。
お前も執事なら少しは王女の言うことも止めろってんだ、このイエスマンが。
くそ、忌々しい。
よっぽどお前のほうが王子向きなスマイルしているぞ。
どうだ、いっそ変わってみないか?

 

「大変興味深い申し出ですが遠慮しておきます。
あなたしか王子はあり得ませんよ」

 

そう言ってクックックと笑う古泉。
何がおかしい、80字以上120字以内で簡単に説明して見せろ。

 

「あなたがこの国の王子であることが大変都合が良い人物を知っているので。だからもし僕が王子、あなたが執事になってしまったらその人は怒り狂って世界をぶち壊すくらいのことをするでしょうね」

 

くっ、ちゃんと制限字数内で説明しやがって。
なにまたニヤニヤしてんだ。そんなにおかしいか。
大体それくらいで世界を破壊するようなバカが居たら、この世はとっくに崩壊しているだろう。
で誰だその『俺がこの国の王子であることが大変都合が良い人物』とやらは?

 

「おっと、それについては申し上げられません。
もし言ったら冗談じゃなく私の命が危ないですから」

 

命が危ないとか言ってる割には顔がむしろ楽しそうだぞ、この100円スマイル野郎が。あとさっきから何赤くなっているハルヒよ?
来て早々体調崩したとかじゃないだろうな。

 

「う、うっさいバカ!!そんなことより早く部屋に案内しなさいよ!」
「はいはい、わかったよ。じゃあちょっと長門待っててくれ」

 

長門にそういうと俺は三人を部屋へと案内をしに行った。

 

…何故一国の王子がこんな事をしているのかと思う方も多いだろう。
実は前にも言ったと思うがうちの国は洒落にならないほど小さいのだ。
どっちかというと王と言うよりはその土地の領主といった方がわかりやすいかもしれん。
だから城から一歩出て付近の住民達と話せば一国の王子と平民の会話とは思えんほどのフレンドリーな会話が成り立つわけだ。
実際自分が王子という立場だって事を大概忘れて生きている。
一応王女である我が妹もまただ。
生まれてきてからずっとそうだったし、俺自身身分の違いから気を遣われる、遣うというのは堅苦しくて好きではない。
それにこの国ののんびりしているが暖かい雰囲気を気に入っているからな。

 

というわけで前置きが長くなったが要するに俺の城には執事やメイドは居ないのだ。
勿論朝比奈さんがメイドなら大歓迎だがな。
たしかうちの家訓その一は『自分のことは自分でする』だったような気がする。
ある意味王族にあるまじき家訓である。

 

とまぁ、王子自ら古泉や朝比奈さんを部屋に案内した後、ハルヒを案内することになったのだが、その途中ハルヒが

 

「ねぇ、キョンは有希のことどう思う?」

 

と言ってきた。
いきなりどう思うと聞かれてもな…
ものすごい無口だし、暇さえあれば常に本を読んでいるし、実はものすごい身体能力を持っているとか、顔は…かわいいな……………オホン!まぁ、何というか不思議なやつだな。

 

「そうじゃなくて!…あんたさぁ、有希の笑ったとこ一度でも見たことある?」

 

そういえば長門が笑っているところを見たことが一度もない。
数日間いつも一緒にいたのにだ。その間アホの谷口の間抜けな爆笑シーンや俺自身がおかした今思い出すと地下3000メートルまで逃げ出したくなるような失態を目の当たりにしてもあいつは彫刻のようにその整った顔を緩ませることは決してなかった。

 

「有希ってさぁ、あたしの国に来たときからずっとあんな感じなの。
いつも一人でずっと本ばっか読んでてさぁ…何かかわいそうだなって思ったわけ。
んで思いついたのがあんたのとこ」

 

おい、何故そこで俺の国が出てくる?
確かにずっと一人で本を黙々と読み続ける長門を想像して少し寂しい気持ちにはなったが。

 

「ほら、ここの国ってみんな何か暖かそうな感じがするじゃない?
それにあんたはうだつが上がらないようなやつだけど、差別とか妙な気遣いとかはしないやつだから。
まぁ、とにかく、有希が普通に笑えるようになるにはここでリハビリさせるのが一番かなって考えたわけ!
分かった?」

 

わかったが俺は褒められていたのか、けなされていたのか、どっちだ?

 

…まぁ、それはいい。いや本当はよくないが。
一体長門をどうやって笑わせるつもりだ?
あいつと吉本が全面戦争しても長門が余裕で勝ちそうだぞ。
いくら何でもこの国に来ただけで今まで笑わなかった人が急に笑い出すようになったら、この国は笑わない人たちをカウンセリングする国として人口が爆発的に増加するぞ。
俺はこの国の静かで小さくまとまっているところが好きなんだ。

 

「ふふん、そのことならすでに考えてあるわ!
明日大々的にに発表するから楽しみにしてなさい!」

 

そういって満面の笑みで俺にズビシッと効果音が付きそうなくらいの勢いで指を指してくるハルヒ。
…何故だろう。嫌な予感を俺の体がびんびんに察知している。
頼むから俺の胃に負担がかからないようなやつにしてくれ。

 

…まぁ、そういうことなら俺も協力してやるよ。
愛想が全くない護衛と一緒にいるのはさすがにきついというのもあるが、何よりあの全く表情の変わらない人形のような少女を笑わせてみたいと思ったのが本心だ。
長門が一体何を抱えて、何を想っているのかなんて俺にはわからない。
だがもし長門が何かに悩み、苦しみ、悲しんでいるのならいつでも手を差し伸べてやる。
だから決して一人だけで抱え込まずにその想いを俺たちと共有して欲しい。
俺には何もできなくてもハルヒ達と一緒に悩んでやることぐらいはできるさ。
それに長門が笑いかけてくれたなら世界中の男共も恋に落ちてしまうんじゃないかというような笑顔が見られそうな気がするんだ。
そんな邪推な考えは別にしても俺はお前が心の底から笑ってくれるのを見たいんだ。
もしそれが見られたらそれはどんなに幸せなことだろうか―――

 

そんなことをハルヒを部屋に送り届けた後も延々と考え込んでいた。
どうやったら長門は笑ってくれるのだろうか―――

 

「…終わった?」

 

うわあっ!?長門?!
い、いきなり後ろから話しかけるなよ。
今確実に寿命が3分ほど縮んだな。

 

「…ごめんなさい」

 

長門がほんの少しだけだが申し訳なさそうな顔をしている。まずい、長門を笑わせることを考えていた矢先に何をやっているんだ俺は。

 

「あ〜っ、その寿命の2分や3分なんか気にすることないさ。それよりどうした?」

 

そういうと長門はちょっとムッとしたように見える顔で

 

「私はあなたの護衛。
よってあなたの常に側にいるのが普通。
しかしあなたは他の三人と私を置いて行ってしまった。
ちょっとと言ったのにあなたが暗くなっても戻ってこないので、もしかしたら何かあったと思いここに来た次第」

 

う、すまん、長門…
しかしここで長門のことについて話していたなんて言えるわけがない。
え〜と…そう、久しぶりだから二人きりで話したくなって、話し込んでたんだ。

 

「誰と?」

 

えっ?!え、え〜と、それは…

 

「誰と?」

 

近い、顔が近いです長門さん。
しかも何故かすごく恐いです。
あと………もしかして怒っています?

 

「怒ってない。 誰 と ? 」 チャキ…

 

長門さんの手が刀にかかってます!
しかもちょっと抜かれてて刃が見えてます!
刃がぎらぎらと光って眩しいDEATH!
ちょっと何これ?!まだ2話目なのに!
死にたくないなら何とかするんだ俺!分かった俺!

 

「ハ、ハルヒ!そう、ハルヒと話してたんだよ!」

 

ふぅ〜っ…これで何とか…

 

「…そう」

 

あ、あれ…?
俺って何か言うこと間違っちゃったみたい?
…あの長門さん少しづつ剣を抜いていくのはやめてくれないですかね?
非常に僕の心臓に悪いんですが。

 

「…何を?」
「な、何をって…?」
「…何を話していたの? 二 人 っ き り で 」

 

あ、あの僕の目が悪いのでなければ長門さんから花も一瞬で枯れそうなくらいの禍々しいオーラが見えるんですが。
ええ、それはもう『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』って効果音ががこの上なく似合いそうなやつが。
…あ、あと刀がもう全部鞘から抜けているのも気のせいですか?
し、しかも長門さんがこっちに向かって刀を構えているという非常に心臓と胃その他諸々にも悪そうな光景が見えるのも勿論気のせいですよね?

 

「…そう。気のせい…」

 

そうですか。気のせいですか。
いやー、良かった良かった。
でも何故か僕の目には長門さんが刀を構えたままこっちに近づいてきているように見えるんですが?

 

「………」

 

おいおいおいおい?!ちょっとリアルにまずいんじゃないのこれ?!
とうとう無言だよ!
刃がぎらぎらと光って眩しいDEATH!
ちょっと何これ?!まだ2話目なのに!
前にも同じような思考をした気がするが気にしている余裕などこれっぽっちもない!
死にたくないなら今度こそ何とかするんだ俺!分かった俺!

 

「長門のこと!そう長門のこと話してたんだよ!」
「…私のこと?」
「そうなんだよ!長門ってかわいいよなーって!アハハハハ!」

 

あまりの恐怖に壊れた俺は自分でも何を言っているのか把握し切れていない。
今は長門がこれからR15指定になりそうなことを俺に向かってするのを避けるのが最優先だ!

 

「…そう」

 

おお、助かった…!ああ、生きてるって素晴らしい…!
心なしか長門もほんの少し嬉しそうだ。
あ〜緊張が解けたら足がふらふらする…
精神的にもかなりの疲労が…
今日はもう明日起こるであろうハルヒ製のトラブルとの戦いに備えて寝るか…

 

―――あの〜長門さん、何で俺の寝室にまで入ってきてるんですか?
さすがに護衛とはいえ同じ部屋で一夜を共にするのは肉体的にも精神的にもお子様達の情操教育的にも良くない気がするんですが…

 

「何も問題はない。あなたが勝手に変なことを考えているだけ」

 

はい、その通りで御座います。
でもせめて扉の前で待機に妥協してくれないでしょうか?

 

「大丈夫。
もしあなたが変なことをしてきた場合切り捨ててもかまわないと涼宮ハルヒから名刀『ガードナー』をもらった」

 

あ、そっちの心配ですか。
ハァ…もういいです。
絶対に俺は何にもしないから安心してお前も休めよ。
じゃあ、お休み…

 

―――微睡みに意識が途切れる寸前に

 

「…意気地なし…」

 

という声が聞こえた気がした。
何かほおに暖かく柔らかいモノが触れたような気もした―――

 
 
 

―――これはある王子と騎士のお話。静かな夜が更けていく―――

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:41 (2730d)