作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんとヤンデレ
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-29 (日) 11:55:22

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

人間に限らず、動物というものは唐突に危機的な状況に遭遇した場合、
パニックに陥ることがよくあるらしい。

 

もちろんそういう予測不能の事態が発生すること自体よくあることだ。
揚げ物をしてる最中に火柱が上がることもあるだろうし、
高層ビルのカジノの窓から地上最強の生物が突入してくることも無いとは言えない。
放課後の教室でクラスメートの委員長がナイフを持って待ち構えてることなんてザラだろうし、
世界が丸ごと変わっちまうなんてそう珍しくもないかもしてない。

 

だからそのような窮地でも何とか切り抜けるよう、
常日頃から冷静にいたいとは思っているのだが、
俺の身の回りを取り巻く状況はそれを許す気なんて微塵もないらしい。

 

そんなことは身に染みてわかってはいるのだが、
それでも俺は今日も何一つ心構えも持たずに旧校舎の一室のドアを開けた……
なに、ここなら多少のことが起こっても気にもしないさ。
ほら、ドアを開けたら長門がお出迎え……

 
 
 
 

「この泥棒猫……」

 
 
 
 

「はぁ!?」

 

ドアノブを握り締めたまま俺は硬直した。

 

そういえば至近距離にライオンが現れたシマウマは、
パニックを起こして身動きが取れなくなるらしいが、
なるほどこういう状況……って、違う!

 

「……泥棒猫」

 

先ほどと同じ単語を吐きながら、
じりじりと近づいてくる長門。

 

「な、長門!?」

 

「……」

 

「一体どうs……って、おい!お前なんてもん持ってるんだ!?」

 

無口少女の手に握られているのは、
明らかに使用用途を大きく逸脱されようとしている、
銀色に光り輝く美しい曲線を描k……だからそんな悠長なことを言ってる場合じゃない。

 

「冗談はよせ!」

 

「……」

 

俺の言葉など聞こえないかのように近寄ってくる長門。
何だ?一体なんだってんだちくしょうが。
まさかこいつの親玉が心変わりでもしたのか?
それとも朝倉みたいに……

 

「長門、やめろ!!」

 

「……泥棒猫は始末する……」

 

泥棒?猫?何のことだかさっぱりだ。
誰か解説してくれ。
今なら古泉のめんどくさい語り口でも諸手を挙げて歓迎してやる。
いや、それよりもこの状況を何とか……

 

「……」

 

「やめッ……!?」

 

いつの間にか廊下の壁まで後ずさっていた俺に、
いつもより無表情な少女が距離を縮めてくる。

 

「……」

 

いつか見たように手に持った刃物を握り締めて、
長門が俺の目を無言で見つめてきた。

 

くそ、一体全体どうなってやがる!?
気の早い脳みそが思い出に浸りそうになるのを抑えながら、
俺は懸命に逃げる策を考え……

 
 

焦る俺の目の前で

 
 

静かに長門の腕が振り上げられた……

 
 
 
 
 
 
 

「う〜ん、何か違うわね」

 

「……へぁ?」

 

何だ?
俺は……生きてるのか?

 

「……」

 

「長門?」

 

「有希〜?どんな感じ?」

 

長門の背後から聞き覚えのある声がする。

 

「不明。少なくとも期待していたような効果は無いと思われる」

 

「そう?何がいけないのかしら?」

 

「おい」

 

たまりかねた俺は、
廊下に腰掛けたまま我らが迷惑団長様に声をかけた。

 

「これは……一体何の真似だ?」

 

「ん?あぁ、このナイフは刃先が引っ込む奴だから」

 

質問の答えになってない。
あと、いくら引っ込むからって目に当たりでもすればどうする。

 

「……実験」

 

目の前でなにやら考え事をしているハルヒの代わりに、
いつもどおりの無表情で長門が答えた。

 

「実験?何の?」

 

そう聞き返した俺に、
今度はちゃんとこの茶番の計画者であろう、
暴風娘が笑顔100%で答えた。

 
 
 

「決まってるじゃない。新たな萌えの研究よ。も・え」

 
 
 

無意味100%の答えを……

 
 
 

「はぁ?」

 

こいつが意味の分からないことを言い出すのは今に始まったことじゃないが、
今回はそれらの中でも上位に食い込む意味不明さだ。

 

「だから『萌え』よ」

 

何だその『分かるでしょ?』といった顔は。
あと年頃の女の子がそんな言葉を口にするな。

 

「ほら、有希っていい子なんだけど、
物静かでイマイチ魅力をアピールしきれてないと思うのよね」

 

そんな物はアピールする必要が無いからだろ。
むしろそういう雰囲気の方が魅力に感じる奴もいる気がする。

 

そんな俺の反論をさらさらさらりと聞き流して、
ハルヒがさらに解説を続けた。

 

「だから、今流行ってる『萌え』要素を取り込んでみたんだけど……」

 

そう言いながらハルヒは手元の雑誌に目をやる。

 

「この『ヤンデレ』ってのがよく分からないのよね〜」

 

ヤンデレ?
あぁ、聞いたことはあるが……

 

「とりあえず凶器とセリフくらいは浮かんだんだけど……
で、どうだった?」

 

「何がだ」

 

まだ俺の質問は終わってないのに、
質問してくるとはいかがなものか。

 

「ほら、有希の様子。魅力的だった?」

 

あぁ、違う意味でドキドキした。
そりゃもう心臓が働きすぎて永眠しそうなくらいな。

 

「う〜ん、やっぱり何か足りないのかしら?」

 

足りないのはお前のバラ色の脳みその方だろ……
などとは口に出さないでおく。

 

「……」

 

真剣に悩むハルヒの横で、
長門はハルヒの持っている雑誌を読んでいる。
こいつは活字なら何でもいいのか?
それにしても見るからに怪しい本だな……

 

「そもそも『ヤンデレ』の捉え方自体間違っちゃねーか?」

 

「何よ〜。文句でもあるの」

 

アヒル口で俺を睨むハルヒ。

 

だが俺もそこまで詳しくないが、
何となくこいつの言うヤンデレと、
今見たのは違う気がする。

 

「そもそも『ヤンデレ』ってのは『病んでるデレ』って意味じゃないのか?」

 

「そうなの?」

 

「そう……この本にも書いている」

 

そういって長門が指し示したところには、
俺が言ったようなことが解釈のひとつに挙げられていた。

 

「だから肝心なのは心の方だろ」

 

まるで道徳の時間に出てきそうなセリフであるが、
会話の内容は完全にそれに反するものだな。

 

「ふ〜ん」

 

「それに『泥棒猫』ってのは男に対して言うもんじゃないし、
あのナイフもオプションとしては力不足だ。
そもそも凶器ではなく狂気が重要であって、
そういう物や言葉で見るものに恐怖を与えるんじゃなく、
精神で相手に異常さを見せ付けるもんだと思うぞ」

 

「……そう」

 

本を読みながら長門が頷く。
どうやら俺が言ったようなことが書いているらしい。

 

「それにだ……」

 

「それに?」

 
 
 

「長門みたいな純粋無垢な奴にそんなもんは似合わないだろ」

 
 
 

何だか冷静に考えれば地中5,000kmまで穴を掘って隠居生活をしたくなるような俺のセリフに、
いつの間にか俺の傍にいた長門は小さく頷いた……

 
 
 
 

P.S.

 
 

「ふ〜ん、有希は、ね?じゃああたしは?」

 

あれ?それって刃先引っ込むんですよね?
そうですよね?ちょ、何でそんな素敵な笑顔しt……

 
 

「 あ た し は ? 」

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:40 (3084d)