作品

概要

作者書き込めない人
作品名長門さんと佐々木さん
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-21 (土) 20:49:58

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木登場
橘京子不登場

SS

 

市内にある大き目の図書館の貸し出しカウンターに、
一人の少女が片手で数えられる程度の本を持って立っていた。

 

「……」

 

「1,2,3……はい、ではこの日までにご返却くださいね」

 

「……」

 

司書の言葉に無言のまま頷く彼女。
その小柄な体では少々持ちにくいであろうハードカバーを、
軽々と胸の前で抱え、少女は自分にとって特別な場所を立ち去ろうとしていた。

 
 

「おや?君はたしか……」

 
 

そんな彼女に唐突に声をかける一人の少女。

 

「……」

 

「やはりそうだ。確かキョンの……いや、涼宮さんの、と言った方がいいかな。
彼女の知人の……ユキさん……あぁ、いきなり下の名前でお呼びするのは不躾だね。
おそらくキョンが言っていた九曜さんの対となる存在だと推測されるから……
あなたは長門さん?」

 

「……そう」

 

その返事を聞いて声をかけた少女は柔らかな表情で言葉を続ける。

 

「僕のことは……」

 

「知っている」

 

そして特に表情も変えずに少女は相手の名前を口にした。
その答えを聞いた少女はまるで主から褒章を受け取る騎士の様な面持ちで、
さらに言葉を返した。

 

「覚えていてくれて光栄だよ。
それにしても地球外知性によって生み出されたあなたが、
こんな所で一体何を?
ちなみに僕は今からここで自習でもしようと思ってやってきたわけだが」

 

片手に持った教材入りのバッグを掲げながら、
彼女は尋ねた。

 

「……本を借りに来た」

 

淡々としたその答えに、
やや目を見開いて少女は驚いた。

 

「確かにここが図書館であることを考えればその答えは至極当然なのだが……
いや、気にしないでくれ。それより今から何か予定でもあるかな?
なければ少し話をしてみたいと愚考するのだが……」

 

「別に……かまわない」

 

「そうか。それならば図書館ではマズイだろうね。
そうだなぁ……向こうの公園でどうだろう?」

 

「……」

 

首肯という形で返答する少女。
それを見たもう一方の快活そうな少女はその顔に笑みをたたえながら、
小柄な文学少女の手を引いていった……

 
 
 
 

「さて、失礼は承知なのだが1つ聞かせて欲しい」

 

「なに?」

 

お互いに携えていた荷物を傍に置き、
日の当たるベンチに腰掛けて話をしていた。

 

「君も九曜さんのように観測を任務にしているのかい?」

 

「……主な存在理由は涼宮ハルヒの観測。でも今はその周辺人物の保護も含まれる」

 

「保護?何から?」

 

先ほどまでの明るい表情を曇らせながら、
彼女は反復し聞き返す。

 

「涼宮ハルヒおよびその周辺人物に害をなすもの……
例えば私と同じヒューマノイドインターフェイス」

 

「君と同じ?他にも仲間がいるのかい?」

 

「いる」

 

「そうか。それならキョンも心強いな」

 

その言葉に、しかし、静かな少女は首を横に振る。

 

「違う……」

 

「え?」

 

「私の仲間にも彼に害をなした個体がいた。
私も……」

 

そう言って彼女は下を向いて口をつむぐ。
しかし束の間の沈黙の後、その顔をまっすぐ上げた。

 
 
 

「だから私は何があっても彼を守る」

 
 
 

突然ともいえる宣言に、始めは少し驚いていたものの、
問いかけをした少女は何かを悟ったように優しい顔をして応えた。

 

「そうか……それは頼もしいことだな」

 

「……」

 

「キョンも色々と大変そうだと心配してたのだが、
どうやら杞憂だったらしい」

 

「心配?」

 

「そりゃ、中学以来の『親友』だからね。心配にも……」

 

捲くし立てるように言葉を続ける彼女に、
普段は物静かな少女が口を挟んだ。

 
 

「本当に?」

 
 

「……そんなに僕が彼のことを心配するのが不思議かい?」

 

「違う。そういうことではない」

 

「じゃあ、一体……」

 

そう尋ねる彼女に、
少女は核心をついた一言を告げた。

 
 
 

「あなたにとって……彼は本当にただの……『親友』?」

 
 
 

「……」

 

「……」

 

二人分の沈黙が穏やかな陽の下で存在していた。
やがて片方の少女が口を開く。

 

「……もし差し障りがなければ、何故そう思うのかご教授願いたいものだが」

 

「彼のことを『親友』と称したときのあなたの反応」

 

「何か不審なところでも?」

 

「……」

 

緩やかに頷く少女。
それも見た彼女は諦めたように肩をすくめて言った。

 

「やれやれ……僕も精進が足りないのかな?
それとも隠し事が下手なのか」

 

「……」

 

「1年間勉学に打ち込みでもすれば忘れられるかと思ったのだけど……
どうやら相当量の知識を埋め込んでも人間の脳というのは中々古い事物を捨てないらしい。
橘さんに出会って彼の名前を聞いた瞬間に、いろいろと思い出してしまったよ」

 

手元の参考書を玩びながら、
さらに彼女は続ける。

 

「我ながら1年も前の気持ちを引きずるのは情けないと思う。
だからキョンに会った時にクラスメイトの話を持ち出したのだが……
キョンが彼のことを『未練たらしい奴だ』とでも切り捨ててくれれば、
僕の方でも諦めがついたのだが……どうやら彼の鈍さは変わらないようだ」

 

独特の苦笑をしながら彼女は話す。
目の前にいる無口な少女は、そんな彼女に対し、
何も言わずただ聞き手に回っていた。

 

「それにしても驚いたよ。あの涼宮さんがキョンのことをあれだけ想っているなんて。
隣にいた僕などまるで目に入らないといった様子だったな」

 

「……」

 
 

「それに君もだ。先ほどの話を聞く限り、
本当にキョンは大事に想い想われているらしい。
素晴らしいことだ」

 
 

その時、ずっと聞き手に回っていた少女が、
静かに口を開けた。

 
 

「あなたも……」

 
 

「?」

 
 
 

「彼はあなたのことも大切に想っている……
あなたも同じ……」

 
 
 

その言葉に呆然としていた少女は、
やがてまた独特の苦笑をしながらこう答えた。

 
 

「そうか……僕も同じ位置にいる、ということかな……
ふふ……なんとも罪作りな男だな、彼は……」

 
 

その顔には一筋の涙と、
輝くばかりの笑みがあった……

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:37 (3093d)