作品

概要

作者駄文soccer
作品名異変、消失、そして・・・
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-19 (木) 09:02:56

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「それ」は突然やってきた。
いつもと変らない「日常」。
いつまでも続くと思われた日々。
最初は乗り気では無かったのが何時しか慣れていった。
楽しく愉快な時・・・。
終わりを迎えるなんて思ってもいなかったのだ・・・。

 

何てこと無い日常。
いつもと同じ坂道。
今日もごく普通に一日は始まる。
・・・・・・。
あっという間にカリキュラムは終わり放課後だ。
今日もあの部室・・・。
宇宙人や未来人や超能力者が集う場所。
一般人であるはずの俺が何故そこにいるのか?
もうどうでもよくなってきた。
答えなんて恐らく無い。
それが「必然」なのだろう。
そう思うことにしたのは随分前だ。

 

部室前いつものようにノックをする。
中から聞こえる声。
「ど〜ぞ〜」
愛くるしい上級生。その正体は未来人。朝比奈さんだ。
「どうもこんにちは。今日も寒いですね」
冬の冷え込みが厳しい。外は身に染みる風が吹いている。
「今お茶淹れますね、待っててください」
朝比奈さんの入れるお茶を飲めば寒さも吹き飛ぶ事だろう。
ふと、窓辺に目を向けるといつもそこにいるであろう小柄な少女・・・。
正体は宇宙人。長門の姿がなかった。
珍しいなと思いつつ椅子に座り暫くするとお茶が運ばれてきた。
「温かいうちにどうぞ」
勧められたお茶をすすっていると・・・。
「おや お二人だけですか?」
いつも満面の笑みを浮かべている男。古泉。正体は超能力者だ。
間髪をいれずにドアが開き・・・。
「やっほー! 皆揃ってるー!・・・あら? 有希は?」
聞きたいのはこっちの方だ。
「来ていないようですね。何か用事でもあるのでしょうか?」
「まぁいいわ今日はそんなに大した事じゃないし。その内来るでしょう。」
・・・・・・。本当に大した事無い話だった。
古泉とゲームをしつつ、朝比奈さんのお茶を飲む。
ハルヒの話はいつもの如くただの思い付きだ。
・・・・・・。しかし気がかりだ。
もう放課後になって随分経つ。いくら用事があってもそろそろ終わっていい頃だ。
「長門来ないな・・・。ひょっとして休みなんじゃないのか?」
俺は思ったことを口に出してみた。
「んー・・・。確かに遅すぎるわね。ちょっと連絡してみるわ。」
ハルヒは携帯を取り出し電話をかけた。
・・・・・・。
「あ有希? どうしたの今日? え休んでる? 体悪いの?
そんな事無いって・・・ 一体どうして? 大丈夫だから? うん・・・」
どうやら休んでいるのは確かだが様子がおかしい。
「有希学校着て無いけど、体が悪いとかそういうのじゃないから心配しないでって・・・。」
じゃあ一体どういう理由なんだ?まさかまた厄介な事件の前触れか?
「お見舞いもいらないって・・・。何か様子が変だったわ・・・」
部室に漂う不穏な空気・・・。
何かがおかしい。皆そう思っていたのだろう。
そしてこれは始まりだったのだ・・・。

 
 

結局その日はそのまま解散となった。
皆何処か沈んだ表情のまま帰り道を歩んだ。
明日にはいつも通り窓辺で本を読んでいてくれるはず。
そう願いながら・・・。
夜家に着いても気になるのは長門のことだ。
長門が学校に来ない。これだけで異常事態だ。
体が悪いわけではない。元より病気などはしないとは思うが・・・。
ならば何故休んだ?一人で何か抱え込んでいるんじゃないのか?
気になった俺は電話でもすべきか悩んでいた・・・。
長門にはいつも助けられてばかりだ。
長門が困ってるというなら俺はどんな事だってしてやるつもりだ。
意を決して電話してみる・・・。
・・・・・・。
「あ、長門か? 今日はどうしたんだ?」
「・・・何でもない・・・。心配しないで・・・」
抑揚の無いいつもと同じ声。
少なくとも風邪とかではないようだ。
「何か困った事でも起きたのか? ハルヒに言えない様な。
俺に出来ることがあったら何でも言ってくれていいんだぞ」
「・・・。貴方が心配するような事は起きてない大丈夫・・・。」
淡々と告げる。長門は嘘は言わない。なら大丈夫なのか・・・。
「ただ・・・」
長門が口ごもる。
「恐らく私はもう貴方たちとは会えない・・・。」
耳を疑った。何だって?もう会えない?
「そ、それはどういうことだ? やっぱり何か事件か?」
「・・・。私は悩んでいる。貴方にだけは知っておいて欲しいという思いと
知らないままでいて欲しいという思い。その二つが私を苦しませる。」
長門の声から僅かばかりに伝わる感情・・・。
それは切なく儚い思いにさせた。
「どうすればいいのか自分で分らないのか・・・。」
「・・・そう・・・。話すことで恐らく貴方は何かをする。それは私を追い込む。
話さなければ自分の気持ちに追い込まれる。こんな気持ちは初めて・・・」
長門は泣いているのではないかというほど悲しい感情がこもった声だ。
こういうときはどうすればいいんだ・・・。
俺には分からなかった。
話すにせよ話さないにせよ長門は苦しむという事だ。
どちらの方がいいんだ?俺に話すことで俺が長門を追い込む?
一体何を抱え込んでいるんだ?長門・・・。
しばらく無言でいる俺たち・・・。
「・・・出来ればもう連絡はしないで欲しい・・・」
沈黙を破る長門の声。
「長門それってどういう・・・」
「・・・お願い・・・。私はもう・・・。」
消え入りそうな声。目の前にいるなら消えないように抱きしめてしまいたい衝動に駆られる。
「長門。今日はもう切るよ。だが明日も声は聞かせてくれ。理由は話さなくてもいい。
何でもいいんだ。俺は長門の力になりたい。」
正直な気持ちを伝える。
「・・・分った・・・」
こうして長門との会話は終わった。
俺は何かが起き始めているという予感を胸に眠りについた・・・。

 
 

朝だというのに気分は晴れない。
昨日の長門の事が気がかりだからだろう。
俺の心を象徴するかのように空には厚い雲が漂っていた・・・。
教室に着いた。難しい顔をしていてはハルヒに感ずかれる可能性がある。
出来る限り普段の調子を装った。
「キョン。昨日の有希の事なんだけどさ。やっぱり心配よね?」
ハルヒもやはり心配しているらしい。
「そうだな・・・。何か悩みでもあるのかもな・・・」
「それなら私たちに相談してくれればいいのに・・・。そう思わない?」
「人には言えない悩みだってあるさ・・・」
俺は出来る限り気取られないよう当たり障りの無い言葉を選ぶ。
「そっか・・・。無理に聞いても駄目よね。話してくれるのを待つしかないわね」
そうだな・・・。俺は相槌を打ちつつ思い出す。
「もう会えない」
それは今日も学校に来ないという事だろう。
二日も連続で居ないとなるとハルヒの事だ無理やりにでも押しかけるかもしれない。
それだけは避けた方がいい。昨日の長門からはそれが感じられた。
俺一人で抱え込むのはしんどい。古泉にでも話してみるか。
アイツなら何か知っているかもしれない。
その日の授業は殆ど覚えていない。
ただ・・・長門が心配だった・・・。

 

ハルヒは掃除当番。とすれば古泉と話すチャンスだ。
急いで部室に向かう。
古泉とは部室の前で出くわした。
「おや? 珍しい事もあるものですね」
丁度よかったぜ話したい事があるんだ。出来れば内密にな。
「・・・。分りました。人気の無いところに行きましょう」
俺と古泉は一旦部室を離れ屋上へ向かう踊り場へと向かった。
「大体検討はついていますが・・・。長門さんのことですね?」
「ああ。お前なら何か知ってるんじゃないかと思ってな・・・」
昨日の電話での出来事を伝える・・・。
・・・・・・。
古泉は少し思考に耽っていたがやがて口を開いた。
「僕の仮説ですが。恐らくそれは涼宮さんに関係しています」
なんだって?事件じゃないんじゃなかったのか?
「はい。事件ではないんです。寧ろ事件を起こす事が出来なくなったというべきでしょう。
つい最近ですが涼宮さんから例の不思議な能力が無くなった事が分りました」
「それってつまり・・・」
「ええ。涼宮さんはもう何処にでも居る普通の少女だという事です」
それはいい事だ。もうトンデモな事件とはサヨナラできる。
「だがそれが長門に何の関係があるんだ?」
「おや? お忘れですか? 長門さんの役割を 彼女は本来・・・」
そこまで言われてようやく気付いた。
長門の役割。この世界にいる理由。
それはハルヒの能力の監視だった。
ハルヒの能力が無くなった。
ということは・・・。
「そうです。長門さんがこの世界にいる理由。それが無くなったのです」
その先は聞かなくても分った。
ナントカ思念体とやらが役目の終わった長門の存在を消そうとしているのだろう。
「長門さんは恐らく近いうちに僕たちと別れなければならないと知ってしまった。
だからこれ以上僕たちと親しくするのを避けているのでしょう」
理屈は分る。引越し前にどこか余所余所しくなるのと同じようなものだろう。
だが違うのは永遠の別れだという事だ。
「長門は・・・いつ居なくなるんだ・・・?」
「そればかりは分りませんね。今この瞬間かもしれない。
ただ近いうちに来るであろう事は確かです・・・。悲しい事ですが・・・」
古泉からいつもの微笑が消えていた。こいつも悲しいのだろう。
俺はもう兎に角ショックだった。長門が居なくなる。
ただそれだけの事なのに・・・。この胸を締め付けられる思いは何だ・・・?
「そろそろ戻らないと・・・。涼宮さんが心配するでしょう」
俺はハルヒに気付かれないよう平然を装いながらその日の活動を終えた。

 
 
 

夕食も殆ど喉を通らず家族に心配された。
風呂で頭の回転を良くしてみたが出てきた結論はやはり長門に確認する事だった
風呂上り体の熱も冷めやらぬまま長門へ電話をかける。
・・・・・・。
「長門。実は古泉と話したんだが・・・」
俺は放課後二人で話した事を長門に告げた。
「・・・。そう・・・。情報統合思念体は私の処分を決定した」
長門の口からまるで他人事のように語られる真実。
「長門はそれでいいのか? 俺は長門と会えなくなるなんて嫌だ。まだまだ皆で
する事があるはずだ」
「・・・。私も貴方たちと共に過ごしたい・・・。でも思念体の決断は正しい。
役割の無い道具は存在する価値がない」
その言葉を聞いて俺は声を荒げた。
「長門は道具なんかじゃない! 俺たちの大切な仲間だ! 一人の人間だ!」
「・・・。そう言って貰えるのはとても嬉しい・・・。でも・・・」
長門が言葉に詰る。泣き出しそうなのを堪えてる感じすら感じる。
「いつか俺が言った様にナントカ思念体なんて存在しなくてお前が居る世界を
作らせる分けにはいかないのか?」
「・・・。涼宮ハルヒからその能力が失われてしまっている。どうする事も出来ない」
そうだった。無茶苦茶な能力。不可能を可能に出来るハルヒの能力が使えないのだ。
「・・・。本当にどうしようもないのかよ・・・。」
自分の無力さに打ちひしがれる思い。何も出来ないのがこんなに悔しいのか・・・。
「予定では私が存在できるのは後二日。最後には貴方以外の人達から私の存在に
関する記憶を消す」
「俺からは消さないのか・・・?」
「・・・貴方には最後の瞬間まで私のことを覚えておいて欲しい・・・。それが私の
最後の願い・・・」
これ以上話していると辛くなるから・・・。と長門は電話を切った。
俺たちは本当に何も出来ないのか?
このまま永遠の別れをしなければならないのか?
俺は無力感に苛まれ眠りについた・・・。

 
 
 
 

別れの日まで二日・・・。という事になるのか。
認めたくない現実。だがどうしようもない事実。
このまま会えないまま別れるのは辛い。
例え別れる事が決まっていても最後の瞬間は共に居たい。
俺はそう思い学校へ向かった。
ハルヒは開口一番に話してくる。
「有希昨日も来なかったけど本当に大丈夫なのかしら?
何か大きな病気なんじゃないかしら・・・」
今のハルヒになら全てを話してもいい気がする・・・。
宇宙人、未来人、超能力者が居る事。
それは身近に居て様々な事件があった事。
それでも長門を救う事は出来ない・・・。
能力を失ったハルヒは俺と同じで無力なのだから・・・。
・・・・・・?
俺は何かおかしなところに気付いた。
宇宙人、未来人、超能力者。
その存在理由はハルヒがそれを望んだからだ。
そして宇宙人・・・。長門はハルヒの監視が役割。
超能力者・・・。古泉はハルヒの作り出す閉鎖空間の鎮圧。
思い出した。未来人。朝比奈さんの役割。
それもハルヒの観察だったはずだ。
ならば朝比奈さんも未来に帰らなければならないはず・・・。
だが今の朝比奈さんからはそんな素振りは感じない。
つまり帰る必要が無いという事だ。
ということは・・・ハルヒが力を失う直前。何らかの出来事があったはずだ。
それをなかった事にすれば長門の存在理由は生まれるのではないか。
タイムトラベル・・・。またあれをすればいいのだ。
きっと何とかなる。まずは古泉にハルヒが力を失った日を聞く。
そしてその日に朝比奈さんに連れて行ってもらう。
何が起こったのかは分らない。だがきっと何とかなる。
いや、しなければならない。
時間は今日を含め二日。ギリギリのラインだ。
「ちょっとキョン! 聞いてるの?」
ハルヒの声で思考から呼び覚まされた。
「ああ悪い。ちょっと考え事をしてた・・・。悪いついでになんだが今日の掃除当番
代わってくれないか?二日連続ですまないとは思うが埋め合わせはする。」
一刻も早く二人に話し実行するにはハルヒが部室に来るのを遅らせる必要がある。
「しょうがないわね。必ず埋め合わせしなさいよ! 高くつくんだから!」
ああ。いくらでもしてやるよ。全てが終わってからな・・・。

 

 

 

部室へ急ぐ。ノックも忘れていた。もし朝比奈さんが着替えていたら大変だった。
幸いにもそんな事は無く、朝比奈さんと古泉が既に揃っていた。
俺は二人に事情を説明した。
古泉の話ではハルヒの力が失われたのは一週間前の事らしい。
「朝比奈さん。一週間前に飛ばしてもらえる事は出来ますか?」
「あ、はい。それが、ええと、昨日の夜言われたんですが、暫く時間遡行は
禁止だって・・・。力にはなれそうにないです・・・。ごめんなさい・・・」
時間遡行が禁止されている?何の為に?恐らく禁則事項とやらだろう。
だがそれなら朝比奈さんはこの時代に何で残れるんだ?
「朝比奈さんは悪くありませんよ。でも朝比奈さんも役割は終わったはずなのに
何故この時代に残っていられるんです?」
俺は疑問をぶつけてみる。理由が分れば何か糸口が掴めるかも知れない。
「ええとぉ・・・。それがおかしいんですよね・・・。特に何も言ってこないんです
本来なら戻らなきゃいけないはずなんですけど・・・分らないです・・・」
最後の手段もお手上げか・・・。時間遡行で歴史を変える事もできない・・・。
本当に別れるしかないのかよ・・・。
その後ハルヒがやってきて三日も居ない長門を強引にでも見舞いに行こうとするのを
必死で宥めていた。
皆で行っても何も出来ないんだ・・・。
俺はもう・・・。諦めるしかないのだろうか・・・?

 
 

俺は必死で考えていた。だがもう全ての手段が封じられている。
ハルヒの超人的能力は失われ、朝比奈さんの時間遡行は禁止された。
古泉の超能力はこの状況では役に立たない。
尤も一番役に立たないのは俺だろう。
頭も回らない。力だって無い。何も出来ないのだ・・・。
長門に電話するか・・・。そう思ったがまた悲しい思いをさせるだけのような気がして
その日は何もしないまま眠りにつくことにした・・・。
後一日・・・。明日で全て終わってしまうのか・・・?

 
 
 
 

これ程までに憂鬱な朝は初めてだ。
空はこれ以上無いくらい灰色を映している。
いつものハイキングコースが三割り増しで辛く感じる。
足取りは重い・・・。風は強く吹いていた・・・。
席に着くと俺はハルヒに話しかける。
俺なりに考えたことを伝えようと思ったのだ。
最後の時それを皆で迎えよう。
辛いかもしれないが皆で見送る事で悲しみを分け合う事が出来るかもしれない。
「なぁ。長門の事なんだが・・・」
ハルヒの口からは信じられない言葉が返ってきた。
「誰よそれ。新入生?」
俺は長門の言葉を思い出した。
「貴方以外からの私の存在に関する記憶を消す」
それが既に行われているのだ・・・。
いや・・・。何でもない・・・。俺はそう告げると心を決めた。
長門に会おう。
何も出来なくてもいい。
近くに居るだけでいいんだ。
一人で寂しく消えるよりずっとましなはずだ・・・。
俺は活動に出れない事を告げるとあの公園へと向かっていた。
長門が俺を待っていた場所・・・。
そこで最後の時を共に迎えよう。そう思った。

 
 

公園に向かうとベンチには長門が居た。
「待っていたのか・・・?」
「・・・。貴方はきっと来ると思っていた・・・。」
俺は長門の隣に座る。
色々あったよな・・・。
初めて図書館に行った事・・・。
野球大会。
カマドウマ事件。
孤島での殺人事件。
終わらない夏休み。
文化祭。
消失事件。
雪山での遭難事件。
思い返せば色々なことがあった。
その度に俺達は長門に助けられた。
「思い返すと色々あったよな・・・」
「・・・。どれも大切な思い出・・・。でももうこれからは・・・」
その先は言わなくても分った。
もう楽しい日々は送れない・・・。
「いつの頃からか私は貴方に特別な感情を抱いていた・・・」
長門が告げる。
「・・・。それが好意だと気付いたのは最近の事。私は貴方が・・・
好き・・・」
長門からの告白。
それを聞いて俺は驚いていた。だが俺も直に答える事が出来た。
長門の言葉で俺も気付いたのだ。
「俺も長門の事が好きだ・・・」
「・・・嬉しい。でも・・・」
周りはいつしか暗闇に包まれていた。
俺は長門を抱きしめた。
「長門が好きだ・・・。離れたくなんて無い!離したくない!」
腕の中の小さな身体。確かに感じる温もり。これが無くなるなんて事を信じられない。
「ありがとう・・・。最後でもこうしていられる事が幸せに思う・・・」
どのくらいそうしていただろうか。
何も喋らないまま永遠とも思われる時が流れていた。
「・・・そろそろ時間・・・私は消えてしまう・・・」
「そうか・・・。でも俺は絶対に忘れない!長門がお前がここに居た事、
長門の想い、長門の心を!」
「・・・最後に会えてよかった・・・」
少しずつ薄まっていく体・・・。俺は必死に涙を堪えていた。
長門は・・・。やはり涙を堪えているのか瞳に輝きを宿していた・・・。
そして俺の腕の中から温もりが、重さが消えた・・・。
次の瞬間堪えていたものが噴出してしまった。
「長門ォォォォ・・・・・!」
俺は泣いていた。心から泣いていた・・・。
空からは粉雪が舞い降りていた・・・。

 
 
 
 

長門が居なくなりSOS団の人数は一人減った。
だがその事実に気付いているのは俺だけだった。
特に大きな事件も起きず平和な日々が過ぎていった。
俺は心に穴が開いた感じで虚ろにすごしていた・・・。
季節は巡り春。桜咲き春風が優しくなっていた。
俺はいつしか幻想を抱くようになっていた。
部室のドアを開けたとき。
あの時と同じように窓辺で本を読んでいる少女・・・。
再会を願っていた。
その日もそんな思いを抱きながら。叶わないと知りつつも・・・。
ドアの向こうに広がって居た光景は・・・。
・・・・・・。
見間違うはずも無い。そこに長門が居た。
あの日ハルヒに連れられてここに来た時と同じように座っていた。
ただ一つ違うのは眼鏡をかけていない事だ。
「長門・・・なのか?」
答える代わりに俺の元に近づく長門・・・。
そしてゆっくりと口を開いた。
「涼宮ハルヒに再び例の能力が生まれた。私はそれを観測する為再び戻ることが出来た」
それだけで十分だった。
次の瞬間俺は長門を抱きしめていた。
「良かった・・・。良かった・・・。俺・・・ずっと長門を・・・」
「・・・。私も嬉しい。また皆と貴方と過ごせる・・・。」
行き成りドアが開き、「アンタ! 有希に何してんのよ!」
団長殿の声と同時に飛び蹴りを食らわされた。
吹っ飛ばされる俺。
「有希。大丈夫?変な事されなかった?」
「・・・。大丈夫・・・。でも彼が・・・。」
俺たちの日常は戻ってきた。
ただ一つ違うことは俺は自分の気持ちに気づいた事だ。
長門も自分の気持ちに気付いた。
恐らくこれからはハルヒには見つからないように付き合っていくのだろう。
時間はたっぷりある。
失っていた時はゆっくり埋めていけばいい。
そう思えた。

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:35 (3088d)