作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希にプロポーズ』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-18 (水) 01:02:14

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

女性とは実に罪深い生きものではないだろうか。いや、誤解しないで頂きたいのだが、
女性差別反対運動は全面的に支持しているし、
子供を産む機械なんて妄言を吐きやがる野郎なんぞ見かけたものなら、
そいつの頭を一発殴り、謝罪した後もう二発オマケしてやるほど腹も立つ。
それぐらい女性の味方であると自負している。それに尊敬もしているさ。

 

だがな、それでも納得できないんだよ。なぜ我々男性をこれ程までに困惑させるのか。
健全な男子であれば一度は経験があると思う。
身長差による上目遣い、会話中のさりげないボディータッチ。そして思わせ振りな態度。
当然それはSOS団に所属する三人娘にも言えることであり、俺の理性は限界に達していた。
そりゃあ本人達に自覚は無いのかもしれないが、こっちの身にもなってもらいたい。
ハルヒはバニーやらチャイナやら、露出の多い衣裳で平然と俺の前を歩き回るし、
朝比奈さんの献身的なお姿は言うまでもなく魅力的だ。それからもう一人、
「…………」
半端なシャギーをピクリとも動かさずに本を読む文芸少女。
俺がさっきから黙り込んでいるのは長門と二人きりだからだ。出会った当初は気まずい思いをしたものの、
今となっては心安らぐ一時へと変貌を遂げた。
ホウキを振り回しているであろうハルヒも、今日も俺に勝てないニヤケ面も、
鶴屋さんとのお喋りについつい時間を忘れて夢中になっていらっしゃる朝比奈さんも、
「もう少しゆっくりしてこいよ」
そんな独り言を口にしてしまう程、俺はこの時間を楽しんでいた。
「……邪魔だった?」
気付いているのかね。
この一年でおまえはロボットから無口な女の子へと成長した。勘違いじゃないぞ。
一筆書いてやってもいい。以前のおまえはそんなにハッキリと感情を顔に出さなかった。
俺の独り言を聞いた長門は不安そうに唇を歪めていたが、
「すまん。長門のことじゃないんだ。気にするな」
「そう。わかった」
安心したように大きく頷き、読みかけのハードカバーへ視線を戻した。

 

ページをめくる音が一定のリズムで繰り返される。
母親のお腹の中で、赤ん坊はこんな気持ちなのかもしれない。
変わらない景色、変わらない温もり、少しずつ変わっていく自分。
そんな変化に一喜一憂する父親。絶対的な安心感。
長机に突っ伏して窓際の長門を見る。………はて?

 

俺が感じたのは赤ん坊の気持ちか、その成長を見守る父親の方か。
まぁどちらでもいいさ。幸せなことに違いはないからな。
俺は今、幸せなんだ。

 
 

俺の思考回路が眠気によってコーティングされていく。何か考え事をしていた気もするのだが……忘れた。
頭の回転が悪いときは決まって可笑しなことを言い出すものであり、何を思ったのか、
「なあ長門。おまえも一人は淋しいなんて思ったりするのか?」
気の抜けた声で言い終えてから気付く。……そう。とか言われたらどうする?
抱き締めて「俺がついてる」ぐらいしか思い浮かばん。しかも残念ながらそんな度胸は無い。
「それだけでは正確な回答は困難。詳細を」
机とドッキングした俺の顔を見つめている。ここで話を濁せば良かったんだろうな。
「家族が欲しいとか考えないか?」
誰も居ない真っ暗な部屋に向かって「ただいま」なんて言わせてるなら許さねぇぞ、思念体さんよ。

 

長門も自分の変化に気付いているらしい。昔なら俺の目を見て速答したはずだ。
「……最初から一人。もう慣れた………淋しくない」
聞き取れない程小さな声で、俺の視線を避けるように俯きながらそう答えた。
何と言ってやるべきなのか。このまま黙っているくらいなら男をやめたほうがマシだ。
気持ちを押さえ込んで強がりつつ、まったくページの進まない本を眺めている長門。
その女の子に俺は何をしてやれる?
考えた結果、くそ真面目な顔で言い放った。……眠気のせいだと思いたい。

 

「長門。俺の家族になってくれ」
「ありがとう。……パパ」
よーし、パパ今日はカレー作っちゃうぞー。
「いや違う、そっちじゃない」
さすがに言葉の裏を読むのは難しいか。それとも遠回しすぎるのかもしれんな。
俺の言葉をどう受け取ったのか、少し乱暴に本を閉じて俺を睨み付け、
「……あなたに『かあさん』と呼ばれるような歳ではない」
「それも違う。ほら、他にあるだろ?」
今さら妹が一人増えたところで何の問題も無い。一緒に暮らすのはイロイロとまずいので無理だが、
こんな兄貴でも面倒見は良い方なんだぜ。それに長門から「お兄ちゃん」と呼ばれてみたい。
……悶絶ものだ。
「あなたの気持ちはうれしい………でも……」
「法律だとか血の繋がりなんて関係無い。さあ、呼んでくれ」
まるでずっと待っていたプロポーズを、たった今彼氏から伝えられた彼女の瞳……なぜ?
幸せを噛み締めるようにゆっくりと目を閉じ、再び開かれた潤んだ瞳を俺に向けると、
「………『あなた』」

 

ああ、思い出した。
女性の紛らわしい言動について思案していたんだったな。
訂正しよう。それは男も同じであると。
「浮気はダメ……約束」

 

本当のことを言うべきか、それとも黙っているべきか。
俺の出した結論はこいつに聞いてくれ。
初めて家族を手に入れた、
この幼い嫁さんにな。

 
 

END

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:35 (3092d)