作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希のぬいぐるみ』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-15 (日) 23:00:36

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「名は体を表す」とはよく言ったものである。
しかし、自分の名前に相応しい人生を歩もうと決意している人間などそう多くはないだろうし、
少なくとも俺の周りには、そんな親孝行に精を出す該当者は存在しない。
にもかかわらず。
俺の名前はまるでレントゲン写真のような正確さで内面をよく表しているし、
未来から来た朝比奈さんはそのまんまだし、古泉は相変わらずどうでもいいし、
ハルヒについては何も言うまい。もはや日本人ギリギリのネーミングセンスだな。
長門は……なんだろう。
あいつが書いた幻想ホラー。あの語り手が長門だとしたら『雪』だよな。確かに肌は白いが。
詳しく聞いてみたい気もする。
「………ひみつ」
降り積もった新雪のように汚れを知らない瞳。
その中から捜し物を見つけることはできなかった。
「いじわるしないで教えてくれよ」
「……だめ」
一瞬視線を外し、悩んだふりをしてからそうつぶやく。残念。

 

俺は少し歩幅を狭め、いつもよりノンビリとした散歩を楽しむことにした。
言ってくれればいいのに。だが、
俺に合わせて一生懸命足を動かす長門もそれはそれで可愛いかったな。
そんな微笑ましい光景に癒されていた俺は、突然浮かび上がった懸案事項によってどん底に突き落とされる。
これはマズイぞ。俺の記憶が正しければ一回も呼ばれていない。
「ひとつ聞いてもいいか?」
「どうぞ」
声をかける前からこっちを向いていた気もするが今はどうでもいい。
これだけは確認しておかなくてはならない。何だかんだで長い付き合いだ。そろそろ……
「名前で呼んでくれないか? いや、せめて『キョン』でもいいから」

 

こいつは俺のことを差すとき「あなた」と言う。そりゃあこの無表情で「おまえ」なんて呼ばれた日には、
持て余した熱い涙でまくらを濡らすこと間違いなしであり、それより断然マシなことは言うまでもなく、
そもそも知り合ったばかりなのだし、最初のうちは気にもしていなかったのだが、
「もしかして……嫌いか? そうだよな。たくさん迷惑かけたしな。」
それしかないだろ?
「………ちがう」
目の前の小さな女神さまは足を止めて、
「あなたを嫌うことはありえない。ただ……少し恥ずかしい」
言い終わると同時に歩いていってしまった。
やれやれ。それなら安心だ。だが何故俺だけなんだ?俺の名前はそんなに呼びにくいのだろうか。
思案していた俺を邪魔するように、聞き慣れた怒鳴り声が俺を呼ぶ。
「キョン! 早く歩きなさい! ゲーセンはすぐそこよっ!」

 
 

もはや不思議探索と言えるのだろうか?開口一番「ゲーセン行きたい!」反論無し。決定!

 

そうして訪れたゲームセンター。店内に足を踏み入れると、
「おお! すげー可愛くね?」
同年代と思われる野郎共が、うちの女子部員たちを見て騒めきだす。
手なんか出してみろ。古泉が黙ってないぜ。
「ふふ、僕が逆にマッガーレしちゃいますよ♪」
しかし、ハルヒが居るかぎりそんな心配は必要なく、群がる男たちを蹴散らしながらズンズン進んでいく。
今日ばかりは頼もしいね。

 

「くそ! もう一回だ! その前に便所行ってくる」
「ふふん。何度でも相手になるわよ」
レースゲームは初めてだなんて絶対ウソだろ。あのカウンターのあて方は正気じゃない。

 

ほとばしる情熱を便器に注ぎ込み、リベンジに燃える俺を冷静にしてくれたのは長門だった。
ハルヒたちから離れ、一人でUFOキャッチャーを熱心に見つめている。
やはり何か通じ合うものがあるのだろうか……なんてな。
新作のゲームソフトを諦めるのは辛いが、仕方ない。俺は便所の隣にある両替機まで引き返した。
少し待ってろ、長門。

 

長門のご希望はヒヨコ。そう、あの黄色くてモフモフしたヒヨコ。宇宙人の趣味はわからん。
「長門、ほら。せいぜい可愛がってくれ」
俺の長年にわたる修業の成果もあり、わずか23回という新記録を叩きだした。そこ、笑っていいぞ。
「……ありがとう。大切にする」
受け取った長門はヒヨコを抱き締めてモフモフ開始。その後顔を押しつけて停止。
毛並みが気に入らないのかと心配し始めた頃、
「………持ってて」
ヒヨコを差し出して俺と目を合わせた。気のせいなのか、どことなく緊張しているように見える。
そのまま俺の手の中まで目線を降ろし、控えめな深呼吸を終えてから、
「……あなたの名前は……キョン」

 

両手をギュッと握って脇目も振らずに語りだした。
「……わたしは好き。読書より好き………キョンが好き」
長門をここまで惚れさせたコイツに少々嫉妬しつつ、なぜか俺の顔が熱くなってきた。
「………ずっと近くに居たい。……居て。……キョン」
愛の告白を成し遂げた長門。下を向いて何かを待ってる……のか?
もの言わぬコイツの代わりに俺が答えようとした瞬間、何かが視界に飛び込んでくる。
黄色い、カチューシャだ。
「団員たちが仲良くてあたしも嬉しいわー。とーっても可愛いヒヨコね。キョン?」
感情の豊かな棒読みなんて初めて聞いたぜ、ハル…ぬぉわ!!

 

まぁ説明するまでもないだろう。ボロボロだ。
それよりも、ヒヨコから返事を貰えなかった長門が気になるな。

 

心配無いか。
これから先、おまえの隣にはいつも、いつまでも、
キョンが居るからな。

 
 

END

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:34 (3093d)