作品

概要

作者電波の人
作品名有希と口笛
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-12 (木) 22:15:34

登場キャラ

キョン登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

 毎日、暴力団長こと涼宮ハルヒにいいように使われ疲労困憊になる日常でも、
 たまにはいいことが起きるものだ。
 なんていったって、今日は、なんとあの麗しのマイエンジェル朝比奈さんと一緒に登校できたからな。
 おかげで俺のテンションは鯉の滝登りのごとく上昇中だ。
 授業中もなんだか凄い覇気を放出している団長様も全く気にならなかったからな。
 今日の登校風景を思い出していたら、あっという間に放課後になり、
 俺はテンションの高いまま、そのままSOS団の根城である文芸室へ直行した。
 おっと、テンションが高いから、そのまま扉を開けてしまうとこだったぜ。
 ここでうっかりノックせずに扉を開け、朝比奈さんの生着替えを目撃してしまったら、顔を真っ赤に染めた朝比奈さんに叫ばれ、
気まずい思いをする羽目になってしまうからな。
と思いつつ、ノックをすると
「・・・」とおなじみの三点リーダしか帰ってこなかった。
「よっす!今日は長門だけかぁ。」と言いながら、
 本から顔を上げまるで小宇宙を形成しているような瞳でこっちを凝視している長門に挨拶。
 長門もこちらにしか分からないような角度で軽く会釈し、すぐに読書に戻る。
本の題名は・・・、スマンなんて書いてあるんだそれ?ロシア語か?
まぁ、どうでもいいかぁ。
ふふふ、今日の朝比奈さんとの登校よかったな〜と思い出し、
それがどうしても動作に出てしまう。
どうやら、俺は無意識のうちに口笛を吹いていたみたいだ。
気がつくと、長門が自分の定位置から離れ俺のすぐ傍に接近して俺の唇のほうを吸い込まれるような瞳で凝視していたからな。
ん?長門。お前口笛に興味あるのか?
「・・・ある。けど、吹けない。教えて。」
教えるのはいいが、
しかし、もうすぐ不機嫌なハルh「彼女は担任の岡部に呼び出されていた。確認済み。
朝比奈みくるは友人と一緒に清掃作業をしている。
そして、その後その友人と買いものに行くつもり。
古泉一樹はバイトで今日の団活には来れない。これも確認済み。だから大丈夫。教えて」
と子犬が親犬を見るような目で懇願された。

 
 

よし、わかった。じゃ教えるぞ。
と俺は長門の願いを快く了承した。
いつもこいつにはお世話になっているしな。
 しかも、長門がこういうのに興味をもってくれのは人間に近づいている証拠でもあるし俺にとってもうれしいことだ。
じゃぁまずは音を出すことから始めるか。
音の出し方は唇の力を抜き、軽く閉じ、合わせた唇の中心を少し開くんだ。
そして、『う』の発音のときの口の形に似せ、ゆっくりと息を吐き、
口の中で舌を動かすんだ。
そうすると何となく音の出る舌の位置が見つかると思うぞ。一回やってみ。
「・・・p、ピ・・・、ピ〜。・・・出た」
よしっ、その調子だ。やっぱり長門は覚えが早いな。
 あ、そうそう力むと音が出にくくなるから口笛を吹くときはリラックスするんだぞ。
「解った。」
というようなやりとりを数回していくうちに長門の口笛の音はみるみる上手くなっていく。
あっという間に俺よりも上手くなってしまった。
 口笛を一生懸命練習している長門の表情はなんだかいつもよりほんのすこしだけ柔らかいように感じる。
あいつも楽しんでやっているんだな。
 結局、下校時刻になったので、今日はこれまでという感じで下校することになった。
 そういえば、結局ハルヒは来なかったな。
よっぽど、岡部の話にむかついたんだな。と、まだハイテンションな俺はそんな些細なことは気にしなかった。

 
 

家に帰り、夕食を食べ終え、自分の部屋で、
 今日の朝比奈さんとの登校と長門の口笛指導、
と凡人なら羨ましがる微笑ましい出来事を脳内で思い返していた。
集中していていつの間にか携帯の電話が鳴っていたこと気がつかなかったくらいだ。
発信源を確認せずに急いで電話に出る。
もしもし俺だが。
 「・・・。」
この三点リーダは長門だな。
電話越しに沈黙されてもこっちにはさっぱり解らんぞ?
「今すぐ私の家に来て」
 明日じゃぁダメなのk「今すぐ来て」
 と長門は用件を言うとすぐに電話を切ってしまった。
 長門がすぐに家に来てほしいとはよっぽどなにか重大な問題でも発生したのだろう。
 ハイテンションで気にしてはいなかったが、今日はハルヒの機嫌も悪かったみたいだし。
 俺に何か役に立てればいいがと思いながら、
 今までだらけきっていた体に鞭を打ち、夜なので少し厚めのジャケットを着て、
 長門の家へ直行した。鍵のかかっている玄関を開けてもらい、部屋のインターホンを押す。
 「入って」
 という声と同時に自動で扉が開く。いつものように部屋に入ると、
 いきなり耳に、まるでアクアマリンのような透明で、なおかつどこか安心させるような綺麗な口笛が聞こえてきた。
 長門が部屋の中央で口笛を俺に向けて吹いていたのだ。

 
 

「・・・」この三点リーダは俺のものである。
 俺は長門の吹く口笛に完全に心を奪われていたのだ。
 俺の耳に入ってくる曲は、
 傾聴すると、高く単純な旋律の中に優美さがあふれており、
 それでいてクラシック音楽らしくゆったりとしていて、
 まるでここの空間が優しさに包まれている感じで、
 これを聞いた者全ての人が、長門は天使が産んだ妖精ではないかと勘違いしてしまうほど秀麗で透き通ったものであった。
と俺が感動に浸っている間に、いつのまにか演奏は終わっていて、長門はこっちを少し不安そうな目で見ていた。
「どう?」
ん?あ、あぁ、良かったぜ。
「変ではなかった?」
 変なもんか、俺は長門のその綺麗な美声に心から感銘を受けていて、
 ずっとさっきから口を閉めるのを忘れるくらいお前の美しい口笛を心からしっかり聞いていたのだ。
と力説すると
「そう・・・。」
と少し俯いた。その瞳には喜びとすこしの恥じらいが混在しているように感じた。
 そういえば、長門が吹いていた曲はなんなんだ?どっかで聞いたことあるような気がするが。
「それは、秘密・・・。」
 そうか、秘密じゃ仕方がないかと、どっかで自分を納得させ、
 今日はいいものが聞けたと思い、また、俺と長門だけの秘密のコンサートで長門の口笛を聞きたいと思いながら、帰路についた。

 
 
 
 
 

 私は、部屋の窓から彼の帰る姿を凝視しながら、そっとつぶやいた。
 ・・・私が演奏した曲はエドワード・エルガー作曲の「愛の挨拶」。彼に曲の由来を知ってもらうのはもう少し後でいい。

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:33 (3093d)