作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希のドッキリ』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-12 (木) 18:55:59

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

すまん。何だって?
「だから、あんた有希にコクりなさい」
さくら満開のこの時期、胸に秘めた熱い思いを打ち明けるにはピッタリの季節である。
もちろん長門のことは嫌いじゃない。何度も世話になってるし、おまけに誰が見たってAランク美少女だ。
そんな長門の愛情弁当に感謝しつつ、週末のデートプランを二人きりの文芸部室で話し合う。
映画館でこっそり手を握ってしまおうか。その後は思いきって部屋へ呼んでみよう。
俺の幼いころの写真なんぞ眺めてるうちに日は沈み、見つめあう二人はそっと目を閉じ…
「……ョン!キョンってば!」
「ん?ああ、何だっけ?」
「ちゃんと聞きなさいよ!いい?まず部室に入ったら…」

 

つまり、長門にドッキリを仕掛けよう!らしい。
それはともかく、なぜ俺なんだ。少なくとも古泉のほうが俳優に向いてるだろうよ。
「長門さんは僕に興味が無いようです。あなたが適任でしょう」
そう言って肩をすくめる古泉。こんなボロい旧館の廊下じゃ似合わないな。それよりも、
「そ、そんな…長門さんがかわいそうです…」
何処であろうと変わらぬ美しさの朝比奈さん。オロオロと長門の心配をするその姿は、
外見どおりの天使っぷりだ。おまえも少しは見習ったらどうだ?
「大丈夫よみくるちゃん!すぐ謝れば許してくれるわよ」
10年越しの片思いが成就したような笑顔で言い放った。どうなっても知らんからな。
長門が本気で怒ったら?言うまでもないだろう。宇宙戦争の幕開けである。
そもそも、万が一長門が俺に恋心を抱いていたらどうすんだ?
嘘だと知った長門に涙なんか流されてみろ。生きていく自信が無い。
「やっぱりお断わりだな」
サンダル履きの場違いな客を見つめる高級ブランド店員の顔で、
「はぁ?あんたなんてスッパリふられるのがオチよ!こういう奴がストーカーになるのよね」
性犯罪者を見下す銀行強盗のような表情に変わり、
「でもね、告白されて嬉しくない女はいないわ。有希の照れた顔見たくない?」

 

忘れもしない去年の冬。あの三日間の記憶が甦った。
控え目な笑顔で入部届けを差し出した内気な文芸部員。

 

「キョン、作戦どおりやるのよ!」
ささやかな期待を持ちつつ部室のドアを開ける。
もう一度会えるかもしれないな。
あの時の長門有希に。

 

やはりと言うべきか、そこには普段と同じ無表情で読書中の長門が一人。
「よう、今日はいい天気だな」
当然のことを当然のように口にした俺を見上げ、日々角度を増しているお馴染みの返答。
「………」コクリ
さて、ドッキリとはいえ長門と二人きりの空間に早くも心臓が自己主張を始めやがる。
おや?なぜ長門の返事を心配してるんだ?これじゃまるで俺が本気みたいじゃないか。
「長門、ちょっといいか」
まずは団長机の前まで誘導。これは成功だ。
「……なに?」
この無垢な瞳を騙すのは気が引ける。しかしやらなければハルヒに何を言われるか…
俺は長門の細い肩をつかみ、
「おまえが好きだ。仲間としてではなく、一人の女として…大好きなんだ」

 

一分経過、無言。
そうだよな。好きでもない奴に愛を告げられたところで困るだけだろ。
「………わたし…」
いかん。嘘でも長門に拒絶されたくはない。早く言っちまおう。
「…も…好」
「すまん!嘘なんだ!許してくれ。ドッキリなんだよ」
何かを言いかけた長門は一瞬目を見開いた後、俺に背を向けてしまった。怒ってるよな。
「……いい。…気にしてない」
フルフルと肩を震わせながら弱々しい声を出した。笑ってる?そんなわけないか。
「なあ長…と?」
一歩踏み出して覗き込んだ横顔には一筋の涙。
後悔先に立たず。誰かは知らんがうまい事言ったもんだな。

 

「いや…すまん。まさかおまえが…その」
俺に涙を見られまいと顔を背け、
「嘘でも……嬉しかった」
もう無理だ。長門を強く抱き締め、本当の気持ちを…
「聞いてくれ。俺は『あの日』からおまえのことが頭から離れなかった。
それがどんな気持ちかはわからん。だが失いたくない。それは本当だ。だから…」
バァン!
「はいカット!有希、お疲れさま。それからキョン?」
突然ドアが吹っ飛んだように開き、引きつった笑顔のハルヒ、他二名が現れた。
そして腕の中にはアイスの当たり棒を拾ったような微笑み。うそ泣き?
「…朝比奈みくる伝授」

 

「アドリブにしては名演技だったわ。次の映画は主演にしてあげる」
眉をピクつかせながら俺の首を絞め、
「その時まで生きてたらの話だけどね♪」
つまり逆ドッキリか。いやーまいった。
朝比奈さんへの認識を改めつつ、薄れゆく意識の中最後に見たものは…

 

「……『失いたくない』…ユニーク」
ホクホクとした笑顔で部室からダッシュしていく長門の姿だった。
こら!逃げるな!

 
 

END

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:33 (2711d)