作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希とホラー映画』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-09 (月) 01:30:33

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「……わかった。証拠を見せる」
念のために言っておきたいのだが、長門が宇宙人であることを今さら証明しろだとか、
実はクローゼットの中に少女マンガを全巻コンプしているのではないか?などと疑っているわけではない。
目の前の長門が、大事に取っておいたショートケーキの苺を横取りされたような顔で睨んでいる訳は、
俺がつい言ってしまった一言に原因があるのだろう。
「悪かったよ、軽いジョークだ」
「…うそ。あなたは本気だった。ついてきて」
そして、俺の手を引っ張りながらズンズンと前を歩く少女により、
レンタルビデオ店へ連行されているわけだ。…口は災いの元だな。
朝比奈さん、俺を十分前の図書館まで連れていってはくれませんか?
長門の逆鱗に触れてしまった俺が、あの余計な一言を口にする前に。

 

土曜日の午前十時。俺は痴漢容疑をかけられた駅員の気分だった。
もちろんそんな度胸は無く、そもそもココは満員電車の中ではない。
「なんでいつも二人が…」
いつもの喫茶店でくじ引きを終えた直後、ハルヒによる不当逮捕が強行された。
「公正な結果じゃないか。何が不満なんだ?」
「それは……うぅ」
今日の不思議探索は長門とペアだ。別に珍しい事ではなく、むしろ最近は多くなってきたな。
古泉や朝比奈さんには同情するものの、長門と過ごす穏やかな時間は少し楽しみになっていた。
「涼宮さん、仕方ありませんよ。それとも次回から指名制度を採用しますか?」
ハルヒが不機嫌になって一番困るのはコイツだろう。優雅にブラックを飲み干し、
お得意のニヤケ面を俺に向けながら提案を出した。だからコッチ見んな!
「そ、そうね。もしそうしたらキョンは誰を選ぶのかしら?」
そう言って強制的なテレパシーを送信してくる。なんで俺に聞くんだ。
受信拒否をしつつ朝比奈さんを見ると、
「(キョンくん…わ、私を…でもそれじゃ同じ穴の二の舞…)」
「(キョンたん…おっと、つい妄想が膨らんで……アッー!)」
妙な電波が混線したが、こちらも何やら送信している様子。みんなどうしたんだ?
こんな時に一番冷静なのが長門だ。頼ってばかりでスマンがちょっと助け…
「(……わかってるはず………わたしを選ばないと…情…報…結…)」
隣には、安全装置を外した45口径の瞳が俺を狙っていた。

 

…長門。弾は入ってないよな?
「……ホールドアップ」

 
 

結局俺はなんとか言い逃れ、体に穴が開くことはなかった。
さっきの件ですっかり主導権を握られてしまい、
「…今日はあなたも本を読むべき。これがオススメ」
図書館に着くなり分厚いハードカバーを差し出してきた。これもSFか、本当に好きなんだな。
「しかしなぁ、俺は昼寝したりお前を眺めてるほうがいいんだが」
図書館で静かに読書をするお前はなかなかのいやし系なんだ。しかし長門は、
「………だから読むべき。…あなたが見ていると集中できない」
怒ったような照れているような。人並みの羞恥心が身についていたとは驚きだ。

 

20分後、
「たまにはSF以外も読んでみろ。ほれ、オススメだ」
テーブルに座ればいいのに時間が惜しいのか、本棚の前で立ち読みをしている長門に手渡す。
少し試してみたい事があってな。長門がどれくらい人間に近づいたか気になるだろ?
初めは驚いた様子で俺を見ていたが、微かに口元を緩め、
「わかった。読んでみる」
受け取ってくれた。さて、どんな感想が返ってくるのやら。

 

さらに20分後、ウトウトしていた俺を誰かが叩いている。イテェ!
「……これは返す。内容があまりにも稚拙」
見れば体をワナワナと震わせている長門の姿。もう読んだのか?
「途中まで。これ以上読む価値は無い。あなたには失望した」
…まさか、
「恐かったんだろ」
すると、今まで聞いたことも無いほど大きな声で、
「ちがう!恐くない!」
正直驚いたが間違いない。完璧だと思われた宇宙人にも弱点があったのだ。
プルプル震える手で突き返している本はホラー物。とは言っても大したことはない。
妖怪が出てきてそいつを封印するまでを描いた幼稚な話。…いかん、笑いそうだ。
「そんなにムキになるのは変だな。正直に言いなさい」
俺を睨み付けながら何かを考えている。体のプルプルが止まると同時に、
「……あなたはきっと後悔する」
そしてその予言は見事に的中する。まさかあんな事になるとは思わなかった。

 

「…で、これを借りたのはいいんだが」
『この恐怖に全俺がチビった!!』と、デカデカとキャッチコピーの書かれたDVD。
「どこで見るんだ?お前の部屋にテレビ無いよな」
「……あなたの部屋。異議は認めない」
どうやら堪忍袋ごと弾け飛んでしまったらしい。ここは素直に従うべきだろう。
なんとも都合の良すぎる話だが、母親と妹は親戚の家にお泊りだ。親父はもちろん出張中。

 

この流れだと…いやまさかな。

 
 

「お茶はいい。早く見せて」
まさしく飲み物を取りに部屋を出ようとした俺を制止し、既にベッドに座りスタンバっている。
自分が臆病じゃないところを早く見せたいのかね。やれやれ。
「…大丈夫。ベッドの下は覗かない……おっぱい星人」
なるほど。確認済みなら覗く必要は無いな。
ホラー映画よりも恐ろしい視線を避けつつDVDをセットする。それからカーテンを閉めて電気を消した。
これは「…このほうが恐怖が増す」という長門の指示であり、
暗い部屋のベッドで二人きりなのをいい事に、怪しい陰謀を企てているわけではないと付け足しておく。

 

「うわ!そう来るかよ」
「……………!」
これは予想以上かもしれん。
古ぼけた洋館に迷い込んだ五人の青年たち。初めは面白半分で探険しているのだが…
『ノー!ヘルプ!ヘル…アッー!!』
『マイコー!』
「………!!!」
突如バスルームの鏡から現れた血濡れの女性。そして逃げ遅れたマイケル氏。
残念だがあの様子では生きていないだろう。一刻も早く脱出を!だが、全てのドアは閉ざされている。
『シィット!ガッデム!』
戸惑いを隠せないジャック氏、その時!
『ジャァァックウゥ…ヘルプムィィ』
『マイコー!』
「……!!!!!」
ゾンビと化したマイケル氏が襲い掛かる!……なのだが。
「長門、もう見ないのか?」
先程から俺に抱きつき、マイケル氏の見事なゾンビっぷりから目を背けている。
どうせこんな事だろうとは思っていたさ。馬鹿にされたのが悔しくて意地になっていたんだよな?
「……ちがう…恐くな…」
『アァアァァ…モルスァァ』
『マイコー!』
「!!!!!!」
もう完全に見ていない。俺に正面から抱きついてブルブルと震えている。
もう言い訳はできんだろ。今にも溢れだしそうな涙を堪えつつ、
ゾンビでさえ骨抜きにしてしまう上目づかいで俺を見上げ、
「………こわい……」

 

弱点がバレてしまった長門は開き直り、
「もう帰れない。この部屋に泊まる許可を」
さも当然のように言い放った。気持ちは分かるが俺だって男だ。間違いを起こさないとは言いきれん。
「……平気。…あなたはおっぱい星人。だからわたしには…」
なぜかそこで止め、またしても45口径の瞳。
「そうは言ってもな、同じベッドじゃ…」
「この恐怖はあなたが原因……責任をとって」
…その言い方はずるいぞ、長門。

 

時計は午前3時を示している。俺にしがみついてスヤスヤ寝てる長門。
これで安眠できる男は居ないだろう。いや、古泉なら…
「………」モゾモゾ
すると長門が眠い目をこすりながら起き上がった。恐い夢でも見たのか?
「………トイレ」

 

その後、何度も扉の前で、
「ちゃんと居るから」
と言わされたことは言うまでもない。

 

END

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:31 (3092d)