作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希とラーメン屋台』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-04-04 (水) 23:19:09

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 
 

夕食を終え、心地よい満腹感と共にダラダラと過ごすこの時間は、
例え血を分けた妹であっても邪魔は許されない至福の一時と言えるだろう。
さらにそれが金曜日ともなれば、作曲者不明なハミングを延々とリピートする俺を
非難できる人間はそうそう居るものとは思えない。
しかし、そんなオアシスを長靴で踏み荒らすのが団長様の使命であり、
「光陽園駅前公園に集合!30秒以内!」
アイツも少しは落ち着いたと思っていたのだが…やれやれ。
それにしても妙だな。
こんな時間に緊急召集。そして場所は長門のマンションの近く。
いやいや、ただの偶然さ。長門は完全無敵の宇宙人だからな。
「まったくハルヒの奴も紛らわしい」
俺は自己ベストを更新した。

 

俺が公園に着いた時、既に外灯の下には見慣れた顔が4つ。
ほら見ろ。心配し過ぎだぜ、誰かさん。
「早かったわね。そんなに有希が心配なのかしら?」
「アホな事を言うな」
少し残念そうな長門の顔を視界の端で捉えつつ、
「それで今度は何を思い付いたんだ?」
「違うわよ。有希が誘ってくれたの!ラーメン食べに行こって」
ほぉ、それは珍しい。ラーメン屋に巨大カマキリでも発生したのだろうか。
「………」
それは無いか。
今にも割り箸を持って走りだしそうな長門を見ていると、
「この近くに屋台が来ているんですよ。次はいつ来るか分かりませんからね」
なるほど…説明御苦労、帰っていいぞ。いや泣くな。冗談だ。
「……」イラ
「ラーメンですかぁ。あっちで言う禁則事項みたいな物かなぁ?」
「……」イライラ
ラーメンの世代交代について詳しく聞きたいのだが、
「……」プチッ
我慢の限界に達した長門が歩きだした為、いつもより激しく揺れるショートカットを追う事となった。
せっかく長門が誘ってくれたんだしな。ラーメン一杯くらいなら何とかなるだろう。
見ればどうやら古泉も朝比奈さんも夕食は済ませてきたらしい。
仲間思いな団員達に尊敬の眼差しを送り、胸の中が熱くなるのを感じていた。
あぁ、ハルヒは別だ。アイツの胃袋は二つ有るに違いない。

 
 

「おじちゃん!ラーメン五つ超特急ねっ!」
「元気がいいねぇ、すぐ作るからね」
屋台は軽トラックを改造したタイプだった。イスは座り心地が良いとは言えないが、
この雰囲気は嫌いじゃない。昔はよく家族で来たもんだ。
「……ラーメン」チンチン
「とりあえず箸は置いとこうな」
ちょうど先客が帰った後らしく、今は俺達五人の貸し切り状態になっている。
左からハルヒ、古泉、朝比奈さん、長門、そして俺。
特に指定された訳ではないが、俺の横に無理矢理入ってきた長門は箸を置き、
お年玉の中身を確認するような瞳で店主の作業を見守っている。
「スープが醤油だけとは、こだわりを感じますね」
おそらく五十代であろう店主は細身ではあるものの、その手捌きはさすがにプロを意識させた。
「自信が有るのはコレだけでね。さぁできたよ、食べておくれ」
全員で『いただきます』をしてスープを飲む。こ、これは!
「すご!今までで一番よ!コレ」
全面的に支持するぞ、ハルヒ。
「ズズー…ゴクゴク。おかわり」
長門は既に食べ終え、二杯目を催促している。俺はさすがに無理だが本当にうまい。
これ程の腕が有るのになぜ…
「こんなに美味しいのに…どうしてお店出さないんですかぁ?」
朝比奈さんが地雷を踏んだ。

 

「できの悪いドラマみたいだけどね、この屋台は女房の形見なのさ」
店主は気にしている様子は無いが、聞かない方が良かったな。朝比奈さんは俯き、
「あ、あの…ごめんなさい…」
「いや、気にしないで!オッチャンは商売に向いてないんだよ。ハハハ!」
明るく笑い飛ばす店主。いやしかし…気まずい。
こんな時に掛ける言葉が見つからない俺達は、やはりまだまだ子供なんだな。
「………」
三杯目を平らげ、すっかりタヌキのような腹になっている長門。
意外にも、この状況を打開したのは長門の一言によるものだった。
「……………おかわり」
「あ、あたしも!何杯でもイケるわねっ!」
「わわ私もください!」
「僕にもください。成長期ですかね、自分でも驚きです」
…おいおい。ちょっと露骨過ぎやしないか?
そういう事はもっと自然にやるもんだ。
「おやじ!俺は二杯だ!」

 

帰り道、もはや自転車を漕ぐ気力も無く夜道を歩いていた。
その途中何回も、あの光景が頭に浮かぶ。

 

照れたように苦笑いする店主と、
寂しげな表情で屋台を見つめる長門の顔が、何回も。

 

END

 
 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:29 (2504d)