作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希の食べ放題』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-03-28 (水) 18:25:50

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

喜ぶべきだろう。
歴史的な瞬間を目撃できる人間はそう多くないからな。
「うぅっぷ、あんたの胃袋どうなってんの?」
質が良いとは言えない肉、これまた握りの緩い寿司。
しかし文句をつけるのはさすがに酷ではないか?
徐々に高さを増す二本のタワーを見ながら、この店の繁栄を心から祈るばかりだ。
「不純物を取り除いて、胃袋を再構成する」

 
 

冬休みも残り少なくなったある日、俺たちは北口駅前に集結していた。
あの雪山とんでも事件に巻き込まれた俺としては、
新学期までの僅かな平穏に浸りたいところなのだが…
「何言ってんのよキョン!やれる事はすべてやっておくの!」
「いいじゃないですか。今日ばかりは不思議な現象とも無縁でしょう」
だろうな。せいぜいテーブルに牛の丸焼きが寝そべるぐらいだろ。
それにコイツが居れば難なく骨まで退治してくれるだろうしな。
「………食べ放題…ゴクッ」
瞳の中に流れ星を量産している宇宙人を見ていた。
よだれを拭きなさい。

 

「食べ放題屋さんですかぁ…ケーキもあるかなぁ」
「大丈夫よみくるちゃん!下調べはしてあるから。ケーキも焼肉も寿司も食べ尽くすわよっ!」
拳を上げながら宣戦布告を表明したハルヒの後ろをゾロゾロ歩く。
時間は17時、夕食には少し早いな。
「いーの!今日は新年特別感謝デーなんだから。早くしないと入れないわよ」
「ずいぶん安いと思ったがそういう事か。いつも千円じゃ二日で潰れてるな」
いや、今日で最後になるかもしれん。
そもそも朝比奈さんは元を取れるかも心配だし、古泉が大食いする事も無いだろう。
もちろん俺は平均的な男子高校生の胃袋しか持ち合わせていない。
問題は残りの二人だな。
ハルヒの食欲もハンパではないが、長門の本気を想像するのは恐ろしい。
店中から注目を集めるのは間違いない。
「……情報操作は得意。他の客には最初からカルビが無かったことにする」
「そっちかよ!」

 

こうして俺たちは食べ物が支配する閉鎖空間に足を踏み入れた。
言わせてくれるか、いつものやつを。
「…やれやれだ」

 
 

「行くわよ有希!他の人に取られちゃうわ!」
「…大丈夫、私がさせない」

 

ルール無し、一時間耐久大食い選手権。開戦のゴングが鳴り響いた。
支払いを済ませたハルヒと長門はレシートも受け取らずに走りだし、
テーブルに乗り切らない程の食材を手に戻ってきた。
「……迂闊、海老と玉子を取り逃がした」
心底悔しそうな長門は寿司とデザート担当だったらしいが、
十人前は確保したんだ。胸を張ってもいいと思うぞ。
それよりも肉担当のハルヒが持ってきたのは何だ?
「ウホッ、これは良いガチムチ具合ですね」
「めんどくさいから塊で貰ってきたのよ。キョンに切らせてあげるわ!」
肉切り担当に任命された俺は、サッカーボール大の肉塊を取り分けながら店内を観察していた。
確かにハルヒの言うとうり早く来たのは正解だったな。
すでに各テーブルでは試合が開始されている。当然それはこちらも同じだ。
「…パクパクモキュモキュゴクパクパク」
「みくるちゃん!もっと食べなさい!ほらほら!」
「わ、わたしはもう…わぁaaムグゥ」
「ぼくもそろそろ限界のようです。少し食べす…フ、フンモッ!ウグ」
「古泉、リバースはトイレにしてくれ」

 

「パクパクゴクモキュモキュ…」
そして…、ハルヒに勝利しても変わらぬペースで食い続ける長門に注目が集まっていた。
当然だな、皿によるタワーが三本目に突入した時、
「お、お客さま。大変申し上げにくいのですが…」
「何よそれ!?そんな事聞いてないわよ!」
「しかし限度というものが…」
ついに店長が長門に許しを請いに来た。よく今まで我慢したと誉めてやりたいな。
自分が何か悪い事をしてしまったと思っているのか、
長門は俯いてションボリモードになっていた。
「……………ゴメンナサイ」
食べていいと言われたから食べただけだもんな。そんな長門を慰めていると…
「見てて気持ち良かったよ。よかったらコレ食べてね」
「いや本当、見た目じゃ分からないね。ほら、おじさんのをあげるよ」
店長がハルヒの牙を必死に避けている間に、他の客が次々と食べ物を持ってきた。
その様子を見て自分の分が悪い事に気付いたんだろう。おかげで長門の腹は無事満たされた。

 

「君には負けましたよ。次はこれを使ってください。でも手加減してね」
そう言って帰りぎわに割引チケットまでくれた店長の男気を讃えねばいかんな。
「………ありがとう。美味しかった」
長門は深々と頭を下げ、ハルヒたちと戦果報告をしながら歩いてる。

 

こうやって温かい人達と触れ合いながら成長していく長門。
それを喜ぶ俺の気持ちは親心なのか、はたまた違う感情なのか。

 

割引チケットを見つめる長門の横顔を

 

俺はいつまでも見ていた。

 

END

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:26 (2710d)