作品

概要

作者ありがとう
作品名『有希のウソつき』
カテゴリー長門SS(一般)
保管日2007-03-24 (土) 02:49:35

登場キャラ

キョン不登場
キョンの妹不登場
ハルヒ不登場
みくる不登場
古泉一樹不登場
鶴屋さん不登場
朝倉涼子不登場
喜緑江美里不登場
周防九曜不登場
思念体不登場
天蓋領域不登場
阪中不登場
谷口不登場
ミヨキチ不登場
佐々木不登場
橘京子不登場

SS

 

「珍しいですね。あなたから相談されるとは」
放課後の帰り道。意外な組み合わせがそこにあった。
「わかりました。彼との約束もありますしね。喜んで協力しますよ。」

 

『有希のウソつき』

 
 

「さぁ!次はみくるちゃんの番よ!」
今日も相変わらずハレハレユカイなこの女は、
今日も相変わらず愛らしい上級生を困らせていた。
朝比奈さん、たまには怒ったっていいんですよ?
あなたが本気でキレれば少しは反省する事でしょう。
仲間思いな独裁者であるこの団長さまも。

 
 

外は雨。後ろのクラスメートは太陽全開。
いつもどうりの朝の風景ではあるのだが…教室全体から感じる緊張感は何なんだ。
一触即発の空気の中、何か起きたら後ろの超人女を盾にしようと身構えていた。
なんてな。
「キョン!あんたちゃんと考えて来たでしょうね?
あたしをビックリさせる様な嘘をつかなきゃ死刑よっ!」
4月1日。つまりエイプリルフールだな。
今日ばかりは担任の岡部に
「ハンドボールなんて大嫌いです!」と言ったって許されるだろう。
いや、それはさすがにマズイか…。

 

とにかく、教室の空気が悪いのはそんな理由さ。
くだらない嘘にバカにされたくなくてピリピリしてる訳だ。

 

そんなイベントをハルヒが見逃す訳もなく、昨日の部活終了間際、
「みんな!明日は『大嘘つき大会』をやるわよっ!
とびっきりの嘘を考えてきなさい!」
当然反対意見はシカトされ、めでたく決定した。
ハルヒのワガママにも慣れてしまった自分に同情したが、
まぁいいさ。俺も興味があるからな。

 

窓際でいつもより少しだけ目を輝かせている宇宙人の嘘に。

 

ハルヒからの死刑宣告を受けた後、
谷口のバレバレな嘘に付き合いながら一つの懸案事項を抱えていた。
正直、何にも考えてないのだ。

 

もちろん怠けてた訳じゃない。
昨日お菓子により妹の買収に成功した俺は、静かな部屋でシャミセンと共に思案した。
「簡単ですよ。『俺はジョン・スミスだ』でいいでしょう」
冗談です。帰り道、女子部員から3歩離れて歩く俺の横で古泉が付け足した。
「当たり前だ」
いくらハルヒでも気付くだろう。
その名前を知ってるのはハルヒとジョン本人しか居ないはずだからな。

 

前を歩く長門の小さな頭を見つめた。
何を考えているんだか。
その後ろ姿はまるで、楽しい想像に頭を使いすぎて眠れなくなった
遊園地前日の子供みたいだな。

 

やれやれ。楽しみにしておくさ。

 
 

「さぁ!順番を決めるわよっ!」
頭の中に桜でも咲いてるんじゃないかと思う程の笑顔で
雑に畳んだ紙切れを四つ差し出した。
四つ?
「おい、ちょっと待て!お前は何番目なんだ?」
「何言ってんのよ。審査する人間が必要でしょ?
団長が直々に採点してあげるんだからね。ありがたく思いなさい!」
『特別審査員』の腕章を付けたハルヒは腰に手を当てて言い放った。

 

抽選の結果をお知らせしよう。
1番、古泉。2番、朝比奈さん。3番、俺。最後は長門だな。
良かったな長門。オチは頼んだぞ。
「こっ古泉くん!頑張ってくださぁ〜いっ」
戦闘力5割増は下らないであろう朝比奈さんの応援を受けながら、
古泉は立ち上がり肩をすくめた。どうでもいいが。

 

ハルヒはいつもの団長机でふんぞり返り、
横一列に並んで座る俺たちをニヤニヤ見ている。
まるで集団面接だな。ハルヒの部下になる気持ちは少しも無いが。

 

この後、俺たちは大変な目に合うのだが…
意外な事に、原因となったのは俺の隣でソワソワしている長門だった。

 

「実は…みなさんには黙っていましたが、僕は超能力者なんです」
おいおい。
朝比奈さんを挟んだ向こう側、一番左で話す古泉は得意気な顔でこう言った。
隣に座る朝比奈さんは口をポカーンとしている。間抜けな顔も素敵ですよ。
ハルヒは興味深そうにフンフン頷いてる。
長門は古泉の話なんかマッタク聞いてない。俺の右隣で相変わらずソワソワしてる。
「正体がばれると色々と不便ですからね。苦労してるんです」
「何か証拠はあるっ?」
やはり連れてきたのは間違いじゃなかった!みたいな顔でハルヒ。
「仕方無いですね。いいでしょう。あれをお借りしますよ」
古泉が持ってきたのは金属製のスプーン。
ハルヒがプリンを食う為に持ってきたやつだ。
「では…」
おい待て!まさか

 

「マッガーレ!」
ハルヒから「2点ね」と言われた古泉は力なく着席した。
もちろんスプーンが曲がる事は無く、いつものニヤケ面は引きつってる。
アホだ。どうでもいい。
次の朝比奈さんは何も思いつかなかったらしく、悩んだ末に
「わっ私は未来から来て禁則事項を禁則事項する為にいつも禁則事項を…」
「3点。でも以外ね。みくるちゃんが未来に興味があるなんて」
何とかなったようだな。ほとんど禁則事項だったが。

 

さて俺だ。こんなくだらない大会でも自分の番が来ると緊張するもんだな。
部室に到着する前、何とかネタを思いついた。
ハルヒを驚かせる為とはいえ、嘘でもこんな事を言うのは寒気がする。
仕方ない。覚悟を決めろ。
俺は勢い良く立ち上がり、大きめの声で言ってやった。
「大会の途中だがみんな聞いてくれ!言いたい事があるんだ!」
「何よっ!後にしなさい!誤魔化そうなんていい度胸ね!」
ハルヒを無視し、俺は続けた。

 

「ハルヒ!俺はお前が好きなんだ!」

 

「ヒィ!」
チラリと長門を見た朝比奈さんが悲鳴をあげた。
顔の右半分が焼けるように熱いのは何でだろうね。

 

俺は続けた。
「もう我慢できないんだ!俺と付き合ってくれ!ハルヒ!」
「なっ何言って…」ガシャン!
顔を真っ赤にしたハルヒはイスごとぶっ倒れた。動揺しすぎだろ。
「あ…あたしは別に…」
俯きながら珍しく小さな声で何かつぶやいてる。ちょっと可愛いな。
いかん。何だか知らんが右半身がヤケドしそうだ。
「終わりだ。何点だ?ハルヒ」
「…へ?」
しばらく鳩がBB弾を食らったような顔で俺を見ていたが、
今日が何の日か思い出したんだろう。
「バ…バッカじゃないの!?全然おもしろくないわっ!次っ!有希!」
言いながらイスを直して腰掛けた。
「……9点」
あと1点は何なんだ?厳しすぎだろ。

 

微妙な空気の中、長門が待ってましたとばかりに立ち上がった。
よっぽど自信が有るんだろうな。輝いた目で俺の前に立っている。
ん?何だ?ハルヒは向こうだぞ?
「……私は彼を愛している」
俺の手を握って立たせ、ハルヒを見て長門は言った。
さらに俺に一歩近づいて腰に手を回し、胸に顔を埋める。
うおっ!ゾクゾクする。
「………誰にも渡さない。私のもの」

 

「ヒィ!」
朝比奈さん、今度はハルヒの顔を見て悲鳴をあげる。
古泉はニヤニヤ俺たちを見た後、着信中の携帯を持って部室を出ていった。
胸の辺りから、長門の髪のいい香りが上ってくる。悪くないシチュエーションだな。
長門の頭の向こう、団長机に居る赤鬼がこちらを睨んでいなければの話だが。

 

「乙女心ですよ。可愛らしいではありませんか」
後日、俺は食堂の野外テーブルで古泉の話に耳を傾けていた。
「実はあの大会の前日、長門さんから頼まれたんですよ。
『閉鎖空間が発生するが許してほしい』とね」
そりゃあご苦労だったな。さぞかしでっかい空間だったろうよ。
「ええ。地球の半分程でしたよ。
ですが、僕はもちろん機関の仲間も嫌な顔をする者は居ませんでした」
「何故だ?そんな広さなら巨人の数だってハンパじゃないだろう」
事実目の前のお前は疲れきってるしな。
「初めこそ警戒しましたが、長門さんも今では『機関』の人気者です。
愛されているんですよ」
昼休みの終わりが近付き、俺たちは席を立った。別れ際、
「あなたに思いを伝えるだけなら、二人きりで話せば済むことです。
涼宮さんの前であんな危険を犯す必要は有りません」
何が言いたい。
「ですから乙女心ですよ。4月1日は全ての事が『嘘』の一言で許されます。
普段は叶わない願望も、あの日に限っては可能になります」
そういう事です。そこまで言うと片手を上げ教室に帰っていった。

 

「乙女心ね…」
普通の女子なら誰もが持っているであろう。
俺はあの日の長門を思い出していた。
いつか応えられる日が来るのだろうか。

 

長門の乙女心に。

 
 

「有希ぃぃ?今何て言ったのかしら?」
ハルヒはゆっくり立ち上がり、長門を問い詰めた。
「…彼は私のもの。あなたのものじゃない」
負けじとハルヒの目を見て言い返した。
さすがのハルヒも、長門のブラックホールさえ吸い込みそうな瞳には耐えられなかったのだろう。
標的を替えてきた。
「ぐっ…!キョン!あんた有希に何したのよ!有希がこんな事するなんて変よっ!」
知るものか。俺が言える事は、長門の体は柔らかくて温かいという事だ。
うむ。間違いない。
ギュッ。
先程よりも深く俺の胸に顔を埋め、
名残惜しそうに離れてからハルヒに向かって口を開けた。

 

「……………嘘」

 

その後の事も話しておくか。
長門の一言により、2分程固まったハルヒは何とか理解したようだが、
「だからって、何もあんなに…」
最後の方は聞きとれんが、何やら不満がお有りのようだ。
しかしそれも、電話を終えて帰ってきた古泉による
まるで用意されたかのようなフォローにより解決した。
完璧な演技の為には演出上…とか何とか言ってたな。
まぁどうでもいい。
すっかり機嫌を良くしたハルヒから10点満点を貰った長門が優勝だ。
賞品は無いが。

 

「楽しかったわっ!また来年もやるわよ!じゃーね!行くわよみくるちゃんっ!」
冗談じゃない。命がいくつあっても足りないとはこの事だ。
ハルヒは雨の中、水が跳ねるのも気にせず
朝比奈さんを連れてレンタルビデオ屋へ爆走していった。
未来に興味がある朝比奈さんの為に、タイムトラベル物を片っ端から借りに行くのだろう。

 

「急用ができたので僕もこれで」
ウインクをするな、気持ち悪い。
自然、俺と長門が残る訳だが、嘘とは言ってもあんな事があった後だ。
別で帰ったほうがいいか。
「……傘を忘れた」
仕方ないだろ?袖を摘みながら上目遣いで言われてみろ。
一本の傘を長門の方に傾けながら道を歩いた。
「しかし朝から降ってただろ?それで忘れるなんて意外だな」
「…………………迂闊」

 

「優勝できて良かったな。迫真の演技だったぞ」
「………」
「だが少しやり過ぎだな。あまりハルヒを刺激しない方がいいんじゃないか?」「………」
長門のマンションが近づいてきた。
「……あなたはわかっていない」
マンションのエントランス。俺が傘を閉じるのを待ってから、
「……あなたと私の認識に齟齬が発生している」

 

長門は目を逸らし、俺のネクタイに向かって言った。

 
 

「…あなたへの想いが嘘だと言った……それが私のついた嘘」

 
 

END

 


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Last-modified: 2012-06-17 (日) 03:03:24 (2714d)